ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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1日遅れてしまいました⋯⋯
それはそうとEP5で「マジック」という単語が明言されましたが、wikiの用語集で「PSO2では使われてない」みたいな事が書いてあって「?」となりましたね。
どちらかといえば出てきてくれて安心しましたが。


SB3-2「ドーナツホール」

A.P241:4/2 13:48

アークスシップ:艦橋

 

「「帰投しましたー」」

無事撃退作戦を終了し、アメリアスが妹を連れ艦橋に戻ると、シエラ達が待っていた。

「お帰りなさい。お疲れ様でした」

シエラは言うと、すぐにコンソールに向き直る。

 

「えーっと、アンサズのシエラタイプからの連絡は⋯⋯ 」

「アメリアス、大丈夫だった?」

「大丈夫大丈夫。ダーカーなんて一捻りだよ、ヒツギさん」

「ひとひねり?」

「簡単に倒しちゃうよ、ってこと。実際姉ちゃん無双だったからなぁ⋯⋯ 」

 

パルチザン片手に暴れ回る、姉の姿を思い出す。

他職の武器も使って見るものかもしれないと、ステラは思った。

 

「はい、共有完了、っと⋯⋯ それでは、午前中の続きにしますか?」

頷く一同。

シエラはそれを確認して、ウインドウを追加展開する。

 

「⋯⋯ あそうだ。今更感はあるんだけど」

するとそこで、ヒツギが声をあげた。

「何でしょう?」

ヒツギは顔を上げ、窓に映る惑星⋯⋯ 地球を見る。

「今このシップは、あたしたちの世界に来てるわけよね⋯⋯ 何でわざわざ?」

「一言で言えば⋯⋯ さっさと駆けつけるため、かな」

 

それに答えたのは、アメリアスだった。

「もともとあの時⋯⋯ 私が強制転移して、成り行きでヒツギさんを助けた時に、ヒツギさんの座標を拾うことができたの」

「それ以降しばらくは、ヒツギさんとアメリアスさんの繋がりを頼りに、惑星間転移の応用で調査を試みていました」

 

シエラは言葉を続けると、不意に大きなため息をついた。

「これがなっかなか難しくて⋯⋯ 転移のための安定化含め、移動に1時間近くかかっていたんです」

しかもそのへんは殆ど自分に任されてました、と、ふてぶてしく呟くシエラ。

 

と、その時。

「それでいて、手に入る情報は持ち帰れる範囲だからな。アークスとしても割に合わないというわけだ」

凛とした少女の声が、入口から聞こえて来た。

 

「⋯⋯ こらレイ。なんであんたまで来る」

入って来た車椅子の少女⋯⋯ レイツェルに、アメリアスは怪訝な視線を送る。

「引き継ぎ、完了しました。よろしくお願いします、シエラ管理官」

「こちらこそ、よろしくお願いしますね、レイツェルさん」

 

それを全く意に介さず、シエラと話すレイツェル。

「⋯⋯ お姉さん、だれ?」

「君は⋯⋯ ああ、例の地球の少年か」

アルに尋ねられ、レイツェルはそちらに体を向ける。

「アークスシップ8番艦市街地、環境管制室のレイツェルだ。今日付けで、情報部の特別職員として勤務することになった。宜しく」

 

一礼したレイツェルは、ステラの方を向き、

「それはそうと⋯⋯ 久しぶり、なのかな。ステラ」

「⋯⋯ そうなるのかな。元気そうでよかった」

言うと、ステラはさりげなく視線を外し、

「⋯⋯ それで、アークスシップの転移の話ですよ、シエラさん」

「そ、そうですね。そんな理由もありまして、こちらへ直接転移する準備はしていたのですが⋯⋯ 」

 

ウインドウに、校舎にひしめく幻創種の映像が映る。

「その矢先に、これです。ヒツギさんの元へ駆けつけるために、緊急転移を敢行しました」

「エラーコード・『OLYMPIA』⋯⋯ 」

ヒツギはあの時、PCに映った文字を思い出した。

 

「あの時⋯⋯ ヒツギさんたちの強制送還のみならず、こちらが収集したデータを抜こうとした形跡も確認しています。今までの偽装アバターによる潜入のレベルではない、積極的な干渉です」

「それはヨハンからも聞きました。まさかこっちもハッキングを喰らっていたとは思わなかったと⋯⋯ 」

「ともかく、それによって地球にも敵性存在がいると断定し、こうしてやって来たというわけです」

 

すると不意に、アルが手をあげた。

「はいっ。これ、ばれてないの?」

「もちろん、認識偽装はしてますよ。衛星の通らない軌道に調整しましたので、地球側にバレることは⋯⋯ 」

シエラが答えた、その時。

前方の大窓、離れたところを、白い人工衛星が横切っていった。

 

「⋯⋯ 無いはずです」

「こ、国際宇宙ステーション⋯⋯ 」

「本当に大丈夫なんだろうなこれ⋯⋯ 」

怪訝な顔をする一同。

「だ、大丈夫ですって! 次行きますよ、次!」

シエラはぷいっと、コンソールのの方を向く。

 

「えーと、次は⋯⋯ そう、幻創種ですね」

「幻創⋯⋯ ? あたし達を襲った、バケモノのこと?」

「はい。ここで問題です! ヒツギさん、あのバケモノの共通点、お気づきになられました?」

「共通点?」

 

唐突に尋ねられ、ヒツギは腕を組んで考える。

「なんだろう⋯⋯ うーん⋯⋯ 」

あの時、校舎に現れたバケモノ。

 

