ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
AD2028:4/1 12:13
地球:日本近海
「第二班、離脱に成功した!!」
「了解⋯ シエラ! こいつはどうなってる!!」
大和の砲撃をかわしながら、ゼノはシエラへと怒鳴る。
停止したA.I.Sを乗り捨て、脱出させることには成功したものの、12機が一度に離脱した事で、戦況は大きく相手側に傾いている。
『A.I.S自体からのネットワークへの干渉です! システムが落とされただけなので、直ぐに復旧出来るかと!』
「⋯ 分かった! 何とか持ちこたえる!」
通信を切り、鋼鉄の巨躯を睨む。
「よくわからんが⋯ 頼んだぜ、アメリアス⋯ !」
赤色のA.I.Sは、再び蒼光を引いて飛び出した。
大和から離れた、大海の中央。
二機のA.I.Sが、海上で向かい合っていた。
『私に構っていて良いのかい? 仲間達がだいぶ苦戦しているようだが?』
「バレると呆気ないと思ったら、それも込みの一手か⋯ 私の仲間を、余り舐めないで欲しいな」
アメリアスの駆る黒いA.I.Sが、躊躇なくフォトンセイバーを抜き放つ。
「取っ捕まえて問い詰めたい所だけど⋯ 今は! さっさと消えてもらう!!」
「フッ⋯ 良いだろう、勝負だ!!」
再び、二機のA.I.Sが舞い上がる。
フォトンセイバーでは拮抗するだけと判断したのか、ハギトは距離を取り、グレネードを乱射する。
アメリアスはそれを引きつけ、着弾寸前でブーストし、回避。
その勢いのまま、フォトンセイバーをハギトへ突き出す。
「クッ⋯ !」
突進を紙一重でかわし、後退するハギト。
両機の内部フォトンが枯渇し、戦闘はソリッドバルカンによる銃撃戦に変わった。
互いに、決め手が決まらない。
こうなってしまえば、都合がいいのはハギトの方だ。こうしている間にも、主戦力である大和が、雑魚を蹴散らしてくれる。
『どうしたお嬢さん? このままでは仲間の方へも行けないが?』
「⋯ 言ってろ!!」
アメリアスは弾幕の消えた一瞬で、再びハギトへと突進する。
それは焦りもあった。
『かかった!』
アメリアスは気付けなかった。
A.I.Sに突撃をかけるには、その距離は無謀すぎた事に。
「⋯⋯ !!」
撃ち出された誘導弾。
その全てが、アメリアスのA.I.Sに命中した。
「が⋯ ッ!!」
余りの衝撃に、体がコクピットに叩きつけられる。
修復装置を起動しようとするも、揺れた視界が定まらない。
「この⋯ っ!!」
体勢を立て直そうと、半ば強引にブーストをかける。
しかしスタビライザーがやられたのか、機体は立ち直る事なく空を掻いた。
「不味⋯ っ!!」
『終わりだ!!』
ハギトは好機を逃すまいと、フォトンブラスターを展開する。
『ゲームオーバーだよ、お嬢さんッ!!』
閃光を湛えた砲口は、無慈悲に少女へと向けられた。
AD2028:4/1 12:20
地球:日本近海
『やばっ⋯ ぐあああああっ!!』
イツキの隣で、僚機が吹き飛ばされる。
「コア⋯ ! クソっ、あの野郎⋯ !!」
発射される榴弾、レーザー、三式弾。
幻創戦艦大和の弾幕は、完全に空間を制圧していた。
「このままじゃ⋯ でも、どうすれば⋯ !」
足並みを崩され、接近できないA.I.S。
こうしている間にも、大和は少しずつではあるが、本土へ接近している。
「畜生! こんなのまるで地獄じゃないか!!」
飛来する零戦を撃ち落とし、後退するイツキのA.I.S。
⋯ 駄目だ。
このままでは、勝てない。
「だ⋯ 誰か⋯ !」
何か、無ければ。
この状況を打破する、何かが無ければ⋯ !
『射線空けろおおおおおおおおお!!!』
その時、
イツキのA.I.Sの隣を、青い光線がかすめた。
「!!」
射程ギリギリからのフォトンブラスター、それに率いられる様に飛来した機装の戦士が、次々とグレネードを発射する。
「これって⋯ !!」
光線が消える。
大和の側面のバリア発生装置が、周辺の装甲ごとえぐり抜かれた。
『⋯ 成る程、確かに、この状況は地獄だろうさ』
響き渡る、少女の声。
10機のA.I.Sが並ぶ間を、1機の真紅のA.I.Sが進む。
『しかし、なぜこの程度で立ち止まる? 我々は知っている筈だ。これを超えた地獄の光景を、凡そ人が挑めるはずもない、絶望の果てを!』
その声は、何よりも気高く、力強く。
『ならばこそ思い知らせろ! あの絶望を気取る鋼鉄に! 為すべきことはただ1つ⋯ 地獄を作れぇッ!!!』
闇を払い、絶望を討つ英雄が、そこにいた。
『お待たせして申し訳ありません!!
