IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

91 / 155
第087話:自分のルール

 ~千冬 Side~

 

千冬

「真耶!!すぐに医療班を向かわせろ!!!」

 

真耶

「は、はい!!」

 

 アイツ…やはり無理をしていたのか…

 一体どうやってあの傷であんな動きが出来ていたんだ…

 

「…あの…千冬さん…」

 

千冬

「何だ?」

 

「セシリア達がアリーナに行っちゃったんですけど…」

 

千冬

「………放っておけ…」

 

「いいんですか?」

 

千冬

「構わん。戦いも終わった事だし、こんな状況では次の試合なんか出来はしない。………ああ、それから鈴。」

 

「何ですか?」

 

千冬

「悪いがオルコット達に伝言を頼む。」

 

「伝言?」

 

千冬

「火ノ兄の持つISを誰にも渡すな!とな。」

 

「え?」

 

千冬

「この戦いで火ノ兄は世界中から目を付けられただろう。…そしてアイツのIS…特に【戦国龍皇】は狙われる可能性が高い。私はこの後色々と対応をしないといけないから、それが終わるまでアイツ等が持っていた方が安全だ。後で受け取りに行くと伝えてくれ。」

 

「そう言う事ですか…分かりました!!」

 

 …アイツ等の事は鈴に任せるとして…問題は…

 

真耶

「織斑先生!賓客の方達が火ノ兄君の情報を求めてきてます!!」

 

 やはりそうなるか…

 束が今まで火ノ兄の情報を遮断してきたからな…

 

千冬

「火ノ兄に関しては必要最低限の情報だけでいい!【ドットブラスライザー】と【ラインバレル】それに束との関係は絶対に言うな!!【戦国龍皇】に関してはまだ何も分かっていないと伝えておけ!!」

 

真耶

「わ、分かりました!!」

 

 …これで大人しくなればいいが…無理だろうな…

 …ドイツの馬鹿共があんな物使わなければここまでの騒ぎにはならなかったと言うのに

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

セシリア

「ハァ…ハァ………永遠さん!!」

 

 アリーナに着いたわたくし達が見たものは血塗れで倒れた永遠さんでした

 

セシリア

「永遠さん!永遠さん!!」

 

「永遠!!」

 

本音

「永遠~!!」

 

 わたくし達の呼びかけにも反応しません…

 

医療班

「皆さんどいてください!!」

 

 担架を持った医療班の方達がやって来ると、永遠さんを担架に乗せて移動している途中で…

 

「…よかった間に合った!!」

 

 鈴さんがやってきました

 

「どうしたの鈴?」

 

「ちょっと待ってください!」

 

 鈴さんは医療班の方達を引き留めると担架に乗せてあった永遠さんの待機状態の3本の刀をとりました

 

医療班

「君!何のつもりだ!」

 

「織斑先生からの指示です。永遠のISを確保しておけと。後で確認しても構いません。」

 

医療班

「織斑先生が?…分かった…」

 

 医療班の方達はそう言って永遠さんを連れていきました

 

セシリア

「鈴さん…どういう事ですか?」

 

「そのままの意味よ。永遠の機体…特に【戦国龍皇】を狙う奴がいるだろうから私達で確保しておけですって。」

 

「永遠の機体を!?」

 

「そ!だからこれはあんた達が持ってて。」

 

 鈴さんはそう言うと…

 わたくしに【戦国龍皇】を…

 簪さんに【ラインバレル】…

 本音さんに【ドットブラスライザー】を渡してくれました

 

「多分永遠は暫く動けないわ…だからその間はこの3機はあんた達が守るのよ!…特にセシリア…あんたに渡した【戦国龍皇】が一番狙われるわよ!」

 

セシリア

「分かってます!!これはわたくしの命にかけて守って見せます!!」

 

「その意気込みなら大丈夫ね♪…まあ、暫くすれば千冬さんが受け取りに来る筈だからそれまでの間よ。」

 

セシリア&簪&本音

「はい(うん)!!」

 

 それでも…その時までこれは誰にも渡しません!

