ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
なんか最近多いんですよね。
SB4-1「神様のいたずら」
――人によって作られたものには、それぞれの「有用性」が与えられる。
それはそのままものの「価値」となり、有用性を…価値を失ったものは「処分」される。
…それは理性と野生が混ざり合い、弱肉強食の先に生み出したルール。
霊長の頂点に立った人類が、己が生み出すものに課した理だった。
A.P241:4/8 8:00
アークスシップ:アメリアスのマイルーム
「ん……ん~」
だいたい3回目くらいのアラームの音に、私は我慢できなくなって起き上がった。
「朝かぁ……ふぁあ」
ぺったりと、力なくベッドに突っ伏す。
「……いかんいかん、起きろ私…」
顔を上げ…またぺったりと、力なくベッドに突っ伏す。
「……いかんいかん、起きろ私…」
顔を上げ…またぺったりと、力なくベッドに突っ伏す。
「……だから起きろって私……!!」
またぺったりと、力なくベッドに突っ伏…慌てて起き上がる。危ない危ない、無限ループに入るところだった。
そう……私の天敵は、朝である。
「ん……そういえば、昨日シャワーとか浴びてない……」
眠い目をこすりながら部屋着を脱ぎ捨て、小さいシャワー室に入、
「わたっ!!?」
脱ぎ切れてなかったスウェットパンツで転びかけ、改めてふらふらとシャワー室に入る。
(おっかしーなー、昨日はさっさと寝たんだけどなぁ……)
長い金髪とデューマン特有の白い肌にお湯が流れるのを眺めながら、ぼうっと考える。
しばらく熱いお湯を浴びていると、ようやく意識がはっきりとしてきた。
(とりあえず今日は、艦橋に行って…)
体を乾かしながら、思案する。
1時間ほど前に目を覚ました時、ヒツギさんからメールが来ていた。
エンガさんから色々話があるので、9時ごろに艦橋に集まりたいということだ。
「とりあえず着替え……」
シャワー室を出て、いつものマギアセイヴァーに装いを変える。
「やけどは、治ってるか……んうっ」
着替えを済ませて一度伸びをしたころには、なんとかちゃんと目が覚めていた。
「っと、カフェでモーニングでも食べてこよっかな」
確かフランカさんのカフェは、結構早いうちからやっていたはず。
そう思って私は、背後の時計に視界を飛ばし……
「え……?」
その、『8:50』という表示に、凍り付いた。
まずい…まずいまずいまずい!!
まさかさっき、無意識のうちに本当に無限ループに入ってた!?いつもは2,3回で終わるのに!!
「あーもう!なんで今日に限って……!!」
モーニングは諦め、アイテムパックのレーションをひっつかむ。
口に放り込んだその欠片に、口の中の水分を持っていかれる感覚に涙目になりながら、私はマイルームを飛び出した。
A.P241:4/8 9:00
アークスシップ:艦橋
「おはようございますっ!すいませんちょっと遅れて…」
「あ、アリスお姉ちゃん!おはよー!」
艦橋に飛び込んだアメリアスは、アルの元気な声に迎えられた。
「よーしよし、おはようアル君。今日も元気そうで何より…ん?」
ふとアメリアスは腰を落とし、アルの首にかかっているものを見る。
どこか見覚えのある緑の宝石がはめ込まれた、ペンダント。
「アル君、それって……」
「この間もらった森林エメラルドを、ペンダントにしてもらったのよ」
アメリアスが尋ねると、奥に立っていたヒツギが答えた。
「あ、ヒツギおはよう」
「おはよ…って、なんか肌赤くない?大丈夫?」
「あ、えっと大丈夫、さっきちょっぴり全力疾走してきただけだから……」
ヒツギの問いに、しどろもどろに説明する。正直今は、デューマンという自分の種族が本気で恨めしい…
「全力疾走…?まあいいか。えーっと、よくショップエリアにいる黒いキャストのおじさん…なんてったっけ」
「ジグさん?刀匠の?」
「そうその人…アルがいつの間にか仲良くなってて、加工してもらってたんだって」
いつ話したんだろう…と、一人首をひねるヒツギ。
「へぇ……よかったねアル君」「うん!」
アメリアスはちょんちょんと、アルの頭を撫でる。
「でも……気難しそうなジグさんが、珍しいですよね」
すると会話を聞いていたらしいシエラが、ワークチェアをヒツギ達に向けて言った。
「アル君を気に入ったんじゃない?可愛いし素直だし。ねー」
「……アメリアスもすっかり魅了されてるわね」
ヒツギが呆れて呟いていると、
「―――すまん。ちょっと遅れちまった」
ゲートが開き、エンガが姿を見せた。
「大丈夫よ兄さん。遅刻はこっちも一緒だから」
「不可抗力です。睡眠は人間の生理的欲求です」
くいっとこちらを指したヒツギに、むすっとした顔で答えるアメリアス。
「まあいいか。シエラさん、こちらから提出したデータは……」
「はい、全てチェックできています」
シエラの答えに、エンガは目を見開いた。
「あの量を一晩でかよ……本当にとんでもねぇな、オラクルってとこは」
感服した様子で、エンガは艦橋を見渡す。
「このアークスシップも、地球とは段違いのテクノロジーだ……地球も、行く行くはこのくらいまで進歩できるのかねぇ」
「……とはいってもシエラ、この技術力だって、元をただせばフォトナーがシオンにフォトンの扱いを教えてもらったからでしょ?
