IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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第137話:兄からの贈り物 緑の双刃と妖刀

 

 ~ラウラ Side~

 

 光学迷彩でも使っていたのか目の前に現れたのはこの基地に接近中のあの巨大な鳥だった…

 

クロエ

「この子は【裂空丸】…私の第5世代ISですよ。」

 

 【裂空丸】…まさか…姉上のISだったなんて…

 考えてもみれば第5世代と言うならあの外見とサイズも納得出来る…本音の【ワイバーン・ガイア】だってこの鳥以上のサイズだった

 でも、あれ?

 

ラウラ

「それなら…基地に向かって来ているあの鳥は!?」

 

クロエ

「アレはこの子の『分身』ですよ。」

 

ラウラ

「え?ぶ、分身!?」

 

 パチンッ!

 

 姉上が再び指を鳴らすと空中にモニターが映し出された

 そこに映っていたのは…

 

ラウラ

「クラリッサ…皆…」

 

 巨大な鳥…いや、【裂空丸】に挑む【黒兎隊】の皆だった

 

クロエ

「いい部下を持ってますね?」

 

ラウラ

「え?」

 

クロエ

「自動操縦でオリジナルの5分の1の力しか持たない分身とはいえ【裂空丸】を追い詰めているんですからね。」

 

ラウラ

「ア、アレで5分の1!?」

 

 私は姉上の言葉が信じられなかった

 【黒兎隊】が全員でかかって何とか優勢だと言うのに…あの分身は本体の5分の1の力しか持たないだと!?

 それなら、私の目の前にあるオリジナルの【裂空丸】は一体どれだけの力を持ってるんだ!?

 

クロエ

「この【裂空丸】の特殊能力は周囲のエネルギーを用いて『分身体』を作り出す能力です。分身体は集めたエネルギーを固定化してますので実体がありますし、特殊なシステムを使っているのでレーダーの類も本物と認識します。」

 

ラウラ

「………」

 

 信じられない事だが姉上の言う通りなら納得出来る…

 実体を持つ分身…だからこちらの監視レーダーに引っかかったのか…

 そして本体は姿を隠してこの基地に侵入した…そう言う事だったのか…

 まるで日本の『忍者』のようなISだ…

 だが、そうなると…

 

ラウラ

「姉上…何故そこまでしてこの基地に?私に会いに来るだけならココまでする必要が無いと思うのですが…」

 

 そう、姉上の行動が今一分からないんだ

 現にこの基地の戦力は私の【黒兎隊】だけでなく他の兵士達も【裂空丸】の分身の迎撃に出動している

 分身を囮にしてまで基地をここまで手薄にしたのは何故だ?

 

クロエ

「会いに来るだけならここまではしませんよ。この基地の兵士達に出払って貰ったのには訳があるんですよ。」

 

ラウラ

「訳?」

 

クロエ

「ええ、まず私はこの国が心底嫌いです。こんな国滅んでしまえばいいとさえ思っています。」

 

ラウラ

「………」

 

クロエ

「別に何も関係の無い一般人まで死んでほしいなんて思ってはいませんよ?私が嫌いなのは『ドイツ』と言う国と私みたいな人間を作った上層部のゴミ共だけです。だから私は貴方以外のドイツの人間とは会いたくないんですよ。例えそれが…同じ『鉄の子宮』から生まれた人であっても…このドイツと言う国では会いたくないんです。他の国でしたら別にいいんですけどね。」

 

ラウラ

「………」

 

 姉上はそこまでこの国を嫌っているのか…

 いや、もしかしたら私も同じ考えを持つ事になっていたかもしれないんだ…

 そう思うと何も言えなかった…

 

クロエ

「次の理由ですが…事前に調べたところ、貴方はここ最近訓練漬けでISの整備も必要最低限しかしてないそうですね?」

 

ラウラ

「うっ…ハ、ハイ…」

 

 姉上は知ってるのか…

 

クロエ

「だからあのタイミングで分身をこの基地に近づければ貴方以外の隊員は分身の迎撃に出向き、貴方は整備の為に残ると思ったんですよ。」

 

 この状況は全て計算の上だったのか

 

クロエ

「お陰で今この基地には私の邪魔が出来そうな人は一握りしかいません。ですが分身もあの様子ではいつまで持つか分かりませんね…用件をさっさと済ませましょう。」

 

ラウラ

「………」

 

 一体…用件とは何なんだ…

 私がその事を考えていると…

 

 ドンッ!

