ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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今回からPCでの投稿になります。
少し勝手が違うので、読みづらい点等あったら感想などで教えていただければと思います。
あと1週間遅れてすいませんでした…


SB3-6「ドクハク」

A.P241:4/3 9:00

アークスシップ:艦橋

 

翌日。

アメリアスが艦橋に向かうと、既にリオとステラ、アイカの姿があった。

「あ…おはようございます、アメリアスさん」

「うん…… ヒツギさんは…」

「先ほどメールが来まして…申し訳無いけど、ちょっと来れない、という事でした」

「……無理もない」

 

シエラの返答に、肩を落とすリオ。

「……私達は出来ることをしましょう。先日の状況から、いくつかわかった事もあります」

シエラはそう言って、コンソールを操作する。

 

まず映し出されたのは、昨日ヒツギを襲った使徒の姿だった。

「マザー・クラスタ『木の使徒』、べトール・ゼラズニィ。ヒツギさんの言っていた通り、地球はアメリカで名を馳せる映画監督です」

「こちらでも一通り調べたが……大した情報は無かったな。何でも、一度没落した後に復権を果たしたそうだ」

「その辺は、ヒツギさんの言ってたことと同じか……」

 

アメリアスは、昨日の戦闘を思い出した。

「しっかし、武器が爆薬ってのはね……」

「それも問題点ですが…もう一つ、厄介な点があります」

シエラはそう言うと、アメリアスの持ち帰った戦闘データを開く。

「交戦映像を見るに、あの幻創種はベトールの意のままに召喚されていました。向こうは何らかの方法で、自由に幻創種を呼び出せると思われます」

「エメラルド・タブレットだけの特権というわけじゃ、なかったのか…」

 

アイカの声を最後に、艦橋に沈黙が下りる。

もともと幻創種がマザー・クラスタの支配下だったのかはわからないが、どちらにしろ相手の戦力が大きいことに変わりはない。

「ともかく…相手のほうが確実に、エーテルの扱いは上手です…解析を急ぐ必要がありますね」

「現状、相手が動かないことには、こちらはどうすることもできない…地球の調査も、今のうちに進めていく必要があるな」

「うん…」

頷いたリオは、ステラがずっと黙っていることに気づいた。

 

「ステラ…?」

「へ、り、リオさん?どうしました?」

「……ううん、なんでも…」

見上げた視線を戻すリオ。

 

アメリアスはそれをぼんやりと見つめて、

「………は?」

突然、変な声を出した。

「ど、どうしたの姉ちゃん、いきなり変な声出して」

「いや、だってあんた今リオさんって……」

ステラは、なんだ、という顔で、

「ああ…姉ちゃん知らないんだ。研修の時に、ちょっとリオさんにお世話になって……」

「世話になった……?」

 

首をかしげるアメリアス。

すると、急に二人が焦りだした。

「あ…そ、その話はまたあとで!」「マスター、ちょっとそれは、あの……」

「え、え?あ、うん…」

どういう意味かは分からなかったが、適当に相槌を打つ。

「あのー。次いっていいですか?」

「あっ…ごめん、次行こ次」

シエラはウインドウを切り替え、東京のレーダーマップを表示する。

 

「目下、東京に不審な反応はありませんが…幻創種はいかんせん出現が突発的なので、警戒は怠らないように……」

シエラが説明を続けようとした、その時。

「…そら来たっ!東京都心にエーテルの異常集積発生!!」

今まで平穏だったレーダーマップに、敵の出現を示すビーコンが次々と現れた。

「輪をかけていきなりだな…アメリアス、出るぞ!!」

「はい!じゃ、ちょっと行ってくるね!!」

艦橋を飛び出していく、アイカとアメリアス。

 

ステラはそれを見送ると、シエラのほうを見てため息をついた。

「まったく、私もアークスだっての…じゃあ、私も行ってきますね」

「はい。無理はなさらずに」

頷いて、ステラも艦橋から走り去る。

シエラはそれも見送ると、残されたリオのほうを見た。

「リオさんリオさん。ちょっといいですか?」

「……はい?」

「さっきの件、ステラさんの研修中に何があったんですか?」

 

リオはん、と少し考えると、

「……ひみつ」

小声で答えてから、ふふっと笑った。

「へぇ、リオさんにも秘密なんてあるんですね。」

「どーいう意味……まいっか。僕もゲートで待機してる」

「はーい。では、またあとで」

 

リオも去っていき、艦橋にはシエラだけが残った。

「…リオさんは、やっぱりすごいですね。何処までも人間らしくて……」

コンソールに向き直り、一人ぼやく。

「っと、こうしちゃいられません!オペレートの準備をしなくては!!」

地球に向かったアークスのオペレートのため、コンソールに素早く指を走らせる。

「……私も、出来ることはあるんだから」

誰にともなく、シエラは呟いた。

 

AD2028:4/3 10:00

地球:東京

 

