新年早々話し上げました。
変にグダグダかもしれませんが、読んでくださると助かります。
それでは本編、はじまります。
彼女は、夢を見ていた
(また、あの子の夢・・・)
それは、彼女にとっては何度も見る夢だった
何処までも続く血の海に浮かぶ、数え切れないほどの死体
その中には女子供もあり
カプセルに入った赤ん坊の様なものに
赤ん坊『だった』ものまであった
そして
その真ん中には、折り紙を持った少年が泣き叫んでいた
(どうして・・・)
多くの兵士を殺し、一人の娘を持っている母親として
余りにも悲しすぎる少年に、彼女から涙が流れ始めた。
(だめ・・・それ以上悲しんだら・・・苦しんだら・・・傷ついたら・・・貴方が壊れてしまうわ)
知ってしまった
気付いてしまった
目の前で泣き叫ぶ少年の過去と、背負っているものの重さを・・・
そして、こちらに気が付いたのか
泣き叫ぶ少年はこちらに振り向き
彼女は叫んだ
「キラ君!!」
その声と同時に、彼女は目を覚ました。
「はあ・・・はあ・・・キラ君」
彼女は辺りを見回し、寝室だとすぐに理解した。
窓の外を見ると、外が少し明るくなっており、時計を見ると4時を指していた。
彼女が自分の横を見ると、
「ふみゅ~・・・」
そこには自分の娘が幸せそうに眠っていた。
「・・・」
彼女は娘を起こさない様にベッドから出て、洗面所まで向かった。
「・・・!?」
そして、鏡で自分の顔を見た瞬間、気付いてしまった。
自分が、涙を流していることに。
「あ・・・ああぁ・・・・」
気付いた瞬間彼女は膝から崩れ落ち、声を殺しながら泣きだした。
「キラ君・・・キラ君・・・!!」
自分も大切な娘を守るために、沢山人を殺して来た。
だが、あれは余りにも悲しすぎる。目の前で数え切れないほど、大切な人達が殺され、好きでもない殺しを何度もやってきた。そして嘆き悲しみ、もはや彼の心はボロボロなのだ。
(助けなきゃ・・・これ以上あの子が壊れないためにも、璃々と一緒にあの子も幸せにしなくちゃ!)
彼女は泣きながらも、彼のことを幸せにすると決意した。
IS学園 正門前
「それじゃあ、行ってきますね」
「行って参りますわ」
「ああ、気をつけてな」
IS学園の正門前、千冬は目の前にいるキラとセシリアを見送っていた。
今日は、キラの親代わりになってくれた人の家にお泊りに行く日だった。
ただ、真那は紺碧会の方で用事があるらしく、雪泉も一度自分の仲間の所のにもどって、状況報告を。
雪蓮と冥琳は教師の仕事があるので、セシリアに白羽の矢がたったのだ(別に犠牲になるというわけではない)。勿論その親代わりになった人には、セシリアのことを話したので大丈夫だ(なにやら自分の世界にトリップしたらしいが)。
千冬に見送られた二人は、駅でモノレールに乗り一番前にある展望型の席に座った。
「キラさん。その親代わりになっていたお方は、どんな人なのですの?」
セシリアはモノレール内で、キラにどんな人なのか尋ねた。その質問に、キラはこう答えた。
「・・・とても優しくて、とても強い女性なんだ。下に娘さんがいて、今まで一人で育てて来たみたい。その人は狙撃手でね?弓矢でISを打ち落とすほどなんだ。近接武器も少しはできるみたい」
「そのお方は人間なのですか?」
「え?人間だよ?」
キラが言うのだから多分人間なんだろう。ただ真那のときもそうだったが、生身でISを打ち落とすと言うのは本当に人間なのだろうか?
