今回はかなり短めです。
「あなたは、中間棲姫さん!」
「え!?」
キラは目の前の女性の名前を嬉しそうに呼んだ。
「キラさん、知り合いなのですか?」
「うん。中間棲姫さんって言うんだ」
「・・・それは名前なのですか?」
「そうだよ」
セシリアは中間棲姫に違和感をもった。
あまりにも白すぎる肌。
頭にある角のようなもの。
はっきり言って普通の人間には思えないのだ。
「・・・オマエハ?」
「! 初めまして、セシリア・オルコットと申しますわ」
「セシリア・・・ソウカ、オマエガイギリスダイヒョウコウホノ」
「私のことを、ご存知ですの?」
「アア・・・オマエノコトハ、シオンカラキイテイル。キラトトモニクルオンナダト」
「紫苑さんから?」
「キョウハ、ワタシモシオンノトコロニイクノデナ」
中間棲姫の台詞を聞いたキラは嬉しくなった。
「それで、中間棲姫さんはどうしてここに?確か今、宮城で復興作業の手伝いをしてるんですよね?それに、紫苑さん立川に住んでいますから、かなり逆方向ですよ?」
「オマエトオナジダ。ココハワタシタチニトッテモ、タイセツナバショダカラナ」
そう言った中間棲姫の表情は、先ほどのキラのように悲しそうだった。
「それで、用事は終わったんですか?」
「アア」
「それなら、僕達と行きませんか?行く場所は同じですし」
「そうですわね」
「・・・イイノカ?」
中間棲姫は自分も一緒に行って良いのか二人に問う。勿論二人は首を縦に振った。
「・・・ソレナラ、オコトバニアマエサセテモラオウ」
その後3人は海にむかって合掌し、横須賀駅の方に向かって歩いた。
横須賀線(113系)
「ひ・・・人ではない・・・ですか?」
セシリアは電車内で、中間棲姫からの説明を聞いて困惑していた。
それはそうだ。目の前の女性から自分は人ではないと言われたらだれでも驚く。
彼女達は深海棲艦と呼ばれる存在で、第二次世界大戦で犠牲になった人達の怨念、彼女達にとっては前世とも言える世界にいた、艦娘と呼ばれる存在が轟沈した際の成れの果て。
そしてなによりも、人類に敵対していた存在なのだ。
「因みに僕の知り合いにも艦娘はいますよ」
「本当ですの?」
「うん。中学の先生だったし、高野さん達のところにも沢山いるんだ」
それを聞いたセシリアは、訳が解らなくなった。
少し深呼吸をして、脳内を整理し、少しずつ落ち着いてきた。
「まだ納得できませんが、大体わかりましたわ」
「スマナイナ。キュウニコノヨウナハナシヲシテオドロイタダロウ?」
「いえ。・・・ですが、どうしてそのような方が、普通に暮らしておられるのですか?」
セシリアが疑問に思うのも当然だった。本来は人類に敵対する存在なのに、なぜ普通に暮らしているのか。しかも人類に敵対する存在ならば、テレビや新聞に載るはずなのにだ。
「・・・キラノオカゲダ」
「キラさんの?」
セシリアの一言に中間棲姫は頷いた。
「・・・ワタシタチハ、イツノマニカコノセカイニイタ」
「いつの間にか・・・ですの?」
「アア。・・・ワタシハワカラナカッタ。ナゼ、ワタシハイキテイルノカガ・・・」
「中間棲姫さん・・・」
「ダガ・・・ソレイジョウニワタシタチノナカニアルオンネンはキエルコトナク、ワタシタチハニホンニシンコウシヨウトシタ。ワタシハ、ソノテイサツタイトシテエノシマニヤッテキタ」
ソノトキダと言って、中間棲姫はキラに顔を向けた。
「トウジ10サイダッタ、キラニデアッタノハ・・・」
『あの・・・』
『・・・ナンダ?』
『あ・・・すみません。なんだか・・・悲しそうだったから』
『・・・ソウカ』
『・・・・・・』
『・・・ワカラナインダ』
『・・・え?』
『ドウシテ・・・ココニイルノカ。ドウシテ・・・ワタシハイルノカ。タダ・・・ワタシニハ、シシタモノタチノオンネンガヤドッテイル・・・』
『・・・だから、悲しいんですね?』
『?』
『だって、訳もわからずに死んだ人達の怨念が宿っているんですよ?それで平然と出来るはずがありません!そうでしょ!?』
『・・・ヤサシイナ、オマエハ』
『いえ・・・そうだ!高野さん達ならなんとかなるかも!!』
『・・・ナニ?』
『こっちです!』
『!?』
「ソレカラ、キラタチガトマッテイルリョカンニキテ、テイトクタチトサイカイシタノダ」
「え?再会?」
セシリアは中間棲姫の言ったことがわからなかったが、すぐにキラが「後で話すよ」と言ったので今は記憶の片隅にいれることにした。
「ソレカラモイロイロアッタガ、コレダケハイエル。・・・ワタシタチハミナ、キラノヤサシサにスクワレタ。モチロン・・・ココロヲダ」
「・・・そうなんですか」
セシリアは改めてキラが凄い存在だということがわかった。
人とは違う存在である深海棲艦ですらも助ける。
普通の人間ならばできることではない。
「やはりキラさんは、すごいお方ですわね」
「そんなことないよ。あの時にも言ったけど、僕はただ目の前にある理不尽が嫌なだけだから」
(キラ・・・ワタシタチハオマエノソウイウトコロニスクワレタンダ)
彼女は言わないが、深海棲艦の多くはキラのその思いと願い、そして優しさによって救われたのだ。
そのためか、救われた深海棲艦の多くは、キラに好意を寄せているものも多い。
『次は、武蔵小杉 武蔵小杉です』
「そろそろ乗り換え駅ですね」
「ソウダナ」
「はい」
もうすぐ乗り換える駅に着くため、キラ達は準備をし始めた。