よって今回は少し長いです、読みにくかったらすみません…
「ふぅーさっぱりしたー」
あれから私はまるで高級旅館であるかのような、大きくて綺麗な木造りのお風呂で体の疲れと汗を流した。
自分の顔の事?それはもちろん気になったが、竜が「話す時が来たら話す」というのでそれ以上問いただすのをやめた。
脱衣場に綺麗に折り畳まれていた黒のフード付きコートを羽織った。この世界に来た時には、感動と期待で服になんて目もくれていなかったが、今自分を客観的に見ると不審者以外の何者でもないと思う。
スライド式のドアを開き、お風呂場から出ると長い廊下に出た。そして私は元来た道を戻り、永琳と鈴仙と再開する……はずだった。
(やばい…ココドコ…)
迷路のように入り組んだ長い廊下と大きな屋敷は方向音痴の自分を迷わすには十分だった。お風呂へ行く時に道をしっかり記憶したつもりだったのだが、どうやら汗と一緒にお湯に流れてしまったらしい。
(ん?どうした?ウサギとかの所に戻らないのか?)
竜が呑気に聞いてくる。私だって戻ることが可能ならこんな所で突っ立ったりしていない。
(道に…迷いました。)
(なるほど、それでこんな所に)
そうだ!道に迷ったら聞いてみるのが最善策!竜なら分かるかもしれない!という希望を抱いて竜に聞いてみることにした。
(道…分かりますか?)
(いや、全然覚えてない。)
やっぱりか…道を知っているなら間違った所で教えてくれるはずだ。
(だが、道がわかる方法なら知っているぞ。)
おっと、悲観するのはまだ早かった。
(私だって伊達に何千年も生きているわけじゃない。道に迷った時の対処法なら知っている。)
流石竜、ただの人間とは知識の量が違うようだ。
(その方法とは?)
(建物の中で迷ったときは…)
(ときは…?)
ゴクリ…
(左手を壁に付けてそのまま壁に沿って進む!)
(なっ!そんな単純な方法で?)
(ああ、これが私の人生の中で見つけた完璧な方法だ。)
そんな方法が…、さっそく試してみることにしよう。
(……ッ!!)
(何だ?どうした?)
(左に…左に壁がありませんッ!!)
(な、何だと…そんな、どうすれば…)
左手を壁に付けようと左を見ると、壁の代わりに綺麗な中庭が見えた。京都の龍安寺の石庭を彷彿とさせる美しい庭がそこにはあったが今は迷子、ゆっくり見ている時間などない。
何か次の策はないか?そう2人で考えていると…
「見ない顔ね…貴方は誰?」
急に声をかけられビクッとした。声をかけられた方を振り向くと黒髪ロングの美しい着物を着た女性が立っていた。
「ああ、この前の戦いの竜じゃない。怪我は回復したようね。」
いかにも大和撫子という風貌で喋り方まで上品だ。
「自己紹介が遅れたわね。私は蓬莱山輝夜、月のお姫様よ。」
月?輝夜?もしかして、あのかぐや姫か?
「貴方は…そういえば名前はなかったわね。こんな所で何をしているの?」
ああ、そういえば、私は迷子だ。道を聞かなければ…
「もしかして迷子かしら?建物の中で…プッ」
カチン
私の中で何か音がした気がした。
「さて、それはどうだろうか?」
「…どういうことかしら?」
(…どうするつもりですか、竜さん?)
カチンと頭の中で音がしたのは、どうやら竜がキレた音らしい。
(そんなに心配するな。なめられたままでは終われないだけだ。)
(あまり無茶なことしないでくださいね…)
私は心配そうに言った。
「私に首輪が着いていたのは知っているか?」
「ええ、あの首輪は永琳しか外せないわ。あなたに着いていないということは、永琳があなたを信用して外したということになるのかしら?」
「確かにそうだ、あの首輪はそいつしか外せない。ただ、信用して外したのかどうかは分からないがな。」
「どうして?」
「こうは考えられないか?私があのウサギや永琳を殺し、その永琳の手を使い首輪を外したと。」
竜は気味悪く笑みを浮かべた。
「なるほど、そう考えるとすると…あなたは私と戦わないといけないのかしら?」
2人の間にピリピリとした空気が流れる。
(ちょっとちょっと、いいんですかこんなことしちゃって…)
(全然大丈夫だ、私が勝てばいいだけなんだからな。)
もしかして最初っから戦いたかっただけじゃあ…私はそんな疑問が湧いてきた。
「戦うか?外で」
「そうね、戦いたくなくはないんだけど…また今度にするわ。」
絶対戦う流れだと思っていた私は予想外の返答に驚いた。
「…は?なぜだ?」
どうやら竜も同じらしい。
「そろそろお迎えが来るだもの、待たせちゃ可哀想じゃない?」
何を言っているのか分からない。私はそう思っていると、ドタバタという音が聞こえてきた。
「あ!竜さんいた!どこ行ってるんですかー、もー!」
さっきのウサギの鈴仙が来た。息が上がっているので私たちをずっと探していらしい。悪いことをした。
「ウサギを殺した…だったかしら?」
お姫様はやっぱり小馬鹿にしたような感じでニヤついている。
「…ただの例え話だ、本当の話じゃない」
そう言った後で私にも話しかけた。
(…というわけだ、代わってくれ。)
竜は少しガッカリしているようだが、私は内心ホットしている。
「それじゃあ、戦うのはまたの機会にしましょう。」
「何の話ですか?もしかしてお取り込み中でしたか?」
「いえ、何でも無いわ。じゃあまたね竜の人」
「あ、はい!失礼します。」
おっと、やはり敬語になってしまう。やはり相手がお姫様だからだろうか。輝夜はクスクスと笑った。
「いつの間にか姫様と知り合いになってたんですね…」
知り合いというかなんというか、敵友になりそうだったよ。鈴仙がタイミングよく来てくれたおかげで戦いは免れた。ナイス鈴仙!
