IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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第095話:炎龍刀・真打!!

 ~千冬 Side~

 

 火ノ兄が復帰してからさらに数日が経過した

 現在、私達1年の教師達は来週行われる臨海学校の準備に追われていた

 そんなある日、私と真耶はいつもの様に【ラインバレル】で登校して来た火ノ兄と出会った

 だが火ノ兄をよく見ると…

 

千冬

「ん?…それは【戦国龍皇】!?」

 

 火ノ兄の腰に待機状態の【戦国龍皇】があった

 アレを持っていると言う事は…

 

千冬

「束の調査が終わったのか?」

 

永遠

「うむ、昨日終わったと言うてクロエが持ってきた。」

 

千冬

「そうか。」

 

 一応、束は火ノ兄の家から出て行った事にしている以上、誰が聞いてるか分からないからな…下手な事を言ってまだいる事がバレると拙い

 

千冬

「それで調査結果は?」

 

永遠

「詳しくは聞いとらん。じゃが性能だけでも恐ろしいほど上がっとるらしい。」

 

千冬

「恐ろしい程、か…」

 

 あの束がそこまで言うか…

 【戦国龍】でも手が付けられなかったと言うのにな…

 …龍…龍か…人間如きの力で龍を御する事は出来ないという事なんだろうか…

 龍の力を扱えるのは龍が認めた主のみ…それ以外の奴が手を出せば龍の逆鱗に触れる…あの馬鹿の様にな…

 もしどこかの国が手を出す事があったらあの時の事を教えてやるか…

 

永遠

「それと束さんが山田先生に礼を言っとったぞ。」

 

真耶

「…え?」

 

永遠

「山田先生の解析したデータのお陰でいくらか飛ばして出来たそうじゃ。」

 

真耶

「は、博士が…私に!?」

 

 あの束が人を褒めるとはな…本当に変わったなアイツ…

 しかし【戦国龍皇】が戻って来たのは丁度いい

 

千冬

「火ノ兄、一つ頼みがある。」

 

永遠

「ん?」

 

千冬

「今日の実習で【戦国龍皇】を展開してくれないか?」

 

真耶

「ええっ!?」

 

永遠

「構わんぞ。」

 

 火ノ兄は私の頼みを聞いてくれたが、真耶が慌て始めたな…

 

真耶

「先輩何言ってるんですか!?火ノ兄君もです!!」

 

永遠&千冬

「何が(じゃ)(だ)?」

 

 何をそんなに慌ててるんだ?

 

真耶

「何がって…火ノ兄君の怪我はまだ殆ど治って無いんですよ!!」

 

 ああそう言う事か…

 

千冬

「お前は知らなかったか…」

 

真耶

「え?」

 

千冬

「火ノ兄の怪我は大分治ってるぞ?」

 

真耶

「大分って…どう言う事ですか!?」

 

千冬

「あの事件の後クロニクルが来たと言っただろ?その時にアイツが火ノ兄に束の造った治療用ナノマシンを投与して行ったんだ。」

 

真耶

「ナノマシン!?博士はそんな物まで持ってたんですか!?」

 

千冬

「そうだ、それで火ノ兄はココまで回復している。」

 

真耶

「…だからこんなに早く…あの怪我でこんなに早く動けるのはおかしいと思ってましたが…こういう事だったんですね…」

 

千冬

「そう言う事だ。無論あの怪我だ…束のナノマシンでもまだ完治はしていない。だがISを展開して歩くくらいなら回復していると見たんだが…どうだ?」

 

永遠

「そのくらいなら出来るぞい。」

 

 私の質問に火ノ兄も大丈夫だと答えた

 それを見て真耶も納得した

 そして私達は教室に向かった…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

 今日のISの実習は1年の全クラスの合同授業

 4組の私は合同授業をしても普段は3組とやっている

 だから今日の実習は楽しみだった♪

 1組の永遠と授業が受けられる♪

 と言っても永遠はまだ本調子じゃ無いから見学になるのが少し不満だけど…

 そして全員が集まると織斑先生が授業を始めた

 全員が並ぶ中、やっぱり永遠は見学に回るから列から離れていた

 

千冬

「それでは授業を始める!今日は始めに専用機による模擬戦を行って貰い、その後は各班に分かれて実働練習を行う。」

 

 まずは模擬戦か…誰がやるんだろ?