「そうですね……将来的に、地球の皆さんがシオンのような存在に接触できれば、あるいはそのようになるかもしれませんね」
語り合いだす3人に、ヒツギはこほん、と小さく咳払いした。
「兄さん、その話は後でいいでしょ」
「そうでもない、俺達
「だから、そのアースガイドってなんなのよ」
むっとして言い返したヒツギに、エンガは困った顔で、
「なんなのよって言われてもなぁ…マザー・クラスタの敵でアークスの味方。それ以上の説明いるか?」
「それじゃ全然わかんないわよ!マザーの敵って……」
「はいはい落ち着け。ったく、ちょっと考えればわかることだっての…」
半分呆れたような顔で、エンガは説明を始めた。
「まず……マザー・クラスタは、エーテルインフラを管理…もっと言えば掌握している。ここ数十年で急速に発達した情報化社会の、根幹になるものを支配してるってことだ。当然、何処の国も手を出せねえ」
それが、何を意味するか。
横で聞いていたアメリアスには、痛いほどわかっていた。
2年半前…アークスはそれで潰されかけたのだから。
「仮に奴らが地球を潰したいなら、核ミサイルの制御でも弄ればいい…世界中の情報インフラを掌握してるっていうのは、裏を返せばそういうことだって簡単にできちまうんだ」
「その状況を良しとしないのが、アースガイド、と」
「そういうことだ。アークスのお嬢さん」
頷いたエンガに、シエラが言葉を続ける。
「マザー・クラスタへの対抗組織として、アースガイドは比較的早い段階からアークスとコンタクトをとっていました。例えば、アイカさんの地球潜入での便宜をはかってもらったりとか、ですね」
「あの頃はまだ大っぴらに動けたが、ここ最近で目を付けられちまってな」
先日の反攻戦も、アークスの協力があったから出来たんだと、エンガは語った。
「じゃあ、兄さんの部屋が吹っ飛ばされたのはアースガイドにいるのがばれたから?……なんだ、自業自得じゃない」
「アホ。お前がマザー・クラスタから寝返ったせいで、俺の経歴まで洗われたからバレたんだよ。元をただせばお前のせいだっつの」
まあ元々隠す気も無かったがと、溜息交じりに続ける。
「結局、そのおかげで奴さんを釣れたんだから結果オーライだ。――ああやって連中が表に出てき始めた以上、アースガイドも動かなきゃいけねぇ。その連絡役として、俺が来た」
エンガは笑って、というわけだからしばらくここに居させてもらうぜ、と締めた。
「良かったねヒツギ。お兄さんもいてくれるって」
「よかない」「えー……」
アメリアスの何気ない発言に、憮然とした声で返事をするヒツギ。
「遠慮するなよヒツギ、唯一の肉親だろ?ほれほれ、お兄ちゃんが抱きしめてやろうかー?」
「だが断るッ!!ったくもう、あたしちょっと散歩してくるから!行こ、アル!!」
「ふぇ?え、ええっ……?」
ぽけっとエンガの話を聞いていたアルの腕を引き、ヒツギはスタスタと艦橋を出ていく。
残されたエンガは、相変わらず冗談通じねぇなと苦笑した。
「ま、こっからはあいつがいなくてもいい話だし丁度いいか……一先ず、今後についてなんだが」
エンガは言って、シエラとアメリアスのほうへ向き直る。
「昨日連絡が来たんだが、近々アークスとアースガイドで会談の場を持ちたいということだ。こっちの準備もあるから、すぐにとはいかないが……」
「こちらも状況整理や情報共有があるので、その方が助かります」
答えたシエラに、エンガは頷いた。
「助かる。それともう一つ……ええっと、なんて言ったっけか、お前さん」
「あ、はい……アークスシップ8番艦所属、
いきなり呼ばれ、あたふたと自己紹介するアメリアスに、
「アメリアス…改めて、礼を言わせてくれ。ヒツギを助けてくれて、ありがとう」
先ほどまでの な態度とは打って変わって、誠実な面持ちでエンガは言った。
「エンガさん……」
「あんな無鉄砲でどうしようもないバカでも……俺の妹だからな」
