ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
SB1-1「イカサマライフゲイム」
AP241:3/22 15:00
惑星ナベリウス:壊世区域・遺跡エリア
私が集合地点に来た時には、例のアークスはすでにそこで待っていた。
「いやいや、そんな事、、、例外的な、、、よ、うん!」
短い金髪の頭をゆらゆらさせて、ぶつぶつと何かを言っている、、、正直、怪しい。
とりあえず声をかけようと、私は走り寄る。
「あのー、、、?」
「何を恐れる必要が有るの!いつも通りやれば、、、ってうわあ!」
私の声に驚いて振り返ったのは、ヒューマンの少年だった。
「だ、誰よ貴女は!!?」
「え、えーっと、、、オラクル船団航行艦第8番艦『wyn」所属の、アメリアスと申します、、、」
おずおずと自己紹介する。うーん、初対面の人はどうも苦手だ、、、
「あ、所属艦までどうも、、、って、その名前、何処かで見た覚えが、、、」
すると、シエラから通信が入ったようで、その人はそっちに向いてしまった。
こちらにも通信が来るはずなのだが、、、少し、機器が不調のようだ。
向こうが通信してるうちに、同行者情報を見ておく、、、成る程、ヒツギさん、というらしい。
「ああうん、聞いたけど、、、」
通信しつつ、端末を操作するヒツギさん。
「って、2年前の『深遠なる闇』戦で大活躍したっていうアークスじゃないか!?どうしてあた、、、いや、僕と一緒に、、、!?」
「色々あって、復帰直後なんですよ。リハビリを兼ねた共同任務と考えてもらって、間違いありません」
と、ようやくシエラさんの声が聞こえてきた。
「ふ、ふうん、、、リハビリねえ、、、」
するとヒツギさんは、不意に後ろを向いて、、、急にしゃがみ込んだ。
「あ、あれ、、、?」
肩をぴくぴくと震わせているヒツギさん。
突然の事に、声も出せずに固まってしまう。
「あのう、、、ヒツギさん?」
シエラさんが声をかけると、ヒツギさんはびくっと立ち上がった。
「あ、あはは、えーっと、、、アメリアスさん、、、と言いましたね。ご一緒できて、とても心強いです。よろしくお願いします!」
びしっと立ち上がり、丁寧に礼をするヒツギさん。
「あ、はい、、、こちらこそ、よろしくお願いします、、、」
反射的に答えたものの、
(怪しい、、、)
単純な私は、ついつい、ヒツギさんに疑いの眼差しを向けてしまう。
(アメリアスさん!顔に出てますって!)
シエラさんのウィスパーで我に帰ると、ヒツギさんはすでに歩き出していた。
「さあ、行きましょう!任務、ささっと終わらせちゃいましょう!さあ、さあ!」
「あ、、、はい!」
てくてく歩いていくヒツギさんの様子は、やっぱり怪しい。
(すいません、こういうのどうも苦手で、、、)
(そんな気はしていましたが、、、気をつけてください)
なんとか疑念を顔に出さないようにしつつ、ヒツギさんについていく。
少し進むと、早速小型ダーカー「クラーダ」の群れが現れた。
「早速か!よーっし、、、」「らああっ!」
躊躇なくブーストをかけ、左右への蹴りでクラーダを吹き飛ばす。
「次!」「ちょっ早!?」
続けざまに現れる、「ダガン」「カルターゴ」といったダーカーも、テクニックによる光弾で怯ませ、蹴散らす。
、、、因みに、ジェットブーツは踵側に刃が集中しているが、これはブーツの攻撃が、殆ど踵を使う為だ。モーメントゲイルは言わずもがな、回し蹴りが攻撃の起点になることも多く、、、閑話休題。
まあ、こんな事を考えていられる程度には、簡単な任務である。
あっという間に全滅する、虫系ダーカー。
「それーっ!」「ま、待ってー!」
グランヴェイヴの突進で、一気に突き進む。
海洋系ダーカー、、、浮遊する魚どもも軽く吹っ飛ばし、続いて現れたのは小型有翼種。
「ヒツギさん!ダブリューネの処理を!」
「お、わ、わかった!」
ダブリューネは、自分の周囲に卵形爆弾を仕掛けてくる。
ジェットブーツではやや部が悪いので、ガンスラッシュ持ちのヒツギさんに、アウトレンジから狙ってもらい、こちらはヒツギさんが狙いづらい空中の敵を捉えに行く。
「そらそらそらあっ!!」
回転で空中の敵を一気に引き寄せ、絡め取るように蹴りを繰り出す、、、全く、便利な事この上ない。
すぐに有翼種も殲滅し、次へ向かう。
「だいぶ反応が減ってきましたね、、、ぱぱっと終わらせちゃいましょう!」
次に出てきたのは、、、大量の立方体。
玩具型ダーカー「パラタ・ピコーダ」「ピッタ・ワッダ」だ。
、、、まあ、比較的強力な玩具型でも、所詮雑魚なので、
「吹き飛べぇっ!!」
びっくり箱達は、その中身を見せる事もなく、吸い寄せられ、あっという間に退場となった。
「でも2発打たないと倒せないか、、、あれ?」
「うわあああああっ!!」
振り返ると、風船のようなダーカーに、ヒツギさんが捕まっている。
あ、「ボンタ・バクタ」いたんだ。
あの風船は、アークスに組み付き、自爆してくる。
「そうは行かないよ、、、っと!」
ヒツギさんの足元に滑り込み、全力で蹴り上げる。
「ストライクガストォ!!」
ボンタ・バクタをヒツギさんから引き剥がし、そのまま回転して浮き上がる。
「落ちろっ!」
そこから一気に踵に力を込め、自分もろとも地面に叩きつけた。
「アメリアスさん!後ろっ!!」
「えっ、、、!?」
振り向いた途端、もう一体のボンタ・バクタが、私を掴み上げた!
