ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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いいんだ、このタイトルでいいんだ⋯⋯ !

それと今日はリオちゃん回。


3章 世界変革の声〜CHANGE THE WORLD!!〜
SB3-0.5「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています」


A.P241:4/1 15:00

惑星地球:東京

 

隔離された東京の街に、咆哮が響き渡る。

無人の公園を闊歩するのは、巨大な爬虫類型の獣。

人々の恐怖、負の感情をエーテルが拾い上げ、形を与えた存在⋯⋯ 「幻創種」。

 

気の向くままに暴れていた怪物は、正面から駆け寄る影に気づく。

それは1mにも満たない、妙に小さな少女。

その手には、鋼色の刃が握られている。

 

「見つけた⋯⋯ !」

瞬間。

少女は軽く跳躍し、両手の剣を振るう。

すると楔の様な光の刃が飛び出し、怪物の巨躯に突き刺さる。

 

突然の奇襲に混乱し、長い尾を振り回す怪物。

しかし少女は矮躯を翻し、その懐に潜り込む。

 

「はああああ⋯⋯⋯ っ!!」

斬撃。

光の刃と共に繰り出された斬り上げが、怪物を打ち上げる。

 

無数の刃を突き刺され、巨躯が沈む。

怪物の、爬虫類に似た細長い瞳は、

「PBF⋯ これで⋯⋯ !」

最期に、迫り来る巨大な光刃を映していた。

 

 

「終わり⋯⋯ 」

公園に現れたT-REXを斬り伏せ、リオはふう、と息をついた。

 

きょろきょろと辺りを見回し、地面に落ちていた物体⋯⋯ T-REXの残留物を拾い上げる。

舞い込んだ幻創種の素材回収依頼——またカフェが目をつけたようだ——の手伝いをマスター(アメリアス)に頼まれ、リオはこうして地球へ赴いていた。

 

(まったく、フランカさんは何を考えているんだか⋯⋯ )

ため息をつきながら、公園の沿道を歩く。

辺りには誰もいない。認識偽装と空間隔離が行われているのだから、当然ではあるのだが。

 

それでも普段臨戦区域から出ないリオにとって、市街地の景色は新鮮だった。

「⋯⋯⋯ はっ、そうだ任務」

いつの間にか散歩になってしまっていた。

集中しようと背のデュアルブレードを抜き、哨戒に戻る。

 

「⋯⋯ おや? そこに居るのは誰だい?」

と、その矢先。

街角から出てきたピエトロが、リオに声をかけた。

「えっと、君は⋯⋯ 」

「リオ⋯⋯ ピエトロさんも、任務⋯⋯ ?」

「リオ、リオ⋯ ああ、マイフレンドのサポートパートナーか! そう、僕も任務でね。カトリーヌと一緒に、街を探索していたところさ」

 

上機嫌に喋るピエトロを見て、リオは小さく首を傾げた。

⋯⋯ その割には、いない。

いつも彼が連れているはずの、ピンク色の毛が気持ちよさそうなあの子が、いない。

 

「⋯⋯ そのカトリーヌは?」

「⋯⋯ それが、はぐれてしまったんだ⋯ さっきブラウンベアの群れを蹴散らした時に、そのままぴゅーっと」

東京の街が気になったのか、もしかして先程の緊急任務に連れて行かなかったから怒っているのだろうか⋯ と、悶々と考えだすピエトロ。

 

リオはため息をついて、

「⋯⋯ どっちにしろ、探さなきゃ」

「そうだね。カトリーヌも困ってるだろうし」

2人になったパーティで、探索任務を続ける事にした。

 

「⋯⋯ っ! 敵⋯ !!」

路地に具現したクロウファムトの群れへと、リオは単身で突撃する。

ピエトロが戦えない以上、瞬間制圧で行くしかないと考えてだったのだが、

「唸れ⋯ イル・ザン!!」

それよりも先に、風の法撃が疾走(はし)った。

 

「えっ⋯⋯ !?」

直線上に吸い寄せられ、斬り刻まれるクロウファムト。

間違いなく、背後のピエトロが放ったものだ。

 

(今の出力⋯⋯ 法撃職並み!?)

