名前って意外に決めるの難しい…だってセンスがないんだもん(/・ω・)/
目の前の紅い館…やはり何回見てもこのセンスは理解できない。
私は今、紅魔館の前に立っていた。
(ここまで来たけど…やっぱり行きにくい)
嘘でも、紅魔館を破壊しようとした私だ。とんでもなく気まずい。
門番の女性に案内してもらおうかと思ったが、門の前でグースカ眠っていて、何をしても起きない。
(自分で門を叩くしかないのか…)
仕方ない…私は勇気を出して紅魔館の門を開けた。
(気をつけろ、トラップとかあるかもしれないぞ。)
竜が心の中で言った。
まるで他人事だ。私が死ねば自分も死ぬというのに。
(死ぬぐらい強いトラップなんて置いてないだろ。仮に致命傷でも、永遠亭に行けば1日で治るから大丈夫だ。)
(1日?私の怪我は3日ほど掛かりましたが?)
(あの怪我も1日で治ったぞ、あの後2日間疲れて眠っていただけだ。)
なんだ、私は眠ってただけだったのか、永遠亭の医療技術恐るべし。
竜と会話しながら歩を進めるとすぐに館の扉前までやって来た。
(お説教だけで済むといいな…)
私はそう思いながら扉を叩いた。
コンコン……
コンコン………
返事がない、こんなに大きな館なのだから奥にいれば聞こえないのも無理はないのだが、どうしたものか。
勝手に入るのも気が引ける。私がそう思っていると、1人の少女が出てきた。少女よりも幼女といった方がいいか、それに羽もついている…幼女というより妖精か。
「どちら様ですか〜?」
「えっと、この館に来るようにって言われたんですけど…」
「分かりました!お客様ですね?私について来てください」
本当に分かっているのだろうか?ちょっと不安だが、ここに残るわけにも行かないので付いていくことにした。
中を案内してもらったが、すごく奇妙だ。この館は外観に比べ建物内がとても広い。まるで、赤い館はハリボテで扉の中は別の空間が広がっているかのようだ。
「あっいたいた!咲夜さ〜ん!」
「あら?あなた自分の持ち場は?って…あ!」
「どうも、お久しぶりです…」
「お客様かと思って連れてきたんです!」
「お客様…?美鈴に来たら伝えるよう頼んでおいたはずなんだけれど?」
「門番の方なら寝ていましたが?」
私がそう答えると、咲夜は「またか」と肩を落とした。
「いいわ、とりあえず私について来て。」
小さい妖精にサヨナラを言うと、私は咲夜さんの後について行った。
歩けど歩けど一向に目的の場所につかない、やっぱり外から見るよりも中の方が広い。どうゆう原理なのだろうか?
「すごく広い館ですね…」
「ああ、それね。ちょっと空間をいじっているの。」
どうりで、やっぱり広そうだと思ったのは間違ってなかったのか。
そして、その長い道のりを歩いていくと周りと比べひときわ大きい扉の前についた。
「お嬢様、入りますよ。」
咲夜がそう言うと、中から「はーい」という声が聞こえてきた。
彼女が中に入るのに連れて、私も中に入ると目の前にあの吸血鬼が座っていた。
「久しぶりね、元気にしていたかしら。」
吸血鬼のレミリアは細く微笑んだ。
「今日に目が覚めたばっかりですけどね、元気といえば元気ですが。」
「そう、なら良かったわ。」
後ろで扉の閉まる音がした。逃がさないようにするつもりか?
…考えすぎだろう。
「それで、用件はなんですか?」
まあ、だいたい分かってるが…
「用件ね、だいたい分かってると思うけどあの山のことよ。」
やっぱりか…どんな罰が下ることやら、痛いものはできるだけ勘弁したい。
「あの山はこの紅魔館のすぐ裏にあるの、つまり私の所有物ってことよ。そして、あなたは山を破壊したわね?それは、私の所有物を破壊したことと同じこと。」
「…故意では無いにしろ破壊したことに変わりはないです。罰は受けます。」
(そんな事言って大丈夫なのか?)
竜は不安気に聞いてきたが、多分大丈夫だ。この発言で誠実さが見えたはず、罰を与えるにしても最低限のものにしてくれる……と思いたい。
「そうね、あなたが故意にしたんじゃ無いのは私も分かってるわ。しかし、私の所有物を破壊したことに変わりはない。悪いけど罰を与えざるをえないわ。」
「どんな罰ですか?痛いのは嫌ですけど…」
「痛いのなんてしないわ、ただあなたにはこの紅魔館で働いてもらう。」
「え?働く?」
「ええ、そうよ。あの山を弁償できる代金になるまで働いてもらうわ。それにあなたも住むところがないでしょう?咲夜も楽になるし、これで両方得よね。」
少女は胸を張ってそう言った。
あれ?何か急にバカっぽく見えてきたぞ?
「働くのはいいんですが、何をすれば?料理なんて器用なこと出来ませんし…掃除くらいしか出来ることないですよ?」
「大丈夫よ!咲夜、説明してやって頂戴。」
「ええっとですね。まずあなたの仕事は紅茶を入れたり、簡単なことから始めてください。後々仕事は増やしていきますが…」
まあ、別に働くのは全然いい。住むところができるのもありがたい。むしろ断る理由が思い浮かばない。竜も大丈夫のことらしいのでとりあえず受け入れよう。
「そうと決まれば早速宴ね!咲夜、新人のために最高の料理を頼むわ。それと紅魔館の皆にも紹介してあげて。」
「かしこまりました、お嬢様」
最初から宴がしたかっただけではないのか?まあでも私もそういうのは嫌いじゃないし、歓迎してくれているようで嬉しい。
「紹介するって言っても…そういえばあなた名前が無いのかしら?」
「ああ、はい。そういえばそうでした。」
「そうね…じゃあ私が決めてあげるわ!心配しなくても大丈夫よ!咲夜の名前も私が考えたんだから。十六夜咲夜、素敵な名前だと思わない?」
確かに、素敵な名前だと思う。断わる理由もないしここで決めてもらった方がいいかもしれない。私はレミリアに名付けをお願いした。
「そうね……じゃあ、紅月楓《あかつき ふう》…でどうかしら?」
紅月楓…良い名前だ。
「はい!ありがとうございます!」
皆に紹介する名前が出来た。働く場所も住むところもある。
結構良いスタートを切ったんじゃないか?と、私は思った。
「それじゃあ、最初の仕事として宴の準備を手伝ってちょうだい。」
「はい、頑張ります!」
私は宴の準備に、彼女のあとを着いて行った。