ゼロからのシンデレラ   作:powder snow

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こちらのお話は本編よりも未来の出来事になります。



番外編。楓さんとのクリスマス①

 

 ――12月24日、午後六時より、本館イベントホール内にてクリスマスパーティーを催します。参加費は無料となっておりますので、アイドル部門所属の方は奮ってご参加ください。

 

 上記の内容が書かれたチラシに目を通しながら、綾霧が駅構内に設置されている歩道を歩いている。ちょうど出勤時刻が重なっているということもあって、彼の周りには幾人もの人の姿が見えた。

 そんな人の群れに紛れながら、綾霧は待ち合せ場所となっている出口方向へと目線を移す。特別に約束をしているという訳ではないが、先に到着したほうがそこで待っているというのが通例となっているのだ。

 そして目的の人物を視界に収める。

 どうやら今日は彼女のほうが先に到着していたようだ。

 

「あ、おはようございます、プロデューサー」

「おはようございます、楓さん」

 

 手にしていたチラシをコートのポケットに仕舞いこみながら、綾霧が楓の元まで小走りに駆け寄って行く。そんな彼を彼女が笑顔で迎えた。

 

「今日はまた一段と寒いですねぇ。ほら、吐く息が真っ白に」

 

 楓がほうっと息を吐くと、それが白い靄となって現れ、空へと上っていく。彼女の言う通り冷気は肌を刺すほどに強く、コートを羽織っていても震えてしまうくらいに寒かった。

 

「本当、めちゃくちゃ寒いですね。雪でも降るんじゃないかってくらいで」

「雪、ですか。いいですね」

「え?」

「だって今日降ればホワイトクリスマスですよ。ロマンチックじゃないですか」

 

 一年に一度しか訪れない機会。今日雪が降らなければ、また来年を持たなければいけないのだ。楓でなくてもそれを期待してしまうのは無理からぬことだ。

 寒さは堪えるが、それ以上の“なにか”を雪の白さが与えてくれるから。

 

「ホワイトクリスマスか。でも降ったら――これで雪見酒が飲める、とは言わないんですね、楓さん」

 

 ちょっとした悪戯心から。綾霧は楓の隣に並びながら、少し彼女をからかってやろうとそんな言葉を吐いてみた。普段はからかわれる側なので、反撃してやろうという試みだ。

 それに対して楓は、わずかに頬を膨らませながら

 

「もう。いくら私でも、ずっとお酒のことばかり考えてるわけじゃありませんから」

「じゃあダジャレのことを考えてたり?」

「違います。少しは……いえ、結構考えてたりしますけど、いっつもじゃないですからね」

 

 二人で肩を並べて歩き出す。

 目的地までの十分少々、他愛もない会話をしながら歩いて行くのが最近の日課になっていた。

 

「ええ、本当に? ほら去年のクリスマス“ホーリーナイトは素直に楽しまナイト”なんて言ったの覚えてます?」

「あれは、その、あの時は私もいっぱいいっぱいで……ってもう、忘れてください。意地悪です、プロデューサー」

「絶対忘れませんよ。俺にとってあなたとの大切な思い出ですから」

「……」

 

 ちょうど一年前の出来事を話題に出され、当時を思い出したのか楓が耳まで真っ赤になる。二人でディナーに出掛けた際に“ダジャレは言わない”と宣言したにも関わらず、直後に言ってしまったからだ。

 このままこの話を続けていたらより墓穴を掘るかもしれない。そう思ったのか、楓が話題の矛先を変える。

 

「えっと、プロデューサー。今日のパーティーは八時まででしたよね?」

「そうですね。午後六時から八時まで。どうやら参加者、結構いるっぽいですよ」

「みんなお祭りが好きですから。――あ! 当然その流れで二次会が発生するでしょうけど、誘われても参加しちゃ駄目ですからね」

「わかってますって。――お店、もう予約してありますから」

「……はい」

 

