ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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投稿が遅くなってしまい、大変申し訳ありませんでした。
今回のような小数点ナンバーは、ストーリーに関係ないオリジナル回になります。

追記:12/3、タイトル改題


SB1-4.5「ECHO」

AP241:3/23 9:00

アークスシップ:ゲートエリア

 

これは、空白の8時間。

アメリアスがシエラと、「地球」についての情報を整理した、その後。

「⋯ じゃあ夕方。よろしくね」

アメリアスは通信端末を閉じ、ため息をついた。

「ったく、2年ぶりだからってあんな驚かなくたって⋯ 」

ぶつぶつと呟きながら、ゲートエリアの上層へ登っていく。

 

「あれ⋯ アメリアス?」

そこへ声をかけたのは、極地探索用の戦闘服に身を包んだ、ニューマンの女性。

「ユクさん!お久しぶりでs」

「ユクリータ!!」

「すんませんしたーっ!!」

いきなり怒鳴られ、反射的に頭を下げた。

彼女の名はユクリータ。アメリアスの同期の姉であり、2年前、色々あってアークスに身を寄せた。

 

「うう⋯ すいません、ユクリータさん⋯ 」

「まったくあんたって子は⋯ まあ、元気そうで良かったけど」

ため息をついたユクリータは、ああそうだと呟いて、

「アフィンが探してたよ、あんたのこと。昨日、あいつほぼ一日中出張ってて、会えなかったって」

「あ⋯ ありがとうございます」

アメリアスはぺこりと頭を下げ⋯ 気づいた。

いつもはここで話が終わるのだが、ユクリータはまだ何か言いたげな顔だ。

ユクリータはしばらくアメリアスの顔を見ると、

「⋯ また何か面倒ごと?」

唐突に、そう言った。

 

「うっ⋯ えっと⋯ 」

「誤魔化しても無駄。あんた、考え事してると顔に出るのよ⋯ 」

ユクリータは呆れたように、目の前の少女を見る。

「何が起きてるかは⋯ まあおいおい聞かされるでしょうけど⋯ 困ってるんなら言いなさい。出来る事は⋯ するから」

「ユクリータさん⋯ 」

 

アメリアスはこくっと、頷いた。

「それじゃ、任務があるから」

さっきアメリアスが来た道を、ユクリータは降りていく。

「ありがとうございました、ユクさ」

「ユクリータ!」

「失礼しましたあっ!!」

また頭を下げたアメリアスの端末に、ちょうど着信が来た。

 

「ん? メールだ」

短い文言をささっと読み、アメリアスはふふっと微笑んだ。

「あー、そうだよね。すぐ行く」

独り言を呟きながら、アメリアスは近くのテレポーターに入った。

 

AP241:3/23 9:24

アークスシップ:ショップエリア

 

ショップエリアに転送された私は、たたっと階段を降りて、モニュメント広場へ向かった。

 

「おーい! アメリアスー!!」

不意に聞こえてくる、私を呼ぶ声。

その声の主は、ちらっとモニュメントの下を見るだけで、すぐにわかった。

広場のど真ん中にいるのは、白い服を着た、白髪の少女。

 

桜色の瞳でこちらを見上げ、手を振っている。

何より特徴的なのは⋯ 白い、流線型のデザインをした、浮遊型の車椅子に乗っていることだった。

「久しぶり! レイツェル!」

階段の上から少女の名を呼び、手すりに手を掛ける。

そのまま一気に手すりを越え、少女⋯ レイツェルの目の前に着地した。

 

「相変わらずアグレッシブだな、アメリアスは」

澄み切った独特の声で、レイツェルは笑う。

「レイツェルこそどうしたのよ、転勤?」

この、私より一つ年下の少女は、アークスシップ市街地エリアの、集中管理室に勤めている。

普段は市街地エリアの環境を整え、ダーカー襲来なんて時は、避難の司令塔になったりする場所だ。

 

「いやいや。ちょっとした報告会の様なものだ⋯ 全く、『地球』と言う星の事には驚かされたな」

「あー⋯ 」

誤魔化し半分に、頭をかく。

レイツェルはクスリと笑うと、

「どうせ君も、一枚噛んでるんだろう?」

「ま、まあね⋯ 『守護輝士(ガーディアン)』なんてものになっちゃったし⋯ 」

 

そういえば、地球の事はともかく、断片情報の件はどこまで伝わっているのだろうか。

「それはそうと、その席にヨハネスもいたぞ。相変わらず、こっちは見もしなかったけど」

「あー、あいついっつもそうなんだよね⋯ 」

じーっと自身の前の端末を見つめる青年の顔が浮かび、吹き出しそうになってしまう。

「ぷっ⋯ 会うのが楽しみだなぁ」

「そういえば⋯ ステラは何処だ? あいつ、昨日メールを送ってきたが⋯ 」

 

きょろきょろと、辺りを見回すレイツェル。

「ステラは出撃中。カトリさんにデュアルブレードの扱いを教えて貰うんだって」

「そうか⋯ 全員の顔を見たかったが⋯ 」

レイツェルはしゅんとして、顔を落とした。

「そうだよね⋯ 『全員』集まりたいね」

 

『全員』。

元ヒューマンの、私とステラ。

元ニューマンの、ヨハンとレイツェル。

そう⋯ この4人が、『転生(ジェネレート)計画』の、4人の被験体。

私は、レイツェルの足に目を落とした。

「やっぱり⋯ 歩けそうには、無いの?」

「治療法の模索は続いているが⋯ 私とヨハネスの障害に関しては、駄目そうだ」

 

