ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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定時投稿できなくてすみません。
さてさて、ついにあの方のご登場となります。


SB4-8「茶番カプリシオ」

AD2028:4/12 10:00

地球:ラスベガス

 

「……そういえば」

ヒツギがぽつっと呟いたのは、アメリアスとアーデムが情報交換のために話していた矢先だった。

「ん?どうしたヒツギ」

「前々から気になってたんだけど、マザー・クラスタは幻創種を使った襲撃はしてくる割に、此処を直接襲ったり、破壊活動とかは全然しないな、って」

 

ヒツギの意見に、エンガは「何言ってんだ」と眉をひそめる。

「この間、東京でテロ起こしたばかりだろうが」

「あれはベトールが勝手にやってたんじゃない。あれ以外で考えて、よ」

「……興味深いですね。その傾向については、僕も気になっている所でした」

 

否定を返したヒツギに、アーデムが同意した。

「確かに幻創種がアースガイドを襲う事は多々ありますが、建造物や自然…地球に直接被害が及びかねない攻撃は避けている傾向があります」

「言われてみれば……そうですね」

口元を押さえ、アメリアスも小さく頷く。

 

「後はまあ、この地下施設の正確な座標が掴み切れていない、といったところでしょうか」

「ちょくちょく暴れて俺たちを引きずり出してるあたり、そんなところだろうな。もっともこれだけ返り討ちにされてるんだから、奴さん痺れを切らしてもいい頃なんだが……」

(やっぱり大活躍ね、アメリアス)

(は、はあ……)

ヒツギに囁かれ、アメリアスが苦笑した……その時。

 

「———っと!また襲撃か!!」

また鳴り響いたアラートに、エンガが舌打ちする。

「まあまあ、ささっと片付けちゃいましょう。シエラ、ポイントは?」

対してアメリアスは慣れた様子で、シエラに通信を繋ぐ。

『あ、はい……っ、これは簡単にはいかないかもです』

しかし通信越しのシエラの声は、普段よりも明らかに深刻だった。

 

「シエラ?」

『本部周辺B区…幻創種だけではなく、具現武装及び人間の生体反応を確認しました』

その通達を聞いた時の反応は、それぞれ全く違っていた。

どうやら同様の連絡を受けていたらしいアーデムは、座ったまま何も言わずに瞑目し。

エンガは腕を組み、ぽつりと、「来なさったか……」と呟き。

アメリアスは腰に手を当て、ふうっとため息を吐き。

 

そしてその碧眼が見つめる先で、ヒツギは顔を強張らせていた。

「……まあいい、来なさったなら迎え撃つだけだ。行くぞアメリアス」

「任せてください、エンガさん」

「エンガ。君に言っても無意味かもしれないけど……気を付けて」

アーデムに頷きを返し、エンガは踵を返す。

 

「兄さん、私も………」

「……お前は此処に居ろ。今回は人が相手だ」

背後からのヒツギの声に、エンガは振り向かずに言い放った。

「っ………」

「お前にその覚悟があるのか?大人しくしておいた方がいいんじゃないのか」

 

エンガの言葉に、ヒツギは唇を噛む。

彼の本心に気づかないほど、ヒツギは馬鹿ではない。

この兄は、自分をこの領域から……戦いから遠ざけたいだけなのだ。

「……あのさ、ヒツギ。貴女はそんな無理しなくたって」

そして、アメリアスが不用意に放った一言が。

 

ヒツギの心の、撃鉄を引いた。

「……五月蠅いっ!!何よ貴女まで……あたしを馬鹿にしないで!!」

叫ぶと同時に、ヒツギは「天羽々斬」を握りしめる。

「ヒツギ……!?」

そして次の一瞬で、ヒツギは執務室の扉を斬り飛ばし、外へと飛び出した。

 

「なっ……!?あの馬鹿!!」

目を剥くエンガ。

「す、すぐ追いましょう!!」

アメリアスは慌てて、ヒツギを追って走り出した。

 

 

AD2028:4/12 10:30

地球:ラスベガス

 