 パーティーの後、二人で食事に出る約束をしていたので、楓が押しに対して弱い綾霧に釘を刺した。楓を筆頭に、瑞樹、早苗など飲める面子が揃ったら、街に繰り出すのが恒例となっていたから。

 

 そうこうしている間に目的地へと到着する。

 346プロダクション本館。

 楓は所属アイドルとして。綾霧はプロデューサーとしての二人の勤務先である。

 

「あら、壁面のタペストリーが」

「変わってますね。クリスマスからお正月にかけての年末年始仕様ですよ。来客も多く訪れる季節ですし」

 

 正面玄関を抜けた二人を、二階まで吹きぬけとなっている広大なエントランスが迎えた。通路の先には大きな階段があり、二階まで瀟洒な赤絨毯が敷かれてあるのが特徴だ。

 一見して中世のお城を思わせる作りは、初めて訪れる人にある種の驚きを感じさせるだろう。

 そのエントランスの壁には、346に所属するアイドル達の巨大なポスター風のタペストリーが飾られているのだが、それが変化しているのに楓が気付いたのだ。

 新進気鋭、人気急上昇中のシンデレラプロジェクト所属のアイドル。そして高垣楓、川島瑞樹、輿水幸子といった綾霧が担当するアイドルのタペストリーもあった。

 中でも一番目に付く場所でメインを張っているのはプロジェクトクローネの面々だ。こちらにはCP所属のアイドルや綾霧担当のアイドルも出向という形で参加している者もいる。

 

「なんか私、変じゃありません?」

「え?」

「……ご祝儀袋みたいって」

 

 その中で自分の描かれたタペストリーに目線をやりつつ、楓が困ったような複雑な表情を浮かべていた。

 白を基調とした和風ドレスを纏った姿は、帯など装飾の煌びやかさも相まってそうとも見えなくはない。

 

「あはは、これからの季節、目出度くていいじゃないですか」

「もう、プロデューサーまでそんな」

「でもお神酒――お酒の神様みたいで綺麗ですよ」

「お酒の神さま……なんならお銚子でも持って踊りましょうか?」 

「いいですね。楓さんが舞ったならきっと天岩戸でも開いちゃいますよ」

「ふふっ、本当にそう思います?」

「もちろん。誰にでも着こなせる衣装じゃないし、俺は素敵だと思いますよ。似合ってます、とっても」

「あ……りがとうございます、プロデューサー。面と向かって言われると、少し照れますね」

 

 頬に手を添えて楓がはにかむ。

 こうして立ち止まって会話している二人だが、エントランスはかなり広いので、他に行き交う人の邪魔になったりはしない。だから近づいてくる者がいるとすれば、二人に用がある者ということになる。

 

「その衣装、評判は悪くはない。いやむしろ良い部類に入っている」

 

 背後からかけられた声に振り返ると、そこには長身の楓よりも更に身長の高い女性の姿があった。

 ピリっとしたグレーのスーツを身に纏った美城専務である。

 彼女の姿を見た綾霧は、慌てて佇まいを直し、挨拶を返した。

 

「――専務、おはようございます」

「おはようございます」 

「おはよう。二人とも今日のパーティーには出席するのか? まだ時間はあるようだが」

「開始までに色々と片付けておきたい仕事もありますので。パーティーには参加させて頂くつもりです」

「そうか。感心だな」

 

 綾霧が来た時には常務だった彼女も、アイドル部門の成果の甲斐があってか専務へと昇進を果たしていた。それに伴って当初あった険がとれてきたとのもっぱらの評判である。

 

「パーティー、専務は参加なさるんですか?」

「いや。それに私がいないほうが皆くつろげるだろう?」

「いえ、そんなことは……」

「冗談だ。どうしても外せない用件が入ってしまってな。今日はアルコールの類は出せないが、君たちだけで楽しんでくれ」

 

 パーティーに参加するアイドルの大半が未成年である為、アルコール類は厳禁となっている。瑞樹やウサ……もとい、二十歳を超えている一部のアイドルは、パーティーが終わった後で飲みに行く手はずとなっていた。

 