「あ!」
どうかしたのだろうか?輝夜が私に向き直った。
「あなたさっき、死んだ永琳の手を借りてとか言ったでしょう?」
「ああ、言ってましたね」
「あの首輪血脈の流れと指紋とかで読み取るから死んだ人の手じゃきかないの」
「へーそうなんですか、でもそれで?」
「つまり、あなたの嘘は最初からお見通しだったっていうことよ。」
輝夜はまたバカにした顔をして去って行った。
(カチン)…また頭の中で音が聞こえた。
あの後竜を説得し、鈴仙に案内してもらいやっと元の所に戻ってきて最後にちょっとした検査を行った。
「よし、以上で検査終わりよ。特に問題は無いわね。」
「ありがとうございました。問題無いってことは、いつでも退院出来るってことですか?」
「ええ、そうよ。ただし貴方を解放するわけにはいかないわ。あなたに行ってもらわないといけない場所があるの」
「行かないといけない場所ですか?」
「そうよ、あの赤い館あったでしょ?」
赤い館といえばあれだな、あんな奇抜な建物忘れられない。
「あそこからお呼びがかかってるのよ。」
お呼びかー絶対あの山のことだ。そうに違いない。
「でも、私道がわかりません。」
「そういうと思って、道案内役を付けているわよ。」
やっぱり永琳抜かりがない。
「何から何までありがとうございます。」
私は永琳に挨拶をすると部屋の外に出た。そこからは、鈴仙に出口まで案内してもらい、外に出た。
「うわーすごい竹林ですね!」
外に出ると目の前すべてが竹で覆われた。
「ここは迷いの竹林って呼ばれてて、この竹林に入ったら迷って出られないらしいですよ。」
「え?じゃあどうやってここから出るんですか?」
「大丈夫です、妹紅さんっていう人が案内してくれるので」
聞くところによると、その人はこの竹林の案内人をしているのだそう。こんな林の中を迷わず進めるようになるなんてどれ位の年月歩いたらそんな事ができるようになるのだろうか。
「そろそろ来るはずなんですけど…どこにいるんでしょう?」
予定ではもう来ているらしい、まだ来ないようなので私達が少し雑談をしながら待っていると…
「悪い悪い、少し遅れた。」
そう言って1人の女性が出てきた、彼女が妹紅って人らしい。まさかの女性だとは、こんな山の中を歩いて大丈夫なのだろうか。
「あんたが竜か、私は藤原妹紅。よろしく」
私もよろしくお願いしますと言うと、そんな固くなくていいと言われた。そういうのが苦手なんだそう。
「それじゃあ行こうか」
「はい。あ!そうだ鈴仙さん!」
そうだ最後に言い忘れていたことがあった。
「え?はい」
「色々ありがとうございました!あと…その…」
やっぱり直前で恥ずかしくなってきた。
「…どうしました?」
「えっと…友達になってくれませんか!」
恥ずかしい…やっぱり言わなければ良かった…
「はい、もちろん!じゃあ敬語で話すのやめましょう。」
やっぱり言って良かった…
「うん、ありがとう!」
私はもう1度お礼と別れの挨拶をした。
これから赤い館に向かう。私の始めての友達…それは可愛らしい兎だった。
という訳で、今回で永遠亭とはサヨナラになります。次作は紅魔館がメインになると思います。東方キャラと少し絡みが薄い気がする…次作はもっと絡みが増えるといいな…(他人事)