ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
「オペレーション・コンプリート⋯ っと」
シエラは眼鏡を外すと、ワークチェアの上でうーんっと伸びをした。
「とは言え、ネットワークのチェックもしなければ⋯ 全く、どこからあんな事態に⋯ 」
またぶつぶつと呟きながら、コンソールを叩く。
すると小さな音とともに、ゲートが開いた。
「おっと⋯ お疲れ様です。あの、大丈夫でしたか?」
「⋯ 何とか。えっと⋯ 無理言って、ごめんなさい」
「いえいえ。これが決め手になったようなものですから、アメリアスさんも許してくださると思いますし!」
頭を下げた少女に、シエラは笑みを返す。
「それよりも、アルくんが心配そうにしてましたよ。早く行ってあげては?」
「⋯ ああそうだった! ありがとうシエラ!」
慌てて艦橋を出て行く姿を眺めてから、シエラはコンソールに向き直った。
A.P241:4/1 13:00
アークスシップ:情報部
「室長ー、戻ったっすー」
『お⋯ お帰り、タキ。お疲れさん』
オフィスに戻って来た部下を、ヨハネスは片手を振って出迎えた。
『中々大変だったみたいだね』
「全くっす。A.I.Sが止まるとか、今でも信じられないっすよ」
若干語調を強めるタキ。
余程、今回の事故に参っているようだ。
『ハッキングか⋯ 僕も、油断してたかな⋯ 』
ヨハネスも、悔しげに頭を押さえた。
隙が出来た原因はまだ連絡が来ないが⋯ 臨戦区域ネットワーク管理室にしてみれば、失敗以外の何者でもない。
『まあ、君が無事で良かった。カスラ司令には、何とかうまく言っとくよ』
ヨハネスはそう綴って、コンソールを叩く。
先程カスラから、緊急の回線チェックを申し渡された為だ。
タキはそれを何も言わずに眺め⋯ 自分もデスクに向かい、端末を弄り始めた。
A.P241:4/1 13:05
アークスシップ:ドミトリーエリア
「ただーいまー」
ステラが自室に戻ると、サポートパートナーのフェオが待っていた。
「お疲れ様です、マスター。任務は無事完了ですか?」
「無事に⋯ なのかなー。アクシデントもあったし⋯ 」
ぼふっとベッドに座り、天井を見上げる。
⋯ 正直、死を覚悟した。
アークスになって間もないステラにとって、超大型目標の撃退という任務だけでも厳しいのに、さらにそこにA.I.S停止というアクシデント⋯ 諦めが頭をよぎった瞬間もあった。
「⋯ でも、みんな諦めなかった」
思い出す。姉と、その仲間達の姿。
逆境にも挫けず、己のすべき事、出来ることを全うし、最後には勝利を収めた⋯
「まだまだだなぁ、私⋯ 」
ため息が漏れる。
あの背中に追いつけるのは、いつになるのか⋯
「ふああぁ⋯ 姉ちゃんじゃ無いけど眠いや」
ころんと、ベッドに横になる。
「ん⋯ おやすみ⋯ 」
程なくして聞こえてくる、小さな寝息。
「⋯ お疲れ様でした。マスター」
フェオはその顔を見て、ふっと顔を綻ばせた。
A.P241:4/1 13:10
アークスシップ:フランカ'sカフェ
昼下がりのカフェの奥。
光が差すテラス席に、数人のアークスの姿があった。
「お疲れ様、イツキ君!」
「じ、冗談抜きで死ぬかと思いました⋯ 」
「はは、激戦だったみてーだな!!」
談笑する彼らは、地球出身のアークス達。
イツキの提案で、カフェに集まった様だ。
「⋯ お、主賓が来たみたいだぜ」
カウボーイハットを被った少年が、イツキに呼び掛ける。
イツキが振り向くと、銀髪の少女がぱたぱたと走ってくるところだった。
「すいません! 報告で遅くなっちゃいました!!」
「お疲れー! ほら、ここ座って!」
リナに促されるまま、リナの隣に腰掛けるアメリアス。
緊急任務を終え、シップへ帰還している最中、「ちゃんと顔合わせをしたいので、カフェに集まりませんか?」という連絡を受けていた。
シエラの連絡を艦橋で受け、そのままカフェへやって来たというわけだ。
「えっと⋯ 」
イツキやリナだけではない。紅い装甲のキャストや、カウボーイハットの少年に、ピンク色のリリーパの着ぐるみ⋯ 先日の戦闘で、援護射撃に駆けつけた面々が集まっている。
「⋯ この人が例の?」「らしいぜ⋯ パッとしねぇ顔だが」「おいユ⋯ ムサシ!」
こそこそと飛び交う声。
視線が集まる中、アメリアスは口を開いた。
「あの⋯ 先日は、ありがとうございました。それと⋯ 」
デューマン特有の色白い顔が、俯く。
