ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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この次、4章はこの次からが本番なんだ……!
だから諦めるなメガネ……!!


SB4-7「人造エネミー」

AD2028:4/11 13:00

地球:ラスベガス

 

「幻創種反応、消滅!」

「よっしお疲れ!帰投帰投!!」

「隔離切るぞーー!火器類しまえーー!」

曇り空のラスベガスに、アースガイドの声が飛び交う。

 

再び発生した幻創種の鎮圧を終わらせ、解散するところだ。

そして、その中に、

「お疲れ様、今日も大活躍だったわね」

「そうかな?いつも通りやっただけなんだけど…」

戦闘服から制服に戻るアメリアスと、共闘していたヒツギの姿もあった。

 

「おーい、大丈夫か…って聞くのも野暮か」

駆け寄ってきたエンガが、アメリアスを見て苦笑する。

「ええ、あたしの出番なんか、全然なかったわ」

「一応、私はこれが本業ですから。ヒツギに無茶させるわけにもいきませんし」

「全くだ。いいブレーキになってくれてて、そっちの意味でも助かってるぜ」

 

なによそれー!と、ヒツギが兄に不満げな声を投げる。

しかし幾ら具現武装が使えたところで、結局ヒツギは一般人だ。

彼女にまた無茶をさせるわけにはいかない。それが、ひとまずのアメリアスの方針だった。

「じゃあ戻るか。アーデムからも話があるってよ」

隔離領域が消え、景色が日常に塗り替わる。

今起こっていることを知らない無辜の市民に混ざり、アメリアス達はアースガイド本部へ帰還した。

 

「さて、中から執務室に入るならここっと」

「に。兄さん、そんな軽いノリで入っていいの?」

「いいんだよ別に。おーいアーデム?」

執務室をのぞき込んだところで、エンガはふと足を止める。

 

「——はい、わかりました。それでは今度、僕が直接お伺いして事情を……」

執務室のアーデムは、誰かと通話している様子だった。

(何話してるのかしら…それにあれ、随分古い型の携帯よ……?)

(そうなの?)

「……お気になさらず。そちらの問題も放ってはおけませんから……では、また」

 

通話を終えたアーデムは顔を上げ、エンガ達を手招きした。

「お疲れ様、エンガ」

「そっちもな。また例の紛争地帯か?」

入ってきたエンガに、アーデムは頷く。

 

「首長がお互いに無理難題を言い合ってるので、仲裁をお願いできないか、だそうだ」

「中東の話は込み合ってるからなぁ。頑張ってくれよ、王子様」

さも当然のように話す2人の横で、ヒツギがえっと声を上げる。

「中東の紛争地帯って…よくニュースにもなるあれ?アースガイドって、あれにも関わってるんですか?」

「むしろそっちがメインなんだよヒツギ。マザー・クラスタが出しゃばってくるまでは、俺たちの活動は紛争解決や和平調停の手助けが主だったんだ」

 

むしろマザー・クラスタなんかと戦争状態な今の方が異常なんだと、溜息をもらすエンガ。

「……尤もアースガイドとしての歴史を見れば、その各国の折衝や調停すら異常なのでしょうが」

アーデムも、どこかやるせない様子で同調した。

 

「……あの、今の話を聞いて、思ったんですけれど」

すると少し後ろで話を聞いていたアメリアスが、前に出て口を開いた。

「結局、アースガイドは…本来、どういった組織なのですか?」

エンガは少しアメリアスを見て、難しそうに腕を組む。

「話せるには話せるが…オラクル出身のお前さんにはピンとこないかもな」

「ふむ……ではあえて、ヒツギさんに少し尋ねてみますか」

 

アーデムは言うと、ヒツギの方を見て、

「ヒツギさんは、『魔法』という言葉を聞いたことがありますよね」

「え、それは、まあ……」

「では、具現武装を見てこう思いませんでしたか?『まるで魔法のようだ』……と」

少女二人は、同時に目を見開いた。

 

「そう、魔法…創作の世界に出てくるような超常的な現象は、実在するものです。こちらではオラクルのように、それが普遍的な技術になることはありませんでしたが」

オラクルは、フォトナーは全知存在(シオン)により、フォトンを制御する知識を与えられた。

しかし、地球にはそれがなかった。

だからこの世界では、エーテルを使うことは、常識からの逸脱として扱われている。

そしてその逸脱が、「魔法」なんて名前をつけられて、架空のものとして扱われてきたのだ。

 

「先天的にその素質があった者、あるいはエーテルを見つけ出し、己が力とした者……そんな能力者が集い、アースガイドは生まれたのです。同じくエーテルによって引き起こされる、不可思議な事件や事象の解決を目的として」

「エクソシストだの魔術師(ウィザード)だの、日本だったら陰陽師なんてよばれるアレ。ああいうのが集まった組織さ」

 

『恐怖とは、信じていた常識が脅かされることで生まれるもの』…ヒツギはふと、国語の教科書に載っていた一文を思い出した。

エーテルが生み出す、人間の常識の外にあるもの。それに対抗するために生まれたのが、その「非常識」を得た人々…アースガイド。

 

「この星に出現する幻創種は、人々の無意識に抱く感情が形になったものだと伺いました。そしてそれらも『悪魔』や『妖怪』といった名で呼ばれ、一般には架空のものとして扱われていると」

