俺の名は、ダドリー・ダーズリー   作:トメカ

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ハリーから奪った手紙を隅々まで読んだ父さんは、しばらく呆然としていたが、ハッと意識をこの場に戻すと母さんの名前を叫ぶ。

 

「ペ、ペ、ペチュニア!」

 

母さんは、訝しげに手紙を受け取り、手紙を読みだす。その手紙の内容にあまりの衝撃に母さんは、息を忘れて、気を失いそうになった。

 

父さんと母さんの慌て様は、ハリーや俺がここにいることなど忘れたかのようだった。

いや、驚き過ぎだろっ! 一旦落ち着こうよ……。ハリー、しっかりこの状況見てるからね! 怪しい目で、ハリー見てるよ。こんなんじゃ、何かあったことが丸わかりだぞ。本当この両親は、隠し事をするのが下手だ。はぁ……。

 

「僕にも読ませて、それ僕のだよ!」

 

ハリーは母さんが持っている手紙に手を伸ばすが、それを父さんの手が乱暴に振り払う。

 

「2人ともあっち行け!」

 

そう言うと、父さんは俺とハリーを部屋から追い出してしまった。

俺は、あの手紙が『ホグワーツの入学許可証』だとすでに知っているから、興味もなく、おとなしく自分の部屋に戻って、テレビを見ることにする。

それにしても、面倒くさい。

ハリーが嫌いならとっとと家から追い出せばいい。魔法みたいな普通じゃないことと関わりたくないならハリーを早く追い出せばよかったんだよ。あの2人は、ハリーをどうしたいんだろうか。

 

しばらくテレビを見ていると、テレビがいきなり止まる。

はっ? なんなんだよ。こういうのって叩けば直るっていうよなとか思って、テレビをバシンバシンと強めに叩いてみるが、ばふっという黒い煙を裏側から吐き出しただけだった。

あっ、余計に壊したかも……。

はぁ……、最近こんなことばっかりだ。誕生日の朝に止まった時計だが、あれも電池切れではなく壊れてしまっていた。まぁ、あれに関しては、何年も使っていたから寿命だったかもしれないが。誕生日にもらったカメラだって、ラジコン飛行機だってすぐ壊れてしまった。あれらは、どう考えてもおかしいだろう。俺が機械音痴なのか? それともハリーの影響か? ハリーの魔法的力が俺の電子機器に影響を与えているのか? まさか、ハリーが俺を恨んで無意識に?

もうやだ……。

 

ハリーお願いだから、はやく家から出て行ってください。

 

ガチャリ、ドアが開く音に顔をドアの方に向けると当の本人が突っ立っていた。

 

「ダドリー、僕、君の2つ目の部屋に住むことになったんだ。バーノンおじさんが元の物置は、小さくなったからって。いいの?」

 

うわ、びっくりした。いきなり入るなノックしろよ。もう、心臓止まるかと思った。俺のことを不安そうに窺っているハリーに今考えていたことを悟られないか心配になり笑顔をつくって返事をする。

 

「ハリー、2つ目の俺の部屋使うの? 全然いいよ。隣の部屋同士だから兄弟になったみたいだね」

 

「兄弟……。うん、そうだね!」

 

ハリーは、俺の『兄弟』というその言葉に嬉しそうに反応した。

ああ、そういえばこいつは、親は死んで、俺の両親からも疎まれて家族というものを知らないんだよな。そう考えるとなにも考えずにただ誤魔化しのために『兄弟』という言葉を使ってしまったことを申し訳なく感じる。

 

その後、ハリーの荷物を物置から俺の2つ目の部屋に移動するのを手伝う。俺が手伝わなくてもハリー1人で1回階段を登るだけで済む量だった。

これがハリーの全財産かと思うともうすぐ家を出て行くだろうハリーにもう少しだけ優しくしてあげればよかったと思った。

 

 

ハリーと俺は、ハリーの荷物を俺の2つ目の部屋に置くと、そこにあるベッドに腰掛けた。

この部屋は元々ゲストルームであったが、いつしか俺の多すぎるおもちゃに侵略されて、今はそこかしこにおもちゃが転がっていた。

 

「ねえ、ダドリー。さっきの手紙なんて書かれていたんだろう?」

 

