ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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大晦日ですが更新です。
本来あとがきに書くべきかもしれませんが…よいお年を。


SB3-13「ダンスアクターズダンス」

AD2028:4/7 19:50

地球:東京

 

「遅れんなよヒツギ!」

「兄さんこそ!!」

エーテルの形どる武器を操り、兄妹は幻創の怪物を迎え撃つ。

「ステラ、2秒後に3時方向に突撃……!」

「いよっしゃあ!…って、さらりと予測とかしてるよこの人!?」

それを助けるように、星の護り手も街を舞う。

 

そして、彼らの先に立つ少女は。

交差点の中央で、堕ちた鬼才と対峙していた。

「よーやく1対1か…みんながへばる前に終わらせないと」

まるでデイリーワーク(普通の仕事)でもするかのような口ぶりで、アメリアスはブーツで路地を突く。

ベトールは何も言わずに、ずっと座っていた折り畳み椅子から立ち上がる。

 

「……俺としたことが、一つ、聞き忘れていた。肝心のアクターの名前を、な」

「………アメリアス」

「Ameliace…ありがとよ。最後までアークスと呼ぶのも、味気がないからな」

クラッパーボードを側に浮かせ、ベトールは軽く両手を振るう。

すると小さな光球が灯り、それは小ぶりな二丁拳銃へと転じた。

 

「…マザー・クラスタ『木の使徒』!ベトール・ゼラズニィ!!最高のFILM(作品)を撮らせてもらうZE!!」

ベトールの声と共に、アメリアスの周囲に撮影用カメラが具現する。

「っ!」

カメラから飛ぶビームを身をひねってかわし、アメリアスはベトールへと突撃する。

 

「CUT!!」

突如横殴りの暴風が吹き、アメリアスの体を押し飛ばす。

アメリアスがそちらを見やると、数台の巨大なファンが具現していた。

「こりゃまた、豪勢な舞台装置で……!」

続けざまに放たれる銃弾をかいくぐり、毒づく。

 

(前も見えないとか、勘弁してよ……!)

実際、銃撃を躱すことは難しくない……発射さえ確認できれば。

しかしこの強風、そしてカメラによるオールレンジ攻撃のせいで、ベトールを捕捉することすらままならない。

 

(こうなったら……あんたを信じるよ、レイ!)

アメリアスは意を決し、ブーツのリミッターを切った。

限界ぎりぎりまでフォトンをチャージし、無理やり前を見る。

「過剰圧縮完了…吹き飛べ!!」

新たな風が渦巻く。

殆ど暴発に等しいイル・ザンが、ベトールへ向け驀進する。

 

「そいつはmiss takeだぜ!!」

しかし周りのファンがイル・ザンのエネルギーを拡散させ、法撃はベトールに届くことなく掻き消える。

フッと笑ったベトールは――直後、刮目した。

「それは…どうかな!!」

膨大なエネルギーによって、一瞬発生した、凪。

 

その隙間を突っ走り、アメリアスはベトールへ肉薄する。

「喰らえええっ!」

完璧な位置から、最大出力の蹴撃を解き放つ。

迫る一撃を前に……ベトールは、笑った。

 

「……You’re fool」「がっ………!!?」

アメリアスの視界が、焔に染まる。

接近の瞬間に置かれた指向性爆薬が、間髪入れずに炸裂したのだ。

「ハッハー!無様に爆散して……何!!?」

 

―――しかし。

(あんたがなりなさい――あの子を守る、剣と盾に)

「舐める、な……!!!」

守護者の光は、消えない。

 

爆風を払い、長い髪が金紗のように躍る。

妄執に囚われた男の望んだ、絶望の炎を掻き消し。

希望の輝煌が、流星のごとく降り注ぐ……!

 

「はあああああああっ!!!」

直撃。

ノンチャージ、しかし渾身の力で放たれたヴィントジーカーが、ベトールの体を吹き飛ばす。

「ぐはあっ!!!」

ベトールは地面に叩きつけられ、そのまま昏倒してしまった。

 

「……一丁上がり、と」

少し離れたところに着地し、倒れたベトールを見やる。

フォトンによる防護機構のおかげで、お互い大きなけがは無いようだ。

「…っ。でもちょっと火傷したかな」

バータでも当てて冷やそうかなと、いい加減なことを考えていると、

「姉ちゃん!」「アメリアス!!」

 

制圧が終わったようで、四方の路地からヒツギ達が集まってきた。

「ベトールは……」

「あそこで伸びてます、ほら……」

エンガの問いに、アメリアスが白い指をベトールのほうに向けると、

 