「このっ、、、せいっ!」
ならばと、私はブーツのギアを解除する。
するとテクニックで付与されたエネルギーが爆発となって排出され、ボンタ・バクタを振り払った。
「邪魔っ!」
すかさずイル・グランツを放ち、ボンタ・バクタを撃ち落とす。
「あ、危なかった〜、、、」
「凄い、、、あんな状況で、冷静にエレメンタルバーストが撃てるなんて、、、!」
「そんな事ないですよ、、、」
ててっと走り出す。すると後ろから、
「でも普通、あんな反応出来ないよね、、、まるで敵が来るのを読んでるみたい、、、」
「、、、!?」
小さく聞こえてきたヒツギさんの声に、一瞬固まってしまった。
「?どうかしましたか?」
「い、いえ!なんでも、、、」
すると目の前に、またダーカーの群れが現れた。
「おおっと、多いですね、、、」
「やる事は変わらない!行くよっ!!」
ブーツから溢れた光が、私の突進とともに軌跡を描く。
「せいっ!」
目の前にいた有翼種を屠る一撃は、先ほどよりも鋭く、重い。
シフタ・エアアタックブースト。フォトンによる攻撃力増強状態で、空中攻撃をさらに強化するスキル。
「そこっ!」
ヒツギさんはダガンの群れにガンスラッシュの弾倉を放り投げ、爆破させる。
「そっち、お願いします!」
「了解っ!」
近づく「ダーガッシュ」を光弾で牽制し、ブーツで端から薙ぎ払う。
ヒツギさんも、鮮やかなガンスラッシュ捌きで、ビッダ・ワッダを殲滅した。
「終わりっ!」
ヒツギさんと合流し、次のポイントへ向かう。
、、、今までよりも、格段に強力な反応を示している。
注意しながら進むと、4体の中型ダーカーが現れた。
「エル・アーダとキュクロナーダに、、、」
「ランズ・ヴァレーダ、、、ボッダ・ベアッダ!?」
奥でじっとしている、大きなぬいぐるみのようなダーカーを見て、思わず顔を引きつらせる。
ボッダ・ベアッダ、、、攻撃しない限りあちらからは動かないが、凄まじい攻撃力を隠し持った強敵だ。
「冷静に、一体づつ引き離しましょう!」
「はいっ!行きますよっ!!」
ヒツギさんはエル・アーダ、私はランズ・ヴァレーダの方へと向かう。
キュクロナーダは動きが遅いので、これで問題なく倒せる、、、はずだった。
「、、、!」
唐突に、強烈な目眩がした。
「まずいっ、、、!」
心臓が早鐘を鳴らし、血が全身を駆け巡る。
倒れそうになる体をどうにか踏ん張り、歯をくいしばる。
「っつ、、、うああっ、、、あああっ、、、!」
正面を見ると、かすれる視界の中、ヒツギさんがガンスラッシュを構えている。
そして、脳を蝕むような感覚が、私を襲った。
(敵、、、敵は、、、全部、殺す!)