「ほ⋯ 本当に、良かったのですか? 皆さんこんな戦いとは、全く関係ない方々なのに⋯ 」
それはずっと、気にかかっていた事だった。
地球の協力者⋯ イツキとリナは、フォトンを操る適性を持ち、生身でこちらへ駆けつけた。
それに対し、ここにいるそれ以外の人々⋯ イツキのフレンド達⋯ は、あくまで「PSO2」を通して、つまり「マザー・クラスタ」がもたらした技術を使って来ているのだ。
彼らの身に危険が起きないとは言い切れない上⋯ アイカが語ったように、オラクルはどうしたって、疑ってかからなければならなくなる。
「⋯ 何言ってんだ」
それに異を唱えたのは、カウボーイハットの少年だった。
「俺たちだって覚悟決めて来てんだよ。あのステラとか言うチビに全部聞かされてな」
アメリアスははっとして、ここにいない妹を思い出した。
「そうだぜ、アークスのお嬢さん。あんまり世知辛い事言いなさんな」
「みんな、首を突っ込まずにはいられない。困ったちゃん」
紅と白のキャストのペアも、同意を返す。
「ま、半年前からキナ臭いとは思ってたからさ。こうなりゃ、最後までついてってやるぜ!」
耳付きのフードを被った少年も、そう言って笑ってみせた。
「皆さん⋯ 」
「⋯ 援護を提案したとはいえ、一応、反対はしたんだがな」
不意に、カフェの端から射す声。
全員がそちらを向くと、アイカがラッピーを連れて座っていた。
「イツキとカスラ司令に押されて、気づけばステラが派遣されていた。全く、地球の人々はお人好しと言うべきか⋯ 」
「でも鈴来さん、言ってたじゃない。彼らは信頼に値する⋯ って」
ため息をつくアイカに、笑いかけるリナ。
アメリアスに語ったのと、同じ言葉。
彼女だって、結局信じていたのだ。
アメリアスも顔を綻ばせて⋯ ふと思い出した。
「⋯ ああそうだ。さっきのシャットダウン、原因がわかりました」
「えっ!!?」「く、詳しく!!」
参加していた面々が、一斉に身を乗り出す。
「えっと⋯ 失敗は、『時差』だったみたいです」
「「「「「時差??」」」」」
首を捻る一同。
先程艦橋で伝えられた、ハッキングの理由。
オラクル世界の「新光暦」と、地球世界の「西暦」⋯ 正確には、日本の標準時⋯ には、30分ほどの時差があった。
そして地球に転移した8番艦「wyn」は、それに合わせて時間を30分早めたのだが⋯
「シエラ⋯ シップ管理官は毎日、日付が変わる30分前に、メンテナンスを行うそうで」
「⋯ それが、ズレたせいで抜けちゃってた、って事ですか?」
「⋯ そう言う事です。シエラ、滅茶苦茶落ち込んでました」
何でもワークチェアにうずくまり、機械が止まったように項垂れていたらしい。
「それでもオラクルのネットワークって⋯ なんて言うか、めっちゃ堅いんだろ?」
「そこなんですよね⋯ 隙が出来ていたのは確かなんですが、それでもどうして介入を許してしまったのか⋯ 」
「それはカスラ司令も疑問に思っているそうだ。向こうに余程の演算能力が無ければ⋯ 」
一同が考え込みかけた、その時。
「すまないイツキッ!! 遅くなってしまったッ!!!」
アメリアスと同じ様な台詞と共に、デューマンの少年が駆け込んで来た。
「コア! もうみんな集まってるぞ!!」
「すまない、あの巨災の残滓を鑑定するのに手間取って⋯ ああっ!!」
話していた少年は、片隅のアメリアスに気づき声を上げる。
「あ、貴女は⋯ 先の戦で俺を助けてくれた⋯ 光翼の
「あ⋯ そういえばさっき!」
あっけに取られていたアメリアスも、思い出した。
氷上での戦闘で、確かにこの少年を襲っていたロードローラーを、片手間に吹き飛ばしたような。
「あ、会えてよかった⋯ ッ! 麗しき
膝をつき、ぐっと手を差し出す少年。
「そ、それは良いですけど⋯ コアさん、でしたっけ? 雑魚相手ならジャスティスクロウ乱射より、シュライク撃った方が良いですよ?」
「ぐふっ!!?」
「ちょ、初対面でナチュラルに駄目出しって!」
「す、すいません! サポパにデュアルブレード教え込んだ時のクセでつい⋯ !」
「コア! 戻ってこい、コアーーー!!」
親友を揺さぶる少年と、生暖かい目でそれを見守るそのフレンド達。
⋯ 何はともあれ、それは帰還を果たしたアークス達の、穏やかな一幕だった。
コアの喋り方、何処まで痛くすれば良いものか⋯
大和緊急はここまでです。段々とヘビーになっていくストーリー、頑張って書いていきたいと思います。