だがセシリアは、ある一つの推測が浮かんだのだ。
「・・・キラさん。そのお方はまさか・・・」
「・・・多分、セシリアが考えていることは合ってるよ」
そう、その女性も『女神の子供達計画』で生まれたということだ。
「その人はね?紺碧会の人からは『黄忠』って言われてるんだ」
「黄忠・・・確か、三国志に出てくる弓の名手で蜀の老兵でしたわね?」
セシリアの言葉に、キラは静かに答えた。
「あの人は、娘の璃々ちゃんだけじゃなくて、こんな僕のこともちゃんと育ててくれたんだ」
「・・・とても、お優しいお方なのですね・・・」
「うん・・・」
しばらくの沈黙、先に口を開いたのはキラだった。
「・・・ありがとう、セシリア」
「え?」
何故かキラからお礼を言われたセシリアは、どうしてお礼を言われたのかが解らなかった。
「僕のことを知っても、今日までずっといてくれて」
「そ・・・そのくらい当然ですわ。貴方には返そうにも返しきれないほどのご恩がおありですし、なにより『この程度』のことで貴方を拒絶するほど、英国の人間は落ちぶれてはおりませんわ」///
「セシリア・・・本当にありがとう」
「!!」///
キラのその笑顔が反則的にイケメン過ぎて、セシリアは顔をトマトのように赤くした。
「あっ、そうだ!横須賀に着いたら行きたいところがあるんだけど、良いかなセシリア?」
「え!?ああ構いませんわ!!」
唐突に言われてセシリアは戸惑ったが、なんとか返事をした。
それから二人はモノレールを降りて、JR横須賀線に乗り横須賀駅に向かった。
横須賀 ヴェルニー公園
「今回はかなりの数が止まっているね?」
「そうですわね」
キラは横須賀駅に降りると、すぐさま近くにあるヴェルニー公園に行き、セシリアはそんなキラに付いて行った。
「あっ!今日は愛宕さんと香取さんが止まってる!!」
「確か3代目でしたわね(ん?『さん』?)」
何故船にさん付けで呼んだのかは解らないが、今目の前に停泊している2隻の船は間違いなく3代目だということは解った。
「うん・・・」
「キラさん?」
セシリアの問いにキラがそう一言呟くと、唐突に合掌しだした。
「・・・ここに来るとね、何時もやるんだ」
「どうしてですの?」
「・・・せめてもの、弔いだよ」
キラは静かにそう答えた。
「この大きな海には、沢山の人が戦って死んでいったから」
「第二次世界大戦のことですね?」
「それもあるけど、それよりもさらに昔から沢山の人が海で死んでるから」
「あ・・・」
キラの言葉を聞いてセシリアは確かにと思った。
船が出来た時から、人は海の上で争い合っていた。
争いだけではない。
嵐などの自然現象や突然の事故にあい、なくなった者も少なくない。
「僕に出来ることなんて高が知れてるのは解ってる。・・・でも、善意のために戦った人、平和の為に戦った人、愛する者のために戦った人。全てじゃないけど・・・大切なものの為に命を賭けて戦った人だっているんだ」
前世でだってそうだ。どれだけ殺し合っても、ナチュラルもコーディネーターも平和の為に戦っていた。それが止まらなくなってしまい、ついには虐殺兵器まで投入するほどにまで達した。
だがキラは、分かり合えると信じて今まで戦い続けたのだ。
「・・・一つ聞いてよろしいでしょうか?」
「なに?」
「キラさんは・・・人を殺したことがおありなのですか?」
その問いにキラは、すぐに答えることが出来なかった。
「・・・どうして、そう思うの?」
「・・・私と雪泉さんは同じ日、ある夢を見ました」
「・・・・・・・」
「どこまでも続く血の海。その海に浮かぶ無数の死体。カプセルの様な物に入った赤ん坊のようななにか。ロボットの残骸。そして、折り紙を持って泣き叫ぶキラさんがおりました・・・」
「・・・・・・・」
「教えてください!キラさんはどうして・・・」