 

ラウラ

「!?」

 

 【裂空丸】が足に掴んでいたコンテナを私の前に置いた

 

ラウラ

「あの…コレは?」

 

クロエ

「貴方の『第5世代』です。」

 

ラウラ

「なっ!?」

 

 第5世代!?

 私の!?

 

クロエ

「今の貴方には必要だと思います。束様が造った物では無いので恐縮ですが受け取って下さい。」

 

ラウラ

「え…博士じゃ無いって…ではこれは…姉上が!?」

 

クロエ

「そうです。ではご覧下さい。」

 

 そう言うとコンテナが開いた

 すると…

 

クロエ&ラウラ

「え!?」

 

 私だけでなく姉上も驚いていた

 何故ならコンテナから出て来たのは…

 

ラウラ

「これは…」

 

 一方は長い柄とその両端に緑色の羽根の様な刃が取り付けられた双剣…

 もう一方は刀身が昆虫の羽のような透き通った模様が刻まれた異質な刀…

 この二本は以前どこかで…

 

クロエ

「【疾風の双刃カムイ・ハヤテ】と【黒蟲の妖刀ウスバカゲロウ】!?」

 

 そうだ!?思い出した!?コレは臨海学校の時に兄上に教えて貰った【剣刃(つるぎ)】の二つ…それも上位に位置する光と闇の緑の【剣刃(つるぎ)】だ!?

 

クロエ

「な、何故コレが入ってるんですか!?」

 

 どう言う事だ?姉上が入れてたんじゃないのか?

 私達が驚いていると…

 

永遠

『あ~…クロエや?聞こえるかの?』

 

クロエ

「兄様!?」

 

 兄上の声が流れ始めた

 まさかコンテナの中に【剣刃(つるぎ)】を仕込んだのは兄上の仕業なのか?

 いや、兄上しかいないか…【剣刃(つるぎ)】は兄上にしか作れないんだからな…

 

永遠

『クロエよ、これを聞いとると言う事は恐らく隣にラウラがおるじゃろ?』

 

クロエ&ラウラ

「!?」

 

永遠

『お主がこのISをラウラに渡すという事は主等の仲違いも終わったという事じゃろう。この二本の【剣刃(つるぎ)】はそんなお主等へのワシからの餞別じゃ。』

 

クロエ&ラウラ

「………」

 

 兄上は…姉上の気持ちに既に気付いておられたのか…

 

クロエ

「…兄…様………束…様…」

 

 姉上…泣いておられる…

 そうか…兄上一人でこんな手の込んだ仕掛けが出来る筈が無い…篠ノ之博士も協力しているのか…

 だから姉上はお二人の気持ちが嬉しくて…

 

永遠

『さて、お主等にも余り時間は無いじゃろうから手短に済ませるぞい。』

 

 少しして兄上の声が再び流れ始めた 

 確かに時間は余りない…姉上の侵入が何時までもバレない訳では無い…もし他の連中に見つかったら私は姉上を最悪拘束しなければならないからな…

 それでも兄上はこれを聞いて姉上が泣かれる事も考えて少し間を開けておいてくれたんだろうな…

 

