ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
A.P241:4/2 14:20
アークスシップ:艦橋
「向こうの出方待ちです」
「い、いいの? そんな悠長に構えてて⋯⋯ 」
シエラの答えに、そう尋ねたヒツギさん。
シエラはあっさりと頷いて、
「今の所判明している向こうの目的は、アル君を確保することのみ。とりあえずはアル君を保護しつつ様子見です」
「今回の相手は同じ人間⋯⋯ 下手に動くのは良くないからな」
レイもそんな事を言って、シエラを肯定した。
「なのでヒツギさん。今のうちに、したい事を済ませておいたほうがいいですよ。事態が動き始めたら、そんな余裕ないでしょうし」
「やりたい事、ね⋯⋯⋯ 」
腕を組み、少し考えるヒツギさん。
「ん⋯⋯ すみません通信が⋯⋯ 」
と、
不意にステラがそそくさと、端の方へ歩いて行った。
「どしたのいきなり⋯⋯ え? ストっちバウンサーに手出すの? いやいやハンターで十分でしょ⋯⋯ 」
同期だろうか、やたら親しげに話している。
そんな妹から視線をヒツギさんに移すと、どうやら結論が出たようだった。
「えっと⋯⋯ 兄さんに連絡取りたい、かな」
「お兄さん? ああ、この間話してた」
先日ヒツギさんの部屋にお邪魔した時に話してたような。確か、唯一の肉親なんだっけ。
「兄さんには迷惑かけたくないし⋯⋯ まあ、もう遅いかもだけど⋯⋯ とにかく、どうにかして話をしたいけど⋯⋯ 」
また考え込むヒツギさんに、シエラさんはそれならと声をかけて、
「だったら、直接会いに行ってはどうですか? ね、アメリアスさん」
「まあ、それが1番だろうし」
私が頷くと、ヒツギさんは少し驚いた顔になった。
「えでも、待機って⋯⋯ 」
「それはあくまでアークスの方針です。ヒツギさんの行動を止める訳ではありません」
「先の幻創戦艦の撃退以降、マザー・クラスタに動きはない。行くなら今のうちだと思うぞ?」
「そうですよ、遠慮する事ないと思います」
口々に言われ、ヒツギさんは小さく頷いた。
「うん⋯⋯ ありがとう」
「勿論、しっかりサポートさせていただきますよ。アメリアスさん、準備お願いします」
「了解。とりあえずこの場は解散かな」
まだ用が少しあるらしいレイを残し、ヒツギさんとアル君を連れて艦橋を出る。
「ステラ、どうせならあんたも⋯⋯ あ、これからメディカルチェックだっけ」
「うん。ヒツギさんは姉ちゃんに任せるよ。それではヒツギさん、失礼します」
「あ、うん。じゃあね」「またねー!」
ゲートエリアに戻ってすぐ、メディカルセンターに走って行くステラ。
それを見送って、3人で区画移動用テレポーターへ向かった。
A.P241:4/2 15:00
アークスシップ:ゲートエリア
「⋯⋯ ん? ごめんちょっと待って、ブーツの金具が⋯⋯ 」
ゲートエリアの下層に降りた直後、アメリアスは脚に違和感を感じてしゃがみ込んだ。
「え? 大丈夫?」
「うん、いつも装備状態にしてるとたまにね⋯⋯ 」
ブーツの調整の為に、近くのベンチに座るアメリアス。
ヒツギがそれを待っていると、
「あら? あら、あらあらあらあ!!」
「うぇ?⋯⋯⋯ うわあっ!!」
後ろから唐突に声をかけられ、ヒツギはビクッとして飛び退いた。
「ふふふ、そんなにびっくりしなくても良いじゃないですかあ!」
そこに立っていたのは、、ライフルを背負ったキャストの少女。
「い、いやいや! 突然背後に立たれたら、誰だってびっくりするでしょ!!」
「リサだったら問答無用で撃ちますねえ」
「びっくりとかそういうレベル越えてるッ!!!」
物騒な物言いに慄くヒツギ。
アメリアスはため息をついて、そのキャストに声をかけた。
「リサさん、余りからかわないでください」
「おやおや、アメリアスさん! ではこの人は、貴女の新しいお友達ですかあ?」
「まあそんなところです⋯⋯ 全く、相変わらずですね」
「リサはなーんにも変わらないですよ。人間簡単には変われないものですしねえ」
またため息をついたアメリアスの肘を、ヒツギが小突く。
「だ、誰?」
「リサさん。私と同じアークスだよ」
「はい! リサはふつーのアークスですよお! ところで、お嬢さんはどちら様?」
リサに尋ねられ、たどたどしく答えるヒツギ。
「えっと、あたしはヒツギ。こっちの小さいのはアルっていって⋯⋯ 」
「名前じゃありませんよお、ど・ち・ら・さ・ま・なんですかあ?」
するとリサはヒツギの言葉を遮り、問いを重ねた。
「え、あの⋯⋯ その⋯⋯⋯ 」
言葉に詰まる。
目の前にしたリサの赤い瞳が、覗き込むようにこちらを見つめている。
