ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
A.P241:4/4 15:00
アークスシップ:ゲートエリア
あの後、ステラは戦闘部の同期の要請で、別の調査エリアの援護に向かった。
というわけでヒツギさんとシップに帰還した私は、
「あ!アメリアス!ヒツギ!おーい!!」
ゲートに来て早々、私達を呼ぶ大声を聞いた。
見れば、テレポーターのそばにクーちゃ…クラリスクレイスとサラさんの姿がある。
「ああクーちゃん…って、サラさん!?お、お久しぶりです…」
「久しぶり。ヒツギ…よね?あなたも無事そうね」
答えたサラさんは、自分の背後に目をやって、
「ほら、戻ってきたわよ」
そう、呼びかけるように言ったとたん。
「お姉ちゃん!」
サラさんの背中から、アル君が飛び出した。
「わっ…あ、アル!?」
「アメリアスのサポパ…リオちゃんだっけ?緊急出撃に連れてかれちゃったから、あたしたちがアル君を預かってたの」
「貴様らが帰ってきたと聞いて、迎えに行きたいと言い出してな。こうして連れてきたんだ」
「そ、そうだったんだ…」
納得した様子のヒツギさんに、アル君が抱きつく。
「お姉ちゃん、大丈夫だった!?」
「大丈夫よ。アメリアスが助けてくれたから…迎えに来てくれて、ありがとね」
よしよしと、アル君をなでるヒツギさん。
そして、ヒツギさんは私のほうを見ると、
「報告とかは、任せていいのよね?じゃあ、先に部屋に戻ってていい?」
「あ、うん。ゆっくり休んで」
アル君を連れ、ヒツギさんはテレポーターへと歩いていく。
すると、サラさんがぽつっと呟いた。
「…行ったわね。」
「え?」
私が反応するよりも早く、クラリスクレイスが私の腕を引く。
「少し来い。話したいことがある」
「え、え?」
思いのほか強い力で引っ張られ、抵抗する間もなく引っ張られてしまう。
あれよあれよという間に、私は階段裏まで連れてこられた。
「え、あの…?」
「いきなりごめん。こっち見て」
顔を上げると、サラさんの顔が目に入る。
サラさんは暗い顔で、私を見ていた。
「……さっき、アル君から聞いたわ。ヒツギのお兄さんが、マザー・クラスタに…爆殺されたって」
「………」
何も言えずに俯く私を見て、サラさんは続ける。
「あの子、今かなり無理してるわよ。不安と戸惑いを必死に押し殺してる…わかるでしょ?」
答えることは、できなかった。
そんなことわかっている。彼女がつらいのは。彼女が苦しんでいるのは。
だけど。でも。
「…どうすればいいのか、わからないのか?」
クラリスクレイスの問いに、私はやっと頷いた。
今になって、悟った。
私は取り戻すことはしても、失うことをしなかった。
だから…今のヒツギさんのために、何ができるのか。
何をしてあげられるのか…わからない。
「…なんだ。そんなことか」
「まったく。あんたはその辺が固いというか……」
2人がそろってため息をつく。
気づかないうちに、心中を呟いてしまっていたらしい。
「誰にだって、大切な人がいる。私だったら
「…うん。クーちゃんにとって、マトイは本当に大切な人だもんね」
「こら、いい話してる時にクーちゃん言うな」
いつものツッコミの後に、今日は苦笑がついてきた。
「……まあ要するに、あんたが今までやってきたことと変わんないのよ」
微笑んで、サラさんは言う。
「ほら、あんた昔
2年前にした、些細な会話…私が戦う理由のことを。
「まだ終わったわけじゃない。あの子の…ヒツギのために」
サラさんは敢然と、私を見た。
「そうね…最強の剣と盾に、なって見せなさい」
「剣と…盾…」
守るべきもののために…一人孤独に戦っていた、少女のために戦え。
それが今、私ができること—————
「…ありがとうございます。ちょっと、先が見えました」
私が頷くと、二人は安堵した様子で笑った。
「いろいろ気にしすぎなのよ、アメリアスは」
「そうだぞー。もやもやした時は、どーんと爆破してしまえばいい!!」
「あんたはもっと頭を使いなさい」
「なんだとー!」
…さっきまでいいこと言ってたのに。この二人は相変わらずだ。
だけど、なんだろう。
こんなしょうもない光景を見ると、なんでかとても安心できた。
「よーしアメリアス!落ち着いたなら出撃するぞ!」
「は、はい!?」
クラリスクレイスが私をつかみ、スペースゲートへと走り出す。
「ちょ、ちょっと待ってよクーちゃん!!」
「クーちゃん言うな!デスクワークばっかで退屈なんだ!気晴らしに付き合えー!!」