永遠

『お主ら二人に用意した【剣刃(つるぎ)】は【疾風の双刃カムイ・ハヤテ】と【黒蟲の妖刀ウスバカゲロウ】の二振りじゃ。以前話したと思うがこの二本は緑属性の光と闇の【剣刃(つるぎ)】じゃ。所有者に関してじゃが、それはお主ら二人で話し合って決めんさい。どっちがどの【剣刃(つるぎ)】を選ぶのかは自由じゃ。選んだ方を持てばそのままその【剣刃(つるぎ)】は所有者として登録する様にしてある。一応忠告しておくが一人一本じゃぞ。欲張って二本とも取ろうとせん事を望むぞい。ではこれにてワシからのメッセージは終わりじゃ。クロエよ、土産話を楽しみにしとるぞ♪』

 

 最後にそう締めくくって兄上からのメッセージは終わった…

 

クロエ

「…兄様…楽しみにしててくださいね♪」

 

ラウラ

「姉上…」

 

 姉上は笑っていた…

 兄上の想いが本当に嬉しいんだろう…私も嬉しい…兄上は私達の仲が良くなる事を望んでいてくれたのだから…

 

クロエ

「ラウラ…」

 

ラウラ

「ハイ!!!」

 

クロエ

「貴方は【カムイ・ハヤテ】でいいですか?」

 

ラウラ

「…え?」

 

 姉上はいきなり何を…

 【カムイ・ハヤテ】は…『光』の【剣刃(つるぎ)】!?

 

クロエ

「私には『闇』が合っています。貴方はそちらを使って下さい。」

 

ラウラ

「!?」

 

 姉上はそう言って【ウスバカゲロウ】に手を伸ばした

 だ、だが…

 

ラウラ

「だ…駄目です!!!」

 

クロエ

「え!?」

 

 私は姉上を押しのけるとそのまま【ウスバカゲロウ】を掴んだ

 

クロエ

「何をしてるんですか!?」

 

 私の突然の行動に姉上は驚いていた…

 だが…姉上に【ウスバカゲロウ】を持たせる訳にはいかないんだ!!

 

ラウラ

「姉上は『闇』ではありません!!」

 

クロエ

「!?」

 

ラウラ

「姉上はこれまで私の影として苦しんできました…ですが、姉上も仰ったでは無いですか!!私の影である事などもう気にしないと!!」

 

クロエ

「確かにそう言いましたが…」

 

ラウラ

「姉上はもう『影』でも『闇』でも無いんです!! これからは『光』の中を生きて下さい!!」

 

クロエ

「…だからと言って貴方が【ウスバカゲロウ】を選ばなくても…」

 

ラウラ

「いいえ!!姉上には『光』の【剣刃(つるぎ)】を持っていて欲しいんです!!」

 

 そうだ…姉上はこれまで十分苦しんだ…犠牲になった姉妹達の分も一緒になって…

 そんな姉上がやっと光のある場所を歩いて行けるんだ…例え【剣刃(つるぎ)】の事でもこれ以上姉上に『闇』を近づけさせてはいけないんだ!!

 

クロエ

「…ラウラ…」

 

ラウラ

「それに私はもう【ウスバカゲロウ】を手にしました!もう所有者を変える事も出来ませんよ?」

 

 本当はあるんだが姉上が知っているとも限らないし…それに知っていても私は絶対に渡すつもりは無いからな!!

 

クロエ

「………ハァ…分かりました…」

 

 姉上も観念してくれたようだな!!

 

クロエ

「では【カムイ・ハヤテ】は私が使わせて貰います。本当に良いんですね?」

 

ラウラ

「ハイ!!!」

 

 そう言って姉上は残った【カムイ・ハヤテ】を手に取った

 すると…

 

 パァ~…

 

クロエ&ラウラ

「!?」

 

 【カムイ・ハヤテ】と【ウスバカゲロウ】が緑色の光を放った

 次の瞬間には2本ともナイフ位のサイズに縮んでいた

 コレは以前見たな…セシリア達の【剣刃(つるぎ)】も同じように小さくなって待機状態になったがアレと同じか…

 兄上…【黒蟲の妖刀ウスバカゲロウ】…大切に使わせていただきます!!!

 

 ~ラウラ Side out~

 


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