「・・・・・・守りたかったから」
「え?」
キラが呟いた一言に、セシリアは理解が出来なかった。
「戦える人が、実質僕だけだった。僕がやらなくちゃ、皆死んじゃうから」
「キラさん」
「でも・・・僕は人を殺したんだ」
そう呟くキラの瞳には大きな涙が流れていた。
「どんなに綺麗事を抜かしても、守らないとって思っても、所詮僕は人殺しだ。なんにも守ることが出来なくて、沢山の人を殺して来た大罪人だ!!」
自暴自虐していくキラが、セシリアには悲しく見えた。
それはまるで、嫌われて欲しくないように必死で足掻いているようにも思えた。
「セシリア・・・嫌だよね?こんな屑、いるだけで吐き気がするよね?」
「そんなことありません!!」
「!?」
我慢出来ずに、セシリアはキラからの問いに叫んだ。何故叫んだのか解らなかったキラは、セシリアの顔をみた。そしてそこには、涙を流しているセシリアがいた。
「キラさん、貴方は屑なんかではありません!あなたは大切な人を守るために戦って、そして苦しんだのでしょ?それに、貴方は自分が殺して来た人達のことを今も思っておられます。そんな人が、屑な訳ありませんわ!!」
「・・・でも」
「先ほども言いましたわ。この程度のことで貴方を拒絶するほど、英国の人間は落ちぶれておりませんと」
「・・・・・・」
沈黙しているキラがまだ迷っている表情をし、さらにセシリアはキラに問う。
「キラさん、私はキラを拒絶いたしません。例え人を殺した存在でも、遺伝子操作によって生まれた存在でも、私はキラさんの傍におります!!」
セシリアの言葉を聞いた瞬間、キラは彼女も自分のことが好きなんだと気付いた。だからこそ、雪蓮達にもした問いをセシリアにもした。
「・・・良いの?僕の傍にいて?」
「勿論ですわ!」
「本当に後悔しない?」
「いたしません!」
「またあの時みたいに、巻き込まれるかもしれないよ?」
「あの時は油断したいましたが。今度こそ、貴方を私とティアーズが守りますわ」
ガバ
「!?」///
それは嬉しさの余りだったのか。
それとも優しさを求めていたからなのか。
キラはセシリアを優しく抱きしめた。
「・・・本当にありがとうセシリア」
「・・・ええ」
だがセシリアは嫌がることなく、まるで泣いている子供をあやすかの様にキラの頭を撫でた。
「まったく、キラさんは泣き虫ですわね」
「うん・・・自覚はしてるんだけど・・・治らなくて」
「・・・仕方ないですわね。出来るだけ直してくださいまし」
「うん・・・」
キラはそういうが、きっと治らないだろうとセシリアは思った。だが、キラならばいいだろうとも思い、セシリアは微笑んだ。
「・・・ナニヲ、シテイル?」
「「え!?」」
急に横から声が聞こえ、二人は咄嗟に離れて声の主を見た。
そこには、白いロングドレスを着て、これまた白い髪に白い角のようなものが左右から出ている女性が立っていた。
「あなたは、中間棲姫さん!」
「え?」
この日を境に、セシリアは人ならざる者とであったのだった。
初級加速技:
IS学園の1年で教わる加速技で、瞬時加速が此処に当てはまる。主にISができる、基本的な加速技である。
尚加速技は出来ない人間の方が多くいるので、出来ないから落第と言うわけではなく、あくまでスキルを習得する際の一つとなっている。
中級加速技:
2・3年で教わる加速技で、主に瞬時加速を使った応用技がメインになっている。
上級加速技:
モンドグロッソにでる様な人物達が教わる加速技で、瞬時加速や他の加速技を組み合わせる応用技がメインになっている。一番難しいのは三重瞬時加速である。
究極加速技:
織斑千冬や篠ノ之束ですらも出来ない加速技。理論上はできるのだが、一歩間違えれば絶対防御があろうと大怪我どころではすまない。というよりも、普通の人間では耐えることができないほどの大技である。