「なぁ!?あんたもまだやること残ってるでしょうがこの馬鹿ぁ!」
捕まえようとするサラさんをすり抜け、私を引っ張っていくクラリスクレイス。
あれよあれよという間に、私はスペースゲートに逆戻りしていった。
A.P241:4/4 16:00
アークスシップ:フランカ'sカフェ
夕方。
「はぁ~~~~」
比較的すいているカフェの一角で、情報部・臨戦区域内部ネットワーク管理室長は机にへたり込んでいた。
(だーれも戻ってこないから、カフェで書類作ろうと思ったものの…)
不覚だった。
人が行きかっているうちはともかく、こうして落ち着いてしまうと…このカフェの環境は、かなり眠気を誘う。
一度うとうとし始めてから、もう2回ほど落ちかけてしまった。
(もう、帰ろうかな)
あまりオフィスを空けるわけにもいかない。
それにこの時間になれば、さすがに誰か帰っているだろう。
手早くテーブルを片付け、立ち上がったその時だった。
「……!?」
突然肩をつつかれ、ぎょっとして振り向くヨハネス。
銀髪の少女が、おどおどとした緑色の瞳を向けていた。
『君は…ステラ?どうしたんだい突然…』
『カフェに来たら、ヨハネスさんがいたので……』
普段あんなに元気なステラは、しょんぼりとチャットを返す。
『あの、ちょっと、話しつぃことが…』「あ、間違えた…」
『…わかった。じゃあ、そこ座って』
近くのテーブルに座り、ステラと向かい合う。
『とりあえずこれ。調査端末に入れてもらえば、こっちで声を文字に変換できるから』
会話用のアプリケーションを送りながら、ステラの顔を伺う。
2年前にアメリアスがコールドスリープに入ってから、ヨハネスは時折研修中のステラに会っていた。
彼女はいつも明るい調子で、アメリアスが起きてからもそれは変わらなかったが…こんな落ち込んだ様子のステラは見たことがなかった。
『それで、何があったの?』
「その……」
ぽつぽつと、ステラは話し出す。
『…報告はあったよ。天星学院高校が爆破されたって…」
「はい…それから、2人とも少しふさぎ込んでて…」
「さっきの戦闘で、むちゃな突撃かけたんです。たぶん、不安と焦燥感で…」
『だろうね…』(この子、意外と他人のこと見れるんだな…)
「でも、姉ちゃんも姉ちゃんですよ…一番力になれるのに、ああやってなんでもない態度で…」
『…まあ、それがアメリアスの悪い癖というか、彼女は他人の心を推し量るのが苦手だから…』
「ぶっちゃけ、あんなのに姉ちゃんが遅れとってほしくないというか…もっとしっかりしてほしいというか…」
『う、うん……』(ん?流れ変わってない?)
「私は弱いから…姉ちゃんにちゃんと引っ張ってほしいんですよぉ……」
『
「ヨハネスさん?」
反応がなくなったのに、首をかしげるステラ。
見ればヨハネスは、くつくつと小さく笑っていた。
「よ、ヨハネスさん!」
『あ ごめんごめん。なんか可笑しくなっちゃって』
ヨハネスはバツの悪い笑顔を浮かべると、そのままステラのほうへ少し乗り出す。
『相変わらず、アメリアスのことが好きなんだね…あいつ、いい妹もって…』
「あ、あのー?」
『だってさっきまでしょげてた割に、元気そうに見えるけど?』
ステラははっとした。
『はは、相談すればすっきりすることもあるんだよ。あと、さっき話してくれたことだけど…』
そう綴ると、ヨハネスは眼鏡をテーブルに置く。
『大丈夫。アメリアスはあれでも、やるときはやるんだよ?』
「やるときはやる…ですか」
その言葉を反芻し、ステラは少し考えた。
「…そうですね。考えてみれば、こうやって不安がることもなかったかもです」
苦笑して、ステラは立ち上がる。
「もう大丈夫だと思います。お時間取らせてしまって、申し訳ありませんでした」
『ううん、僕も暇だから。むしろ誰かと話せてすっきりしたよ』
ヨハネスも頷いて、それに続いた。
「じゃあ失礼します。ヨハネスさん」
『うん…あ、ちょっと待った』
踵を返しかけたステラに、ヨハネスはふっと笑いかけて、
『ヨハネスさんじゃなくて…昔みたいにヨハ兄、でもいいんだよ?』
目に入った文字に、ステラは一瞬驚いて、
「…ちょっと待ったちょっと待った!昔のことなんて覚えてないでしょう!?」
『あ、ばれた?』「うー、からかわないでくださいよー!」
そそくさと、ヨハネスはカフェを去っていく。
「むー……………はぁ」
一人残されたステラは、ため息をついて歩きだした。
ちなみに2人とも、テーブルに置き忘れられた眼鏡には気づかなかった。
「はやくそれになりたい!!」
I wanna be.
早く、彼女を支えられる存在に。