 永遠はまだ怪我が治って無いから無理だし、束さんにISを預けてるセシリアも無理、本音は機体がアレだから微妙だよね…

 となると残ってるは私を含めて5人って事になるな…

 私がそんな事を考えている間に…

 

千冬

「凰、更識、お前達だ!」

 

 私と鈴が指名された

 

簪&鈴

「はい!!!」

 

 指名された私達は早速模擬戦を始めたけど…

 

 ………

 ……

 …

 

「貰ったぁぁっ!!」

 

「キャアァァァッ!!」

 

 鈴の青龍刀に斬られて負けちゃった…

 もう少し粘れると思ったんだけどな~…

 模擬戦を終えた私と鈴がISを解除して列に戻ると…

 

千冬

「では次は実動訓練に入る。だがその前に…火ノ兄!」

 

 織斑先生が永遠を呼んだ

 何をする気だろ?

 

千冬

「事前に頼んだように【戦国龍皇】を展開してくれ。」

 

全員

「…え?」

 

 今…何て?

 

永遠

「あいよ~…」

 

 私達が織斑先生の言葉の意味を理解するよりも先に永遠は腰にさしてある刀を抜いた

 

全員

「え?」

 

 永遠はそのまま頭上に円を描いて炎に包まれた

 そして現れたのは…

 

<オオオオオォォォォォォ――――――ンッ!!!!>

 

 進化した【戦国龍】…【戦国龍皇】だった…

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 【戦国龍皇】…以前わたくしもツルさんが纏わせてくださいましたが、やはり本来の使い手が纏うと迫力が違いますわね…

 ですが、何故織斑先生は【戦国龍皇】を?

 

 ザワザワ…

 

 1年の皆さんも【戦国龍皇】を見てざわめいていますわね…

 

永遠

「コレでいいんか?」

 

千冬

「ああ…【戦国龍皇】…間近で見ると凄まじい迫力だな…」

 

 織斑先生の感想に皆さん頷いています

 わたくしも同じ意見ですわ

 

一夏

「あの、ち、織斑先生…何で【戦国龍皇】を?それに火ノ兄の体はISを展開する事は…」

 

 永遠さんの体?

 …そう言えば皆さん知りませんでしたね

 

セシリア

「永遠さんの体なら大分回復してますわよ?」

 

全員

「え?」

 

 わたくしがそう言うと皆さんこちらを向きました

 

シャルロット

「どういう事!?あの怪我はそう簡単には…」

 

ラウラ

「あ!そう言う事か!?」

 

シャルロット

「え?」

 

 ラウラさんも気づきましたか

 

ラウラ

「前に姉上が見舞いに来た時に兄上に治療用ナノマシンを投与して行ったんだ。」

 

「クロエさんが!?…そうか…だからこんなに早く回復してるのね?」

 

千冬

「そう言う事だ…それで火ノ兄に【戦国龍皇】を展開させた理由だが…一度間近で見たくてな…」

 

全員

「へ?」

 

 …それが理由ですか?

 

千冬

「あの一件で火ノ兄はあんな状態になったからな…ISを展開する程度には回復したから頼んでみたんだ。」

 

全員

「………」

 

 そう言われると…分からなくは無いですが…

 

永遠

「それでもういいんか?」

 

千冬

「そうだな…【六道剣(りくどうけん)】は出せるか?」

 

永遠

「可能じゃ…来い!!」

 

 織斑先生の追加のリクエストに応えて永遠さんは【六道剣(りくどうけん)】を呼び出しました

 

 ザザザザザザンッ!!!

 

 そして現れたのはあの6本の名刀…【六道剣(りくどうけん)】…しかし…

 

「本当に制約が無くなってるんだね…」

 

 簪さんの言う通りですね…

 あの【六道剣(りくどうけん)】がこんなに簡単に呼び出せるなんて…本当にただの武器になってしまったんですね…

 そう思うと改めて【戦国龍皇】の規格外さを思い知りましたわ…

 そして、新しい単一仕様(ワンオフ・アビリティー)…あの美しい白馬…

 いつか永遠さんと一緒にあの白馬で駆けて見たいですわ~…///

 わたくしがそんな妄想をしていると…

 

永遠

「…グッ!」

 

セシリア&簪&本音

「永遠(さん)!!!」

 

 永遠さんが胸を抑え始めました!?

 もしかして永遠さん!?

 

千冬

「スマン火ノ兄!!調子に乗って無理をさせ過ぎた!!すぐにISを解除するんだ!!」

 

 やはり無理をしていましたのね!?

 

永遠

「分かっ…ん?」

 

 …永遠さん?