『後は本丸を陥とすだけだ! 行くぞ!!』
焔の如く、クラリスクレイスのA.I.Sが疾走する。
「行くっすよ、ゼノさん!!」
「上等じゃねえか⋯ !!」
狂った戦艦を取り囲むのは、再び集結した22機の戦士。
『全武装⋯ 禁圧解除!!』
それに呼応する様に、大和の艦体が翠光を放つ。
『幻創戦艦大和、全砲門を展開! 来ます!!』
それは、あの地獄の海の再演の如く。
解き放たれし鋼鉄の威信は、巨砲の先を空へと向けた。
『ゲームオーバーだよ、お嬢さんッ!』
敗北を告げる光条が放たれようとした、その時。
一瞬、ハギトのA.I.Sから、光が消えた。
『何っ⋯ !?』
瞠目するハギト。
自分が行ったのとまさに同じ、瞬間的なシャットダウン。フォトンブラスターも、異常を検知しキャンセルされた。
「今のは⋯ ?」
困惑するアメリアスの視界に、ノーマルチャットが映り込む。
『危ないところだったね、アメリアス』
「ヨハン⋯ !?」
『シエラさんがやってくれたよ。ま、僕もちょっとは手伝ったけど』
アメリアスははっとして、レーダーを確認する。
20個以上のアイコンが、空を示す正方形の画面を駆け抜けていた。
『はい、そのシエラさんです! こっちはもう大丈夫なので、思いっきりやっちゃって下さい、アメリアスさん!』
「⋯ そうですね。こんな奴に、いつまでもかまけてる訳にはいきませんし」
アメリアスの紺碧の瞳が、眼前の敵に向けられる。
「じゃあ⋯ 終わらせてくるね、シエラ!!」
『⋯ はい! ご武運を!!』
アメリアスのA.I.Sが、再び光を散らす。
そして、
『クッ⋯ !!?』
次の瞬間には、反射的に出されたハギトのフォトンセイバーと斬り結んでいた。
「はあああああっ!!」
繰り出される
そして、ハギトのフォトンセイバーがはじかれた、その瞬間。
グレネードの弾頭が、ハギトのA.I.Sに突き出される。
「喰らえ…っ!」
『この⋯ ッ!』
しかしハギトはその胴体を蹴り飛ばし、強引に離脱した。
体勢は少し崩れるが、グレネードで牽制すれば、立て直す時間は稼げる⋯ その筈だった。
『グレネード⋯ 何っ!?』
ハギトの駆るA.I.Sの、さらに上。
蒼穹に、青白い閃光が迸る。
まさか。
ありえない。
「こいつで⋯ 」
上空で、しかもA.I.Sに、
「どうだあああああああああっ!!!!」
生身で、強襲をかけるなど⋯⋯⋯ !!!
「「ーーーーー!!」」
A.I.Sに突き刺さる、緑光を放つ大剣。
「A.I.Sは暴走に備え、浄化属性を持ったフォトンへの耐性が低くなっている⋯ 甘かったね」
アメリアスはコートエッジを引き抜き、自分のA.I.Sへと舞い戻る。
『何故だ⋯ 何故、及ばなかった⋯ 』
「貴方達にとってはゲームでも、私達は命賭けてるの。それだけの、簡単なこと」
『⋯ そうか、忘れていたよ。強大な兵器達は、それを駆る兵士の勇気があってこそ、輝いていた事を⋯ 』
停止するA.I.Sから、燐光が逃げる様に飛び去っていく。
「さて⋯ 後はあいつか」
アメリアスはA.I.Sに再び乗り込み、空を往く大和へと翔けた。
AD2028:4/1 12:25
地球:日本近海
「幻創戦艦大和、全砲門を展開! 来ます!」
『これで最後だ! 気張れ皆!!』
上空からブーストをかけ、甲板上へ乗り込むA.I.S。
「今度こそ⋯ !」
ステラの放ったフォトンブリザードが、後甲板の主砲を凍結させる。
「ナイス!」「行きますよ、リナ先輩!」
吹き荒れる、号砲と剣閃。
蹂躙するA.I.Sに対し、大和も次々と新たな砲門を具現させ、応戦する。
「これ、効いてるんすかね!?」
『最初から具現していた砲塔の破壊であれば有効です! ですがこれだけ大型となると、形態を構成する核を狙わなければ⋯ 』
「シエラ、それってこれ!?」
急降下したアメリアスのA.I.Sが、艦尾にフォトンセイバーを叩きつける。
そこにあったのは、青い光を立ち昇らせる、光の柱。
『はい! 艦首にも同等の反応があります!』
