ダンジョンで双璧が暴れるのはまちがっているだろうか   作:よづき

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NO.12

 

 

「あ、あのノエルさんっっ」

 

ベートと分かれ、3人でのホームへの帰り道、相変わらずノエルに緊張しっぱなしのベルが急に口を開いた。

 

「…ベル?」

 

ノエルの方が背は少し高いので屈んでベルの顔を覗き込むようにすると、あっという間にベルの顔はゆでダコのように赤く染まった。

 

「あ、あ、あのっ、明日からシルさんにお弁当を作って頂くことになったので…その…」

 

これまでは朝昼のご飯はノエルの担当で、夜はローテーションか空いている人間の仕事だった。そこに昼食を毎日渡させてくれという少女が現れたのでノエルに報告する必要があるのだ。

 

「シル…わかった」

 

ノエルはベルへの返事をしつつ、ちらりとアルトに目配せをする。アルトも言わんとしてることは分かっているので瞬きで謝罪。

ノエルだって俺に何も言えないくらい過保護だっての。アルトがそう思うのも至極真っ当である。

 

「ああ、そういえば、ヘスティアはしばらくホームを空けるってよ」

「…ヘスティア様が?」

「ガネーシャ主催の神の宴に行くとかなんとか。とりあえずパーティ用のドレスとか一式揃えるよう金渡したけど」

「えっ、ぼく、何も…」

 

 はーベル可愛い。こういうのは金持ってるやつが出して当然とかの考えがないんだもんな。Lv1の駆け出しとLv6じゃそもそもの稼ぎが違うんだし。

 

「いいんだよ、俺が可愛くおしゃれしたヘスティアを見たいだけだから」

 

どれだけ表面上綺麗な言葉を並べようと、見目がよかろうとアルトの本質が残念なことは変わりない。ノエルも分かっているのでこういう事を言うと普段はヒールで踏むところだが、ノエル、ベル、アルトの順で並んでいるのでそれはかなわなかった。

 

 

 

一方、【ガネーシャ・ファミリア】のホームでは徐々に神たちが集まりはじめていた。その中でもまず目をひいたのは、貧乏でファミリアも持たず、今まで一切のパーティーに出席しなかったヘスティアの存在だ。

 

ヘスティアと言えば上記の通り、眷属無しの貧乏神だと言われ続けていたが、神々が忘れもしないバケモノ2人を眷属にしたと今では時の人である。しかもヘスティアの手でLv6に引き上げたというのだ、一気に中堅にくい込んだ彼女に興味のない神などいなかった。

 

「ヘスティア〜、【新星ノヴァ】と【英明インテリジェンス】を眷属にしたって〜??」

「あの2人今までどこに居たか聞いてるか??」

「私に黒い子ちょうだいよ」

 

旧知の仲の神々に休む間もなく話しかけられ、ヘスティアは困っていたが【新星】と【英明】は聞いたことがなく聞き返した。

 

「それが2人の二つ名なのかい??」

「それも知らずに眷属にしたの〜?まあ二人とも11年レベル上がらなかったから完全に二つ名間違ったのつけちゃったと思ってたけど。ふふっ、まさかLv6で再登録なんて、やっぱり面白い子達ね。ヘスティアどこで拾ったの〜??」

 

自身にに負けず劣らずの双丘を押し付けてくる女神たちを振り払い、ヘスティアはようやくお目当ての神物、ヘファイストスと顔を合わせた。

 

「ヘファイストス!」

「ヘスティア……貴方、見ない間にとんでもないことになってるわね…」

「君までそれを言うのかい?…正直、ボクはあの二人のことをよく知らないんだ。君はなにか知ってるかい?」

「そうねぇ…そういえばロキが、「ファイたん!ドチビ!」噂をすればロキだわ」

 

振り向けば天敵ロキがいるが、ヘスティアはこの女神に聞くのは何となく癪だった。だがヘルメスとロキ、アルトとノエル、安全そうなのはロキとノエル。聞くのはこちらか。

 

「ロキ、ノエルくんについて聞きたいことがある」

「…うちからノエルたんについて話せることは多くないで」

「それでも構わないさ。ロキの所にいた時のステイタスが知りたい」

 

ヘスティアの質問に対しロキは軽く考え込む素振りを見せた。

 

「…その質問は、呪詛のことか?」

 

「ああ。ノエルくんとアルトくんのステイタスはおかしい。アルトくんはもうこちら側に立ってる。ノエルくんだって、あの呪詛の力はもうこちら側に足を突っ込んだようなものだと僕は考えてる。君の意見が知りたい」

 

ロキは誰にも言うつもりのなかった事実を口にした。あの呪詛をなんの気なく発現させたことに責任を感じていたのだ。絵空事に近かった彼女の当時の目標に現実性を持たせてしまったから。

 

「…ひとつ間違っとるでドチビ。あの黒い少年の方はうちも分からん。でもな、ノエルたんはうちと出会った時に『こちら側』に入ったで。あの子は既に子どもの範疇を超えている」

「それはどういう」

 

 

ヘスティアが話を続けようとしたがロキが阻んだ。

 

「フレイヤ?」

 

フレイヤが現れてからというものの、その後ロキはノエルの話にすらさせなかった。


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