「……私にも妹がいるので、何となくわかります。なんだかんだ、大切に思っちゃうんですよね」
アメリアスの言葉に、エンガはそうだなと苦笑する。
「さて…俺から出来る話はこんなところだ。後は地球からの連絡待ちだな」
「そうですか。じゃあ……」
アメリアスは頷くと、
「…射撃練習があるので、失礼します」
やや気恥ずかし気に言ったアメリアスに、2人は思わず笑ってしまった。
A.P241:4/8 10:00
アークスシップ:ゲートエリア
「おや、おやおやおや?アメリアスさんではないですかあ」
エンガさんと一緒に艦橋を出た私を、キャストの少女の声が呼び止めた。
「あ、リサさん……」
「それにそちらは…またまたへんてこな感じの人がいらっしゃったみたいですねえ」
エンガさんを見て、リサさんはにやりと笑う。
「はあまったく、アメリアスさんはどんどん素敵で不思議なお友達が増えていて羨ましいですねえ」
「は、はぁ……」
「リサにも少し分けてくれませんかあ?素敵で不思議な感触がしそうなので……ぜひぜひ撃ってみたいんですよお」
こ、この人出会い頭にぶっこんできた……!
「…あのですね。アークスの印象が歪みかねないので」
務めて冷静に答える…一瞬右足が下がったが。
「あいかわらずおっかないですねえ……」
「お、おいアメリアス?この人は一体……?」
剣呑な雰囲気を見かねてか、エンガさんが尋ねてきた。
「リサはリサ、ですよお。よろしくお願いしますねえ」
リサさんはエンガさんを見上げ(この人かなり身長低いのだ)、右手を伸ばす。
「あ、ああ。エンガだ、よろしくな」
エンガさんはおそるおそる、その手を取った。
「ふふふ、警戒されてますねえ。大丈夫です。リサは何もしませんよお」
すると鉄仮面のような笑顔のまま、リサさんはエンガさんを見つめ、
「ところで……あなた、銃を撃つひとですよねえ?それもスナイパーよりの、ねえ?」
その言葉に、エンガさんは目を見開いた。
「…何で、そう思うんだよ」
「リサを警戒して一瞬強張ったときに、一番最初に力が入ったのが足でしたよお?距離を取ろうとしたんですねえ」
リサさんはさらに、エンガさんの右手を指さして、
「ですが、腕の動きは特になし…ということは、持っている銃を構えるひとではなく、銃を生み出すようなひと、ですかねえ?」
「………っ。ちょっと握手しただけで、そこまでバレるものなのか?」
そうですねえと、リサさんは笑う。
「スナイパーに必要なのは観察眼です。違和感をつかまえるのは、戦場で最も重要な能力ですからねえ、ふふふ」
「いやはや、すげぇ人に出会ったもんだ」
感心した様子でエンガさんが呟いた、その時。
私とリサさんの調査端末が、甲高いアラート音を発した。
「東京で異常反応……これはスクランブルっぽいですね」
十中八九、幻創種の発生予兆だ。
「おやおや、すぐに出撃要請がきましたよお……いいですねえ、地球の不思議な幻創種を、いっぱいいーっぱい撃ち殺せますねえ!」
お先に行きますよおと、リサさんは移動用カタパルトへ歩いていく。
「あのふわふわした感じが違和感すごくて、気持ち悪くて気持ちいいんですよねえ!!アメリアスさんもお早く―!!」
慢性的にハイなテンションをさらに上げ、リサさんはクエストカウンターの方へと飛び去った。
「……あー、その、なんだ」
残されたエンガさんが、言いにくそうに口を開く。
「アークスって、変な奴のほうが強かったりするのか?」
「あ、あはは……」
私は、ひきつった愛想笑いしか出来なかった……
「神様のいたずら」
……どうしてどうして。いつもいつもいつも。
二度寝しちゃうのおおおおおお!!?
―――――――――――
(あとがきに何も書かないのに耐えられなかった)
while(1)
{puts("「……いかんいかん、起きろ私…」");}
実は2コ前の章でも、こっそり二度寝してたり……?