キラ・ヤマトの異世界転生記   作:エルシオンガンダム

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皆さんお待たせしました。

今回はセシリア対キラになります。




第5話:蒼き雫の少女と蒼き天使の少年

放課後のアリーナ

 

「ふぅ・・・こんな感じかな」

金曜日の放課後、キラは調整した『ラファール・リヴァイブカスタム』に慣れるために、ある人物と練習をしていた。

「どうだヤマト、コツは掴めたか?」

「はい、ありがとうございます織斑先生」

そうキラの担任である織斑千冬であった。

「・・・ヤマト、やはりお前h」

「織斑先生、僕は僕ですよ。この世界に生まれた一人の人間です」

「・・・そうだな、すまなかった」

千冬はキラにあることを尋ねようとしたが、キラに論破されて押し黙った。

「それじゃあ、僕はこれで」

「ああ、ゆっくり休め」

「はい」

そう言ってキラはアリーナを去って行った。

「・・・なんて奴だ。始めてISを動かして、それも量産機で私と互角にやりあうとは」

だが、と言ってキラを後から見ていた千冬はどこか悲しい表情だった。

「・・・ヤマト、お前はどうしてそこまで優しい? このままでは、お前はいつか壊れてしまうぞ・・・?」

誰もいなくなったアリーナに、千冬の呟きが響いたのだった。

 

 

 

日曜日の夜

 

 

カタカタカタカタ・・・・・・

 

謎のタイピング音にセシリアは目覚めた。

机の方を見ると、パソコンで何かをしているキラが見えた。

「・・・何をなさっているのですか?」

「ん? オルコットさん? 起こしちゃってごめんね?」

「いえ。・・・それで、何をなさっているのですか?」

「ラファールの最終調整だよ。明日にオルコットさんと戦うからね、最後の最後まで確認しなくちゃ、ラファールにも悪いから」

「ISにですか?」

その言葉にキラはうんと言って頷いた。

「ISには意思がある、それなら僕はISたちの思いに応えたいんだ。もともと僕達の所為で、ISは兵器になってしまったからね」

「!?」

セシリアはキラの言葉に驚いた。

確かにISが兵器になったのは、自分たち人間それも上の存在が篠ノ之束の研究を否定したからだ。その後篠ノ之束が起こした白騎士事件によって、ISは兵器として認識された。そして目の前の人間は、そのISに対して『自分たちの所為』と言った。男たちから見ればISは妬みや憎しみの対象になるはずなのに、目の前にいるキラ・ヤマトという人間は自分たちの所為だと普通に言ってのけたのだ。

「・・・・・・どうして、そこまでISを?」

「・・・『ありがとう』って聞こえたんだ」

「え?」

「僕が最初にISに触れた時、僕は思ったんだ。『篠ノ之博士は、この世界に絶望したのかな?』って」

キラは悲しそうな表情でセシリアに語った。

「それでISたちも、きっと同じ様に悲しんでいると思うんだ。本当は宇宙に行きたかった筈なのに、こんな羽を捥がれた扱いをされて・・・」

「!?」

それを聞いたセシリアは、待機状態である自分のIS『ブルーティアーズ』を手に取った。

(・・・ブルーティアーズ、もしや貴方も悲しんでおられるのですか?)

セシリアはティアーズに念じるように問いかけた。反応するわけもないが、逆に反応しないとも思えなかったのだ。

「それでISに謝罪したら、ISは『ありがとう』って言ってたんだ」

「・・・ティアーズも」

「?」

「私のISも、同じ様に悲しんでおられるのでしょうか?」

キラに言われるまで、セシリアはISが『希望の象徴』だと思っていた。だがよくよく思えば、キラの言うとおりなのかもしれない。

 

ISには意思の様なものがある。

 

セシリアはそのことを忘れていたのだ。

「ならさ、今からでも遅くはないよ。君のISと話してみたら?」

「え?」

キラの言葉にセシリアは疑問符を浮かべた。

「とりあえず問いかけてみようよ。きっと、ISもオルコットさんと話がしたいと思うし」

「ヤマトさん」

「だから、遅くないよ」

「・・・・・・そうですわね。私、やってみますわ」

「頑張って、オルコットさん」

「・・・ありがとうございますわ、キラさん。貴方のおかげで、忘れていたことを思い出せましたわ」

「そっか、よかったね」

「はい。ですが、明日の模擬戦は手加減致しませんわ!」

「うん! 僕も全力でやるよ」

それから二人は、少し世間話をした後に眠ったのだった。

 