それは、君の魔法学校入学許可証だよ。なんて突然いうのは怪しいので、お前にとって人生を変えるぐらい大切なものだとほのめかす。

 

「きっと、あの手紙は君にとって、とても大切なものだ。父さんも母さんもあの手紙の所為であんなにびくびくと怯えている。ハリー、君は何としてもあの手紙を受け取らなければならない」

 

そして、この家から早く出て行ってくれ。俺は、早く平和な暮らしがしたい。ハリー、お前がいると母さんも父さんも、毎日ガミガミと怒鳴るから煩いんだよ。

 

「でも、あの手紙はさっきバーノンおじさんが燃やしてしまったって……」

 

そんな燃やしたからなんだ? お前が受け取るまでフクロウがたんまりと手紙を運んできてくれるよ。

 

「大丈夫だよ。あの手紙の持ち主は、君が物置で暮らしていることも知っていた。宛て先のところに階段下の物置と書かれているのを見たよ。きっと、僕たちを見張っているんだ。だから、君が手紙を受け取れていないことも知っていて、もう一度手紙を送ってくれるよ」

 

「うん、そう信じてみる!」

 

僕の言った通りというか、原作の通り、次の日も手紙は来た。その次の日も、さらにその次の日にも……。

 

しかし、父さんがハリーよりも先にその手紙を受け取ってビリビリに切り裂いたり、燃やしてしまうので、ハリーはまだ一度も手紙の中身を確認できていないようだった。

というか、この前は驚いた。朝早くジョギングに出掛けようと思ったら何か大きくてグニャッとしたものを踏みつけたんだ。

 

「ウワーヮヮヮァァァァァ!」

 

という叫び声に驚いて、電気をつけると足元に父さんの大きな顔。どうやら、俺は父さんの顔を踏みつけてしまったようだ。父さんは、ハリーが手紙を受け取るのを阻止するために玄関の前で寝袋に包まって寝ていたのだ。

その後、ハリーから聞いた話だがハリーも父さんの顔を踏みつけてしまったらしい。ハリーが手紙を受け取ることは、阻止できているが……。

身体張ってんな父さん。

けど、寒い玄関の前じゃなくて、ハリーの部屋の前にいればいいのにと思ったのは、俺だけだろうか。

 

その後も、父さんは家の郵便受けを釘づけにしたり、隙間からも手紙が入ってくるので、玄関や裏口のドアなど隙間という隙間に板を打ち付けた。

 

しかし、卵に手紙が入っていたり(防ぎようがない。しょうがないよ父さん)、煙突から手紙に侵入されたり、段々と父さんは、疲れ果てていき正常な判断ができないようになっていた。

 

ついにどっか頭がおかしくなってしまったのか、父さんは家を離れるという決定をくだした。その時に平静に話そうとしていたが、焦りは隠せず、口ひげを強く握り締めすぎて、しこたま引き抜いていた。

痛そう……。

もう、諦めろよ。相手は、卵の中にまで手紙を忍ばせる輩だぞ。一般人がどうにかできる相手じゃないよ。

 

俺たち一行を乗せて車は、走るが父さんの運転は酷いものだった。時々急カーブ切るわ、逆走して走るわ、あぶねぇーよ。

 

「振り払うんだ……振り切るんだ」

 

と度々呟いているのを聞き、ああ父さんおかしくなっているなというのを確信した。

 

父さんは、一日中飲まず食わずで車を走らせ、やっと車を止めた場所は、どこかの大きな町はずれの、陰気臭いホテルの前だった。

湿っぽい、かび臭いシーツに朝ごはんは、かび臭いコンフレークと、缶詰の冷たいトマトをのせたトースト。

最悪のホテルだった。

 

もちろん手紙は、やってくる。

ホテルの女主人が手紙を持ってきた。もちろん、ハリーが受け取る前に父さんがその手紙を破り捨てた。

再び、一行は車に乗って手紙から逃げるというバカらしい旅を続けることになる。

 

「ねぇ、家に帰った方がいいんじゃない?」

母さんも、父さんのあまりの異常さに恐る恐るそう言うが、気が変になった父さんには届いていないようだった。

 

血走った目で行くあてもなく、車を走らせ続ける父さん。疲れ切っているので、運転もフラフラ。

 

どうやら、ハリーがホグワーツに行くより先に事故死しそうです。


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