~千冬 Side~
一夏
「俺が嫌いって…どういうことだ!何で今日会った奴に嫌われなきゃならないんだ!」
永遠
「…さっきワシは、嫌いなものがもう一つあると言ったじゃろ。」
一夏
「………まさか!」
永遠
「そうじゃ!ワシのもう一つの嫌いなモンはな…ワシの生活をぶち壊した織斑一夏!お前じゃ!」
一夏
「お、俺が?どうしてだよ!俺が何したって言うんだよ!?」
仕方ない…教えてやるか…
千冬
「…織斑…お前がISを動かした事で、火ノ兄は帰る家が無くなるからだ。」
一夏
「…え?」
ザワザワ…
一夏
「…帰る家が…無い…」
千冬
「火ノ兄はな、物心ついた頃からコイツの家が代々所有している小さな島でたった一人で生きて来た。」
一夏
「…一人で?」
千冬
「そうだ!その島に住む人間は火ノ兄一人だ!コイツは趣味が畑仕事だと言ったが、あれは自分で作った畑や田んぼを毎日手入れしていると言う意味だ!」
ザワザワ…
千冬
「そんな暮らしをしている人間を全寮制のこの学園に入れればどうなる?手入れが出来ない田畑は荒れる。植えていた野菜は収穫できずに腐る。帰った時には畑も田んぼも荒れ放題だ。元の状態に戻すだけでも数か月はかかるだろうな。」
一夏
「………」
千冬
「織斑…お前は家に帰った時、何か失っている物はあるか?」
一夏
「………ない………」
千冬
「だろうな…だから火ノ兄はこの学園に入る原因を作ったお前が嫌いなんだ。」
一夏
「…俺だって…好きで動かした訳じゃ…」
千冬
「それは火ノ兄も分かっている。だから火ノ兄は入学前に私達とある約束をしている。」
一夏
「約束?」
千冬
「お前にジャーマンスープレックスをかける事だ。」
一夏
「ハアアァァーー?」
生徒達
「えええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!」
永遠
「そういう事じゃ!覚悟せい!」
セシリア
「永遠さん!頑張ってくださいまし!」
一夏
「いやちょっと待ってくれ!何でジャーマンスープレックス?お前も何で応援してんの?」
永遠
「織斑先生に感謝せえよ!本当ならパイルドライバーを喰らわせてやろうと思っとったのをジャーマンスープレックスに変えてくれたんじゃからな!」
セシリア
「織斑先生が言ってましたわ。あなたは一度痛い目に合わせて貰った方がいいと。」
一夏
「ち、千冬姉!な、何でそんな事を…」
千冬
「織斑先生だ!?…お前、自分が望んでココに来た訳じゃないと思っているな?」
一夏
「うっ!?」
千冬
「やはりそうか!いいか!人は望む望まざるに関わらず集団の中で生きていくものだ。火ノ兄の様に始めから一人で生きていたならともかく、集団で生きてきた上でそれを放棄するなら、人であることをやめろ!」
一夏
「………」
千冬
「そして火ノ兄に一撃入れさせるのは、お前のその軟弱な根性をお前によって被害を受けた火ノ兄の手で叩き直す為だ!」
一夏
「そ、そんな!?」
千冬
「安心しろ…火ノ兄にはお前に対する確執はこの一発が最初で最後にするように言ってある。何より火ノ兄自身がそう言ってたからな。これが終わればただのクラスメイトとして接するそうだ。」
永遠
「そういう事じゃ!さて、いい加減やるとするかの!」
一夏
「ヒッ!…ま、待ってくれ!」
ここまで言ってまだ逃げようとするか…
永遠
「断る!くたばれやあああぁぁぁーーーっ!!」
一夏
「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーっ…」
ドゴオオォォーーン!