続けて放たれた鎌鼬が、クロウファムトにとどめを刺す。

「あれは一見弱そうだが、包囲攻撃はかなり痛い⋯⋯ 尤も、君の場合はあちらが動く前に殲滅してしまうだろうけど」

「⋯⋯ ちょっとびっくりした。ペット頼りかと思ってたけど⋯ 」

 

何を言うんだと言うように、ピエトロは首を振る。

「こう見えて、僕の最高適性はフォースでね。それに、使役する側が戦えないんじゃ話にならないだろう?」

そしてふとリオを見ると、

「⋯⋯ 意外と喋れるんだね、君」

「⋯⋯ 定期的に調整してもらってるから」

 

ぷいっとピエトロから視線を外し、足早に先を行く。

確かにリオは口下手だが、それは性格(ソフト)ではなく素体(ハード)の問題だ。

今でこそこうして、サポートパートナーとして戦っているが、アメリアスのパートナーとなる前は⋯⋯

 

「それに、君は何処となく他と違う感じがする。なんと言うか⋯⋯ 人間臭い、のかな、雰囲気が」

するとピエトロが、そう続けた。

 

「⋯⋯ ホントに、他と違うから」

リオは立ち止まり、ポツリと呟く。

「? いや僕は何と無く⋯⋯ 」

駆け寄ったピエトロの前で、リオはカチャカチャと何かを外し、差し出した。

 

「ミッションパック⋯⋯ ?」

ミッションパック⋯ アークスの必須装備の一つである、フォトン制御のための戦略OSを組み込んだ端末だ。

大抵戦闘服のどこかに収納されているのだが、サポートパートナーは直接プログラムをインストール出来るため、本来であれば不要の筈である。

 

「じゃあ、君は⋯⋯ ?」

「⋯⋯ 『プロトマシナリー・typeA』」

「⋯⋯ !」

ピエトロは目を丸くした。

 

アークスの体制移行に伴い、開示された情報——主に「虚空機関(ヴォイド)」の秘匿研究について——の中に記されていた、その単語。

「オートマシナリー・type『Assault 』。

サポートパートナーの、量産兵器化に関する研究である。

 

「知ってるんだ⋯⋯ ペット以外はどうでもいい人かと思ってた」

「それについては否定はしないよ。でも一端のアークスである以上、知っておく必要はあると思っただけさ」

瞑目し、腕を組むピエトロ。

 

「確かにアレには、ミッションパックを使う予定だったらしい⋯⋯ 差し詰め、君は試作機と言うところか」

こくっと、リオは頷いた。

「量産性と出力に全振りして、個性を切った量産機⋯⋯ その試作1号機であったボクは、いくつかの実験の後に処分される予定だった」

 

リオは顔を落として、続ける。

「でも当時のプロジェクトリーダーの手で、こっそりサポートパートナーに登録されて、」

アメリアス(マイフレンド)と出会って、今に至る⋯ か」

 

またカチャカチャとミッションパックをしまうリオの脇で、ピエトロはぼんやりと空を見上げた。

「しかし、良くサポートパートナーにできたね」

「私は実際、素体(ハード)の試作機だったから⋯⋯ 初めから、ぽいっと捨てる気は無かったんだと思う」

 

ピエトロはそうか、と呟くと、

「⋯⋯ うん、面白い話を聞かせてもらったよ! さて、カトリーヌ探しに戻ろうか!」

「えっ⋯⋯ !?」

ころっと態度が変わったピエトロに、リオは戸惑って聞き返す。

 

「この領域も、延々隔離しておける訳じゃないからね。そうだろう?」

「そ、それは、まあ⋯⋯ 」

端末を確認するリオ。確かに、隔離可能時間も押してきている。思った以上に長話になっていた様だ。

 

さあ行こう! と言って、ピエトロは駆け出す。

「⋯⋯ ああ、一つだけ忘れてた」

追いかけようとしたリオの前で、ピエトロは振り返り、

「気にすることは無いよ。僕は君の事が好きだし、マイフレンドだって⋯⋯ 君が大好きだろうさ」

そう言って、小さく笑った。

 

「⋯⋯ はいはい」

リオはため息をついて、歩き出す。

(⋯⋯ 全く、マスターの周りには、変な人しか集まらないんだから⋯⋯ )

気づけば、フッと笑顔が漏れていた。

 

A.P241:4/1 17:30

アークスシップ:ゲートエリア

 

「⋯⋯ くたくた」

スペースゲート近くのベンチに、リオはとすっと座り込んだ。

無事カトリーヌを見つけ、探索任務も終わった矢先、急に発生した幻創種を近くにいたアークスと殲滅して⋯⋯ 今に至る。

 

「ん⋯⋯ マスターに連絡しなきゃ⋯⋯ 」

サポートパートナー用の端末を立ち上げ、アメリアスにメールを送る。

「『集まった』⋯ 終わり」

送信を済ませると、リオはそのままベンチに寝転ぶ。

(⋯⋯ 駄目だ⋯⋯ ぶっ通しで動いたから、止まるぅ⋯⋯ )

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ ふぁ」

一瞬、意識が飛んだ。

むくっと起き上がり、時計を見ると、1時間ほど進んでいる。

「⋯⋯⋯ うわぁ」

頭を押さえて立ち上がる。

マスターに似てしまったのか⋯⋯ リオは長時間動き続けると、時々オートメンテナンスを問答無用で行ってしまう⋯⋯ 要は「居眠り」してしまう事がある。

 