「了解した! 皆! 両端にある柱だ!」
クラリスクレイスの声に応じ、A.I.Sが拡散する。
甲板への密集を防ぎ、何機かは遠方からグレネードで射撃。甲板上には、定期的にフォトンブリザードを撒く
的確な連携は、幻創戦艦を追い詰めつつあった。
「これでっ⋯ 」「どうだ!!」
紅と黒、2機のA.I.Sが突進する。
具現した副砲塔諸共、両端のコアは砕かれた。
「いよっし!」
『大和の反応、大幅減衰! これなら⋯ !!』
己を構成する核を砕かれた大和、その巨躯が一瞬、霞む。
すると大和は、ぴたりと砲撃を止め、
「⋯ っ! 前甲板!!」
青い燐光を漏らしながら、海へと飛び込んだ。
「潜水!?」
「不味い、何機か巻き込まれた!」
巻き込まれたA.I.Sが辛うじて浮上する中、海が青く輝き出す。
『大和の反応が急速に収束⋯ 自身を削ってでも、此処で仕留める気です!!』
無数のレーザー砲塔を具現させ、浮上する大和。
そしてその甲板から、ロケットと見紛う大型ミサイルが打ち上げられる。
『殲滅シークエンスへと移行! 一瞬で塵にしてくれる!!』
ハギトの声が、戦場へ響き渡る。
打ち上げられたミサイルから、閃光が迸る。
「わっ⋯ !!」
立ち込める黒雲。そしてその中から、12発のミサイルが現れた。
『こいつが⋯ !』
『ミサイルに超高エネルギーを探知!すぐに破壊を!』
散開し、ミサイルへ翔ぶA.I.S。
凄まじいレーザーの弾幕に、何機か堕とされていく中、それでもミサイルの数は減っていく。
「後一つ!」
近くにあるミサイルを破壊するべく、ブーストを起動するアメリアス。
しかし、彼女は忘れていた。
「⋯ うわあっ!!」
無理なブーストで故障部が動かず、アメリアスのA.I.Sは派手に転がる。
『アメリアスっ!!』
畳み掛けるように、アメリアスを狙うレーザー。
「っああああ!!」
吹き飛ばされたアメリアスのA.I.Sは、完全に停止した。
「嘘っ!!?」
動かないA.I.Sのカメラに、海へと迫るミサイルが映る。
位置が悪く、味方は遠い⋯ !
「このままじゃ⋯ っ!!」
唇を噛み締めた、その時、
『はあああああああああっ!!!』
「!!」
光の軌跡と共に、ミサイルへ猛追するA.I.S。
その紅い刃が、最後のミサイルを斬り裂いた。
『馬鹿な⋯ これ程の力⋯ ありえない⋯ !』
大和は力尽きたように光を失い、海へと落下する。
『よっしゃあああ! 終わらせるぞお前らああああああ!!!』
ゼノを先頭に、動きを止めた大和へ群がるA.I.S。
何本もの光条がその巨躯を穿ち、ついに、
『馬鹿なっ⋯ この
捕らえきれなくなったエーテルの燐光を撒き散らして、鋼鉄の戦艦は消滅した。
『目標、完全消滅を確認! お見事です!』
『よし撤収! 地球の人にバレる前に逃げるぞ!』
領域隔離も限界が近く、余り余韻に浸るわけにもいかない。
A.I.Sが次々と帰還する中、アメリアスの機体のそばへ、クラリスクレイスのA.I.Sが飛んできた。
『やっぱり動きそうにないな⋯ 』
「うん⋯ ごめんね、手間かけて」
アメリアスのA.I.Sを掴み、曳航する様に引っ張っていく。
「あ、そうだクーちゃん」
『だからクーちゃん言うな⋯ どうした?』
「さっきはありがとね。最後の一本、クーちゃんがいなかったら⋯ 」
アメリアスが、そこまで言ったところで、
『? いや、私も追いかけたが⋯ 私は間に合わなかったぞ?』
「え?」
素っ頓狂な声を上げるアメリアス。
しかし、確かにあの時飛来したA.I.Sは、クラリスクレイスのものと同じカラーリングだった。
『それに⋯ 私の機体は隊長機だっただろ? あのハッキングのせいで、あれは使えなくてな⋯ 私だけ違う機体に乗り換えさせられたんだ』
おかげで使いづらかった、と愚痴る様に結ぶクラリスクレイス。
「あ、六芒は専用チューンになってるんだっけね⋯ お疲れ様」
アメリアスも何と言うこともなく返したが、小さな疑問は残ったままだった。
やるしかないと思った。今は反省している←クーちゃんの演説