ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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べトール登場です。
ただのルー語も面白く無いので、ちょっとアレンジしてみました。


SB3-4「無気力クーデター」

A.P241:4/2 16:00

アークスシップ:アメリアスのマイルーム

 

「ん⋯⋯⋯ 時間か」

端末のアラームを止め、ベッドから起き上がる。

少し準備に時間がかかるという事だったので、私は小一時間ほど、自室で休んでいた。

 

おかげで市街地防衛の疲労もすっかり回復、ヒツギさんの護衛も問題なくできるだろう。

装備の最終確認も済ませ、部屋を出ようとした時、不意に通信が入った。

「リオ? どうしたの突然⋯⋯ 」

首をひねりつつ、応対する。

 

『え、っと⋯⋯ お願いがあるの。ヒツギさんの護衛⋯⋯ ボクも、行きたい』

「はあ⋯⋯⋯ は?」

一瞬、耳を疑った。

「どうしたの急に⋯⋯ 」

『えっと⋯⋯ 自分でもわかんないんだけど⋯⋯ なんだか、どうしても、心配なの』

 

声を出すのは苦手なのに、リオはどうにかして意思を伝えようとしている。

そういえば、普段人付き合いのいいわけでもないリオが、ヒツギさんとは仲良くしていたっけ。

私は頷いて、

「⋯⋯ いいよ、シエラさんにお願いしてみる」

『ほんと⋯⋯⋯ !?』

 

端末越しの声が、一気に明るくなった。

「私も正直、流石に1人は不安だから。ステラが動けない以上、いちばん確かなのはリオだもんね」

『ありがと⋯⋯ じゃあ、後でね!』

「っと⋯ 切れちゃった」

よほど安心したのだろうか。まあこちらとしても、相棒が喜んでくれたなら良いのだが。

ともかく艦橋へ向かおう。リオのことも、頼む必要がある。

 

AD2028:4/2 16:57

地球:天星学院高校学生寮

 

「部屋には異常なし、か⋯⋯ 」

部屋のドアを閉めながら、ヒツギは呟いた。

最大の懸念材料であった、学校側の認識。

玄関でも咎められなかった上、部屋も誰かが入った形跡はなかった。

 

都合は良いが、違和感はある。

それでも、兄に会いにいくことが先決だ。

ヒツギは施錠だけしておくと、部屋の前に停められたものを見た。

 

「⋯⋯⋯ 」

大きな段ボール箱の載せられた、荷物運搬用の荷台。

ヒツギはそれを押して、廊下を歩いて行く。

「あら⋯⋯ 八坂さん?」

すると、反対側から歩いて来た女教師が、ヒツギを呼び止めた。

 

「げっ、寮長⋯⋯ 」

「⋯⋯ 言葉が荒いですよ八坂さん。それはそうと、その荷物は⋯⋯ ああ、生徒会の備品か何かですか?」

「え? ⋯ あ、はい、そんな所です⋯⋯ でもどうして⋯⋯ ?」

「どうしてと言われましても⋯⋯ 生徒会の用事でしばらく外出すると聞いていたので」

 

ヒツギの問いに、寮長はそう答えた。

「生徒会の用事⋯⋯ ? 誰からですか?」

「鷲宮さんですよ。一緒では無いのですか?」

「コオリが⋯ ?」

「しかし、困りましたね⋯⋯ 先程お兄さんが来たのですが、外出中だと伝えてしまいました」

 

その知らせに、ヒツギはさらに驚くことになった。

「兄が来ていたんですか!?」

「ええ。八坂さんの行方を聞いて来たので、そう答えたのですが⋯ お兄さんは、男子寮に戻ると言って帰って行きました」

「そ、そうですか⋯⋯ ありがとうございます」

「では私はこれで。荷台、使ったら返しておいてくださいね?」

 

そう言い残し、寮長は廊下を歩いて行った。

「⋯⋯ はーい」

わだかまった感情のまま、返事を投げる。

兄が無事だったのは幸いだが、なぜコオリが話をつけていたのか。

訝しみながらも、ヒツギは荷台を押していった。

 

「連絡は済ませたし、後は共用エリアに運んで行けば⋯⋯ 」

廊下の一角にあるエレベーターの前に着き、ボタンを押した、直後。

「⋯⋯⋯⋯⋯ っ!!!?」

突如爆発音が鳴り響き、建物が揺れた。

 

