ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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だいぶ遅れてしまい、申し訳ありません…
稲刈りごったくで投稿する暇もなかったもので……

そういえばいつの間にか投稿1年でした。
やばい…これ投稿中にEP5終わるぞ…


SB3-9「とんとんまーえ!」

A.P241:4/5 9:00

アークスシップ:ゲートエリア

 

朝のゲートエリアに、ぱたぱたと走り回る影が一つ。

「うぅ…マスター……?」

「あれ、リオちゃん?どうしたの?」

クエストカウンターの職員に声を掛けられ、振り向いたリオは、珍しく狼狽の表情を浮かべていた。

「あ、レベッカさん…さっき、マスターへの定期通信に失敗して…」

「え!?パートナーと通信ができないって…ちょっと待って」

レベッカは驚いた様子で、カウンターの端末に指を走らせる。

しばらくすると、レベッカははぁ…という呟きとともに、リオのほうを向いた。

「なるほどね…リオちゃん、これ見て?」

レベッカから手渡されたファイルに目を通し、リオは唖然とした。

 

「えぇ……」

「そういうことで、通信ができなかったんだと思う。マスターさんも連絡しておけばいいのにね」

「…わかった。お騒がせして、ごめんなさい」

ぺこっと一礼してから、カウンターを離れるリオ。

「……ヒツギの様子見に行こ」

区画移動用テレポーターのほうへ戻りかけた、その時だった。

 

「おーい!どこへ行ったんだー!!」

ゲートエリアに、ばたばたと走り回る影が、もう一つ。

「ピエトロさん…?」

「ん?おや、マイフレンドのパートナーじゃないか!」

リオに気づいたデューマンの青年は、そのままばたばたと走り寄ってきた。

「おはよう。ばたばたしていてすまないね…ときに君、ジョセフィーヌを見なかったかい?」

「ジョセフィーヌ…?」

 

首をかしげるリオ。

「…そうか、君と行動していた時は連れていなかったね。トリム種のペットなんだが…」

「それ、どんな子……?」

「青い羽毛の鳥型の子さ。目を離したすきに、どこかへ行ってしまって…!」

心配だなぁと呟くピエトロを無視して、考える。

 

…そこで何が起こったのかは、わからない。

ただ、彼女に搭載されたCPUは、

「…壊世ナベリウスで見た。どーんってビーム撃ってた」

「…それヴォモスプロドシスだね。ジョセフィーヌと違うね!」

気づけば、そんなボケを披露していた。

 

「ばれたか…」

「しかし、どこへ行ってしまったんだ…シップの外へは出ていないはずだが…!」

リオをスルーして、ピエトロは悶々と思案する。

「ああ、愛しのジョセフィーヌ…君は一体いずこへ……ハッ!?」

何かに気づいたように、顔を上げるピエトロ。

 

「そうか、これは……僕の愛への挑戦だね!ジョセフィーヌッ!!」

「へ?」

「僕を試しているのか…ならば、追いついて見せようじゃないか!!」

 

一瞬でついていけなくなったリオを置き去り、ピエトロは決意に満ちた目を空へ向ける。

「リオ君!それでは、また!!」

きょとんとしたままのリオの前で、愛に目を輝かせた青年は去っていった。

「……だめだ、意味わからん」

走り去るピエトロの背を見て、リオはぼそっと呟く。

勝手に語って勝手にいなくなってしまったが、一つだけ気になったことがあった。

 

「ボクの名前、覚えててくれた…」

ふっと苦笑して、また歩き出す。

「あ、リオちゃん」

すると、もう聞きなれた声が、リオを呼び止めた。

 

「ヒツギ……おはよう」

「おはよ……ごめんね、朝から騒がしくて…」

「ううん……昨日の戦闘、ケガとかしてない?」

ヒツギは首を振って、

「大丈夫よ…エーテル適性があれば、メイトですぐに回復できる程度だったから」

「そっか…」

 

答える声を聞きながら、リオは歩いてくるヒツギを見た。

…少し、足に力が入っていない。声にも力がない。

明らかに、兄の一件を引きずっている。

「………っ」

「リオちゃん?」

躊躇している場合ではない。

アメリアスのいない今、自分が、何か手を差し伸べなければ…

「えっと、ヒツギ、あのね……」

鈍い唇から、必死に言葉を紡ぎだそうとした―――その時だった。

 

「―――あら?あらあらあらぁ!」

エコーのかかった、甲高い声。

「ヒツギさんじゃありませんかあ。こんな朝から、どうされました?」

歩いてきたのは、キャストの少女…リサだった。

 

