やっぱり映画は凄い動くと改めて実感しました。
「キラ!」
「・・・一夏」
アリーナの中央でキラが一夏を待っていた。
「キラ。さっきの戦いを見て、今の俺じゃお前に勝てないのはわかった。・・・だけど、俺も引けない! お前にいろんなことを教えてもらって、訓練にも付き合ってくれて、俺すっげえ嬉しかった! だから、俺は全力でお前にぶつかる!」
「・・・解った」
そう言ってキラはバーグラリーを展開し、戦闘態勢に入った。
ゾクン
「!?」
余りにも巨大な殺気に一夏は震えそうになったが、何とか堪えた。
すると、
「織斑君がんばって!」
「そんな奴に負けるなー!」
「千冬様譲りの力、見せてー!」
と一夏を贔屓する歓声が聞こえて来たのだ。
『試合開始!』
「いくぜ!」
最初に動いたのは一夏だった。真正面からキラに突っ込み、大振りで攻撃を仕掛けた。しかしキラはその攻撃を難なくかわす。
「この程度攻撃、なんの苦でもないよ」
「なにを!」
一夏は連続で斬りかかってくるが、幾つもの修羅場を潜ってきたキラにとってこの程度の攻撃に当たる道理はない。
「とりゃあ!」
一夏は横に1文字斬りを繰り出したが、キラはそれをバク転で離れる様に避け、短距離瞬時加速(ショートイグニッションブースト)という中級加速技で一気に一夏の懐にもぐりこんだのだ。
「はあ!」
「な!?」
キラはレーザーブレードで一夏に一閃し、さらに追い討ちに旋風脚を食らわせた。
吹き飛ばされた一夏は壁に激突し、キラはライフル、ミサイル、グレネードを連射した。
「のわぁ!?」
壁から起き上がった一夏は、目の前に来た弾丸の嵐をモロに受けてしまった。
「どうしたの一夏! 君の全力はそこまでなの!?」
キラは一夏に挑発を仕掛け、いつでも対応出来るように構えた。
(くそぉ・・・こうなったら!)
一夏はまたキラに突っ込むが、今度は白式の持っている雪片が光り出したのだ。
「それは!?」
「俺の白式の切り札『零落白夜』だ!」
「・・・なるほど、織斑先生の使っていた・・・」
「ああ! 千冬姉の名を汚さないためにも、俺は強くなるんだ!」
うおおおおーーーー!! と一夏は雄たけびを上げながら、キラに雪片を振りかぶった。
「・・・遅い」
「え?」
するとキラは、なんと絶対防御を一時的に解除して真剣白羽取りをやったのだ。これには生徒教員全員が驚愕した。
「な・・・」
「零落白夜、自分のエネルギーを消費する代わりに、相手のSEを消滅させて直接攻撃をする単一使用能力」
「!?」
「君のお姉さんが使っていた業、ISのことを調べている時に知ったんだ。・・・それで一夏」
「な・・・なんだよ?」
「これが直撃したら、僕がどうなるかわかる?」
「・・・は?」
「・・・これは宿題だね」
そう言ってキラは雪片を受け流し、一回転してレーザーブレードを叩き込んだ。
『織斑一夏 SEエンプティー 勝者 キラ・ヤマト!』
その瞬間、生徒教師達は沈黙した。
先ほどもそうだったが、まだISに触れたばかりの素人が、量産機であるラファールで専用機2機を倒した。それだけでも驚かない方が可笑しいのだ。
「くそ~、キラ本当につえぇな?」
「色んな組織から狙われてるからね、身を守るために色んな技術を身につけたんだ」
「そうなのか?」
「一夏、君は織斑先生という強力な後ろ盾がある。けど、僕にはそういうのがいないんだ(後見人はいるけどね)。だから、知り合いに頼んで色んな技術を学んだんだ」
そう。
キラは一人でも戦えるように、その道の達人たちに頼んで技術を学んだのだ。それこそ中国武術や自衛隊などがやっているようなのもだ。
「・・・なあキラ。これからも訓練に付き合ってくれないか?」
「良いよ。一夏はもっと知らなくちゃいけない。表だけじゃなく、裏のことも・・・」
その言葉を聞いて一夏は少し戸惑ったが、それでも決意を変えなかった。
「解った。キラ、これからも頼むな」
「うん」
そういって二人はお互いに握手をするのだった。
すると、
「ちょっと! 織斑君になんてことするのよ!?」
「ISに乗れるからっていい気にならないでよね!」