白昼のラスベガスに、砲火が鳴り響く。

「こちらβ隊!幻創種の反応、減少しています!!」

「わかった、だが気をつけろ!この近くには『使徒』がいる!!」

 

具現武装の特異反応に続き、Bエリアに出現した幻創種。

いつ現れるか知れない「使徒」......マザー・クラスタの最大戦力に警戒しつつ、その迎撃を続けるアースガイド達。

 

そして、それら全てを見下ろすビルの上で。

「......つまんない、100%つまんない!あいつら全然出てこないじゃない!!」

紫の体毛に覆われた巨躯......異形の幻創種に乗った少女が、不満の声を上げていた。

 

「こんな10%火力じゃなくてさあ!どかんと一気にやっちゃおうよ!!」

「......オークゥ、弁えろ。此度の我々の目的を忘れるな」

その声に、少女の隣に立つ男が、不愉快そうに喉を唸らせる。

 

双方とも、纏うのは純白の礼装。

あの時東京に現れた、5人の「使徒」のうちの2人だった。

「ハイハイわかってまーす、100%わかってまーす!!ったく、こんなのあたしとフルがいれば100%問題ないってのに......」

「フルにも今後の準備がある。それもわかっているはずだ」

 

オークゥと呼ばれた少女は、ぶぅ、とふてくされてしゃがみ込む。

「フン......お前は何時もその調子だな。緊張のかけらもない」

言うと、男は何かに気づいたように顔を上げた。

 

「......『彼女』の準備が終わったようだ。私もそちらへ向かう」

踵を返す男に、少女は振り向かずに尋ねる。

「......大丈夫なの、あいつ」

「作戦前は緊張しているようだったが、今は覚悟も決まっているだろう。ここは任せたぞ、オークゥ」

 

男は答えると、音もなくその場から消え去った。

「............そういうことじゃないんだっての。あの70%おじさんめ」

どこか慚愧を含んだ声で呟き、少女は立ち上がる。

 

「仕方ないわね......じゃ、こっちはこっちの仕事をしちゃおっか、『ラプラス』」

少女が何かに呼びかけるように言った、その時。

 

「—————っ!!」

激しい光が、少女の視界を覆った。

「ラプラスっ!!」

咄嗟に飛び降りた少女の声に、巨大な幻創種が庇うように飛び出す。

直後数発の弾丸が、幻創種の眼前に飛び散った。

 

「このっ、いきなり不意打ちとか、100%卑怯よ卑怯!!」

少女は声を荒げて、再び幻創種の上に飛び移る。

 

その、見下ろした視線の先には。

「......あいにく、こっちは育ちが悪いんでな。これくらいは当然の事だ」

銃を携えた赤毛の青年と、銀髪の少女の姿があった。

 

 

「ようやくのご登場ですか、オークゥ・ミラー」

異形の幻創種の上に立つ少女は、私の声に目を丸くした。

「……ふぅん。あんたが例のアークス?あたしのこと知ってるんだ」

「ちょっと調べたらすぐ出てきましたよ、稀代の天才数学者さん?」

 

オークゥ・ミラー。

弱冠18歳にして博士(ドクター)の称号を得、すでに学会でも名が知られているらしい天才数学者。

そして……マザー・クラスタの「使徒」の一人。

 

「そう。こっちもアンタのこと、マザーから聞いたわ。アークスでもとびきり、200%危ないヤツだって」

少女…オークゥは言って、幻創種から飛び降りる。

「だからあたしが来てあげたのよ。この、オークゥ・ミラーがね!」

 

オークゥの声に呼応するように、背後の幻創種がうなりを上げる。

「来い………!」

私がブーツを展開した、その時。

「待て……!!ヒツギはどうした!!」

そのエンガさんの声で、私は気づいた。

 

ヒツギがいない。

具現武装の反応を追ってきたはずの少女の姿が、ない。

「何で……っ!!?」

急いでレーダーを確認し、私は瞠目した。

 

このビルから少し離れた、地上に。

もう一つの、具現武装の反応があった。

「反応は一つだけだったはず……!」

「よーっし引っかかったー!!さっすがオフィエル、エーテルの流れまで隔離しちゃうなんて!」

愕然とする私の前で、オークゥは満足げに笑う。

 