 

 

 

 

模擬戦当日

 

「キラ、大丈夫なのか?」

「うん」

ピットの方では、キラと一夏、箒があるものを待っていた。

この1週間、キラは一夏にできるだけ解り易く、それでいてかなり難しいIS関連の技術を教えていた。

「織斑君! 来ました!」

「山田先生!」

「はあ・・・はあ・・・お・・織斑君、き・・来ました」

「山田先生、お疲れ様です」

ドアから走ってきた真耶をキラ達は労った。すると、荷物用のドアから待っていたものがやってきた。

「待たせたな織斑」

「千冬姉!」

スパアン!

「織斑先生だ馬鹿者!」

千冬は一夏の脳天に出席簿を叩きつけた。

「一夏、いい加減学校とか職場とかでの上下関係をきっちりしないと、この先何処にも就職できないよ?」

「な・・・なんでそこでリアルな社会でのルールが?」

「まったくだ一夏」

「ヤマトの言う通りだぞ織斑」

「そうですよ織斑君」

「なんで俺責められるの!?」

皆から責められることに一夏は突っ込んだ。

「確かに織斑先生と一夏は姉弟だけど、今のうちに呼び方をちゃんとしないと、就職先でヘマやって織斑先生に迷惑掛かるかもしれないよ?」

「うっ」

「そういうことだ、良い加減学校とプライベートの区別を付けろ」

「はい、ちふ・・・織斑先生」

「よろしい」

それから話を戻して、キラ達はやってきた専用機を眺めた。

「それで織斑先生、それが一夏の専用機ですか?」

「ああ、『白式』だ」

「これが・・・」

一夏は頭を抑えながら、やってきた自分の専用機を見つめた。

「織斑、ヤマトがオルコットと戦っている間にファーストシフトを済ましとけ」

「わかったぜ千冬姉」

パァン

「織斑先生だ」

一夏はまた千冬の出席簿アタックをお見舞いされたのだった。

「はあ・・・ヤマト、そろそろ行け。オルコットが待ちくたびれてるぞ」

解りましたといってキラはラファールを展開し、脚部をカタパルトに付けた。

『カタパルト接続確認! 進路クリア、発進どうぞ!』

 

 

「キラ・ヤマト ラファール 行きます!」

 

キラの掛け声と共にカタパルトから射出されたラファールは、バレルロールをしながら飛び出した。

それを見ていた真耶と千冬は驚愕した。

「そんな!? バレルロールなんて、初めてISに触った人ができる芸当じゃありません!?」

「しかもかなり綺麗にできている。まるで、何度もやっているかのようだ」

(あの千冬姉が驚いている・・・)

普段はクールな姉が何時にもまして驚いていることに、一夏もまた驚いていた。

 

 

 

キラが来る数分前

 

「ブルーティアーズ、聞こえますか?」

アリーナの上空でセシリアはティアーズに語りかけた。

「・・・申し訳ありません。私は貴方を希望の象徴だの、この世界を発展させるための存在と、押し付けがましいことをしておりましたわ」

《・・・》

「貴方も生きておられるのですよね? 貴方もこの空を飛ぶために生まれたのですよね?」

《・・・》

「今更かもしれませんが、本当に申し訳ございませんわ。・・・もう一度チャンスがおありなのでしたら、今度は私も貴方の思いと共に戦いますわ! ですから・・・ですから・・・」

 

《・・・大丈夫ですマスター》

 

「・・・え?」

突然頭の中に女性の声が響き、セシリアは混乱した。

《そのお言葉だけで、私は充分でございます》

「・・・まさか、ティアーズですの?」

その言葉に、ブルーティアーズは『はい』と答えた。

《マスター、私は貴方のISになった時から貴方を見ておりました。貴方が大切な家を守るために、今まで必死に努力をしてきたことも》

「ティアーズ・・・」

そう、セシリアが男を見下しているのは、セシリアの財産目当てに迫ってきた金の亡者たちの所為であった。高野や大高みたいな信用できる人もいるが、殆どがそういう人物だからなのだ。