「そうだ。君たちにこれをやろう」

 

 そう言った専務が、鞄の中から袋に包まれたままのキャンディを取り出し、二人に握らせる。

 いつの頃からか、社内で専務に会うと時折飴をくれるようになったのだが、専務から飴を貰うとその日は良い事があるという噂が、アイドル達の間でまことしやかに囁かれているとかなんとか。

 

「ありがとうございます」

 

 二人にキャンディを渡した専務は、満足げに笑みを浮かべると、コツコツと足音を鳴らしながらその場を去って行った。専務を見送った後で、綾霧と楓はキャンディの包みを剥がすとそれを口の中に放り込む。

 

「……今日のは」

「イチゴ味、ですね」

 

 カラコロと口内でキャンディを転がしながら、楓と綾霧もその場から歩き出して行った。

 

 

 

「あれ? 何処に行くんですか、プロデューサー? そっちは――」

 

 普段とは違う方向へ行こうとする綾霧を楓がいぶかしむ。

 

「ちょっとシンデレラプロジェクトの面々に挨拶してこようと思って。ほら、この間のフェスでは随分とお世話になったし。担当や各部署の垣根を越えて連携できたのも、彼女等の助けがあったからですしね」

「ああ、あの時はアイドル総出演でしたからね。そういうことでしたら私も一緒に」

 

 一年の総括として、346の誇るアイドル達が総出演するフェスが先日行われたばかりなのだが、その準備期間に色々と協力し合ったという経緯があったのだ。

 そういうことで、本館からオフィスビルへと通じる渡り廊下を通り、CPの面々が根城にしている事務所を目指す二人。

 一時は倉庫を兼ねているような地下室に押し込められていた彼女達だったが、今ではちゃんとした一室を与えられ、そこで活動していた。

 そこへの道行き、綾霧はふと楓の様子が気になって横目で彼女の様子を盗み見た。

 今でこそ346で“シンデレラ”といえば、誰もがシンデレラプロジェクトのことを思い浮かべるだろうが、かつては彼女も確かに“シンデレラ”の一人だったのだ。

 その名前を冠した曲も頂いたし、ステージにも立った。

 誰もが憧れる夢の舞台への階段を昇ったのは、今の灰かぶり姫達だけではない――

 

「私の顔に、なにか付いてます?」 

「ああ、ごめんなさい。ちょっと考えごとをしていて」

 

 謝る綾霧に、楓は軽く首を振って。

  

「忘れていませんよ、私は」

「……え?」

「大勢のファンを前に、川島さんやみんなと一緒に歌ったお願いシンデレラ。センターに立たせ貰って昇ったあの日のステージ」

「楓さん?」

「プロデューサーに魔法を掛けてもらって、ガラスの靴を履いて、純白のドレスを纏って。――あの日の私は確かにシンデレラでした」

「……っ」

 

 ある意味で伝説となったステージ。

 その会場に今のCPの中心メンバーである島村卯月、渋谷凛、本田未央の三人が、デビュー前に居合わせたというのも数奇な運命である。

 

「――またいつか、あの日のメンバーでライヴをしましょう。俺が叶えてみせますから」

「ふふっ。楽しみにしてます」

 

 いつの日か卯月達からも代替わりして、また新しいシンデレラが誕生するのかもしれない。

 楓から彼女達へと、バトンが渡されたように。

 

「到着、しましたね」

 

 重厚な扉を前にして、楓が立ち止まった。

 その先に、今のシンデレラ達。CPの面々がいるはずだ。

 

 

 

「あっれぇ!? 楓さんだー!」

「どうしたの? どうしたの? みりあ達になにか用?」

 

 軽くノックして、中からの応答を待ってから開いた扉の先には、幾人かの少女の姿があった。その中から楓の姿を認めた城ヶ崎莉嘉、赤城みりあの両名が凄い勢いで駆け寄って来る。

 

「楓さぁん、ハイターッチっ!」

『イェーイ!』

 

 パンっ!