「ふざけろ!!」

瞬間、エンガさんが双銃を携え飛び出した。

「よそ見してる場合かしら、60%色男さん!!」

「……っ!?ぐあっ!!」

オークゥの横を突破しようとした疾走は、横からぶつかってきた何かに阻まれる。

それは巨大な幻創種と同じ色合いの、目玉に翼がついたような個体だった。

 

「エンガさんっ!」

反射的にブーツを起動し、イル・ザンをけしかける。

目玉を巻き込んだそれは、一直線に大型種へ進み、

「!!」

大型種に当たる寸前で、バリアのようなものに掻き消された。

 

(今のは……!?)

「あーあ、マクスウェル一匹無駄にしちゃったじゃない」

オークゥの周りに、数匹の同じ目玉が飛来する。

「何のためにアンタたちを分断したと思ってんのよ。アンタたちの相手は、あたしたち」

主を守るように立つ巨躯と、それに従うように舞う翼。

二騎の従者と共に、「使徒」は私たちに対峙する。

 

「さあ行け、『ラプラス』『マクスウェル』!舞台は整い、因果は紡がれた!100%、あたしたちが勝つ戦いよ!!」

幻創の徒が嘶く。

私にはそれが臨戦の雄叫びではなく、何故か勝利を祝う鬨の声に聞こえた。

 

 

AD2028:4/12 10:41

地球:ラスベガス

 

「ふっ………!!」

ヒツギはビルから飛び出し、地上に着地した。

『あの、ヒツギさ……はやく………!!』

(さっきから通信が悪い…?静かなのは助かるけど……)

途切れ途切れのシエラの声を無視し、路地を駆ける。

 

幸いレーダーは生きており、具現武装の反応をしっかりと示している。

「あたしだって…あたしだって!!」

もう、心など決まっている。

たとえ何が相手しようと関係ない。自分にだって戦う力がある。

何処からか湧いてくる理由のない自信が、ヒツギを突き動かしていた。

 

そして、住宅街の一角、小さな広場に飛び込んだ先に。

「—————!!」

白い正装にフードを被った、小さな後ろ姿があった。

 

......忘れはしない。

端でずっと俯いていた、東京に現れた使徒の1人———!

「見つけた......!!」

敵との距離は10m弱。

ヒツギは一気に、手にした刀に力を込める。

 

夢想するのは、ブレイバーの技の一つ。その名の通り、鉄をも斬り裂く絶技。

「......グレンテッセン!!」

エーテルの奔流が、ヒツギを呑む。

 

直後、ヒツギの体は光のように飛んだ。

「はあああああああああっ!!!」

その咆哮に気づいた敵が、振り返る。

しかし既に、その眼前にヒツギの姿はなく。

「そこっ———!!」

「天羽々斬」は、敵の背後へと躍り掛かっていた。

 

グレンテッセン。

このアーツは瞬時に間合いを詰めた後、敵の背後より断ち切る技。

......即ち、裏の裏。

敵がヒツギに対して正面を向けば、ヒツギはその背後を取れる。

 

「取った!!」

鈍色の刃が、煌いた。

完全な死角、常人には対応できない一閃は、

「————っ!!?」

鋼を叩き割るような音と共に、弾かれていた。

 

エーテルの余波が突風のように走り、白いフードが吹き飛ぶ。

その向こう、露わになった敵の姿を見て。

 

「な——————!!?」

ヒツギの思考は、全て停止した。

 

こぼれ出る、艶やかな長い黒髪。

危うさの欠片もない、無垢な光を湛えた紅い瞳。

目の前に現れたそれは、紛いもなく———

 

「コオ、リ............!?」

少女の、唯一無二の親友だった。

 




「茶番カプリシオ」

揺らぐ天秤 乱れた脚本 罪に汚れた器達
各々の歌を勝手に奏でる 不協和音の狂想曲

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オッフィーの診察(?)をカットしちゃいましたが、「ヒツギ・???」と「エンガ・安藤・オークゥ」を分断して進行してみました。
いまいち兄妹の仲違いが弱い気がしたので、その辺もはっきりと。

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