昼の東京に、剣戟の音が響き渡る。

『追加出現、北です!』

「私が行く!姉妹はこっちを抑えててくれ!」

「「了解!!」」

駆けていくアイカとすれ違い、ステラは目の前のゾンビへと斬りかかる。

「撃つよ、イル・ザン!!」

「やっちゃえ姉ちゃん!」

消耗した幻創種が鎌鼬に巻き込まれ、まとめて霧散する。

一帯の幻創種を掃討すると、アメリアスはふうっと息をついた。

 

「姉ちゃん!こっちも出た!!」

「今日に限って次々と…!」

反応の減らないレーダーを見て、顔をしかめる。

「いた…!守護輝士(ガーディアン)!!」

「師匠!!」「先輩!!」

ステラのほうへ飛び出しかけたアメリアスは、ふいにかけられた声に立ち止まる。

見ればテレポーターの置かれた方向から、3人ほどのアークスが走ってきていた。

内二人は見慣れた後輩なのだが、その横には見慣れないキャストの少女が並走している。

「ロッティにルベルト…!と、そっちは?」

「情報部臨戦区域ネットワーク管理室所属、クリスです!これより戦闘に入ります!」

 

武器を構える3人。

「わかった、私とステラはアイカさんの援護に向かう!こっちは任せます!!」

「押忍!任されました!!」

交戦を始める3人を背に、アメリアスとステラは路地を駆け出した。

「…?姉ちゃん、なんか…」

「うん、音が変……?急ぐよ!」

反応の集中している、ビル街の中央へ滑り込む。

 

そこで飛び込んだ景色に、アメリアスは目を疑った。

「…な、何よこれ…!」

 

ビルが、燃えている。

ビルだけではない。街路樹はなぎ倒され、道路のアスファルトはところどころ砕かれている。

そのボロボロの街の中を、幻創種が跋扈していた。

「アイカさん!!」

「アメリアス!っあっ!」

振り向いたアイカが、直後T-REXの尾に吹き飛ばされる。

「クソッ…!姉ちゃん、撃退が先っ!!」

「う、うん!!」

ステラの声に引っ張られるように、アメリアスは駆けだした。

 

「大丈夫ですか、アイカさん!」

アイカの横合いに飛び込み、ブーツからレスタを発動する。

「なんとかな…しかし、この幻創種の挙動は妙だ…!」

「妙って……!?」

もう一度、暴れる幻創種に目を向ける。

街路樹へ向かって尾をふるうT-REX、アスファルトを砕くロードローラー、

行動は様々だが幻創種はアークスを攻撃するというよりも、

「町を、壊してる……!?」

「隔離領域を張っていれば、ある程度のことは『なかったこと』にできる…が、さすがにこれ以上被害が広がると…!」

「わかりました。素早く片付けましょう!」

 

飛び掛かったゾンビにブーツの刃を突き刺し、そのままロードローラーに叩きつける。

「ステラ!建物を襲ってるヤツから叩いて!!」

「任せて!」

ステラの握る飛翔剣…新調した「スターフリサ」の細い刀身が、ラットファムトを斬り裂く。

「アイカさん!」「ああ、蹴散らすぞ!!」『キュー!』

ジェットブーツを躍らせるアメリアスの横で、ラッピーが舞う。

次々と霧散する幻創種。レーダーの反応も、少しづつ減少していた。

 

「これで、最後っ!!」

戦車の裏に飛び込んだアメリアスから、輝くフォトンが迸る。

「だりゃあっ!!」

ヴィントジーカーで吹き飛ばされた戦車型が、そのまま沈黙した。

『異常反応鎮静化!この一帯は大丈夫です!』

『師匠!こっちも終わりました!!』

「終わった…はぁ~」

制圧完了を伝えるルベルトの通信を聞いて、アメリアスは思わず道路にへたり込んだ。

 

 

「姉ちゃん大丈夫?」

「う、うん…帰ろっか」

ステラにつつかれ、ゆっくりと立ち上がるアメリアス。

その拍子に、道路に落ちていた1枚の紙が目に入った。

(これって……)

鉄道のような怪獣が暴れまわる、映画のポスターだった。

 

「………」

「姉ちゃん?」

「あ、ごめんぼーっとしてた…」

ステラに声を掛けられ、我に返る。

頭に浮かんだことを放り、アメリアスはテレポーターへと歩き出した。

 

A.P241:4/3 13:00

アークスシップ:艦橋

 

「南西エリア、反応減少!冷静に鎮圧を続けてください!!」

無数のウインドウを相手に、オペレートを続けるシエラ。

幻創種発生から3時間、ようやく、東京の異常反応も収まりを見せていた。

 

そして、慌ただしい状態が続いたシエラは、艦橋に戻ってきていたアイカのことなど歯牙にもかけていなかった。

「……こちらで確認しているデータは以上です。現在のところ、想定と大きな相違はありません」

艦橋の隅で、アイカはひとり呟く。

「…そうですね。ただ、フォトンにせよエーテルにせよ、感情の影響を強く受けます」

それに応える声。しかし、艦橋にはシエラとアイカ以外の姿はない。

 