「ぐふっ……俺の、ステージが……!!」

ベトールは、ふらふらと起き上がっていた。

「あれま、意外と復帰が早い」

「ハアッ…だが、Goodだactors……お前たちが監督を上回ってこそ、最高のフィルムになる……!」

 

エンガはふうっとため息をつき、銃口をベトールに向ける。

「この期に及んで、まだ映画の心配かよ」

「それしか、うぐっ、の、能のない、男だからな……だが……」

ベトールはおぼつかない足取りで立ち上がると、アメリアスを指さした。

「最高のactressへ、一つアドバイスだ……守るのは勝手だが、その意味を見失うなよ……?」

「…?何を言って……」

アメリアスが聞き返した、その時。

 

「マスター!!」

滅多なことでは声すら上げないリオの、叫び声が、交差点にこだました。

「リオ!!?」

全員が振り向き、瞠目する。

先ほどまでリオが交戦していた、大通りの中央に。

空中に浮いた光のパネルに立つ、5つの人影が現れていた。

「マザー・クラスタ………!?」

その全員が纏う白い礼装に、アメリアスは金の瞳を細める。

 

「全員でっていうから、50%くらい期待したけど…どいつもこいつも70%くらい弱そう。今ここでやっちゃおうよ、フル」

「…もう、駄目だよオークゥ。私たちはあいさつに来ただけなんだから」

 

アメリアスと同年代に見える、紫髪と蒼髪の少女。

 

「ほほ。フルの言う通りじゃよオークゥ。此度のわしらの目的は、彼奴(きゃつ)らではない」

 

禿げ上がった頭の、大柄な老爺。

 

「……無様な負け姿だな。ベトール」

 

そして、侮蔑に満ちた目でベトールを見下ろす、壮年の男。

 

「反応感知、数5!!何時からあそこに……!?」

「おいおい、奴さん勢ぞろいかよ…!!」

驚愕するシエラ。エンガも、苦々しく呟く。

「………?」

そんな中で、アメリアスは。

 

「………」

老爺の横で沈黙を貫く、フードを目深にかぶった人影を見つめていた。

(あの人、何処かで……?)

「――こちらの言葉に従わないから、そうなる」

 

背後から聞こえた声に、驚いて振り向く。

一瞬のうちに、中央の男はベトールの目の前に転移していた。

「ハ……そんなことを言いに来たわけじゃあないだろう、オフィエル?」

「ああ………マザーが、粛清を決められた」

オフィエルと呼ばれた男が、左腕をベトールに向ける。

するとベトールの周りに、無数のメスが具現する。

 

「「「!!!」」」

その場にいた全員が、何か言う間もなく、

「が…………っ!!!?」

ベトールの体は、瞬く間に串刺しになった。

 

「ならば私は……その意思に従うまでだ」

地面に落ちたクラッパーボードを踏みつぶし、男…オフィエルは動かなくなったベトールに近寄る。

そしてその体に軽く触れると、ベトールの体が光に包まれ、消え去った。

「――世界の病巣よ。今一度、宣告しよう」

声と共に、オフィエルが再び、先ほどの位置に転移する。

 

「我々マザー・クラスタの目的は、そちらにいるアルという少年の身柄のみ。引き渡せば、地球人の身は保証する」

ヒツギ達を見下ろし、オフィエルは告げる。

「…それ、まるで私たちアークスの身は保証しない、と受け取れますが?」

「私はマザーの言葉を伝えるのみ。引き渡さなければ、全ての病巣を取り除くだけだ」

 

食って掛かったステラに、オフィエルは冷酷に言葉を続ける。

直後5人の周囲が瞬き、その姿は消えた。

『……反応、完全にロスト』

シエラのやるせない声が、通信端末から漏れる。

 

「「……………」」

全員が黙り込み、残り火の燃える音だけが響く。

(アルを、引き渡せ……)

亜贄萩斗にも告げられた、マザー・クラスタの要求。

ヒツギには、その真意は全く掴めなかった。

 

AP241:4/7 21:00

アークスシップ:艦橋

 

あの後。私たちの撤退とほとんど入れ違いで、警察や消防が到着した。

無論一連の交戦は隔離領域内のことなどで影響はないが、それ以上前の被害は衆目にさらされている。

都心での大規模な爆発事故……テロと思われてもおかしくないレベルだが、どうなるのだろうか。

 

地球側のことも気になったが、とりあえずエンガさんから話があるということで、私たちは艦橋に集まっていた。

「改めて…アースガイド極東支部所属、八坂炎雅(エンガ)だ。こちらの援護依頼への対応、感謝する」

そう言って、「アースガイド」の職員証を見せるエンガさん。

 

ふと気になった…援護要請なんて、あっただろうか?