アメリアスの言葉に、アーデムが頷く。

「十分な餌を得て、一般人でも知覚できるようになった個体ですね。本来あのような力を経た個体は、出現することすら稀でした。だからこそ世界から隠匿し、アースガイドが対処することができていたのです」

 

できていた。

この過去形の意味も、アメリアスにはもう分かっていた。

「……これだけ大々的にエーテルが使われれば、エーテルによる自然具現も増えるというものですよね」

「アメリアスさんのご想像のとおりです。エーテルが発見され、情報通信という形で発展していくにつれ、そういった現象も急激に増加しました」

「おまけに、能力に目覚める人間も増えた。俺やヒツギのようにな」

 

幻想をカタチにし続け、アースガイドによって隠され続けてきたエーテル。

それはマザー・クラスタの手によって暴かれ、エーテルインフラとして人々の前に現れた。

技術の革新と、恐怖の具現。

そして、その全てを束ねる魔法を連れて。

 

「そもそもアースガイドがエーテルを隠匿し続けたのは、その存在が発見され、自然に普遍化すれば、混乱も騒乱も起こらない、と考えたからです。エーテルが見つかった当初は、その目的は果たせたと思っていましたが……」

「マザー・クラスタが現れ、エーテルを掌握してしまった…」

アメリアスの呟きに、アーデムは頷く。

 

「……最初にお話しした通り、僕達の活動は本来、表舞台に立つものではありません。人々が相争うようになり、僕達の相手はいつの間にか、星から人へと変わっていった」

青年は語る。

人間同士が争うのは、醜いことだと。

そしてエーテルが、その為の新しい「力」になってはいけないと。

 

「エーテルはクラスタ(一集団)が独占するものではなく、未来を創るガイド(導き)にならなければいけない。それが…僕の、僕達の戦いで」

アーデムが言いかけた、その時、

『シーザーズパレス付近にてエーテルの異常反応!幻創種の出現予兆です!!』

「また話してる時に……!速やかに領域を隔離、待機しているエージェントに急行させてくれ!」

 

端末にに指示を飛ばし、アーデムはそのままエンガ達の方を向く。

「……えっと」

「任せろ。行くぞお嬢さん方!」

「「了解!!」」

エンガ達はその頃には、執務室を飛び出していた。

 

執務室が急に、静かになる。

「……大した規模じゃないから、巡回してたエージェントだけで事足りるよって、言おうとしたんだけどな」

残されたアーデムは、ぽつっと呟いた。

 

AD2028:4/11 16:00

地球:ラスベガス

 

アーデムの悪い予感は、おおむね当たった。

ヒツギ達が目的のリゾート施設に到着する頃には、大体の戦闘が終わっていた。

「あーあ、戦わなくて済んだのはよかったけど、ちょっと損した気分」

「まあまあ、あのコロシアムっていうの?綺麗だったし見れて良かったよ」

 

ため息をつくヒツギの横で、満更もなさそうに言うアメリアス。

エンガには先に戻ってもらい、2人は少し、ラスベガスの街を歩き回っていた。

「そろそろ戻ったほうがいいかもね。エンガさん心配してるだろうし」

「……そうでもないかも。兄さん、貴女を信頼しきってるもの」

 

苦笑するヒツギ。

「みんなびっくりしてたわ。流石、アークスは違うって」

「ステラやイオも無双してたからね……ラスベガスへの位相も確定したし、いざとなったらいつでも駆け付けられるよ」

「なら、アースガイドの人たちも安心しきりでしょうね……」

 

そこまで言って、ヒツギはふと口をつぐんだ。

「ヒツギ?」

「……あのさ、変なこと聞いていい?」

俯きがちのまま、ヒツギはアメリアスの碧眼を見つめる。

「アメリアスの……貴女の戦う理由って、何?」

 

その問いに、アメリアスは一瞬瞠目した。

しかしその意味を理解したのか、ふうっと息をつく。

「……そっか。話しておいた方がいいかもね。まあ単純に私の居場所を守りたい、それだけだよ」

「…?じゃあ、どうしてあたしたちまで」

うーんとねぇ、と、細い腕を組むアメリアス。

 

「何て言えばいいんだろう……伝わらなかったら、ごめんね」

そう断った上で、アメリアスは告げた。

「私が居る場所、じゃなくて……私が居られる場所を守りたい。そういうことなんだよね」

「………?」

はじめその言葉の意味が分からず、ヒツギは首をかしげた。

 

「へ、変な話しちゃったね!帰ろう帰ろう!」

困惑するヒツギを見て、誤魔化すように歩みを早めるアメリアス。

ヒツギは歩きながら、少し考えこむ。

 

居る場所ではなく、居られる場所。

その言い回しの、小さな、だけど確かな違和感。

「—————ん?」

ヒツギは何かに気づいて、ふと立ち止まり、

「—————!!」

気づくと同時に、凄まじい悪寒を覚えた。

 

(アメリアス、貴女———!)

すたすたと遠のいていく、少女の後ろ姿。

先ほどまで、頼もしく見えていたそれは。

今は何故か、酷く歪んで見えた。

 

 




「人造エネミー」

「ああ素晴らしいね。」と手を叩いてみても
全部嘘で外はゴミだらけ
ねえ、苦しいほどそれに埋もれた君が———

———————
なおヒツギが思い返していた一文ですが、実際に昔国語の授業でこんな文章を習ったんです。
「なるほどなぁ」と思いましたね。

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