ダンジョンで双璧が暴れるのはまちがっているだろうか   作:よづき

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No.17

 

 

 

都市最強のファミリアの女神にして美を司るフレイヤにとって、ベル・クラネルという透明の魂をもつ少年は特別だ。

 

だから冒険者として成長するきっかけを作るために、モンスターを放ちベルに襲わせるという行動をとった。

ただしこの作戦には一つだけ問題がある。15年前のある日、オラリオに突如として現れ消えた、2人組の冒険者である。

 

15年前現れるや否や、片方は【ヘルメス・ファミリア】の団長となり、当人の柔らかい物腰で恩恵を持たない子どもや駆け出しの冒険者、第二級冒険者に絶大な人気を誇った。

それでいて徹底した中立の立場で、彼を敵に回すと何処から反撃を食らうか分からないと言わしめた存在感のある青年だ。

 

もう1人は【ロキ・ファミリア】の幹部になるものの、遠征を除いて12年間ソロを貫き、Lv3にして前線で戦い続けた、ジャイアント・キリングを体現する人であった。それでいてレベルは1度も上がることなく、不自然なくらい大人しかった2人だ。

大方ヘルメスが中立を守る為に黒い方そうさせたのであろうが、ロキの方は少し不思議だった。あの女が、Lv3で収まる器でもないであろうに。

 

それなのに今頃ベル・クラネルの前に現れ、3年前の大人しさは見受けられない。オラリオのど真ん中で堂々と暴れている。

 

思えば彼らは現れた時から脅威だった。

いつからオラリオにいたのか。

誰の元でLv3まで到達したのか。

なぜ、神である自分の目を持ってして魂の色が見えないのか。

 

自分が気づいているのだから、ヘルメスやロキもとっくに気づいてるであろう。

 

あれらは人間ではない。

否、人間と何かが混ざったものだ。

 

そんな2人が、オラリオでは無名のベル・クラネルという少年を護るように動くのだ。邪魔でしかない。

 

黒い方は会話をしていても、まるでヘルメスのように笑ってその真意を悟らせてはくれない。読めないのだ。

白金の方は考えは割とわかりやすい。だが『魅力』に抗えてしまう。神に、抗えてしまう。

 

今回の作戦もいかに2人の足止めをできるかが、ベルに干渉するための問題であった。

心配は杞憂であったようだが。

 

これから先、ベル・クラネルという少年の行く末にあんな禍々しいものは要らない。

そう結論づけると、フレイヤはギルドにアポをとるべく己の眷属を呼びつける。

 

「お待たせ致しました」

「お願いがあるの」

「フレイヤ様の願いでしたら、なんなりと」

「ふふ、頼もしいのね。ギルドに話があるわ。この戦いが終わり次第向かうから、約束を取りつけてちょうだい」

「かしこまりました。失礼致します」

 

突如現れた青年がお願いを叶えるために立ち去ったのをみて、1つため息をつく。

 

「あの2人を動かすのだから、中途半端じゃダメね。」

 


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