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~箒 Side~

 

「チッ…鈴に先を越されたか…」

 

 火ノ兄が動けなくなった今の内に【戦国龍皇】を手に入れようと思ったんだが…鈴の奴…余計な事を!!

 問題の【戦国龍皇】はオルコットが持っているのか…

 今のアイツはISを持っていないから力づくで奪う事も出来るが…アイツはいつも更識と布仏の二人と一緒だからな…いくら私でも専用機持ち二人を生身で相手にする事は出来ない…

 まあ焦る必要はない…鈴が言っていた通り、今のアイツは当分動けないだろうからな…機会はいくらでもある…

 

「クククッ…待っていろ…【戦国龍】…いや…【戦国龍皇】!!」

 

 ~箒 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 さて…こいつ等をどう捌くかな…

 

賓客1

「織斑女史!彼は何者ですか!?」

 

賓客2

「男性操縦者がもう一人いるなど聞いた事が無いぞ!!」

 

賓客3

「あの二次移行(セカンドシフト)した全身装甲(フルスキン)のISは何なんだね!?」

 

 喧しい連中だ…

 

千冬

「彼に関しては先程の説明以上の事は申せません。あの機体に関しては私達もまだ調査をしていませんのでココでは何も言う事は出来ません。」

 

賓客1

「あんな説明で納得出来る訳無いだろ!!」

 

賓客2

「分からないと言うなら我が国で調査する!彼とあの機体を預けてくれ!!」

 

賓客3

「貴様何を言っている!!それなら我が国でやった方がより詳しく分かる!!」

 

 チッ!…こいつ等遂に本性を現したか…火ノ兄と【戦国龍皇】を自分達の国の戦力にしようという本音がダダ漏れだ…

 しかも、私の前と言う事を忘れて言い合いを始めるとは…

 このまま放っておいてもいいが、それはそれで問題だからな…

 

千冬

「申し訳ありませんがそう言った話は学園の外でやって下さい!!」

 

賓客達

「!?」

 

 私が殺気交じりにそう言うと一気に静まり返った

 

千冬

「二人目の事ですが彼はどこかの国が使った違法システムのせいで重傷です!!そう言った話は彼が話せるようになってから言って下さい!!!」

 

賓客達

「………」

 

 賓客達の視線がドイツのお偉方に向いたか…

 これでこいつ等の標的がドイツの馬鹿共に切り替わるだろ…

 念の為、もう一押ししておくか

 

千冬

「それから、あの違法システムを積んだ機体はこちらで調査をした後、IS委員会と各国に報告します。操縦者は別としてあのシステムを積んだ連中にはそれ相応の責任を取って貰うのでそのつもりでいるように!!」

 

 恐らくアイツ等はラウラに全ての責任を押し付けるつもりだろうがそうはさせん!

 アイツがあんな物を望んで積んだとも思えんから、勝手に取り付けていたんだろう…そいつ等に報いを受けさせてやる!

 それに今頃は束が動いている筈…逃げる事も出来ない筈だ

 

千冬

「話は以上です!後は外でやって下さい!それでは、まだ仕事が残っていますので失礼します。」

 

 言いたい事も言った事だし、とりあえずラウラの様子を見てくるか…

 そろそろ目を覚ましているだろうしな…

 火ノ兄はまだ手術中だろうから後でいいか…

 その前にラウラの機体の調査結果を聞いてから行くか…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~ラウラ Side~

 

ラウラ

「…ううっ…」

 

 …白い…天井…

 

ラウラ

「…ココは…何処だ?」

 

千冬

「目を覚ましたか?」

 

ラウラ

「きょ、教官…一体…何が?…ぐっ!?」

 

 何だ?…体が…

 

千冬

「お前の体は全身に無理な負荷がかかった事で筋肉疲労と打撲がある。暫くはじっとしていろ。」

 

ラウラ

「何が…起きたのですか?」

 

 私は激痛の走る体を無視して無理矢理上半身を起こした

 

千冬

「…一応…重要案件で機密事項何だが…お前は知ってもいいだろう…」

 

 教官はゆっくりと話し始めた

 

千冬

「【VTシステム】は知ってるな?」

 