脳裏にその言葉が浮かんだ時、私の理性は飛んだ。
AP241:3/22 15:17
惑星ナベリウス:壊世区域・遺跡エリア
「さっさと仕留めてやる!」
エル・アーダへ、ヒツギがガンスラッシュを向けた、その瞬間。
「うっ、、、ああああああああっ!!!」
突如、アメリアスがうずくまり、叫び声を上げた。
否、、、叫び声などという生易しいものではない。
それは例えるならば、、、獣の咆哮。
「な、何、、、!?」
「アメリアスさん!?ヒツギさん、直ぐにアメリアスさんから離れてください!!」
耳に突き刺さったシエラの声に、思わず飛び退くヒツギ。
するとゆっくりと、アメリアスが立ち上がる。
両の瞳は金色に染まり、無数の線が模様を描いていた。
「何々!?どうなってるのよ、これ!?」
「とにかく離れてっ!今のアメリアスさんには、貴女も敵に見えています!」
「ええっ!?」
ばっと身を返し、ヒツギはアメリアスからさらに距離を取る。
すると、エル・アーダが身を伏せ、突進の体制に入った。
「あ、、、アメリアス!」
思わず叫ぶヒツギ。しかしアメリアスは、距離を詰めるエル・アーダに向け、ジェットブーツの刃を向ける。
「、、、死ねっ!!」
瞬間、
アメリアスの蹴りが、突撃してきたエル・アーダを斬り裂いた。
「はあっ!!!」
続いて飛びかかってきたランズ・ヴァレーダも、凄まじい蹴りで返り討ちにする。
「何なの、あれ、、、!?」
拘束からの飯綱落としを繰り出すランズ・ヴァレーダに、正面から立ち向かうのは、非常に危険な手段だ。
先程までとは違う、自分の身を全く顧みない戦い方に、ヒツギは戦慄した。
そして、ランズ・ヴァレーダを粉砕したアメリアスの眼光は、キュクロナーダ、、、そして、ボンタ・ベアッダに向けられる。
「、、、!お前達も、、、敵、、、!」
「ちょっ、、、まさか」
ヒツギが近づく間も無く、アメリアスの姿が消える。
ブーツの限界まで加速したアメリアスの体は、キュクロナーダ諸共ボンタ・ベアッダに突き刺さった。
「らああああああっ!!!」
斜め上からの強烈な一撃に、2体の体は地面を大きく引き摺られ、止まる。
「、、、!」
キュクロナーダは沈黙したが、ボンタ・ベアッダが反応し、赤い背中を向ける。
あれは、交戦状態の合図、、、!
「はあああああっ!!」
全力で振られるアメリアスの足を、ボンタ・ベアッダは腕で受け止める。
「!?」
そのまま右手を振り上げ、アメリアスを殴り飛ばした。
「があ、、、っ!」
アメリアスは吹き飛び、そのまま動かなくなる。
「あ、アメリアス!?」
思わず駆け寄ったヒツギに、ボンタ・ベアッダが迫る。
「このっ、、、!」
ヒツギは身を翻し、ボンタ・ベアッダの背後に回った。
そう、圧倒的な格闘性能を持つ、ボンタ・ベアッダの最大の死角は、、、!
「後ろからなら、、、!」
青い背中を斬りつけ、振り向いたら素早く回りこむ。
ひたすら背後に立ち回り、斬撃と銃撃を浴びせ続け、ようやくボンタ・ベアッダも沈黙した。
「よっし、、、シエラさん、アメリアスさんは!?」
「気を失っているだけのようですが、、、近くにダーカーの反応も無いので、とにかく休ませましょう。」
「了解です」
シエラの声を聞きながら、ヒツギはうつ伏せに倒れているアメリアスを、そっと横向きに転がす。
「それにしても、さっきのは一体、、、?」
まるで特攻兵器の様な、躊躇いのない突撃。
いきなりうずくまったと思いきや、まるで暴走したかの様に暴れだした。
、、、とても、正気とは思えなかった。
「、、、っはあっ!!」
その時、アメリアスが急に跳ね起きた。
「あ、アメリアスさん!?大丈夫ですか!?」
「はあ、はあ、、、」
アメリアスは数回苦しげに息を吐くと、
「あぁぁぁぁぁ、、、」
と声を漏らしながら、ぐったりと倒れこんだ。
「えーっと、、、大丈夫ですか、、、?」
長座のままぺたんと体を倒しているアメリアスに、ヒツギはおずおずと声をかける。
「あ、、、はい、一応、、、」
アメリアスはそう答えたものの、やはり先程の攻撃が痛手だった様だ。
彼女の様子を見たシエラは、こっそりと通信を送る。
(探索の打ち切りを提案します、、、ここまで、ヒツギさんの様子は如何でしたか?)