青いゾンビ。太古の恐竜。

ネズミとカラス。正直うざったい動物。

戦車にヘリコプター。ちょっと違うけど巨大戦艦。

 

「⋯⋯ 程度はあれ、マイナスイメージのあるもの⋯⋯ かしら」

「大正解です。エーテルがそういったイメージを形どり、襲ってきているようですね。もっとも、エーテルを扱えない人々に影響はないようですが⋯⋯ 」

「ヒツギさんみたいなターゲットを狩るには、絶好の下僕、ってわけか⋯⋯ あれ、ちょっと待ってください?」

 

ステラは頷きかけて、異議を唱えた。

「この間の東京探索の時、普通に幻創種が一般人襲ってたんですけど⋯⋯ 」

「幻創種は具現後、大気のエーテルを吸収し、純度を増します。そしてある程度まで行くと、現実に干渉が可能になるようです」

 

シエラはそれに付け加えて、まだ当時は探知が弱く、作戦範囲外の異常を察知しきれなかった、と話した。

「蛇足ですが⋯⋯ そうして現実に表出した幻創種は、地球人に天使や悪魔、果ては魑魅魍魎として認知されていたとか」

 

驚いたヒツギの横で、ふむふむとアメリアスが頷く。

「となるとやっぱり⋯⋯ エーテルはグラールのフォトンのように、別世界の類似性を持った物質と考えるべきなの?」

「その可能性は高いですね。おかげで私達も、隔離領域や認識偽装といった対応が取れていますし」

幻創種はこんなところですねと言って、シエラはウインドウを切り替えた。

 

「最後に、マザー・クラスタについてですが⋯⋯ かの情報部も、これに関してはあまり詳細を掴めていないようです。ヒツギさんの情報が頼り、といったところでしょうか」

シエラの言葉に、首を振るヒツギ。

「ごめん⋯⋯ あたしも、殆ど知らないんだ」

「はい⋯ ? だって、ヒツギさんはマザー・クラスタに所属していたんですよね?」

ステラが、戸惑いを含んだ声で尋ねる。

 

「そもそも、マザー・クラスタに入ったのも、ある日いきなり会員制のSNSに招待されただけ。私が知ってた他のメンバーも、コオリとか生徒会の人間だけだった」

 

学校での戦闘の際、ハギトはヒツギのことを末端と呼んでいた。

実際『esc-a』の調査を行なっているようなメンバーには、マザー・クラスタの正確な規模や「使徒」の存在も伝わっていなかったのだろう。

 

「確かに、最初は半信半疑だったけど、マザーの言うことはいつも正しくて、偽装アバターでPSO2に入るのだって、本当にできて⋯⋯ 気づいたら、全部信じ込んでた。すごい、なんでも知ってるんだ⋯⋯ って」

「ヒツギさん⋯⋯⋯ 」

「⋯⋯ あたしは、知ったつもりになってた⋯⋯ 」

 

マザーに「君には素質がある」と選ばれて。

誰も知らない「秘密」に足を踏み入れて。

何も変わっていないのに、特別になった気になっていた。

 

「⋯⋯ ある意味、思い知らされた。結局、あたしは何でもなかったんだって」

何も得ていないのに、何かを得たつもりになっていた。

 

「お姉ちゃん」

その時。アルが、口を開いた。

「アル⋯⋯⋯ ?」

「わからないことがあるのって、いけないことなの⋯⋯ ?」

俯いて、声を絞り出すアル。

「だったら、僕が1番悪い。自分のことだって、わからないから⋯⋯ 」

「アル⋯⋯ !」

 

泣き出しそうなアルを、ヒツギは思わず抱きしめた。

「⋯⋯ そんなこと言わないで。あんたは⋯⋯ あんたは何も⋯⋯ !」

「⋯⋯ 大丈夫だよ、アルくん」

アメリアスも歩み寄り、その肩に手を置く。

 

「ある人の、受け売りなんだけどさ。知らないことがあるのは、楽しいことなんだって」

「そうなの⋯⋯ ?」

「私もそう思いますよ、アル君」

シエラも、笑顔で肯定した。

 

「⋯⋯ あー、ちょっといいか」

そそくさと、レイツェルがアル達の方へ車椅子を滑らせる。

「ヒツギ、君はさっき、自分は何も知らなかった、と言ったが⋯⋯ 」

そこで言葉を区切ると、ヒツギの前で微笑んで、

 

「⋯⋯ だけど今は、違うだろう?」

「レイツェルさん⋯⋯ ?」

「欺瞞の中に生きていた、君はその事に気づけた。そして、それと戦う決意を抱いた。あの剣は、その証左の筈だ」

 

ヒツギは、何も握っていない右手を見る。

『天羽々斬』。

ヒツギの意思が形を成した、戦うための力。

「なら、やって見せろ。君がその剣に託した願いを、果たして見せろ」

「⋯⋯ そうね。進まなくちゃ。アルのためにも」

 

ヒツギは頷いて、シエラの方を見る。

「それで、今後はどうするの?」

「はい。現状、私達が取れる行動は⋯⋯ 」

「行動は⋯⋯⋯ ?」

 

シエラはじっと、ヒツギを見つめ返して、

「⋯⋯⋯ 向こうの出方待ちです」

「⋯⋯⋯ え?」

ヒツギは思わず、素っ頓狂な声を上げた。




「ドーナツホール」
無垢な少女のままでいるのが。
何も知らないままでいるのが、あなたを傷つけてはしないか。

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