ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
A.P241:4/4 11:00
アークスシップ:艦橋
翌日。
「…あれ?アメリアスさん、どうされました?」
シエラは驚いた顔で、艦橋にやって来た私を見た。
「突然すいません。個人的に話したいことがあって」
座りなおすシエラの脇へ移動し、切り出す。
「あの…先日の幻創種発生、シエラはどう思った?」
「…いくつか報告は来ています。幻創種が、町を破壊しているようだったと…」
コンソールをしまいながら、シエラは頷いた。
「こんな挙動、今まで見られていませんでした…」
「現場も混乱してる。こっちに目もくれず、ビルを壊しに行ってた幻創種もいたらしくて…」
同時に、ため息が漏れる。
その時。沈んだ空気に追い打ちをかけるように、コンソールがアラート音を発した。
「…っ!幻創種の反応…大きいです!大型種と思われます!!」
「急行します!ステラにも連絡を!!」
踵を返し、ゲートへと駆け戻る。
開いたゲートに飛び込もうとした、その瞬間。
「「のわあああ危なああああああっ!!」」
目の前に現れた影と同時に叫び、そのまま正面衝突した。
「いったた…」
「ひ、ヒツギさん!?どうしたの!?」
「ステラさんと一緒にいたら、ステラさんの端末に警報が来て…それを見て走ってきたの」
ヒツギさんは頭をさすりながら立ち上がると、こちらを見据えて、
「お願い…あたしも行かせて」
「ヒツギさん…だ、大丈夫なんですか?」
心配そうにヒツギさんを見るシエラ。
「…お願い」
ヒツギさんはうつむきがちになりながらも、もう一度そう言った。
「…もたもたしてられない。いいよね、シエラ」
「わかりました…お気をつけて」
頷くシエラから、ヒツギさんに目を移す。
「アメリアス…ありがとう」
「無理はしないでね…行こう」
ヒツギさんとともに、私は再びゲートへと急いだ。
AD2028:4/4 11:30
地球:東京
「……What?」
ふと感じた違和感に、男は足を止めた。
四六時中人の行き交いに満ちているはずの駅前広場が、気づけばひっそりとした静寂に包まれている。
「なるほど…嗅ぎつけられたか」
男はつぶやくと、一人ほくそ笑んだ。
「HaHa…ちょうどいい
その声と同時に、男の姿が変わる。
何処にでもいるありふれた影は、一瞬のエーテルの輝きののちに、白い礼装へと変わっていた。
男は一人、広場の中央へと歩く。
するとどこからともなく折り畳み椅子が現れ、男はそれに腰掛ける。
「さーて。
折り畳み椅子が浮き上がり、男の横にカメラとクラッパーボードが具現する。
ハリウッドの鬼才、ベトール・ゼラズニィ。
様々な逸話を持つこの男は、「本物の恐怖」を作るための「あること」で有名だった。
「順番は前後してしまったが…
曰く…彼のオーディションは、気がふれているとしか思えない演技を要求されると。
「Welcome…!Come here! THE LINER!!!」
打ち鳴らされるクラッパーボード。
メガホンの声に呼ばれるように、エーテルが空に軌跡を描く。
そしてその「線路」に乗って…恐怖を生み出すための、災厄が到着した。
AD2028:4/4 12:00
地球:東京
「到着っ!!」
飛び降りた私とヒツギさんは、目の前の景色を見て瞠目した。
「ひどい…街がボロボロじゃない!!」
「かなりやられてる…シエラ!反応は!!」
『そのまま前方、駅前です!!』
端末に送られた反応へ、全力疾走する。
「姉ちゃん!いた!!」
並走するステラが、駅前の広場を指さす。
そこでは、先日現れたトレイン・ギドランが暴れていた。
『反応が大きい…迅速な討伐を!!』
「はい!!行くよステラ、ヒツギさん!!」
「よーーーーっし!!」
ステラが先行して、トレイン・ギドランへ接近する。
(ステラ、前はお願い)
(うん、ヒツギさんは任せるね、姉ちゃん)
ウィスパーで連絡しあい、ヒツギさんの側につく。
「ヒツギさん!しっかり動きを見て!」
「う、うん!」
ヒツギさんにも指示を飛ばし、ブーツにテクニックをチャージする。
「さっさと終わらせる!!」
イル・ザンを連続で叩き込むと、トレイン・ギドランが混乱したように動きを止めた。
「ミラージュ入った!」「よし!」
首の弱点へ、一気に肉薄する。
「喰らっとけ!」
ヴィントジーカーをぶつけ、着地と同時にイル・ザンも叩き込む。
我に返ったトレイン・ギドランは、眼に青い炎を迸らせて激昂した。
「こっからだ…みんな回避に集ちゅ…!?」
距離をとった直後、私は目を見開いた。
「やあああああああっ!!」
起き上がったギドランの足元へ、ヒツギさんが突っ込んでいる!
「ちょ、今突っ込んじゃ…!!」
最悪のタイミングで、ギドランの赤い首が垂れ下がる。
近ければ横合いへ逃げられるが、あの距離じゃ…!
「嘘…!」「ヒツギさん!!」
吸い寄せられるヒツギさんへ距離を詰め、首に激突する寸前で突き飛ばす。
「うわあっ…!!」「姉ちゃん!」
視界が高速で回転する。
ヒツギさんはギリギリすり抜けたものの、私は大きく吹き飛ばされた。
とはいえ、こういう吹き飛ばしには慣れている。
「アメリアス!!」
「私は大丈夫!!それより首見て!!」
エアリバーサルで起き上がり、ヒツギさんに向かって叫ぶ。
削岩機状になって振り下ろされた首に気づき、ヒツギさんはかろうじて回避した。
(予想外にヒツギさんが消耗してる…!)
幻創種の特性も考えると、このまま長期戦にはできない。
私は、交戦中のステラのほうを見た。
「足狙って!一気に追い詰める!!」
「了解!」
ステラはデュアルブレードを振るい、前足へ斬撃を集中させる。
「こいつで…!」
私も足元へ滑り込み、前足を蹴りつける。
するとギドランは体勢を崩し、倒れこんだ。
『今のうちに!』
「言われるまでもなく!!」
現れた弱点に、一斉に突撃する。
「これで…倒れてっ!!」
ヒツギさんの放った一閃がとどめとなり、トレイン・ギドランの巨躯は霧散した。
『反応消失。お見事です!』
「よし…なんとか手短に片づけられた」
思わず、安堵の声が漏れる。
少し危ないところはあったものの、ヒツギさんもけがはないようだ。
「ヒツギさん、大丈夫?」
「うん…ごめん」
ヒツギさんは答えると、力が抜けたように俯いた。
「ヒツギさん?」
「……ダメだ、あたし…何もできてない…」
すぐそばの私にも気づかずに、震えた声で呟くヒツギさん。
私が何も言えないでいると、ふと後ろからの視線に気づいた。
「ステラ…?」
少し目に意識を集中し、背後の映像をとらえる。
背後に立つステラは、悲しそうな顔でヒツギさんを見つめていた。
「ヘッドフォンアクター」
ただすべきことを、演じるしかない演者達。
心と心の合間から、「ごめんね」と声がした。