「⋯⋯ だから。トルネードキックの一発でも喰らいたいですか?」
背後からの声。
気づけばアメリアスが立ち上がり、ヒツギの傍らで
「むう、それは洒落にならないので遠慮しておきます。アメリアスさんのお友達なら、どちら様でもまあいいでしょう」
そう言って、すごすごと引き下がった。
「あ、そ、そうですか⋯⋯⋯ 」
「それよりどうです、ヒツギさん。お近づきの印にリサと撃ち合うというのは!!」
「撃ち合う⋯⋯⋯ って、は!? いや、あたしはそんな趣味ないし⋯⋯ !!」
「そうですかあ。撃った時の感触、アークスとは違うでしょうから、試してみたかったんですけどねえ。残念です」
いつもの調子に戻ったリサに、また困惑させられるヒツギ。
「ったく⋯⋯ 対人訓練なら幾らでもお付き合いしますが?」
呆れたアメリアスが口を挟むと、
「アメリアスさんとだと面白くありません。アメリアスさん、銃撃っても当たらないじゃないですかあ」
リサはしれっと、そう答えた。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ 」
「アメリアス?」
突然固まったアメリアスに、声をかけるヒツギ。
最初こそ首をひねっていたが、数秒でリサの発言を理解した。
「え、もしかして『当たらない』って⋯⋯ 」
「そうですねえ。どちらの意味でもありますよお」
まあ、つまりそういうことのようだ。
「ま、マジですか⋯⋯⋯ 」
「まあ、その話は本人からでいいと思います。ヒツギさんも気が向いたら、いつでも声をかけてくださいねえ!」
それではと、スペースゲートの方へ歩き出すリサ。
「尤も、言われなくても撃つかもしれませんけどねえ! うふふふ、うふふふふふふ!!」
最後に物騒なセリフを残して、リサは去っていった。
「こう言っちゃ悪いけど、アークスって割と変な人多いわね⋯⋯ って、アメリアスー?」
固まったまま動かないアメリアスの顔に、手をかざす。
「⋯⋯⋯ はっ!? だ、大丈夫大丈夫!! 別に卒倒しかけた訳じゃなくて!」
「⋯⋯ とりあえず、さっきのは聞かなかったことにしとくわ。行きましょ?」
歩き出したところで、ヒツギはふと気づいた。
「でもあの人、なんと言うか⋯⋯ 私達のこと見透かしてるようで、ちょっと怖かったかも⋯⋯ ねぇ、アル?」
「ぼくは怖くなかったよ? なんだか楽しそうな人だった。ね、アリスお姉ちゃん」
首を振り、アメリアスの方へ振り向くアル。
「ったく、今度一発突き返し蹴りでも⋯⋯ あ、そ、そうかもね! アル君にはそう見えるかも⋯ 」
ぶつぶつと呟いていたアメリアスは、こめかみをかいて答える。
「⋯⋯ なんか物騒なこと口走らなかった?」
意外とこの
ヒツギがため息をついて歩き出すと、
「いたいた! アメリアスさーん!!」
「八坂さーん!!」
中央テレポーターから出てきたイツキとリナが、3人の前にやってきた。
「橘さんに泉澄会長⋯⋯ ! どうしたんですか?」
ヒツギが尋ねると、イツキは「それが⋯ 」とバツの悪い顔をして、
「そろそろ僕達、地球に戻るんですけど⋯ 」
「直接来れる私と橘君はともかく、他のフレンド⋯⋯ PSO2を介して来てる人たちは、情報漏洩を防ぐためにしばらく協力できないらしくて⋯⋯ 」
ヒツギははっとして気づいた。
PSO2を⋯⋯ エーテルインフラを介してのログインは、言ってしまえばマザー・クラスタの管理下で干渉しているということ。
その情報は、マザー・クラスタに見られていてもおかしくない。
「そう、ですよね⋯⋯ 」
俯くヒツギの肩に、リナの手が乗せられる。
「⋯⋯ 大丈夫よ。私達もやれることはやるし、アメリアスさんだっている。だから⋯⋯ 負けないで」
「⋯⋯ はい」
ヒツギは頷いて、笑顔を見せた。
「お兄ちゃんたち、もう会えないの?」
「心配すんな! 君がピンチになったら、助けに来るからさ!」
アルの頭をわしわしと撫でるイツキをよそに、リナはアメリアスの方を向く。
「アメリアスも、頑張りなさいよ?」
「無論です。彼女を守るのが、今の私の使命ですから」
アメリアスは分かっていた。
ヒツギにとって、マザー・クラスタという敵は強大。だからこそ、自分が支える必要がある。
2年前、同じ様な戦いを助けてくれた、シオンやシャオの様に。
「それでは、また」
「ええ。元気でね」
スペースゲートへ走る2人。見れば、アイカがゲートの下で待っている。
「⋯⋯ じゃ、行こうか。私達も」
アメリアスが言う。
「⋯ うん」
ヒツギはアルの手を握り、頷いた。
「白の娘」
たとえ世界の全ての人が、私を蔑み笑っても 。
私は前に進む、求められる限り。