《マスター、本当に私の思いと一緒に戦ってくれますか?》

「勿論ですわ! 今まで貴方を忘れていた分、貴方と共にいますわ」

《マスター・・・ありがとうございます》

「お礼を言うのはこちらですわ」

ティアーズとセシリアはお互いにお礼を言い合った。

《・・・彼には感謝しなければいけませんね》

「そうですわね。ヤマトさんは、いままで私が見てきた男たちとは遥かに違いますわ」

この時セシリアとティアーズは、キラ・ヤマトという一人の少年を認めた。この1週間キラを見てきたが、他の男たちとは違い表裏がなく、甘いものが大好きな優しい人間だということがわかった。困っている生徒や教員を助けていて、しかも自分だけでも忙しいはずなのに、織斑一夏達の練習にも付き合っているのだ。

それだけじゃない。

セシリアが少し見下した態度でいても、いつの間にかキラのペースになっているのだ。

(本当に、あの方はわかりませんわ)

セシリアはキラのことを思うと、笑みがこぼれた。

すると、後ろの方から飛行音が響いて来たのだ。

 

 

「・・・来ましたわね」

キラがアリーナに飛び出すと、そこには青いISを纏ったセシリアがキラを待っていた。

「ごめんね、一夏の専用機を待ってたから」

「そうですの」

少しの沈黙、先に口を開いたのはセシリアだった。

「ヤマトさん、ありがとうございますわ。貴方のおかげで、私はティアーズと話すことが出来ましたわ」

「そっか・・・話し合うことが、出来たんだね」

「ええ」

ですから、と言ってセシリアはスターライトmk-Ⅲを構えた。

「このセシリアオルコット、全力で参りますわ!」

「・・・解った」

するとキラは攻撃用パッケージ『バーグラリー』を展開し、

「僕も全力でやるよ」

『戦闘態勢』に入った。

 

ドクン

 

「!?」

雰囲気が変わったキラを見て、セシリアは蛇に睨まれた蛙のようになった。それでも、イギリス代表候補生として怖じけるわけにはいかないと思い、自分に渇を入れてキラの殺気に耐えた。

「ところで、キラさんはワルツは踊れますか?」

「・・・女の子を失望させない程度にはね」

 

 

『試合開始』

 

 

「行きますわよ!」

開始の合図と共に、セシリアはスターライトをキラに向けて放った。

放たれたレーザーは的確にキラを狙っており、誰もがキラに当たると思っただろう。

キラはISに触れたばかりの素人同然。

確かに普通ならば、高速で迫るレーザーに人は反応せずに当たるであろう。

 

 

キラが『普通』に当てはまるのならば

 

 

「遅い」

キラは迫ってくるレーザーを、少し身体をずらす形で避けた。

「な!? ・・・それでしたら!」

セシリアは初撃をかわされたことに驚いたが、気を取り直してスターライトを連射した。

だが、常に1対多での戦闘で無数の弾幕を掻い潜ってきたキラにとって、ただの1本のレーザーなどなんの脅威でもないのだ。

「さてと、こっちからも行くよ!」

キラは後のバックウェポンに付いているミサイルを12発放った。

このミサイルは1ロックで1発を発射タイプで、最大12発発射できるのだ。

キラが動かなかったのは、セシリアをロックしていたのと、どれほどの性能なのかを確かめていたのだ。

セシリアはミサイルをかわそうとするが、おかしな軌道をするミサイルに戸惑い、12発中5発当たってしまった。

「まだ!」

次にキラは横にブーストしながらライフルを連射し、反対の肩にあるグレネードランチャーを放った。それはもはやグレネードではなく火球であった。

「くっ!」

ライフルの弾には数発当たってしまったが、迫ってくる火球は何とか避けられたのだ。

「・・・いくよ」

するとキラは、盾に付けたブレードを構えて、セシリアに向かって飛び出した。そして瞬時加速をした瞬間、さらに瞬時加速をするという大技『二重瞬時加速』をしてセシリアに迫ったのだ。

「な!?」

「はあ!」

レーザーブレードの一撃はセシリアにダメージを負わせた。しかしセシリアも伊達に、代表候補生を名乗ってはいなかった。戸惑ったセシリアは、体を後にそらしダメージを軽減したのだ。それでもダメージはあり、ティアーズのSEは3分の1まで削られたのだ。