 二人の掛け声に合わせて、楓が右手でみりあと、左手で莉嘉と掌をぶつけ合った。ハイタッチと言いながら、身長差がかなりあるので楓的には普通のタッチと変わらなかったのだが、そこはご愛嬌。

 無事開幕のスキンシップを済ませた三名が朗らかに笑い合う。

 

「あら。莉嘉ちゃんもみりあちゃんも随分とご機嫌ね。なにか良いことでもあったの?」

「クリスマスだよ! お祭りだよ! パーティーだよ! テンション上げてかなきゃ!」

「綺麗なお洋服着て、美味しいものいっぱい食べて。えへへ、楽しみだねー!」

 

 顔を合わせて笑い合う莉嘉とみりあ。

 ニコニコと愛嬌を振りまいている二人を見ているだけで、こちらまで楽しくなってくるというものだ。

 

「ねぇねぇ、楓さんも今日のパーティーに参加するんでしょ?」

「ええ、参加するわよ。二人は?」

「もっちろん参加するよ! お姉ちゃんも来るって!」

 

 綾霧そっちのけで盛り上がる三人。

 このままだと存在を忘れ去られるかもしれない。そう思ったからか、綾霧は何とか会話の隙間を見つけて中に入り込むことにした。

 

「あの、俺もいるんだけど……気付いてる?」

「なになに? Pくんもコッチ混ざりたいの? しょうがないなぁ」

 

 手のかかる弟を嗜めるような口調で喋りながら莉嘉が手を広げた。

 どうやら綾霧の存在自体は初めから認知していたようである。ただ楓よりも優先順位が低かっただけなのである。

 莉嘉はみりあとそれらしい目配せをしてから手を振り上げると――

 

「じゃあ、ハイターッチ!」

『イェーイ!』

「うわっと!?」

  

 バンッ!

 楓の時とは違い、半ば叩くような勢いで掌をぶつけられた綾霧が、たたらを踏みながら後ろに下がってしまう。それを見た三人が、クスクスと楽しそうに笑い声を上げた。

 

「Pくん、よろめきすぎぃ。そんなんじゃいざって時に困るよ?」

「って、あれれ? なんか二人から甘い匂いがしてくる気が……これって、いちご?」

「ああ、さっき専務に飴を貰ったからそれかも」

「ええ! いいな! アタシも飴欲しー!」

「いや、欲しいって言われても……」

 

 専務から貰った物だから持ち合わせなどあるはずがない。だが二人は容赦なしに綾霧の服を掴んでぐらぐらと揺らしてくる。

 前へ後ろへ横へと、相手が可愛いアイドルじゃなかったら一喝しているところだ。だが対応策がないので、綾霧は隣にいる楓に、目だけで“持ってます?”と助けての合図を送った。

 しかし無情にも首を振られてしまう。

 

「あーあーあーあーあ、揺らさないで莉嘉ちゃん! みりあちゃん!」

「あはははははっ!」

 

 もはや飴を貰う目的よりも綾霧の反応のほうが面白いのか、二人とも揺らすのを止めようとしない。

 

「仕方ないね。飴玉なら、はいコレ食べて」

「こっちも、はい。これはね、杏ちゃんからだよぉ」

 

 そんな言葉と共に、みりあと莉嘉に飴玉が差し出された。

 みりあには三村かな子から。莉嘉は諸星きらりからそれぞれ飴を貰い、こうしてやっと綾霧は二人から解放されたのである。

 

「アイドルにとって、飴玉の常備は常識だよねぇ」

 

 そして自身は奥のソファに寝そべりながら一歩も動くことなく、手だけを上げて居るという合図をしたのが双葉杏だ。

 

「……で、なにしに来たの? 用があるから来たんでしょ?」

 

 苦笑いを浮かべながらも、綾霧に先を促したのは渋谷凛。

 会話の切りの良い部分を見計らって本題に入ってくれたのだ。

 

「えっと、実は先日のフェスの件で話が――」

 