「あ、えっと………リサさん……だっけ?」

「はいはいリサです、ごきげんよう。どうされました、リサに撃たれる覚悟が出来たりしましたかあ?」

「えっと、ちょっと、いろいろあって……」

「いろいろあって、撃たれる覚悟ができました?」

 

勝手に言葉を振るリサに、戸惑うヒツギ。

リオは我慢できなくなり、二人の間に割って入った。

「……何のつもり?」」

「何のつもりというわけでも…ただ、答えが要領を得ないものですから」

リオに睨まれても、まったく調子を変えないリサ。

 

「リサはそういう心の機微というやつが、全然さっぱりこれっぽっちもわからないので。自分からはっきり言うほうが好きですねえ」

「……………チッ」

(え?今舌打ちした?リオちゃん舌打ちしたよね!?)

ヒツギの驚きも露知らず、リオの語調は強まっていく。

「少しは、ヒツギのことも考えられないの…」

「いつも思うのですがねえ?他人の心なんてどうやって察するのでしょうねえ?」

「いい加減にして…!」

「お、落ち着いてリオちゃん!」

 

ヒツギはとんとんと小さな頭をなで、リオをなだめた。

「…そんなにムキにならないで。話せばいいんでしょ」

小さくため息をつき、天星での事件を話し出すヒツギ。

「…そうですかあ、お兄さんが」

リサは話している間こそおとなしかったものの、

「……それで、どうなっていたんですかあ?爆破されたということですが、やっぱりぺしゃんことかだったんですかねぇ!」

 

この態度には、さすがにヒツギもカチンときた。

「っ、何言って……」

言い返そうとして、ふと言葉に詰まる。

(待って、そういえば…でも、そんなことって……)

しばしの逡巡の後、ヒツギは眼下のリオに問いかけた。

 

「リオ、この間言ってたわよね?『地球調査担当の人の端末は、向こうのネットワークにつなげられる』って」

「え……?う、うん…」

「それ、アークスシップ(ここ)からでも出来たりする?」

やってみる、と言って、ウインドウを操作するリオ。

「でもここ月軌道くらい離れて…あれ、できた?」

首をひねるリオから渡されたウインドウに指を走らせ、地球のインターネットに接続する。

しばらくウインドウを見つめていたヒツギは、ニュース記事のページで目を見開いた。

「……はは、なんで気づけなかったんだろう」

思わず、苦笑が漏れる。

幾つかのサイトを経由して、ヒツギの気づきは確信に変わった。

 

ヒツギは端末をリオに返し、リサに向き直る。

「ありがと、リサさん。でもそんなに遠回しに言わなくたってよかったじゃない」

「あれあれ、なんのことですかあ?リサはただ後学のために、被害の状況を聞いてみたかっただけですよお?」

しれっととぼけるリサ。

しかしリオには、その能面のように張り付けられた笑顔が、若干喜びに綻んだように見えた。

「じゃあ、リサはもう行きますねえ………今度からは、ちゃんと見に行くことをお勧めしますよ?」

 

謎のつぶやきを残して、スペースゲートに歩いていくリサ。

ヒツギはそれを見送ると、下から送られてくる視線に気づいた。

「えっと…ヒツギ?どういうこと……?」

「これ見て。天星の爆発事故はニュースになってるけど、それだけ。被害者の情報は一切ないの」

地球のニュースサイトを見せられ、リオもすぐにその意味に気づく。

 

「じゃあ……」

「うん、もしかしたら…」

ヒツギが言葉を続けようとした、その時。

「あ、いた!!お姉ちゃんっ!!」

「え!?……ぐえっ!!」

飛び込んできたアルはリオの回避により、ヒツギの腹に激突した。

 

「うわっ…ご、ごめん!」

「大丈夫…って、あんたいつの間に起きてたの?」

すっかり忘れていた。

今朝部屋を出た時、アルはまだ眠っていたため、部屋に置いてきてしまっていた。

「おきたらお姉ちゃんいなくて…さっきまでショップエリア探してた」

ぐったりとヒツギに抱き着くアル。

 

「すっかり忘れてたわ…ごめんね、アル」

「ん……あれ?アリスおねえちゃんは?」

アルに言われて、気づく。

フレンドリストを見ると、出撃中とあった。

「もう出撃?早いわね」

「出撃、というか……」

何か知ってるだろうとリオに尋ねてみると、言葉を濁して答えられる。

 