すぐさまセシリアはキラから離れたが、キラは追撃してこなかった。

「なんという方ですの!? 織斑先生にしか出来ない二重瞬時加速を、まさか量産機であるラファールでやってのけるなんて!?」

「これでも、かなり練習したけどね」

セシリアが驚愕するのも仕方ない。

二重瞬時加速は、セシリアの言うとおり現状千冬にしか出来ない芸当なのだ。それをISに触れてまだ日も経っていない素人が、しかも量産機であるラファールでやったのだ。これで驚かない物はかなりの大物か一夏みたいなバカなのだ。

(とは言っても、やっぱりキツイな。現状では普通の瞬時加速は10回、二重は5回くらいが限度だね)

「ヤマトさん、貴方は本当に素人なのですか?」

「うん、『IS』に関しては素人だよ」

(ISに関しては?)

「でも、

 

 

 

 

 

『戦い』に関しての経験はある」

 

 

ゾクン

 

 

 

「!?」

まただ。

また目の前の男から、尋常ではない程の殺気が放たれた。

「はあ!」

「これで!」

キラはセシリアからの攻撃をかわしながら、ミサイルとグレネード、ライフルをセシリア目掛けて連射した。

(セシリアは確かに狙いは完璧。でもそれだけで、フェイントや予測射撃はない)

(く!? ありえませんわ! ISに触れたばかりの人が、専用機を此処まで追い詰めるだなんて!? しかも複数の武装を同時に扱いながら、私の行く場所を予測して的確に当ててくるだなんて、一体どれだけの処理能力があるのですか!?)

「どうしたのオルコットさん! 第3世代機の力はその程度なんですか!?」

「な!? ・・・よろしいでしょう。ブルーティアーズの真価、見せて差し上げますわ!」

そう言って、セシリアのブルーティアーズから4機の羽の様な物がキラに向かった。

「ビット兵器!?」

「ご名答ですわ! これが『ブルーティアーズ』ですわ」

「機体と同じ名前か。良いね」

「な!?褒めてる場合ではありませんわ!」///

自分の機体の名前を褒められてセシリアは少し嬉しかったのだが、気を取りなおしてキラに攻撃した。

「モード『ラピード』展開!」

キラの掛け声と共に、ラファールが変わった。

先ず、脚部にはスタピライザー兼排熱フィンが、肩にはスラスターの付いた肩アーマーが付いた。

胴体には戦闘機の様なアーマーがあり、背部にはミサイルポッドの付いたウイングバインダーが装備された。

「パッケージを変えた!?」

これこそがキラと真那が、第3世代のISと互角に戦うために作った高機動型パッケージ『ラピード』である。機動性は勿論、火力に防御力もある。

「これなら!」

キラの動きはまさに、宇宙空間で飛んでいるかのようにビットの攻撃を避けていた。

(あの人よりはかわしやすい!)

「そんな!? 初見でビットをかわすなんて・・・」

「これよりももっと恐ろしいのを味わったからね!」

そう言ってキラは、ライフルで瞬く間にビットを破壊した。

「な!?」

「今だ!」

キラはバレルロールと同時に、ウイングバインダーに付けられているミサイルポッドから、合計20発のマイクロミサイルを放った。そのミサイルは先ほどのミサイルとはまた違った軌道で迫っており、それでもセシリアはかわそうとしたが、キラはそれを阻むようにライフルを連射した。

「キャア!?」

全弾直撃したブルーティアーズは、SEの大半をもっていかれた。

「終わらせる!」

キラはブレードを構え、バーグラリーの何倍ものスピードでセシリアに迫った。

「まだですわ!!」

セシリアはミサイルビットを展開して、キラに放った。対するキラは、ブレードを消して盾で防いだ。SEが減ったが、それでもキラは突っ込んだ。

「インターセプター!!」

セシリアは最後の足掻きか、インターセプターと呼ばれた短剣をコールした。

「はあ!!」

キラがインターセプターの範囲に入ったところで、インターセプターを横に振った。

だが、キラは宙返りの要領でセシリアの攻撃をかわし。

「最後の追い上げ、良かったよ」

 

 

レーザーブレードで一閃したのだった。

 

 

 

 

『勝者! キラ・ヤマト選手!』

 

 

 

 

こうして、キラの初戦は勝利に終わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はキラ対一夏です。

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