「交流を続けるにしても、注意深く、必要な情報の収集を心がけてください」

「…了解しました」

誰もいない空間へ頷き、アイカが踵を返した、その時。

「……?なんだかおもしろい組み合わせですね」

デッキの上部から、少女の声と、バトルブーツの固い足音が降ってきた。

 

「アメリアス……?妙なことを、この通り、ここには私しか…」

首をかしげるアイカを見て、アメリアスはふーんと腕を組む。

「アイカさん、私の『目』のことは知ってますよね?あれはテクニックのような芸当で、フォトンに直接干渉することで効果を発揮してます」

「…っ。つまり……」

顔を強張らせるアイカ。

「最初から見えてますよ。ね、()()()?」

アメリアスはそう言って、アイカの横の空間を見た。

 

「…それは多少の誇張を含んでいますね、守護輝士(ガーディアン)

声とともに、何もない空間が揺らぐ。

「別にその力を使わなくても、貴女程のフォトン感受能力があれば知覚できるでしょうに」

次の瞬間、そこには青髪の少女が表れていた。

「…まあ、そうだけどさ」

「次席……!」

「大丈夫ですよ、アイカ。彼女は私のことも把握しています」

少女…クーナは、警戒するアイカを諫める。

 

「そうなのですか…?ですが、次席の姿が見えるなんて」

「…なんだか懐かしいですね。彼女と初対面の時は、私もそんな反応をしていた気がします」

「……相変わらず、そっちの時は堅苦しいよね」

アメリアスの嘆息に、クーナは仕事ですから、と答えた。

 

歌姫クーナ。

オラクルで絶大的な人気を誇るアイドルは、あくまで彼女の表の顔に過ぎない。

今ここにいる姿…アークスの闇を断つ「始末屋」としての姿が、クーナというアークスの本当の顔だった。

「そういえばこの間聞いたんだけど…今地球の調査で使ってる認識偽装、クーナの創世器を応用したんだってね」

「はい。この『透刃マイ』の先天能力(インヒーレント)を汎用化したものです…最初は複雑でしたが、役に立っているのならよかった」

 

当たり前のように話す2人の横で、アイカは小さくため息をつく

「…次席、そういった情報は事前にこちらにも回していただきたいのですが」

「私にだって秘密の一つくらいありますので。アイカにだってあるでしょう?」

答えたクーナは、少し意地悪な笑みをこぼすと、

「…地球潜入中のこと、とか」

「イツキやリナのことでしたら、秘密というほどのことでもありません」

「なにやら…その活動中に、ウェイトレス姿に扮したときの画像も回ってきているのですが」

その、クーナの一言で、

 

普段崩れることのないアイカのポーカーフェイスが、瞬間、完全に狼狽の色に染まった。

「……!?そ、そんなものを何処から…!!」

「勝手に回ってきましたよ…カスラから」

にべもなく答えるクーナ。

「……ッ!!急用ができました。失礼します……!!」

アイカはクーナに会釈すると、すさまじい勢いで艦橋から走り去った。

 

「ふう、やっと一息…あれ、アイカさん?アイカさーん!?」

シエラの困惑した声が、下部デッキに降ってくる。

「…お騒がせしました、アメリアスさん」

それをよそに、クーナはアメリアスに言う。

「彼女は地球への思い入れが強く、頑張りすぎていたのが気になっていたんです」

「…さっきの緊急出撃の時も、一人で突っ走ってた。私が言うのもなんだけど、確かにちょっと無理してたかな」

「まったく貴女も人のことを言えませんがね。まあ、アイカにはちょうどいい息抜きにはなるでしょう」

苦笑したクーナは、次にはため息をついて、

「…ついでにあの陰険メガネも糾弾されるなら、重ねて都合がいいですからね……アメリアスさん?」

ぼそっと呟いたクーナの前で、アメリアスはふいに踵を返した。

 

「ちょっと……私も急用が」

「…ダメですからね。足は絶対にダメですからね。貴女の場合洒落になりませんから」

「えー…」

不満げに戻ってくるアメリアス。

クーナはそれを見て、ふと笑った。

「…ふふっ」

「ん、何がおかしいの」

「いえいえ……やっぱり、アリスは変わんないなあって」

「へ?」

 

アメリアスが一瞬あっけにとられると、クーナの姿は消えていた。

「あ、逃げた…ったくもう」

「あれ、アメリアスさんもいつの間に?」

あきれ口調で呟いたアメリアスに、シエラが声をかける。

「さっきからいましたよ。鎮圧の報告、いいですか?」

「はい!全然オッケーですよ!」

アメリアスは頷いて、デッキの階段を昇っていった。

 




「ドクハク」
僅かに愛せよ。
明日明後日が誰かに奪われる前に。

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