(言動は少し妙でしたが、、、戦闘に特に違和感はありませんでした。)
(実地にいるアメリアスさんが言うなら、大丈夫だと思います、、、今日のところは、帰りませんか?ヒツギさんには、撤退指示が出たとでも伝えていただければ、、、)
アメリアスは無言で頷き、通信を切った。
「ヒツギさん、、、あれ?」
ふとヒツギを見ると、またしゃがみ込んでぴくぴくと震えている。
「あのぉ、、、ヒツギさん?」
「あ、、、は、はい!」
「?えっと、申し訳無いんですが、今、管理官から撤退指示が出まして、、、」
「そ、そうですか、、、」
そそくさと立ち上がるヒツギ。
アメリアスも、ため息をついて立ち上がる。
「うう、、、ちくしょぉ、、、」
思わぬ失態に、自己嫌悪に陥っていた、その時、
「、、、!周囲に不審なダーカー反応あり!」
シエラの逼迫した声が、2人の耳に突き刺さった。
「え!?ど、何処に、、、!?」
辺りを見回しても、怪しいものは無い。
「別に何も、、、うああっ!?」
すると、突然何かがぶつかり、ヒツギの体は派手に転がった。
目の前にあったのは、こちらをかばう様に体を丸めたアメリアスの姿。
「何よいきなり、、、!?」
ヒツギが怒鳴ろうとした瞬間、ヒツギがいた位置に、黒い光球が着弾する。
「あ、危なかった、、、ううっ!」
先程の傷が痛んだらしく。バランスを崩して横転するアメリアス。
「あ、アメリアスさん!?」
振り向いたヒツギは、そこにいた物を見て、顔を引きつらせた。
「な、、、何よ、あいつ、、、!?」
赤黒い影が渦巻き、人型になっている。
顔に当たる位置には、二つの不気味な閃光があった。
「ダーカー、、、に、似てるけど、、、」
「それよりも上です、、、こんな反応、確認された事もない、、、アメリアスさんの覚醒に合わせて現れたとでも、、、!?」
混乱する2人。するとアメリアスは、その影の方へと歩き出す。
「ここは私が、、、っつ!」
傷ついた左腕の痛みに、顔をしかめる。
「その体じゃ無理です!すぐに退却を!」
「ですけど、、、!」
その時、アメリアスの肩越しに放たれた弾丸が、影に命中した。
振り向くと、ヒツギが自身のガンスラッシュの銃口を、影へと向けている、、、!
「ヒツギさん!?」
「よくわからないけど、、、ここが踏ん張りどころなんでしょ!」
そのままアメリアスを飛び越え、ガンスラッシュを連射しながら、影へと走る。
「これで、、、とどめっ!!」
青い輝きを放った刃が、影を一刀の下に斬り裂いた。
「どうだ!私だってやればこれくらい、、」
「まだ反応は消えていません!、、、これは!?」
浮かれるヒツギを諌める声が、すぐに困惑に変わる。
「今度は何よ、、、って、え、、、!?」
ヒツギの周りに、ダーカーの物に似た、赤黒の粒子が渦巻いていく。
「なに、、、これ、、、!?体が、動かない、、、!」
抜け出そうともがくも、全く体が言うことを聞かない。
しかもだんだんと、視界が赤黒い光に染まっていく。
「どうなってんのよ、、、!誰か、助けて、、、!」
泣きそうな顔で叫んだヒツギに、、、すっと差し伸べられる、手。
「え、、、!?」
「大丈夫、、、!絶対に、助ける!」
その手の主、、、アメリアスの体から、青白い光が溢れ出す。
その光は、ヒツギの方へと伸び、優しくヒツギを包み込んでいく。
「これは、、、!ダーカー因子を、中和している、、、!?
そっか、、、これが、シャオが言っていた、、、この人の、力、、、!」
やがて、パンッと光が散り、赤黒い影が一瞬弾けた。
同時に、ヒツギの体が自由を取り戻す。
「う、動く、、、!今なら、ログアウトを、、、!」
ヒツギの手が傍に伸び、見慣れないウインドウを操作する。
そして、、、アメリアスの目の前で、突然、ヒツギの姿が消えた。
「わっ!、、、ととっ、ふわあっ!」
押し返す力が消え、体勢を崩したアメリアスは、こてんと転んでしまう。
「消えた、、、!?」
すぐに起き上がり、困惑した顔で周囲を見渡す。
「どういう事でしょうか、、、とりあえず、一度戻ってきて貰えますか?アメリアスさんの体も心配ですし、、、」
「、、、わかりました」
応答して、アイテムパックから小型テレパイプを展開する。
妙な胸騒ぎを消せないまま、アメリアスはキャンプシップへと転送された。
「イカサマライフゲイム」
雁首揃えたジョーカーが笑う。
ゲームという虚構は、ここに暴かれた。