ラウラ

「はい、【ヴァルキリー・トレース・システム】…過去のIS操縦者の動きをトレースするシステムですよね?」

 

千冬

「そうだ、IS条約で研究、開発、使用の全てが禁止されているシステムだ。それがお前のISに積まれていた。」

 

ラウラ

「!?」

 

 …私は言葉が出なかった…

 そんな違法システムが私の機体に積まれていたなんて…

 

千冬

「調べたら巧妙に隠されていてな。機体のダメージ、操縦者の精神状態、願望等の条件が揃うと発動するようになっていた。」

 

 それはつまり…

 

ラウラ

「あの時…私が望んだから…発動したんですね…」

 

千冬

「そう言う事だ…ただお前の機体の【VTシステム】は通常の物とは違っていたようだがな…」

 

ラウラ

「え?…どういう事ですか?」

 

千冬

「お前を助け出す事は火ノ兄がやってくれた…だが問題はその後だ…」

 

 火ノ兄!…アイツが私を助けてくれたのか!?

 だが、その後と言うのは?

 

千冬

「お前を引きずり出した後、抜け殻になったお前の機体が勝手に動き出してな…」

 

ラウラ

「え………」

 

 教官はその後の事も話してくれた…

 暴走を始めた私の機体が火ノ兄を後ろから突き刺し切り裂いた事…

 倒されたと思った火ノ兄が復活し、二次移行(セカンドシフト)した【戦国龍】で今度こそ私の機体を倒した事…

 

千冬

「………と言う事だ…その後火ノ兄は力尽きて倒れてな、今は手術中だ。」

 

ラウラ

「…何故…アイツはそこまでしてくれたんだ…私はアイツを後ろから撃ちまでしたのに…そんな私を何故助けてくれたんだ…」

 

 思い返してみれば、試合の間の火ノ兄は私に対して攻撃はしてこなかった…全て受け流すか防ぐだけだった…精々蹴り飛ばす程度しかしていない…

 

千冬

「………『御剣の剣、即ち、時代時代の苦難から弱き人々を守ること』…」

 

ラウラ

「え?」

 

千冬

「ラウラ…お前がこの間、火ノ兄に負けた時にアイツが使った剣技…【飛天御剣流】の理だ。」

 

ラウラ

「理…」

 

千冬

「火ノ兄はその理から自分なりの答えを出し、それを自分の理…自分のルールにしている。それは自分の手の届く所にある者、大切な者を守る為に剣を振るうと言っていた。」

 

ラウラ

「…自分の…ルール…」

 

千冬

「あの時、お前は火ノ兄の手の届く場所にいた。だからアイツは自分のルールに従ってお前を命がけで助けたんだ。」

 

ラウラ

「………」

 

千冬

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!!!」

 

ラウラ

「はっはい!」

 

千冬

「お前は誰だ?」

 

ラウラ

「わ、私…私は…」

 

千冬

「誰でもないのなら、お前はこれからラウラ・ボーデヴィッヒになれ!」

 

 …私になれ…教官はそう言っておられるのか…

 

千冬

「それから、お前は私にはなれないぞ。」

 

 最後にそう言って教官は去って行った…

 残された私は…

 

ラウラ

「…私は教官になれないか…そうだな…その通りだ…」

 

 そんな当たり前の事に今更気づくなんてな…

 

ラウラ

「…誰かになろうとしていた私が…自分自身であり続けたアイツに勝てる訳ないか…」

 

 完敗だな…

 だが…私は憑き物が落ちた様に清々しい気分だった

 

ラウラ

「…力も…心も…私の負けだ…フフッ…アハハハハハハッ!!」

 

 …私もアイツみたいに自分のルールを見つけられるだろうか…だが…

 

ラウラ

「…まずは…アイツに謝罪と感謝を伝えるか!!」

 

 それが私が最初にする事だな!!

 

ラウラ

「………だが…あの3人が何と言うかだよな…」

 

 私は火ノ兄といつも一緒にいる3人の顔を思い浮かべていた…

 

ラウラ

「…覚悟して行くか…」

 

 ~ラウラ Side out~

 

 




 次回『第088話:廃棄品と完成品』


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。