キラと一夏の戦いを見ていた生徒達が、突然キラに野次を飛ばし始めた。
「大体なんであんたみたいなのが織斑先生と一緒にいるのよ!?」
「あんた見たいな屑、死んでしまえばいいのよ!!」
「IS学園を汚さないでよね!!」
「あんたなんかよりも織斑の方が大事なんだから!!」
キラへの野次はさらに激化していく。一夏はキラを見ると、どこか悲しそうな表情だった。
「キラ・・・」
「大丈夫だよ、慣れてるから」
キラは一夏に微笑んだが、その笑顔には何かに耐えているようだった。
だが、さらに野次は激化していく。
「ちょっと待てよ! キラが一体何をしたって言うんだよ!?」
「キャー織斑くーん!!」
「早くその『卑怯者』をやっつけてー!!」
「そんな屑早く追っ払ってー!!」
一夏の言葉すらも聞く耳持たずである。
キラもかなり限界に来たのか、少し涙を溜めていた。
その時、
「いい加減にしてくださいまし!!」
突如キラの後から雄たけびにも似たような声が響いてきた。キラが後を振り向くと、そこには仁王立ちをしているセシリアがいた。
「先ほどから聞いていればなんですか!? キラさんが一体何をしたのですか!? 織斑先生の弟だからといって織斑さんを贔屓して、逆にキラさんを非難して楽しいのですか!?」
「セシリア・・・」
「でもその屑は、私達女性n」
「それなら織斑さんも同じですわ。そしてそれは、織斑先生の親族を侮辱しているのと同じですわよ!!」
「・・・そうだな」
「「織斑先生!!」」
「千冬姉!」
スパアン!
「織斑先生だ」
反対側のピットから千冬もやってきた。
「さっきから聞いていれば、ヤマトが一体なにをしたんだ!? ヤマトが卑怯者だと? 笑わせるな! ヤマトは1週間も前から、織斑とオルコットに対抗するために練習してきた。現に練習に付き合った私が証人だ!」
『え!?』
これには一夏も含めて驚いたのだ。セシリアは先ほど千冬に聞いたので知っていたが、キラが千冬が纏ったISのSEを半分まで持っていったと聞いた時は驚いたのだ。
「言っておくが、私は女尊男卑の風潮に流された奴が嫌いだ! ISは女しか乗れないからといって、優位になっている奴を見ると反吐がでる!」
「そんな!」
「貴方は私達の希望です! そんなこと言わないでください!」
「黙れと言っている!」
『!?』
千冬の怒号に生徒達は言葉が出なかった。
「ヤマトは私のクラスの生徒だ。これ以上私の生徒を侮辱するというなら、貴様等がそのふざけた夢物語を吐かなくなるまで私が直々に指導してやろう。良いな!!」
『は、はい!?』
「・・・ヤマト、オルコットと戻れ。織斑は反対側だ」
「「「はい」」」
3人はそれぞれのピットに戻っていった。
「キラ様!」
「・・・真那さん」
セシリアと一緒に戻ってきたキラは、少し倒れそうになったが駆けつけた真那に抱きつく形でとどまった。
「キラさん・・・」
「はあ・・・はあ・・・ありがとうセシリア。それと・・・ごめんね」
「な、何故キラさんが謝るのですか!? 貴方は悪いことなどしておりませんのに!?」
「でも・・・こんな泣き虫な男と一緒にいるなんて、嫌だよね?」
「そんなことありませんわ!!」
思わず叫んだセシリアの瞳には、涙が溢れ出していた。
「私は・・・お父様とお母様を事故で亡くしました。それから一人でオルコット財閥を、金の亡者たちから守るために沢山勉強しましたわ」
「オルコット様・・・」
「ですが、それだけですわ! キラ様はお父上に遺伝子を弄られ、目の前でご両親を殺されて、あのふざけた薬を打たれて、女性権利団体に痛めつけられて、私よりもずっとお辛い思いをしておりましたのに、それでも私や織斑さんのために優しく接している貴方が、こんな理不尽にあうなんて余りにも酷すぎますわ!!」
「セシリア・・・」
涙を流しながら叫んだセシリアを、キラは優しく抱きしめた。
「ありがとう。こんな僕のために、泣いてくれて・・・」
「キラさん・・・」
よく見ると、キラの瞳にも涙が流れていた。どうやら先ほどのことも含めて、色々限界に来ていたのだ。
それから千冬が来るまで、二人は声を殺しながら泣いていたのだった。