ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
A.P241:4/2 9:00
アークスシップ:艦橋
幻創戦艦大和との激戦から、一夜明けて。
「あ、アメリアスさん! おはようございます!」
「んー、おはようシエラ」
情報整理がようやく終わったという連絡を受け、私は艦橋に顔を出した。
「おお⋯⋯ なんか良いですねぇ、ため口」
「そ、そう⋯⋯ ?」
目を(物理的にも)輝かせるシエラに戸惑っていると、また艦橋のゲートが開く。
「ごめん、お待たせ!」「おはよー」
そして、アル君を連れたヒツギさんと、
「シエラ、ネットワークの再整備は完了したか?」
「おはようございます⋯⋯ ん、姉ちゃんがいる。おはよー」
ステラを連れたアイカさんが入ってきた。
「そっちはばっちりですよー。ヨハネスさん達も頑張ってくださいましたし⋯⋯ さて」
シエラさんはにこっと笑うと、顔の横で指を鳴らす。
するとコンソールに、ざざっとウインドウが現れた。
「お楽しみの情報共有タイムと行きましょう! これからの指針を決める、大事な作業です!」
「き、器用だなぁ⋯⋯⋯ 」
正直な感想を漏らしてから、ふと気づく。
「⋯⋯ そういえば、なんでステラまで?」
私が問いかけると、ステラはふふん、と笑って、
「幾ら何でも、アークスで動けるのが『
「アークスという『組織』の代表⋯⋯ 地球専門の実働員の1人として、彼女が選ばれた」
アイカさんに言われ、思い出した。
そもそもなんでしばらく私1人で動いていたのかといえば、情報部が仕事しないからなんとかしてくれという、ウルク総司令からの依頼だった訳で。
「地球の調査も開始された今、ついにアークス総出で、この問題に取り掛かれるようになった⋯⋯ ってところ?」
「そーゆーこと!宜しくね姉ちゃん!」
ない胸を張って笑う妹に、私はついため息をついてしまった。
「⋯⋯ シエラ、こんなんで大丈夫なの?」
「⋯⋯ まあ、もう1人の守護輝士であるマトイさんが動けるようになるまでの中継ぎのようなものなので⋯⋯ 」
「半年前の一件があったとはいえ、もうすぐマトイ様も復帰するはずだ。別部署の私が言うのも何だが⋯⋯ よろしく頼む」
申し訳なさそうに言う2人。
するとそこで、ヒツギさんが口を開いた。
「ち、ちょっと待って!? 半年前にも何かあったの!?」
「ヒツギさん!? ⋯⋯⋯ あ」
そのヒツギさんの声で、思い出す。
今出てきた「半年前の一件」⋯⋯ 私が眠っている間に、地球とオラクルの間で起こった事件。
リナさんから話を聞こうと思ったら、大和が現れたのだった。
「確かに⋯⋯ アイカさん、その半年前の事件というのは? 清雅学園の方も話してましたが⋯ 」
「あ⋯⋯⋯ 貴女は知らないのだったな。そうだな⋯⋯ シエラ」
「そうですね。ヒツギさんにも関係するかもしれませんし、先にそっちから振り返っておきましょう」
ウインドウが何枚か切り替わる。
「事の起こりは、A.P240⋯⋯ 西暦2027年の9月に遡ります。ちなみに情報部はこのころにはもう、別世界の干渉を把握していたそうです」
「⋯⋯ 今更何も言う気は無いぞ。そしてこのころ情報部は、ダーカーの不審な動きに気がついた」
私は嫌な予感がして、そろりと手を挙げた。
「⋯⋯⋯ ダーカーが、地球に忍び込んでいた?」
「鋭いですね⋯⋯ 実際はそれどころではなく、地球人の
