IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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これからも頑張ります!!


第063話:MA・DA・O

 ~一夏 Side~

 

一夏

「………鈴………何で…俺は…鈴の気持ちに…気付かなかったんだ…」

 

 今の俺には後悔と罪悪感しかなかった…

 俺が今まで鈴に対して口にしてきた言葉が走馬燈の様に蘇って来た…

 そして鈴が教えてくれた俺が今まで傷付けて来た子達の事…

 正直その子と会っても俺はその子が俺に好意を持っていたかすら分からない…

 でも鈴があそこまで言ったって事は全部本当なんだ…

 俺は一体どれだけの子達の想いを踏み躙って来たんだ…

 

一夏

「…ううぅぅっ…ああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」

 

 何で…何で俺はこんな事にも気づかなかったんだ!

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

一夏

「ああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」

 

 どうやら鈴に思いっきりフラれたようだな…

 これでアイツも自分の鈍感さでどれだけの人達を傷つけて来たか分かるだろう…

 鈴には本当に悪い事をしてしまったな…私の方からも謝っておくか…

 

永遠

「………」クイッ

 

 火ノ兄が指で下を指した…戻ろうという事か…

 

 ガタッ

 

 だが私が頷いた時、物音を立ててしまった

 

千冬

(しまった!?)

 

一夏

「鈴か?鈴なのか?」

 

 アイツ…鈴が戻って来たと思ったのか?

 仕方ない気付かれた以上出て行くか…

 私が火ノ兄に目配せをすると火ノ兄も頷いた…どうやら同じ事を考えたらしい

 私達は屋上に出て行った

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 俺は屋上の扉から物音がしたのに気付いた…

 もしかしたら鈴が戻って来たのかもしれない…

 そんな考えをしていると…出て来たのは…

 

一夏

「りっ…千冬姉…火ノ兄………鈴じゃ…ない…」

 

 千冬姉と火ノ兄の二人だった

 

千冬

「残念だったな鈴じゃなくて…しかし、随分と女々しい奴だな?」

 

一夏

「…どういう事だよ?」

 

千冬

「鈴が戻って来るとでも思っていたのか?」

 

一夏

「!?…な、何の事だよ!」

 

千冬

「鈴にフラれたか?」

 

一夏

「何でそれを!…まさか覗いてやがったのか!?」

 

永遠

「んな事しとらんわ!じゃがな、今の貴様を見れば鈴が何を言ったのかは分かるわい!」

 

一夏

「ぐっ!?」

 

千冬

「大方、鈴に『これからはただの友達』とでも言われたんだろ?」

 

一夏

「うぐっ!?」

 

永遠

「どうじゃ織斑?一方的にフラれた気分は?」

 

一夏

「何だと!?」

 

永遠

「貴様が今までやって来た事じゃ!」

 

一夏

「うっ!?」

 

 それを言われたら何も言えなかった…けど…

 

一夏

「…お前は…鈴の気持ちを知ってたのか?」

 

永遠

「当り前じゃ。あんなに分かり易いんじゃからな。気付かんかったのは貴様だけじゃ。」

 

一夏

「そんな!」

 

永遠

「それだけ貴様が鈍いという事じゃ!ワシはな…鈴の応援をしとった。」

 

一夏

「え?」

 

永遠

「鈴は貴様の事が本当に好きだったんじゃな…わざわざこの学園に転入までしてきたんじゃからな…」

 

一夏

「…え?…そ、それって…」

 

永遠

「馬鹿の貴様でも分かったか!鈴はな、貴様に会う為にこの学園に来たんじゃ!」

 

一夏

「お、俺に…会う為…」

 

永遠

「じゃからワシは鈴の応援をしようと思った。じゃが、この学園に来た鈴に対して貴様がした事は何じゃ?言った言葉は何じゃ?」

 

一夏

「………」

 

永遠

「また忘れたか?それとも自分の都合のいいように脳内変換したんか?」

 

一夏

「…ちゃんと…覚えてる…」

 

永遠

「ほぉ~…驚いたのぉ…鈴の告白も間違えて覚えておる様な奴が覚えておったのか?」

 

一夏

「ぐっ!」

 

永遠

「約束を思い出してもそんな訳無いと本人の前で笑いながら否定しておった奴がのぉ…」

 

一夏

「ぐぐっ!」

 

永遠

「まあ、ワシは別に貴様の事なんぞどうでもいい…それに、鈴には悪いが貴様の事を諦めたのは良かったと思っとるからな。」

 

一夏

「な、何だと!?」

 

永遠

「何故貴様が怒る?鈴の事を何とも思っとらんのじゃろ?じゃからあげな事を平然と口に出来たんじゃろ?」

 

一夏

「ぐっうっ…」

 

永遠

「この際じゃ、ハッキリ言ってやる!貴様に鈴は相応しくない!!」

 

一夏

「なっ!?」

 

永遠

「鈴にはもっと相応しい者がおる!貴様の様な最低なクズには勿体なさ過ぎる娘じゃ!!」

 

一夏

「ク、クズ…」

 

永遠

「そうじゃ!貴様はクズじゃ!男としても人としても最低なクズじゃ!」

 

一夏

「あ…ああ…」

 

永遠

「自分に向けられる好意にも気づかず、平然とその想いを踏み躙る様な奴が、クズ以外の何だと言うんじゃ!!貴様は『大切な人を守る』とほざいておきながらやっとる事は何じゃ!!貴様は自分の言動と行動が矛盾しとる事に気づかんのか!!!」