 喋りながら、綾霧が室内に目を走らせる。

 目的としている人物はかなり大柄な体躯をしているので、この場にいたなら見落とすことはない。そんな彼の仕草から、凛が用件を察する。

 

「うちのプロデューサーならいないよ。どうしても調整の効かなかった仕事があって、さっき出掛けたところ」

「なるほど。それで」

 

 部屋に入った時から見知った顔が何名かいないと思っていたが、別件で仕事があったのかと綾霧が納得する。恐らくこの場にいない何名かはプロデューサーと一緒に出掛けているのだろう。

 クリスマスパーティーの関係もあって、なるべく二十四日には仕事を入れないよう全体で調整してきたのだが、それが叶わなかったということだ。

 

「パーティーが始まるまでには戻ってくる予定だけど、伝言とかいる?」

 

 プロジェクトクローネの関係で、この中では一番綾霧と面識が深い凛が仲介役を買ってでる。

 だが綾霧は軽く礼を述べてから首を振った。

 

「早急に、という話でもないので。時間までに戻ってくるなら会場で会うでしょうし、今は戻ります。ありがとう、渋谷さん」

「いや、別に……」

「じゃあ、楓さん。戻りましょうか」

「はい」

 

 綾霧に返事をしてから、楓が部屋のみんなへ向けてひらひらと手を降った。

 

「じゃあ、またパーティー会場で、ね」

 

 そしてパタンと閉じられる扉。

 それから数秒後、最初に口を開いたのは本田未央だった。

 

「ねえ。あたし思うんだけどさ、あの二人っていっつも一緒にいるよね」

「ええ? そうですか? 担当とアイドルなんだし、たまたまじゃ……?」

 

 答えたのは卯月。

 二人とも最初から事の成り行きを見守っていたのだが、口を出すタイミングを逃したのだ。

 

「そうだけど、それだけじゃないっていうか、なにか特別な関係なんじゃって」

「未央ちゃん?」

「実は――付き合ってたりして」

「ええ!? まさか……………………え? 本当に?」

 

 未央の台詞に何人か興味を示したのを見て、卯月が素っ頓狂な声を上げた。

 

「その辺、どうなのさ、しぶりん?」

「なんであたしに聞くの……?」

「だって鷺沢さんって綾霧プロデューサーの元にいる子でしょ? その関係でなにか聞いてないかなって」

 

 未央が凛に核心について聞いてくる。

 文香と凛はクローネで一緒だから何か知っているかもと思ったのだ。

 

「別に……そういう話とかしないし。というか興味があるなら本人に直接聞けばいいんじゃ?」

「本人にって楓さんに? 無理無理無理無理!」

 

 凛の提案を未央が即効で否定する。

 両手を前にして×を作り、首を振って応える全力拒否だ。

 

「なら綾霧プロデューサーに聞いちゃえば? そっちのが聞き易くない?」

 

 今まで壁際でロックなアイドルを気取っていた李衣菜が口を挟んできた。

 どうやらしっかりとやり取りは聞いていたようだ。

 

「それなら、まぁ……」

「みんな、そういう詮索はよくないと思うにぃ」

「でもきらりちゃん。ちょっと興味ない? だって楓さんの恋話だよ?」

「それはぁ……ないと言えば嘘になるけど……」

 

 恋の話。恋愛の話は女の子の華だ。

 誰が誰を好きだとか、付き合ってるとかいないとか。そういう話に目がないものである。

 

「でもどうやって聞くんですか? 私たちとはあまり接点がありませんよ?」

「それを今から考えよう、しまむー」

「ええ?」

「えっと、今日ってクリスマスパーティーだよね? 来るって言ってたし知りたいならそこで聞けばいいんじゃない?」

 

 みりあの提案に対して、全員がぽんっと手を打って――ちょうどそのタイミングで扉が開かれた。

 

「おはようございま――」

『それだぁー!』

「な、な、なんなんにゃあああああああっ!?」 

 

 遅れてきて状況が飲み込めない前川みくの絶叫が、室内に木霊した。

 

 

  

    


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