「ちなみに地球に忍び込んでいたダーカーは、全て昆虫型だ。となれば、考えられる目的など一つだろう」
「⋯⋯⋯ 彼らの親玉、ダークファルスの一体『
そこで声をあげたのは、ステラだった。
「へ⋯⋯ ? どういうことなの? 妹さん」
「『若人』は2年前、依代を失った状態で、リリーパに封印されました⋯⋯⋯ 時々採掘基地にダーカーが襲来するのは、その封印を破壊するためです」
ヒツギさんの質問にステラが答え、シエラさんも頷く。
「
「地球のとある少女を依代に、『若人』は
「⋯⋯ 何も出来なくて悔しがってのが懐かしいです」
俯いて答えるステラ。
アイカさんはそれを一瞥すると、話を進める。
「⋯⋯⋯ そしてその時『若人』の依代にさせられたのが、泉澄リナだ」
「り、リナさんが⋯⋯ !?」
その言葉に、私は耳を疑った。
ダークファルスの依代になって、元の人間に
戻った者など、存在しない。
1人例外はいるが⋯ 彼女の場合は正確には「自分がダークファルスだと思い込んでいて、その力も少しだけ使えていたアークス」であって、そもそも正確にはダークファルスでは無い。
「でも、現にリナさんはああして⋯⋯ 」
「助け出された、という事だ。地球の人々⋯⋯ イツキ達の手によって」
そう言うと、アイカさんはふいに目を逸らした。
「アイカさん?」
「あ、いや⋯ この時、マトイ様も緊急出撃し、その影響でコールドスリープが伸びている⋯⋯ 半年前の事件はこんな所だ」
アイカさんはそう言うと、ゲートの方へ歩き始める。
「あれ、帰られるんですか?」
「私はステラを連れてきただけだ。後の情報は全て、こちらも把握していることだからな」
シエラが引き留めるのも聞かずに、アイカさんは出て行ってしまった。
「行っちゃった⋯⋯ でも、あのリナさんが⋯⋯ 」
「⋯⋯ この間PSO2のことを調べた時に、プレイヤーの失踪事件についてのニュースがあったわ。あと⋯ 半年前の清雅の学園祭で、会長さんが消えていたって噂も聞いた」
頷いたヒツギさんが、こちらを見る。
「まあ、1番びっくりしたのは、あの2人が戦っていた、って事だけど」
「先日のヒツギさんと同じ、ですね。いいタイミングですから、あの武器についての情報を説明しておきますね」
そう言って、シエラはこちらに向き直った。
「マザー・クラスタに習って、『具現武装』と呼称させてもらいます。あれはエーテルが形を持ったもの⋯⋯ サモナー能力の、地球人バージョンとも呼べるものです」
「サモナー⋯⋯ ?」
首をひねるステラ。
「そうですね⋯⋯ ヒツギさん、この場であの剣、創れます?」
ヒツギさんは一瞬、あっけにとられると、
「や、やって見る⋯⋯ 」
右手を伸ばし、瞑目するヒツギさん。
「⋯⋯⋯ 『
その声とともに、あの時と同じ、黒いカタナが具現した。
「「わあ⋯⋯⋯ !!」」
テンションを上げるちっこいの2人。
「えっと、これでいいの?」
「はい。ありがとうございます」
シエラは頷くと、コンソールに指を走らせる。
「今、ヒツギさんのコマンドをトリガーにフォトンが一気に凝縮、カタナを形成しました。言ってしまえば、ペットと同じです」
「成る程⋯⋯ 」
思わず、感嘆の呟きが漏れた。
アークスシップには、フォトン干渉に反応して無効化する、リミッターが仕掛けられている。それでも、ペットや「オービット」のフォトンリングなど、ある程度の操作は受け付けるようになっているが。
それと同様に、武器そのものの形を取らせた、と言うことか。
⋯⋯⋯⋯⋯ って、ちょっと待て!