「シエラ、援護要請なんて、私聞いてないんだけど……」

「ん、まあ姉ちゃんには知らせてなかったからね」

口をはさんだのはステラ。し、知らせてなかった?

 

戸惑う私の服のソデを、リオがつんつんと引いた。

「えっと……マスターが、東京にいってる時……連絡があって……

「すぐにお伝えしようとしたところ、マスターに止められました。どうせならもっと面白くいこうと」

「うわああああフェオ君いつの間に!!?ってまさか、さっきのあれって……!」

 

そういうこと、と言って、嬉しそうに胸を張るステラ。

「姉ちゃんとリオさんの通信で座標を掴んで、一気に全戦力で制圧する…名付けて『オペレーション・ワイルドハント』!」

「霊界から来る猟団とは、洒落た名前を思いついたもんだ」

「すいません……ステラさんにごり押しされてつい協力を……」

 

口々に言う皆の様子に、プルプルと震えていた右腕も収まってしまっていた。

「はぁ………まあいいや。結局うまくいったわけだし」

大きく溜息を吐いて、軽く手を上げる。

「ところでお願いなんですけど……今日はもうクタクタで。また明日集まりませんか?」

「えー、アメリアス午後いっぱい寝てたって聞いたわよ?」

「うるさいよヒツギ。疲れたものは疲れたの。貴女だって、アル君サラに預けっぱなしでしょ」

 

そんなやり取りをしていると、エンガさんがフッと笑った。

「……いつの間にか、随分仲良くなってんな。俺は明日でも構わないぜ」

「眠いアメリアスさんに何言っても伝わらないでしょうし、そうですね。情報交換は明日にしましょう」

……なんか引っかかる言い方されたな、今。

 

ともかく、今日はお開き。

エンガさんとヒツギはアル君を迎えに行くそうで、2人とはドミトリーエリアに入ったところで別れた。

「お疲れさま、リオ」

「うん、マスターも……」

 

リオと部屋に入るなり、私はベッドに飛び込んだ。

「んじゃあリオ、おやすみ……」

「早…まあ、おやすみ……」

眼を閉じると、私はあっという間に眠り込んでしまった。

 

AP241:4/7 21:15

アークスシップ:ドミトリーエリア

 

「お姉ちゃんの…お兄ちゃん?」

突如現れた青年を、アルはきょとんと見つめていた。

「ま、そういうことになるのか。はは」

笑いながら、アルの頭をなでるエンガ。

「えへへ……お兄ちゃん」

アルはそれを気に入ったようで、エンガにぴとっと抱き着いた。

 

「むぅ……」

そしてそれを、微妙な視線で見つめる少女がひとり。

「おーよしよし……何だヒツギ、妬いてんのか?」

「るっさい!別に妬いてなんかないわよ!っていうか、アルと顔合わせたなら帰った帰った!」

「オイオイそこまで邪険にすることないだろー?兄貴が生きてたんだぜ?」

 

エンガはそう言うと、ふと思い出したようにヒツギに尋ねた。

「……の割には、大分落ち着いて戦ってたが」

「ふん…兄さん以上に頼りになる人が、此処にはいっぱいいたってことよ」

「ほう?そりゃあ顔を見ておきたいもんだが……」

エンガが嘯いた、その時。

 

「失礼、します……」

おもむろにドアが開き、リオが姿を見せた。

「あれ、マスターのとこにいなくていいのか?」

「もう、寝ちゃった……」

「……そりゃまた、健康的なことで……」

 

呆れるエンガの横から、アルがとてとてと走り寄る。

「リオ、その…ありがとう。お姉ちゃんたちを、たすけてくれて」

「お礼なら、マスターに……うん、伝えておくね」

「うん!!」

嬉しそうにほほ笑むアル。

 

「……なるほど。確かに俺がいなくても、何とかなってたみたいだな」

エンガも感心したような目で、リオを見る。

ヒツギは、その様子を眺めながら、

(……まあ今は、アルが無事だったのを喜んでおこう)

複雑な心の中で、そう、思った。

 

I never say “change the world”.

All I want is to save you.

 




Up slide down slide Up and down

踊れ、讃え、願いの舞。
紡げ、歌え、生という名の人間賛歌。

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