原因は、彼女に搭載されたAIだ。

サポートパートナーになる時に、とある人物によって弄ら(調整さ)れた事で、彼女のAIは「人間を模倣すること」に特化している。

口下手なのも元を正せば、素体に出来る発声の限界と学習した会話のレベルに、差が生まれてきてしまっているから。

 

「⋯⋯⋯ 」

「ん、リオちゃんだ。こんちゃー」

憮然とベンチに座っていると、この様にアークスに声をかけられることも多い。

この2年間で微妙に顔が知られたのと⋯⋯ 妙に「人間臭い」所も影響している様だ。

 

「⋯⋯ っと、もう帰ってるかな」

しかし、そろそろアメリアスも帰ってくる時間である。

ぱたぱたとゲートエリアを横断し、ブロック移動用のテレポーターにアクセスした。

 

部屋側のテレポーターに転移し、そのまま部屋のドアへ駆け寄る。

「ただいま⋯⋯ 」

「ん、お帰り。お疲れ様」

ドアが開くと、そこには彼女のマスターと、

 

「あ、リオ。お帰りなさい」

「お帰りー!」

「ん? 姉ちゃんサポパに探索させてたの?」

ヒツギとアル、ステラの姿もあった。

 

「⋯⋯ なんでみんな⋯⋯ ?」

アメリアスに尋ねるリオ。

「いやね、ヒツギさんがさっきの緊急任務の話が聞きたいって言い出して⋯ どうせならって調査端末から映像落として、みんなで見てたの」

「はぁ⋯⋯⋯ 」

 

頷くと、リオはヒツギの方を見た。

少し長くシップを外していたが、特に2人には何もなかった様だ。

「⋯⋯⋯ ? リオ?」

「あ、な、何でも⋯⋯ 」

リオは自分用の椅子に腰掛け、端末を弄り出す。

 

「そういえば姉ちゃん、見慣れないジェットブーツ履いてなかった?」

「あ、そういえばハギトとやりあった時のあのブーツ、あたしも見た事ない」

「ああ、『レイ』のこと? 量産用武器の次世代型モデルらしくて、各武器1人づつモニターしてんの。まさか超大型相手に渡り合えるレベルとは思わなかったけど⋯⋯ 」

しばらくステラ達と話していたアメリアスが、ふとリオの方を見ると、

 

「⋯⋯⋯ すぅ」

リオはぺたんと、机に突っ伏していた。

「あらら、寝オチしちゃってる⋯ 」

アメリアスは苦笑して、リオの頭をぺんぺんと叩く。

「ふぁ⋯⋯⋯ 」

「ほら起きて。ヒツギさん達そろそろ帰るって」

 

リオはむくっと立ち上がると、少し目をこすって、

「ん⋯⋯⋯ じゃあ行こ」

「うん。お邪魔しましたー」

「またあしたー!」

ヒツギとアルを連れ、部屋から出ていった。

 

「⋯ 大丈夫なの?」

「サポパは寝ぼけたりはしないから、大丈夫じゃない?」

アメリアスは答えると、小さく伸びをした。

「んーっ⋯⋯ 今日は色々あったなぁ⋯ 」

「今日は、っていうか、今日もじゃない?」

 

それもそうだね、と頷いて、アメリアスは窓の外を見る。

広がる宇宙の中に浮かぶ、青い惑星。

「⋯⋯ 全く、なんだかんだ大事になり始めてるんだよなぁ⋯⋯ 」

「仕方ないじゃん。アメリアスのある所に事件ありってね」

「それじゃあ私が疫病神みたいじゃん!」

 

はぁ、とため息が出る。

「ま、姉ちゃん1人じゃないんだしさ。適当に頑張れば良いんじゃない?」

「⋯⋯ そうかもね」

イオやらサガやら、仲間達に言われたことを思い出す。

 

(いつでも頼ってくれ⋯⋯⋯⋯⋯ か)

少し、難しいかも知れない。

でも、自分が皆を信頼していること。

それは、確かなことだ。

 

「⋯ おおっと、カトリさんに特訓頼んでるんだった! じゃあね!」

「カトリさんにねぇ⋯⋯ ま、頑張って来なさいな」

部屋を飛び出すステラを見送り、ソファに寄りかかる。

⋯⋯ 昼の顔見せの後に少し休んだのだが、眠くなってきた。

 

「んっ⋯⋯⋯ 」

一瞬、意識が薄らいで、

「⋯⋯⋯ あ痛ッ!!?」

ヒールが滑った拍子に、アメリアスはソファからずり落ちた。

 




「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています」
今日は何が待っているのか、期待して開けるドア。

※戦略OSは「PAやテクニックのディスクをインストールする装備」という没設定(と言うよりイノセントクラスタの絵師さんが考えた設定)らしいのですが、便利なので使わせていただきました。

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