~簪 Side~
永遠
「では始めるかのぉ…」
一夏
「………はい…」
朝食を済ませた私達は早速訓練を始める事にした
でも、魂の戻った織斑一夏の顔色は優れない…それも当然!あんな書置き残して織斑先生を心配させたんだからこうなったは必然と言ってもいい!
今迄の彼を見ているとなんだか、将来は『天然ボケの芸人』か何かになりそうな気がして来た
まあ、それはいいとして今は織斑先生が来るまで頑張って特訓する事だね…特訓の成果が認められればお説教の時間が少しは減るかもしれないからね?
永遠
「もう一度言うとくがワシは畑仕事と自分の修行がある。ゆえにお主に付きっきりで訓練は出来ん。それは分かるな?」
一夏
「…はい…分かってます…」
…いい加減立ち直った方がいいよ?
でないと…
永遠
「…シャキッとせんか!!それ以上腑抜けた面しとるなら追い出すぞ!!!」
一夏
「ス、スイマセン!!!」
永遠がキレるんだよね…
永遠
「全く!!姉が来るまでに腕を磨いて驚かせてやろうとは思わんのか己は!!!」
永遠も同じ事考えてたんだ…嬉しいな…以心伝心みたいで…///
一夏
「そ、そうか!?確かにその通りだな!!お願いします師匠!!!」
永遠
「師匠呼びは止めい!!それで特訓の内容じゃが…先ずは『薪割り』をせい!!」
一夏
「…え?…薪…割り?…薪割りってあの斧で木を割る…アレの事か?」
永遠
「そうじゃ。薪割り用の木と斧はそこに用意してあるからアレを使え。」
永遠がそう言って指差した所には山積みにされた丸太が置いてあった
でも、薪割りか~…
一夏
「確かに薪割りって言ったら修行の定番だよな!!分かったぜ!!」
訓練内容を聞いて頷いてるけど…フフッ…あの永遠がそんな定番なだけの訓練をさせる訳無いよ!
永遠
「但し!
一夏
「…え?…【白式】で?」
永遠
「うむ!まあ物は試しじゃ。まずはワシが実演するとしよう。」
そう言うと永遠は【ドットブラスライザー】を展開すると薪用に切り出しておいた木を1本、台の上に垂直に立てた
次に斧を持つと軽く振って斧の刃を木に少し食い込ませた
そして、最後に斧を振り上げると食い込んだ木ごと持ち上げてそのまま振り下ろした
カンッ!
すると、木は綺麗に真っ二つに割れた
永遠
「今の手順をISでやってみい。念を押すが木は2回目に切るんじゃぞ。それとISは部分展開ではなく全展開でやるんじゃ。…ではやってみい!」
一夏
「オ、オス!!」
織斑一夏は早速【白式】を展開すると永遠から斧を受け取った
そして、永遠は畑仕事に行くと言ってISを解除して行ってしまった
私も彼の邪魔をしない様に本音と一緒にこの場を離れた…私達も自分達の訓練があるからね…
それから織斑一夏…言っておくけどこの薪割り特訓…私もやった事があるんだけど、これって簡単そうに見えて…すっごく…難しいんだよ?
~簪 Side out~
~一夏 Side~
薪割りか…修行の定番の一つだな!!
まっ!薪割りくらいすぐに終わらせて次の修行に移ろう!!
一夏
「え~っと…先ずは木を立ててっと…」
俺は余裕の気持ちで木を立てようとした
でも…
コト…
一夏
「アレ?」
コト…
一夏
「グッ…」
コト…
一夏
「グヌヌッ…」
コト…
一夏
「ダァァァッ!!」
コト…
ぜ、全然立たない!!
何でだぁぁぁぁぁっ!!!
コト…
あ!また!?
一夏
「こ、今度こそ~…」
そ~っと…そ~っと…
ピタッ!
一夏
「…やっ…やった…立ったぞ!!」
ISで木を立てるだけなのに、それがこんなに難しいなんて…
それで次は…え~っと…斧を木に食い込ませるんだよな…
木を立てさえすれば後は簡単簡単♪
一夏
「よっ!」
カンッ!
一夏
「………アレ?」
斧を食い込ませるだけの筈なのに…何で真っ二つに…そんなに力を入れて無いんだけど…
と、とにかくもう一度だ!!
2回目に割れって言われたからこれは失敗だ!
あ!また木を立てる所からか…
………
……
…
永遠
「織斑~…昼飯じゃぞ~?」
一夏
「え!?」
もうそんな時間!?
永遠
「どうじゃ~?何本切れた~?」
一夏
「そ、それがその…0…です…」
始めてからもう2、3時間は経った…でも俺は師匠に言われた手順で1本も切れていなかった…
永遠
「さよか…どうじゃ?難しいじゃろ?」
一夏
「ハ、ハイ!…難しいです…」
本当に難しい…師匠は簡単にやってたから楽勝だと思ってたけど全然違った
ISを使った薪割りがこんなに難易度が高いなんて思ってもみなかった…
でも、この修行って…
一夏
「あの師匠…薪割りが難しいのは分かったんですけど…コレってどんな意味があるんですか?」
永遠
「師匠は止めいと…まあ今はいいか…薪割りの意味じゃったな?簡単に言えば『精密操作』と『力加減』の訓練じゃよ。」
一夏
「精密操作と力加減…」
永遠
「そうじゃ、まず精密操作言うんは指先の細かな動きの事を言う。コレを鍛えるのが木を立てる作業に繋がる。当然の事じゃが薪用に切り出した木は全て形が違うから一つ一つ立てる度に置き方が変わる。つまりは毎回指先の操作が変わるんじゃ。」
一夏
「な、なるほど!?」
永遠
「次に斧で木を切る作業が力加減の訓練になる。2回に分ける訳じゃから力の入れ具合を変えねばならんじゃろ?それに何でもかんでも毎回全力を出せばいい訳ではなかろぉ?そげな事しとったら無駄に体力を使うだけじゃい。」
一夏
「………」
…その通りだ…
この薪割り…ちゃんと精密操作と力加減の訓練になってる…
永遠
「それにの…この薪割りじゃが…ワシが思うにお主に一番必要な訓練じゃと考えとる。」
一夏
「え?俺に?」
永遠
「うむ…その【白式】の【零落白夜】の事を考えてみい、そいつは加減を間違えると本当に人を斬ってしまう代物じゃ。それを考えるとお主には刀を振る力加減と刀をより細かく使う為の精密操作が必要となろう。そう考えるとこの修行はお主に丁度いいんじゃよ。」
一夏
「………確…かに…」
加減を間違えると本当に斬る…言われてみるとその通りだ…
この修行は…俺にこそ必要な修行だ!!!
永遠
「どうやら分かったようじゃな?」
一夏
「ハイ!!!」
永遠
「よか!じゃがまだ初日じゃ、行き成り出来るようになれとは言わん。無理せず少しずつ体に覚えさせていきんさい。」
一夏
「師匠…ハイ!!!」
永遠
「じゃから師匠は止めいと言うとるじゃろうが!!全く…ホレ!飯じゃ!皆も待っとるし早よ戻るぞ!!」
一夏
「あ、ハイ!!」
よし!!飯を食ったら早速続きだ!!
休みが終わるまでに薪割りを完璧に出来るようになるぞ!!!
~一夏 Side out~