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 ググッ…【六道剣(りくどうけん)】を呼び出す程には回復しとらんかったか…

 

千冬

「すぐにISを解除しろ!!」

 

 織斑先生もああ言っとるしそうするか…【戦国龍皇】のお披露目も十分じゃろうしな…

 ワシはそう思って解除しようとしたが…

 

 ドクンッ!

 

永遠

「ん?」

 

 何か…聞こえたような…

 

 ドクンッ!

 

 また聞こえたのぉ…空耳ではなかったか…

 じゃが何の音じゃ?

 何かが脈打つ様な音じゃが…

 

 ドクンッ!

 

 ワシはISを解除せず、音の出所を探そうと辺りを見渡した

 

千冬

「どうしたんだ!早く解除しろ!!お前の体がもたんぞ!!」

 

セシリア

「永遠さん!!!」

 

「聞いてるの!!!」

 

本音

「早くしてよ~!!!」

 

 セシリア達もワシを心配しておるが今はこの音じゃ…

 どうやらワシにしか聞こえておらんようじゃしな…

 

 ドクンッ!

 

 ワシは眼を閉じ、意識を耳に集中させると…

 

 ドクンッ!

 

永遠

「!?」

 

 聞こえた方を向いた

 じゃが、そこにあったのは…

 

永遠

「………【オニマル】?」

 

 【六道剣(りくどうけん)】の一振り…【炎龍刀オニマル】じゃった…

 

永遠

「…あの音はお前が出しとったのか?」

 

 ワシはそう言いながら【オニマル】に近づいた

 

一夏

「音?音なんて聞こえたか?」

 

 じゃが周りの物はワシの行動や言っとる事が分からず困惑しておった

 そしてワシが【オニマル】の前に立つと…

 

 ボオオオオオォォォォォッ!!!

 

全員

「!?」

 

 【オニマル】が突然燃え出しおった

 

千冬

「な、何事だ!?」

 

セシリア

「【オニマル】が!?」

 

 【オニマル】が突然燃え出した事で全員が異変に気付いた

 

 ザワザワ…

 

 周りが慌てる中、ワシは燃え続ける【オニマル】を見て理解した…あの音を出しておったのは間違いなく【オニマル】じゃ

 あの音はワシを呼ぶ為に【オニマル】が出しておったのじゃ…

 ワシはそう結論付けると燃え続ける炎の中に腕を突っ込んだ

 

セシリア&簪&本音

「永遠(さん)!!!」

 

 ガシッ!

 

 ワシは【オニマル】の柄を掴むと…

 

永遠

「ワシを呼んどった理由、教えて貰うぞ!!!」

 

 そう言ってワシは地面に刺さっておる【オニマル】を引き抜いた

 

永遠

「!?」

 

 引き抜くと同時に炎も消え去った…

 じゃが、炎の中から現れた【オニマル】は…

 

全員

「!?」

 

一夏

「姿が…変わった!?」

 

 織斑の言う通り【オニマル】は姿を変えておった…

 赤い炎の刀身は更に燃え盛る炎のように巨大な刃へと変わっておった…

 その姿を見てワシは理解した…

 【オニマル】も【戦国龍】同様、進化しようとしておったのじゃ…

 

永遠

「コレが生まれ変わったお前の姿か…【炎龍刀オニマル・真打】!!!

 

全員

「『真打』!?」

 

 ワシは新しくなった【オニマル】を見つめていたが…

 

永遠

「グッ!」

 

 限界が来おったか…仕方無い…

 ワシは【戦国龍皇】を解除した

 それと同時に【オニマル】と他の【六道剣(りくどうけん)】も消えた

 

永遠

「ぐっ…ハァ~ハァ~…」

 

 ISを解除したワシはその場で膝をついた

 完全回復にはまだ遠いようじゃな…

 

セシリア&簪&本音

「永遠(さん)!!!」

 

 ワシを心配して3人が駆け寄って来た

 

セシリア

「大丈夫ですか!?」

 

「苦しくない!?」

 

本音

「痛いところない~!?」

 

永遠

「ああ、もう平気じゃ…心配をかけてスマン…」

 

 ワシは笑いながらそう言った

 これ以上無理をすると3人を泣かせてしまいそうじゃからな…それは流石に嫌じゃからな…

 

千冬

「いや、謝るのは私の方だ…無理をさせてすまなかった!!」

 

永遠

「気にせんでいいわい…それに多少無理をしたお陰で収穫もあったしのぉ…」

 

千冬

「…【オニマル】の事か…『真打』と言っていたが…だとすれば以前の【オニマル】を超えたものになっているだろうな…」

 

永遠

「じゃろうな…」

 