思わずうずくまったヒツギは、すぐに立ち上がり、窓へ駆け寄る。

窓から見える男子寮の一室から、煙が上がっていた。

「リオ!!」

段ボール箱に叫ぶヒツギ。

すると段ボール箱がひとりでに切り裂かれ、中から小さな少女が飛び出した。

 

「爆発⋯⋯ !?」

「うん、男子寮が⋯⋯ っ!?」

もう一度建物を見上げたヒツギは、そこで言葉を失った。

「ヒツギ?」

「あの部屋⋯⋯⋯ 兄さんの部屋だ⋯ !!」

「そんな⋯⋯ !」

 

リオもその感情に乏しい顔を、その時は驚愕に変えた。

「⋯ ちょっとごめん!」

「え? きゃあっ!」

リオはヒツギの体を抱え上げ、窓へとガンスラッシュを投げつける。

 

「行くよ!」

「うん、って、うわあああ!!」

驚くヒツギを意に介さず、リオはヒビの入った窓を蹴破り、夜空へと躍り出た。

 

AD2028:4/2 17:00

地球:天星学院高校

 

同刻。

「もしもしステラ!? 仕掛けて来た! アル君の安全確保!!」

「わかった!!」

アルの面倒を見させていたステラに緊急通信を送り、アメリアスは校庭に着地する。

 

「マスター!!!」

「リオ!?」

そしてその横に、ヒツギを抱えたリオが飛んで来た。

「ヒツギさん! 怪我とかは⋯⋯ 」

「あたしは大丈夫! でも、兄さんが⋯ !」

「あの部屋、ヒツギのお兄さんの部屋だって⋯ !!」

 

アメリアスは歯噛みした。

関係者への攻撃⋯⋯ 十分想定しうる事態ではあったが、ここまで露骨な手段に出るとは思ってもいなかったのだ。

「シエラ!! すぐにエーテルの反応をサーチッ!!」

『してます⋯⋯ っ! 校庭に異常集積反応! 具現武装と同値ですっ!!』

 

「——— Cool! What's crazy explosion! It must be very spectacle!! 」

その時。

メガホン越しの声が、校庭にこだました。

「誰だっ!!」

アメリアスの抜き放ったガンスラッシュが、校庭のスピーチ台に向けられる。

 

そこには、スーツ姿にアフロヘアの男が、メガホンを持って座っていた。

「Opposing the mother leads to catastrophe!! Isn't it? Girls?」

「何言って⋯⋯ 」

『地球では複数言語が用いられていると報告にありました。日本以外の言語も、出来るだけフィードバックしてみます』

 

アメリアスは小さく頷いて、ガンスラッシュを構えたまま前進する。

「⋯⋯ この爆発は、貴方が?」

「Hum...成る程、You()が例のアークスか。つまらない事を訊くもんじゃないZE? 日本ではこういう事を『一目瞭然』というそうじゃないか」

耐えきれなくなったヒツギは、アメリアスを押しのけた。

「⋯ っ! じゃああんたが兄さんを⋯ !!」

 

涙を散らして叫んだヒツギを、男は嘲笑の目で見る。

「ヒツギさん⋯⋯ !」

「なら、こう答えておこうか⋯⋯ その通りだよヒツギガール! エンガボーイを吹き飛ばしたのはこの俺! べトール・ゼラズニィさ! You()brother(兄貴)は⋯⋯ 俺の目の前で! 綺麗さっぱりexplosion(爆発)してくれたZE!!」

 

愉悦に満ちた声で、男は高らかに告げる。

その声は、ヒツギの感情も爆発させた。

「天⋯⋯ 羽々斬!!!」

蒼光が形を作るのを待たず、ヒツギは両腕を振り上げる。

その起動は剣波(ハトウリンドウ)を描き、数十メートル先のスピーチ台を斬り裂いた。

 

「ハハハ! いいね、生の表情だ!!」

男の声は、ヒツギの背後に移る。

いつの間にか、男は3人を挟んで反対側に置かれた折り畳み椅子に座っていた。

「怒りと後悔に打ちひしがれる顔なんて、滅多に撮れるもんじゃないYO!」

 

