一夏との対戦まで行こうと思いましたが、その間に色々話があったので次回一夏対キラになります。
放送室
「まさか・・・これほどとは」
「ありえません・・・」
キラとセシリアの戦いを見ていた教師二人は、余りにも強すぎるキラを見て驚愕していた。
「・・・少し前」
「?」
「私はヤマトの練習に付き合っていました」
「ヤマト君のですか?」
真耶は千冬がキラの練習に付き合っていたことが意外に思えた。弟である一夏ならばともかく、キラの練習に付き合っていたのだから意外に思われても仕方ない。
「その時私は打鉄だったのですが・・・」
「なにかあったのですか?」
「ヤマトにSEを半分以上持って行かれました」
「ええ!?」
千冬の言葉に真耶はさらに驚愕した。
無理も無い。
千冬はISの世界で最強の称号『ブリュンヒルデ』なのだ。その千冬が訓練機だったとはいえ、まだISに触れたばかりの素人であるキラに、SEを半分まで削られたのだ。
千冬自身もかなり驚いていたのだ。
「ヤマトのあれは、ただ単に鍛えるだけでは出来ない芸当です。それも・・・過酷な戦場に身を投じなければ出来ないことです」
「で、でも! 今はアラスカ条約で戦争は・・・」
「そう。いまは戦争や紛争は起きていない。それなのにあんなことが出来るのはありえない」
そこでだ、と言って千冬は真耶の方に向いた。
「もしやヤマトは、『あれ』の可能性があるかもしれない」
「あれって・・・まさか!?」
「うむ・・・だがあくまで可能性だ。それに、ヤマトは優しいからな。大丈夫だ」
「・・・そうですね」
そう言って二人は放送室を出て、戻ってきたキラ達の方に向かったのだ。
ピット
「ヤマトさん、ありがとうございますわ」///
「良いよ別に」
SEが0になったブルーティアーズは、空中で解除してしまい、纏っていたセシリアは落ちそうになっていた。その瞬間キラがお姫様抱っこして受け止めて、そのままピットに戻ったのだった。
「・・・ヤマトさん、申し訳ありませんわ。今まで貴方を見下したような発言をしていましたわ」
「良いよ。こういうことには、もう慣れているからね」
「・・・キラさんはお優しいですわね」
「そんなことないよ」
ただ、と言ってキラは千冬の時と同じ少し悲しい表情をし出した。
「目の前で理不尽な事を沢山見てきたから、目の前にある理不尽だけはなくしたいんだ」
「ヤマトさん・・・」
セシリアはキラの言葉が嘘ではないと解った。
そしてそれと同時に悲しくなってきた。
一体どんなことがあれば、そのような悲しい表情になるのか?
一体彼は今まで、どれだけの悲しみを見てきたのか?
・・・知りたい。
彼がどんな人物なのか、もっと知りたい。
「それでオルコットさん・・・」
「セシリアですわ」
「え?」
「私のことは、セシリアとお呼びくださいまし。その代わり、私もキラさんとお呼びいたしますわ」
「・・・解った、これからもよろしくねセシリア」
「こちらこそですわ、キラさん」
二人はお互いに握手をし、仲を深めたのだった。
「所でキラさん、貴方のラファールは凄いですね? 第3世代であるブルーティアーズに追いつけるなんて、思いもしませんでしたわ」
「今従業員として働いている僕のメイドさんと、一緒に改造したんだ」
「キラさんのメイドでございますか?」
「私でございます」
「え?」
突然セシリアの後に真那が現れた。振り向いたセシリアは驚いて転んでしまった。
「申し訳ありません」
「い、いえ。貴方がキラさんの?」
「左様。月詠真那と申します」
「セシリア・オルコットですわ、ミスツクヨミ」
「お噂は高野防衛大臣から聞いております」
「そうですの」
一体この二人は何者なのだろうかとセシリアは思った。
「戻ったか」
「織斑先生、山田先生」
「お疲れ様です」
「・・・それで、何故真那さんが?」
「少しキラ様が心配で来ました」
千冬の質問に真那は心配そうに答えた。
「えっと・・・織斑先生、この方は?」
「月詠真那と言えば、山田先生も解るだろう」