 織斑先生も気づいとったか…

 

セシリア

「あの、真打とは何ですか?」

 

永遠

「ああ、真打言うんは簡単に言えば一番優れた刀の事じゃ。」

 

セシリア

「一番優れた?」

 

千冬

「そうだ、日本刀を造る際、必ず複数造るそうだ。」

 

シャルロット

「何故そんな事をするんですか?」

 

千冬

「複数造る事でその中から最も優れた刀を選ぶ為だ。その選ばれた刀を『真打』と呼ぶんだ。」

 

永遠

「それに対して選ばれなかった劣る刀を『影打』と言うて自分の手元に残したり、誰かに譲ったりするそうじゃよ。」

 

ラウラ

「『真打』と『影打』…」

 

千冬

「だからと言って刀を造る際は必ずそうする訳では無いぞ。」

 

セシリア

「ではどういった時にするんですか?」

 

千冬

「主に誰かに依頼された場合、後は神社に奉納する刀を造る際とかだな。そういった時に複数造るのが通例になっている。」

 

一夏

「じゃあ【オニマル】の場合は?」

 

千冬

「本来の意味とは少し違うが進化と言う形で『真打』になったんだろう。」

 

永遠

「うむ、恐らく【戦国龍】の進化が【オニマル】にも影響を与えたんじゃろう。」

 

一夏

「でも何で【オニマル】だけなんだ?」

 

ラウラ

「そうだな…他の5本に変化はなかった…」

 

永遠

「その辺の理由は【戦国龍】と【オニマル】が同じ炎を司っておるからじゃろうな…」

 

千冬

「成程…同じ属性だから影響を受けたと?確かにそれなら辻褄は合うな…」

 

 ワシの考えに織斑先生も同意し、他の者達も頷いておった

 

永遠

「まぁ、ワシが全快せん事には当分使う事はあるまいて…」

 

千冬

「それもそうだな………さて、色々とトラブルもあったが授業を続けるぞ!」

 

全員

「はい!!!」

 

 その後、授業は再開されたが、ワシは先程の無理がたたって完全な見学側になってしもうた…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~箒 Side~

 

「………」

 

 私はあの日から反省文500枚を書き続けていた…

 本当はこんなもの500枚も書きたくは無いのだが全て書くまで出られないと言われているので仕方なかった…

 しかも今度の臨海学校までに書き終わらなければ参加出来ないとまで言われた…

 ふざけるな!!臨海学校のある日は私の誕生日だ!!

 それをこんな所で過ごしてたまるか!!

 だから私は寝る間も惜しんで書いていた

 【戦国龍皇】が手に入らなかった以上、気は進まないがもはや姉さんに頼むしかない

 幸い携帯は取り上げられなかったから姉さんにはすでに連絡済みだ

 恐らく姉さんは私の誕生日に持って来る筈…その為にもここから出なければ!!

 そして今日も朝から反省文を書いていた

 そんなある時…

 

警備1

『交代よ。』

 

警備2

『分かったわ。』

 

 この懲罰房の監視をしている警備員が交代に来た

 本来は必要無いのだが、私が逃げ出すかもしれないと危惧した千冬さんが態々呼びつけたらしい

 クソッ!そこまで私を信用してないのか!!

 だが、もはや扉の外の事などいつもの事だから気にもしなかったが…

 

警備1

『そう言えばさっき聞いたんだけど【戦国龍皇】って言うISの武器が進化したって大騒ぎになってるわよ?』

 

「!?」

 

 今…何て言った…

 

警備2

『進化?ISじゃなくて武器が?何それ?』

 

警備1

『私も詳しくは知らないけど…何でも【六道剣(りくどうけん)】って言う刀の一つがパワーアップしたんですって。』

 

 【六道剣(りくどうけん)】だと!?

 

警備2

『それってあの事件の時に出て来た6本の刀の事よね?アレが全部進化したの?』

 

警備1

『いいえ、赤い剣だけだそうよ。』

 

 赤…と言う事は…【オニマル】か!!

 

警備2

『へ~…一度見て見たいわね…』

 

警備1

『暫くは無理みたいよ?火ノ兄君の体がまだ治って無いから。』

 

警備2

『それじゃあしょうがないか…じゃあ後よろしくね。』

 

警備1

『ええ、お疲れ様。』

 

 私が聞いている事にも気づかずそいつ等は話を終えて交代して行った

 

「………クソッ!!」

 

 【戦国龍皇】め!!!私の物にならなかった事を後悔させてやるからな!!!

 

 ~箒 Side out~

 


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