男はまた愉悦に満ちた声を投げると、ヒツギの足元を指差し、

「しかし、足元がお留守だ。そこはちょっと君にはアツイ場所だと思うぜ、ヒツギガール?」

瞬間、アメリアスは動いていた。

「危ないっ!!」

咄嗟にヒツギの肩を掴み、自分の体で背後へ突き飛ばす。

 

「え⋯⋯ きゃあっ!!」

直後、3人がいた場所に置かれた爆弾が起爆した。

「爆弾⋯⋯ !!?」

「NONONO! cut(カット)だヒツギガール! そんな簡単に挑発に乗ってしまったら、単調なbook(脚本)と思われるじゃないか!!」

 

アメリアスは立ち上がり、金に染まった瞳で男を睨みつける。

「HaHa、いい顔だ! お前たちは俺のfilm(作品)を盛り上げるための待望のactor (演者)なんだから、もっともっとexcite(ハラハラ)move(演技)を頼むYO!!」

「⋯⋯ こいつ!!」

 

その時不意に、リオは声をあげた。

「知ってるの、リオ!?」

「うん、東京の、映画のポスターに顔が⋯ !」

「⋯⋯ そうだ思い出した、特撮技術で有名だった、ハリウッドの映画監督⋯⋯ !」

 

その名声を、ヒツギははっきりと覚えていた。

かつて「ハリウッドの鬼才」と呼ばれ、一度はその名を忘れられたものの、最近になって復権した映画監督。

「そう! 全米をexcite(興奮)させる歴代最高の映画監督! それがこの俺、べトール・ゼラズニィ! 又の名を⋯⋯ マザー・クラスタ『木の使徒』さ!」

 

男⋯ べトールの前に現れる、萌葱色のエンブレム。

それと同時に、べトールの姿はハギトと同じ、白の礼装に変わった。

「マザーから、来日すればexciting(今までに無いよう)film(作品)が撮れると聞いてね!その日のうちにcome here(飛んで来たの)さ! ハハハァッ!!」

 

べトールの周りに、カメラとクラッパーボードが具現する。

そのカメラが捉えているのは、兄を亡くした悲劇のヒロイン。

「だからヒツギガール! もっと俺をburning (熱く)させるmove(演技)を!もっと俺をcharm(魅了)するact(絶望)を! PREASE!!」

 

自ら生み出した最高のシチュエーションに、べトールは酔いしれる。

⋯⋯ だから、見える筈もなかった。

数分前からずっと、自分を狙う銃口に。

「⋯ OUCH!?」

数発の光弾が、べトールを掠めていく。

 

「⋯ 言いたい事はそれだけか」

射殺すような視線のまま、アメリアスはブーツに換装する。

そして、その瞬間。

「!?」

「警告です⋯⋯ 今直ぐ消えてください」

アメリアスの姿は、べトールの眼前にあった。

 

「チッ⋯ !」

2人の間に光球が具現する。

バックステップを取ったアメリアスの前で、次々と幻創種が現れる。

「全く、面白く無いactor(演者)だ! まあ良い、敵は多い方が、coolな画になるからNE!」

「リオ、戦闘態勢。やるよ」

 

リオは頷き、アメリアスの横で双刀を構える。

「ヒツギさん。ここは任せといて」

「⋯ ううん、心配しなくても大丈夫。貴女のおかげで、今はこいつを叩きのめすのが先だって気づけたから」

太刀を構え、やや強張った肩がアメリアスに並ぶ。

 

べトールは満足そうに頷くと、メガホンに向かって叫んだ。

「actor...standby...!」

3人への悪意を迸らせ、幻創種が動き出す。

「scene...!」

「あたしは⋯⋯ !」

「...ACTION!!」

「やってみせるんだ!」

再び放たれたハトウリンドウが、迫り来る幻創種を斬り裂いた。

 




「無気力クーデター」
誰も去っていかないように、戦い続けよう。
その思いすらも、紅蓮が吞みこむ。

———————
*ベトールの未翻訳部分(原作台詞)

ひとつめ→「クゥゥル!いいねいいね、キレイに吹っ飛んでくれたNE!これはスペクタクルな映像が撮れてそうだよ!!」

ふたつめ→「マザーに仇なす者には、滅びがカァムヒィア!そうだろ、ヒツギガール?」

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