「ええ!?」
真耶はありえないと言うような顔で驚いた。
「山田先生、ご存知ですの?」
「ISを使う以上、軍や自衛隊の知識も必要なので、その勉強をしていた時に聞きました。航空自衛隊最強の兵士で、ISを纏わず短刀だけでIS5機を達磨にするほどの実力を持っているって」
「ISを纏わずにですか!?」
「・・・恐ろしいですね」
「織斑先生も結構ですよ?」
真那の事で驚いている3人に対して、キラは千冬にそう言った。
「あれはキラ様のことを嗅ぎつけた、女性権利団体を返り討ちにしただけでございます」
「女性権利団体・・・」
それを聞いたセシリアたちは、少し険悪な表情をしだした。
女性権利団体、この女尊男卑の世界でもっとも最悪で、それと同時に比較的に巨大な組織である。女である自分達はなにをしても許されると思っており、男ならばたとえ赤ん坊だろうとなぶり殺すほどの集団なのだ。特にキラは団体にとって最重要目標なのだ。
「おっと、ヤマト30分後に織斑と試合だ。今のうちに休憩と準備をしておけ」
「はい、わかりました」
そう言ってキラは、先にピットをでて行った。
「・・・真那さん」
「やっぱりヤマト君は・・・」
「お二人が考えていることは当たっております」
千冬と真耶の質問に、真那はそう室かに答えた。
「みなさん、どういうことですか?」
解らないセシリアは、3人に尋ねた。
「・・・オルコット、今から言うことは他言無用だ。良いな?」
「!? ・・・解りましたわ」
千冬の真面目な顔をみて、セシリアもまた真剣に聞くことにしたのだ。
「・・・『女神の子供達(デアフィリオス)計画』と言うのを知っているか?」
「・・・名前だけは聞いたことはありますわ」
それを聞いたセシリアは、なにやら苦虫を噛み潰したような表情だった。
「今から50年前、日本、中国、イギリス、ドイツはとある研究をしていた」
「とある研究?」
「・・・遺伝子調整だ」
「!?」
「受精卵の段階で調整することによって、知力体力治癒力あらゆる能力が人のそれを超える存在になる」
「そんな・・・」
そんなことが可能なのか? セシリアはそう思った。
「研究者たちは長年の研究の末『人工子宮』を開発し、ある人物たちの遺伝子を調整して産むことに成功いたしました。そしてその方々は全員、普通の人間では先ずありえないほどのスペックを持っております」
「私と織斑先生は、その計画があったことくらいしか知りませんが・・・」
「・・・その人物たちとは?」
真耶と千冬は恐る恐る真那に尋ねた。
「最初は中国にいる、三国志の呉の英雄たちの御子孫からでした」
「ご・・・呉ってまさか、孫策や周瑜の!?」
「因みに、その方々はキラ様や高野防衛大臣のお知り合いでもございます」
『え!?』
真那の言葉に3人は驚愕した、先ほど言った三国志に出てくる英雄の子孫達が、キラと高野の知り合いだと言われれば驚かない方が可笑しいのだ。
「それは私も驚いた」
「最初は私もありえませんでした。次に今から18年前、イギリスのエリザベス女王の娘と、日本にいる服部半蔵のライバルであり故人になられた黒影さまの御子孫がお生まれいたしました」
「エリザベス女王の娘ってまさか・・・エリザベス3世様でございますの!?」
「ええ」
『エリザベス3世』
現在18歳という若さでイギリス全体を収める、英国のトップであり最強のIS部隊『精霊騎士団』の隊長なのだ。
「そして黒影といえば、伝説の忍者である『服部半蔵』のライバルと言われているが。本当に実在していたとは」
「私もこのことは高野防衛大臣に聞かされるまでは知りませんでした」
デアフィリオス計画はコーディネーターの時とは違い、ごく一部の人間にしか知らされていないのだ。セシリアが名前程度に知っていたのは、オルコット財閥がそれだけイギリスでもかなりの地位にいたからである。
「そして16年前、ドイツは兵器利用のために人工子宮から『シュネーハーゼ』、『雪兎』と呼ばれる少女たちを産みました」
「!?」