箒
「い、一夏ああああぁぁぁぁーーーーっ!」
千冬
「綺麗に決まったな…練習でもしてたのか?…見事なブリッジだ!」
セシリア
「あれがジャーマンスープレックスですか!始めてみましたわ。」
一夏
「…ブクブク…」ピクピク
う~む、泡拭いて痙攣してるな…
箒
「一夏!しっかりしろ一夏!」
千冬
「火ノ兄、起こせ!」
永遠
「へ~い…よっと!」
ほぉ、気付けが出来るのか…
永遠
「ふんっ!」
一夏
「はっ!…ぐ、いっつ~~~っ!」
永遠
「さてこれでワシの気は済んだ。これからよろしくの、織斑。」
一夏
「え!?」
箒
「き、貴様!一夏にあんな事をしてよくそんな事を言えるな!?」
永遠
「誰じゃおんしは?」
千冬
「…篠ノ之箒、束の妹だ…」
生徒達
「ええええぇぇぇぇーーーー!!」
生徒1
「篠ノ之さんって、あの篠ノ之博士の妹!?」
生徒2
「織斑先生が担任で男性操縦者が二人いて篠ノ之博士の妹もいるクラス!」
生徒3
「今年はなんてラッキーなの!」
箒
「私はあの人と関係ない!!」
生徒達
「!?」
箒
「………すまない…だが、私は確かに妹だが、あの人とは関係ない、何処にいるのかも知らないんだ…」
生徒達
「………」
…まさか、火ノ兄の家にいるなんて思わないだろうな…
永遠
「…篠ノ之と言うたか、さっき織斑先生が言うとったじゃろ。コイツへの確執はこれっきりじゃと。」
箒
「そんなこと信じられるか!」
永遠
「別におんしに信じて貰う必要は無いのぉ。決めるのは織斑じゃ、おんしでは無い。まあワシの方から積極的に関わるつもりは無いから安心せい。ホモになんぞ近寄りたくもないしの。」
一夏
「まだ言うのかよ!?」
箒
「………」
一夏
「箒!その沈黙はやめてくれ!」
箒
「………」
一夏
「何か言ってくれよおおぉぉーーっ!!」
永遠
「変態は放っといて…時に織斑先生、頼んどいたもう一つの件はどうなったんじゃ?」
一夏
「おぉぉいっ!?」
ここでそれを聞いてくるか…
千冬
「ああ、理事長からの許可を貰うことが出来た。今日から大丈夫だそうだ。」
永遠
「それは良かった…織斑先生、後で理事長先生にお礼を伝えて貰ってもよろしいかの?」
千冬
「ああ、分かった。」
セシリア
「永遠さん良かったですわね♪」
永遠
「何じゃ知っとったのか?」
セシリア
「はい♪織斑先生から教えていただきましたの♪」
永遠
「そうじゃったか。…織斑、勉強は自分で頑張るんじゃな。ワシは放課後から朝まで学園におらんからな。」
一夏
「は?」
生徒1
「え!居ないってどういう事?」
千冬
「…火ノ兄は学園に入学する際、条件を2つ出した。1つはさっきの織斑に一撃入れる事。2つ目が、このIS学園から自宅までの登下校をさせて欲しいと言うものだ。」
生徒2
「いいんですか!?そんなこと許可して?」
千冬
「火ノ兄は特例だ。さっき言ったコイツの家の事情の為だ。」
生徒3
「あ…」
千冬
「そういう事だ。織斑、火ノ兄がお前の勉強を断ったのはこれが理由でもある。」
一夏
「…少しでも早く…畑の手入れをする…」
千冬
「そうだ。」
キーン!コーン!カーン!コーン!
千冬
「時間か…授業を終わる前に伝えておく。次の時間は最初にクラス対抗戦の代表を決める。推薦したい者がいたら考えておけ。それから火ノ兄は入学手続きの書類を渡すからついて来い。以上だ!」
…まあ、誰が推薦されるかは予想がつくけどな…
~千冬 Side out~
次回『第030話:クラス代表』