『転生計画』によって残った傷は、決して小さく無い。

ヨハンは、聴力を失い。

レイツェルは、足の自由を失い。

ステラは、4年近く意識を失い。

もっとも後遺症が少なかった私も、先日の出撃の様な、暴走の危険性を孕んだ身体になった。

 

「⋯ 気を落とさないでくれ」

レイツェルの声に、ハッとして顔を上げる。

「私達にとって、君は誇りだ。君がこうしてアークスとして活躍している⋯ それだけで、十分なんだ」

「レイツェル⋯ 」

「私達だって、何も出来ない訳じゃ無い。ヨハネスなんか、アークス内部ネットワーク管制室⋯ だったか。そこで頑張っている」

 

レイツェルはじっと、こちらを見つめて、

「皆⋯ 生きている。だから君も⋯ 」

「⋯ みなまで言わなくて良いよ、レイツェル⋯ ありがとう」

 

3人の、仲間。

かけがえの無い、大切なひと。

私にとって、一番勇気をもらえる存在。

 

「頑張るよ。私の⋯ 私に、出来る事を」

レイツェルは満足げに、頷いた。

「よし⋯ それじゃ、私はこれで。そろそろ管理室に戻らないと」

レイツェルは立ち(?)去ろうとして⋯ ふと、振り向いた。

 

「そういえばアメリアス⋯ 君の方こそ、見つかったのか?」

「あ⋯ 完全に忘れてた⋯ 」

小さくため息をつくレイツェル。

「⋯ まあ、君の勝手だが⋯ この件は、きっちりケリをつけないと、駄目な気がするんだ⋯ だから」

「そうだね⋯ ありがとう、思い出させてくれて」

「ああ、それじゃあまた」

 

区画移動用テレポーターに向かうレイツェルと別れ、自室へと向かう。

「あ⋯ お帰り、マスター⋯ 」

声をかけたリオに手を振り返して、ビジフォンを開く。

プライベートフォルダにアクセスすると、

「あれ⋯ エクスプローラに検索履歴? 誰か使ったのかな⋯ 」

 

怪訝な顔になりつつも、フォルダを漁る。

「はあ⋯ 」

しばらく目を動かして、私はため息をついた。

「やっぱり、何も無いよな⋯ 」

旧「虚空機関(研究部)」の名簿や、その研究資料。

約半年をかけ、シャオ君やウルクやカスラにお願いして、こんな資料を私的に保管させてもらってまで。

私はずっと⋯ 自分の父親の正体を探っていた。

 

「転生計画」実行にあたり用意された4人の被験体は、無論全員が、研究用に調整された個体⋯ 言ってしまえば、デザインベイビーだ。その記録は、虚空機関のデータベースに、しっかり残されていた。

しかし何故か⋯ 私とステラの父親の記録だけ、すっぱりと抹消されていたのだ。

どうにかして思い出そうにも、被験体となった4人は、実験以前の記憶が大部分失われている⋯

 

「⋯ ああっ!やっぱ思い出せない⋯ !」

どさっと、すぐそばのベッドに倒れ込む。

私がアークスになったのが、3年前。

ステラが目を覚ましたのも、3年前。

実験が行われたのが、7年前。

私が生まれたのが、18年前⋯

 

「⋯ でも、諦めたくない」

正直、希望は薄いのはわかっている。

だけど、諦めたら後悔する。そんな気がしてたまらない。

 

「マスター⋯ ?」

「ん⋯ ああ、大丈夫だよ⋯ ふわぁ」

あくび一つして、ごろっとベッドの上で転がる。

「リオぉ、ステラ帰ってきたら起こして⋯ 」

「ん⋯ りょーかい」

独特のぼそぼそとした声を聞きながら、私は目を閉じた。

 

AP241:3/23 14:00

アークスシップ:ゲートエリア

 

「あ⋯ お帰り、ステラ!」

スペースゲートの前で、アメリアスはカトリと共に帰ってきた妹を迎えた。

「如何でしたか、カトリさん?」

「はぁ、はぁ⋯ アメリアス様の妹様は、中々アグレッシブなお方で⋯ ふひぃ」

妙に息を切らして、カトリは答える。

 

「姉ちゃん姉ちゃん!凄いねナベリウス!木がいっぱいあって、池もあって!!」

「はいはい⋯ ステラはこの後、メディカルチェックでしょ」

興奮して話すステラをなだめるアメリアス。

「早く行ってきな。フィリアさん、あれで結構心配性だから⋯ きっと待ってるよ」

「ん。それじゃあカトリさん!ありがとうございました!!」

カトリと別れ、ステラはメディカルセンターに向った。

 

「⋯ 見た目の割には、快活なお方ですね」

「⋯ 精神年齢が低いんですよ。私似な分、なおさらそう見えるんでしょう」

感心するカトリに、そっけなく返すアメリアス。

カトリはそんなアメリアスを見て、ぽつりと、呟いた。

「⋯ 妹様、大切にしてあげて下さいね?」

「⋯ 当然です。今まで⋯ 何も、してあげられなかったから⋯ 」

 

振り向いて、アメリアスは歩き出す。

「あれ⋯ どちらへ?」

「復帰の手続き、ちゃんと終わってないものが、まだ残ってて⋯ 適当に済ませないと」

「そうですか⋯ では、また」

テレポーターに消えるアメリアスを見送り、カトリもその場を離れた。

 




「ECHO」
ずっと、勝ち抜いてきたものの。
この見えない敵は、どう戦えばいいものやら。

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