「え、違うの?」

リオはうーん、とうなった後、控えめに答えた。

「えっと……潜入、捜査?」

 

AD2028:4/5 10:00

地球:東京

 

「ったく。こっちは新入生歓迎の準備で忙しいってのに…」

橘イツキは、憮然とした顔で呟いた。

「午前中で終わる用だって。ちょっとだけ付き合ってくれよ、な?」

「それはいいけど…空手部に頼んだ書類、まだ来てないみたいだけど」

隣には、イツキと同年代の少年が二人、並んで歩いている。

 

「おおっとすまん、忘れてた!」

頭をかく茶髪の少年は、茅野コウタ。

「ったく、ただでさえイツキ君、生徒会長ぶん投げられて忙しいんだから…」

ため息交じりに言った黒髪の少年は、佐々木ユタカ。

二人はイツキの同級生で、リアルでもPSO2でも友人(フレンド)の仲だ。

 

「で、結局用事って何なんだ?」

歩きながら訪ねるイツキ。

「ああ…今朝のニュース、見たか?」

するとコウタは、そんな話題を振ってきた。

「今朝のニュース?特に変わったことは…」

イツキは首をひねって、記憶をたどる。

 

わからないまま歩いていると、ふいにコウタが足を止めた。

「ん、ここだここだ」

指をさした先には、何の変哲もないビルが建っている。

……上階の窓が吹き飛ばされ、立ち入り禁止の措置が取られていることを、除けば。

「…そういえば…!」

イツキは思い出した。

今朝のニュースで、都心での爆発事故が報じられていた。

 

「こんな近くだったのか……」

「意外と、気づかないものだね…」

イツキのつぶやきに、同意を返すユタカ。

「だけど、このビルがどうしたんだ?」

「ああ、些細なことなんだけどよ…」

コウタは小さくため息をつくと、言った。

 

「なんかさ。こんなところでの爆発のわりに、報道が少ないと思わなかったか?」

「少ない…まあ、言われてみれば」

「詳細は調査中で、まとめられちゃってたような」

頷く二人に、コウタは話を続ける。

「そして…この間、同じようなことがあったよな」

そこで、2人はコウタの言いたいことを悟った。

 

「「天星の爆発事故……!」」

「ああ…例の連中…マザー・クラスタと関係がないとも、言い切れないと思う」

そこまで言って、コウタは口を閉ざす。

イツキは、彼がここに連れて来た目的を悟った。

 

イツキとリナは、具現武装が扱える人間として、マザー・クラスタに顔が知られている。

今渦中にいる天星学院高校の後輩のみならず、イツキ達にも何かあるかもしれない。

 

「俺たちはPSO2越しじゃないとログインできないから、この件には関われない。だからせめて、イツキには伝えておこうと思ってさ」

「それで俺を……」

イツキは声を漏らすと、そのまま俯いた。

 

「…だけど、ごめん。俺に何か出来るかどうか……」

「いいっていいって。お前に何か無ければそれで十分だっての」

「そうそう。イツキ君には生徒会の方に集中して貰わないと」

 

少し落ち込んだイツキを見て、2人がそう言って笑いかける。

「…さってと! 用事も済んだし帰るか!」

「「うん、帰ろ帰ろ」」

「……急に冷めたなお前ら…」

ビルに背を向け、来た道を戻り出す3人。

 

イツキは何の気もなく、すぐそこの交差点に目をやり………

「この辺にバス停あ………!?」

直後、言葉を失った。

 

交差点の向こう。

明らかに見覚えのある少女が、てくてくと青信号を渡ってくる。

何故かメガネをかけ、目立たない格好ではあったものの、一度目を止めてしまえばそれまでだった。

 

「どうしたんだ、イツキ?」

「あ、いや……なんでもない」

コウタの問いに答えつつも、視線を少女に奪われる。

(あれ……どう見てもアメリアスさんだよな)

青い瞳に、腰まで伸びた長髪。

それも銀ベースに若干ベージュが混ざったような、なんとも形容しがたい髪色…他人の空似とも考えがたい。

 

(何やってんだあの人…アイカみたいに潜入調査か……?)

「イツキー?」

「あ、ごめ! 行こう行こう!」

半年前の二の舞にはなりたくないし、きっと怪しむ程のことでもないのだろう。

気にはなったものの、イツキはそう考えて、大人しく帰ることにした。




「とんとんまーえ!」
とんとんまーえ、とんとんまーえ。
また、前に進みたいから。

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