俺の名は、ダドリー・ダーズリー   作:トメカ

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今回は、ハリー視点です。


僕の名前は、ハリー・ポッター

「ハリー、大丈夫か?」

 

ハグリッドが心配そうに、ベッドの上でブランケットに包まっている僕に声をかけてくる。

大丈夫かだって? 大丈夫じゃないさ、だって僕、きっとダドリーに嫌われた。ダドリーにバカだなんて言葉言っちゃった……。ダドリーだけが僕に優しく接してくれる『家族』だったのに。

 

「ハリー、あの小屋から『漏れ鍋』に来て、お前さんはもう3日もこの部屋に引きこもっとる。いい加減、外に出ないと身体に悪いぞ。ホグワーツで必要なものでも買いに行かんか?」

 

ハグリッドが僕の寝転がっているベッドの上に腰掛ける。衝撃で、僕の身体がぽよんと跳ねた。

 

ハグリッドは、でっかい身体の大男で怖そうな見た目をしているけど、僕を心配してくれているのは、よく分かってる。決してホグワーツに行きたくない訳でもない。魔法使いになれたらすごく楽しいんだろうなと思う。けど、ダドリーにしばらくの間会えないと思うと。

 

「ハグリッド、僕やっぱりホグワーツに行きたくない」

 

「どうしてだハリー、ホグワーツは楽しいところだぞ。それに俺は、おまえさんを酷く扱うあの家に、もうおまえさんを帰したくない」

 

ハグリッドは、ほんとにいい人だな。僕のことをすごく考えてくれている。あの家での扱いは、召し使い以下だった。部屋も物置小屋だったし……。けど。

 

「確かにあの家は居心地があまりいいとは言えなかった。けど、ダドリーだけは、僕に優しくしてくれたんだ」

 

「ダドリー? あの金髪のガキのことか?」

 

「うん。ダドリーは、優しくてね……」

 

僕は、ハグリッドに夢中でダドリーについて話し出す。

あの家の中で、ダドリーだけが僕に挨拶をしてくれた。僕を引っ叩かないで頭を撫でてくれた。

動物園に一緒に行きたいと言ってくれた。動物園では、僕が1番安いレモンアイスを食べていたのをかわいそうだと思って、自分が食べていた美味しそうなチョコレートアイスと交換してくれた。園内のレストランでは、パフェを買ってもらえなかった僕に半分くれた。あの小屋で寒そうに震えていた僕に毛布を1枚掛けてくれた。僕の誕生日を覚えていてくれた。

 

僕は、手元にある腕時計をぎゅっと握りしめた。

ダドリーが気に入ってつけていたカッコいい腕時計。あの時は、とっさに寝たふりをしてしまった。「ハッピーバースデー、ハリー」と言ってくれたあの優しい声が懐かしくて、泣きそうになる。

 

「あの家にも、いい奴は居たんだな。そんな奴が居てくれて少し安心したぞ」

 

ハグリッドは、慰めようと僕の頭を撫でてくる。その手つきは、ダドリーとは違いガシガシと強めだが。たぶん、これでも優しく撫でているつもりなのだろう。

 

「けど、僕ダドリーに嫌われちゃった。あの小屋で見たでしょ、ダドリー、ホグワーツでもどこでも行っちまえって言ってた」

 

ダドリーはいつも優しくて、大人っぽくて、みんなみたいにぎゃあぎゃあ騒がないから、あんなに怒鳴っているのを見たのは初めてだった。たぶん、すごく怒っていたんだ。

 

「なあーに、そんなのちょっとケンカしただけだ。ケンカするほど仲がいいんだろう。仲直りだってすぐできる」

 

「仲直りできるかな?」

 

「そいつは、優しい奴なんだろう? すぐ仲直りできる」

 

「うん。そうだよね」

 

そう、信じたい。

 

「それで……、ホグワーツはどうするか?」

 

ハグリッドが困った顔で聞いてくる。ほんとにどうしよう。ダドリーも一緒にホグワーツにいけたら1番よかったのにな。絶対、楽しかった。

けど、ダドリーは言ってた。僕の居場所は魔法界にあるって。たぶん、ダドリーの言ってることは正しいと思う。

実際、僕は普通じゃない。この前だってダドリーの誕生日にニシキヘビのケースに突き落としてしまった。あの日は、ダドリーの大切な誕生日だったのに。

僕は、魔法の力を制御できていない。この先も無意識のうちにダドリーを危険な目に合わせてしまうかもしれない。魔法の力を制御できるまでは、ダドリーの側にいない方がいいのかもしれない。

長い時間考えて、やっと答えをだす。

 

「僕、ホグワーツに行ってみることにするよ、ハグリッド。僕、今までダドリーに頼りすぎだったのかもしれない。ダドリーに頼らなくても生きていけるようにならなくちゃいけないと思うんだ」

 

ハグリッドは、満面の笑みを浮かべて、僕に抱きついてくる。力が強すぎて、くっ、苦しい。

 

「そうかっ! それはよかった、よかった。じゃあ、早速必要なものを揃えなくちゃいかんな」

 

はあ、ハグリッドがやっと僕を離してくれた。彼は、大男なだけあって力がとても強い。

息を落ち着けて、そこで、僕はやっと冷静になる。

 

「けど、僕お金持ってないよ、ハグリッド」

 

「それなら、大丈夫だ。おまえさんのために両親が銀行に預けていたお金があるからな。さあ、早速行こうか!」

 

 

「うん」

 

 

そこで、便箋を買ってもらおう。

ダドリーに「ごめんなさい」って伝えなくちゃ。

 

 

 

 


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