真那がドイツの話をした瞬間、千冬はビクリと反応した。
「そうです。貴方がドイツに行った際に指導した、『シュバルツェア・ハーゼ』でございます」
「「え!?」」
「・・・・・・試験管ベビーだと言うことは聞いていたが、彼女達がそのような存在だったとは・・・糞!変態どもが!」
千冬は自分の教え子たちがそんな存在だとは思わず、今はいない研究者たちに悪態をついた。
「・・・ですが、ここからが一番の狂気です」
「どういうことですか?」
「同じ年に、デアフィリオス計画の第一人者『ユーレン・ヒビキ』博士は、研究で得た全ての技術を持って、妻であるヴィア様の反対も押し切り、自分の息子を使って人類最高の存在を生み出そうとしました」
「人類最高の存在・・・」
「そして・・・幾多の失敗例の山を築いたうえで、唯一の成功体『女神の使い(ウーズンデア)』としてヴィア様が受胎した息子が誕生しました」
「息子・・・・・・まさか!?」
「そう・・・キラ様でございます」
『!?』
キラの正体に3人は言葉が出なかったのだ。
「その後、どこかのテロリスト達に嗅ぎ付けられる前に、ヴィア様はキラ様をヤマト夫妻に託し、ユーレン博士と・・・」
「そして女性権利団体もそれをかぎつけ、ヤマト夫妻を殺してキラにヘブンズウイルスを・・・」
「ヘブンズウイルスですって!?」
ヘブンズウイルスの名前を聞いて、セシリアは驚愕した。
彼女もあの薬のことは前から聞いているため、キラが団体にあの薬を打たれたと聞いて少し悲しくなった。
「今は抑えられなくなれば私がお相手をしているのですが、キラ様は今も苦しんでおられます。誰かを犯したくなってしまう衝動を抑えられず、自殺をしようとしたこともありました」
「そこまで・・・」
真耶は真那の話を聞いて、涙が出てきてしまった。
「・・・オルコット様、どうか・・・どうかキラ様を拒絶しないで下さいまし。あの方もう、心がボロボロで、何時壊れても可笑しくないのです」
「真那さん」
そう言う真那は手が震えていた。真那のいた世界でも、あそこまで理不尽なことをされた少年はいなかったのだ。
「・・・大丈夫ですわ真那さん」
「オルコット?」
「キラさんは、私に色んな事を教えてくれましたわ。キラさんが心からお優しい方だということもわかりましたわ」
それに、と言ってセシリアは顔を赤くした。
「き・・・キラさんともっと、お近づきになりたいと・・・」///
《お・・・おとしやがった!》
3人は内心そう思いながら、顔を赤くしたセシリアを見つめるのであった。
「一夏、どうするつもりだ?」
「え? どうするって?」
セシリアたちがいる反対のピットで、一夏と箒は話し合っていた。
「ヤマトのことだ! お前も見ただろう、あの戦いを・・・」
「・・・ああ」
二人はキラとセシリアの戦いを見て、驚いたと同時に恐怖もしたのだ。
キラは自分たちと同じ、ISに乗ったばかりの素人。
そのはずなのに、あそこまで実力があるのはありえなかったのだ。
「キラってさ、俺たちと同じ初心者なんだよな?」
「所謂天才という奴か?」
と箒は推測しているが、まったく持って外れていた。
確かにキラは端から見れば天才だと思われるが、キラの場合はあくまで知力体力が人のそれを明らかに超えているだけで、天才というわけではないのだ。
キラは前世、多くの戦場を・・・それも一度に複数の相手と戦って来たのだ。キラの戦い方は、その際に習得した能力であり、平和な世界で生きてきた一夏たちでは天と地の差がある。
「だけどさ・・・だからこそ俺も負けられない」
「一夏・・・」
『織斑選手 カタパルトへお願いします』
「はい!」
ついにその時が来た。
一夏は白式を纏い、カタパルトに足を付けた。
そこでふと、キラが発進するときに言った言葉を思い出した。
「えっと確か、名前を言った後にISの名前も言ってたよな?」
『進路クリア 発進どうぞ!』
「織斑一夏 白式 行くぜ!」
その掛け声と共に、一夏はアリーナに飛び出したのだった。
設定とかは、もう少ししたら書きます。