「今、フォトンが、って言わなかった!? って事はやっぱり⋯⋯ !!」
「はい。すでにお気づきかとは思いますが、エーテルとフォトンはほぼ同様の性質を有する、という事も判明しました」
やっぱりか。
初めて地球に迷い込んだ時、フォトンアーツが普通に使えたことから考えても、何と無く勘付いてはいたのだが⋯⋯
「ですが、いささか変質があるようですね。エーテルはエネルギーは小さいですが、情報伝達能力に特化しています。これを利用しているのが、『エーテルインフラ』のようです」
『ソフトの割にハードの技術がローテク過ぎる』
前にシエラが話していた事が、何と無くわかった。
「その応用が、イメージをそのまま具現すること。できる人は限られるようですが⋯⋯ 字にするとなかなか滅茶苦茶ですね」
こうして考えると、リナやイツキの見慣れない武器も、その具現の賜物なのだろう。
「じゃあ、ヒツギさんのカタナも⋯ 」
と、
後ろからステラが尋ねようとした、その時。
『緊急事態発生! アークスシップ13番艦『アンサズ』市街地に、大量のダーカーが襲来!!』
緊急警報と共に、エネミー襲来の報が響き渡る。
「マジか⋯⋯⋯ っ姉ちゃん!!」
「ごめん、ちょっと行ってくるね、ヒツギさん!!」
中央コンソールに背を向け、私達は艦橋を飛び出した。
A.P241:4/2 11:00
アークスシップ13番艦:市街地
市街地の街並みは、雨と炎に彩られていた。
襲撃するダーカーを迎え撃つのは、各シップから駆けつけたアークス達。
長時間に及ぶ戦闘の末、彼らはダーカーを追い詰めつつあった。
そして、市街の一角。
スフィアアリーナの中では、大型ダーカー、「ダーク・ラグネ」との戦闘が続いていた。
「沈めた! 後は頼む!!」
「任せてください!!」
巨軀を取り囲むアークスの中から、黒い戦闘服を纏った少女が飛び出す。
その手に握られているのは、紫紺に染まった鎌状のパルチザン。
「姉ちゃん行けぇっ!!」
ダーク・ラグネ直上に舞い上がったアメリアスが、背中のコアに狙いを定める。
「これで⋯⋯⋯ !」
打ち出される光の楔。
コアに突き刺さったその標へ、容赦なくパルチザンの切っ先が突き刺さる。
「終わりだあああああああっ!!!」
繰り出される乱撃。輝く刃が、楔と共に弱点を抉り抜き、
「爆ぜろ!!」
爆発する楔に、ダーク・ラグネはアリーナに沈んだ。
「よっし⋯⋯⋯ 」
「付近一帯のダーカーは殲滅。哨戒に戻るぞ!」
散らばっていくアークス達。
尤も統率種であるダーク・ラグネが倒された以上、直ぐに残りも鎮圧されるだろう。
アメリアスはきょろきょろと辺りを見回すと、残っていたアークスに気がついた。
「あ⋯⋯⋯ アイカさん」
「終わったな。いいフィニッシュだったぞ」
アメリアスの握るパルチザン、「ノクスロザン」を見て微笑むアイカ。
「しかし、バウンサーなら飛翔剣があるぞ?」
「これでも元々ハンターなので。使い慣れてる方が良いんですよ」
アメリアスはそう返して、物言いたげな顔に変わる。
「⋯⋯⋯ 時にアイカさん」
「何だ?」
「まだ⋯⋯ なんか隠してません?」
そう言って、アメリアスはアイカの髪を見た。
長い金髪の下の方へかかった、紫のグラデーション。
その髪色に、アメリアスは覚えがあった。
「⋯⋯ 流石に気づくか」
「そしてあなたの言動から考えれば、おおよその察しはつきます⋯⋯ 」
声が震える。
「自分もろとも、『若人』を封じ込めようとした⋯⋯ 違いますか?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ その通り。完全なダークファルスの闇は、ただ封印するだけでは足りなかったんだ」
アイカは瞑目して、語る。
「⋯⋯ しかし私程度では、『若人』の闇は持って行けなかった。その時⋯⋯ マトイ様が割り込んで、自分が封印しようとしたんだ」
「⋯⋯ っ! あの馬鹿⋯ っ!!」
マトイの真似をするアイカもアイカだが、同じ失敗をしかけるマトイもマトイだ。
そんなことをしようものなら、2年前の悲劇を繰り返しかねない⋯⋯⋯
「でも、どうして貴女も生き残れたんですか?」
「私がマトイ様もろとも侵されかけた時、現れたんだ⋯⋯⋯ 『ディーオ・ヒューナル』が」
アメリアスは絶句した。
ディーオ・ヒューナル。2年前から姿を現わすようになった、復活した『深遠なる闇』の人間体。
「奴は『若人』の残滓を吸収し、そのまま去っていった⋯⋯ 欠けていた『若人』の力を、持ち去ったのだろう⋯⋯ 」
「⋯⋯⋯ 多分、それだけじゃない」
思わず、声が出る。
「⋯⋯⋯ ?」
「⋯⋯ いや、何でもないです。哨戒に戻りますね」
首を振り、アメリアスはてくてくと歩いていく。
「⋯⋯⋯⋯⋯ 」
アイカは暫く、その後ろ姿を見つめていた。
「カミサマネジマキ」
機械仕掛けの希望に願う。
ああ、世界の餌になる前に———