 

一夏

「うっ………そ、れは…」

 

 ………火ノ兄の…言う通りだ…

 

千冬

「一夏…お前が誰を好きになろうと勝手だ。だがな…相手の想いをまた踏み躙る様な事をした時は…その時は、例え実の弟だろうと私は許さんからな!!」

 

一夏

「………はい…」

 

永遠

「本当に分かっとるのか?」

 

一夏

「…いくら俺でも…もう分かってる…」

 

永遠

「…まあ、また懲りずにやればその時はまた臨死体験をさせるだけじゃ。」

 

千冬

「そうだな…その時は頼むぞ。」

 

永遠

「任せときんしゃい!!次はパワーボムで行こうかの?」

 

一夏

「…やる事が決まってるのかよ…」

 

永遠

「貴様ならまた鈴の様な者を出しかねん!信用出来る分けなかろぉ!」

 

千冬

「確かに信用出来んな!」

 

一夏

「…そこまで信用無いのかよ…」

 

永遠

「当り前じゃ!むしろ何処を信用しろと言うんじゃ!!ワシのパワーボムを喰らいたくなかったらその鈍感でお気楽な性格を直すんじゃな!分かったか『マダオ』!!」

 

一夏

「マ、マダオ?何だよそれ!」

 

永遠

「『まるでダメな織斑一夏』…略してマダオじゃ!」

 

一夏

「そんな呼び方するな!!」

 

千冬

「今のお前にはピッタリの呼び方だが?」

 

一夏

「ち、千冬姉まで…」

 

永遠

「それとも『クズでダメな織斑千冬の弟』…『クダオ』と呼んだ方がいいかの?」

 

一夏

「止めてくれ!?」

 

 俺の名前すら入って無いあだ名じゃないかよ!

 

千冬

「呼ばれたくなければ二度とこんな事を起こすな!!お前が今までしてきたことはクダオと呼ばれても仕方のない事なんだからな!!」

 

一夏

「うっ………はい…」

 

永遠

「今日一日は鈴に言われた事を反省しとれ!…反省した所で鈴はもう貴様に振り向く事は無いがな…鈴なら貴様の良い嫁になれたじゃろうに、見限られるとはとんだ大馬鹿もんじゃ!」

 

一夏

「!?…うっ…ううっ…」

 

千冬

「火ノ兄の言う通り今日は反省していろ!」

 

永遠

「ではな…マダオ。」

 

一夏

「…マダオって言うなよ…」

 

 二人はそう言い残して屋上から出て行った…

 俺は弱々しくそう言い返す事しか出来なかった…

 

一夏

「………マダオ、か………鈴………」

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 屋上を後にした私は火ノ兄に一夏の今後を聞いてみた…

 

千冬

「火ノ兄…」

 

永遠

「ん?何じゃ?」

 

千冬

「…一夏は大丈夫だと思うか?」

 

永遠

「さあのぉ…奴は前科がありまくるから何とも言えんよ。」

 

千冬

「はぁ…そうだな…」

 

 その通りだから何も言えんな…

 

永遠

「…それに、奴にはああ言ったがワシも最低な男じゃからな…」

 

千冬

「何?」

 

 …そうか…コイツ…

 

千冬

「………気付いていたのか…」

 

永遠

「セシリア、簪、本音…自分に向けられとる好意くらいは分かるわい。」

 

千冬

「分かっているなら何故お前が最低何だ?」

 

永遠

「ワシはあの3人に甘えとるんじゃよ。…今はまだ、クラスメイト、友人として接していたいんじゃ…」

 

千冬

「…火ノ兄…」

 

永遠

「無論、ワシもいつかは答えを出さねばならん…その時、あの3人の誰かを選ぶのか、それとも他の誰かを選ぶのか…それはまだ分からん…じゃが今は…」

 

千冬

「フッ…いや、お前は最低な人間では無いぞ。アイツらの事をちゃんと考えているだろ?あのマダオとは違うよ。」

 

永遠

「…そう言って貰うと気が楽になるのぉ…」

 

千冬

「全くお前の爪の垢をあの馬鹿に飲ませてやりたいな。」

 

永遠

「飲んでも奴には効かんじゃろ?」

 

千冬

「…そうだな…」

 

 そんなものであの馬鹿の鈍さが治るなら苦労はしないか…

 

永遠

「織斑先生…話は変わるがワシの事を簪と本音、鈴に話そうと思うんじゃが…」

 

千冬

「あの3人にか?…まあお前がいいなら私は構わんぞ。アイツ等はお前の家にも行った事があるから束とも面識があるしな。」

 

永遠

「スマンな…」

 

千冬

「それにアイツ等なら誰かに話すなんて事はしないだろうしな。」

 

永遠

「そうじゃな。」

 

千冬

「それで何時頃話すんだ?」

 

永遠

「今度の週末にワシの家に呼んで話そうと思っとる。学園の中じゃと誰が聞いとるか分からんからな。」

 

千冬

「分かった。アイツ等とオルコットの外泊許可は取っておいてやる。」

 

永遠

「何から何までスマンな…」

 

千冬

「気にするな。お前には一夏の件で迷惑をかけているからな。これでお相子だ。」

 

永遠

「ならそれに甘えさせてもらうかの。」

 

千冬

「それでいい!」

 

 全く一夏もこのくらい気配りが出来ればいいんだがな…

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第064話:暴露③』


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