ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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なお緊急のサブタイトルは、それぞれ独自のルールで当てていきます。


phase:2 「海色」

AD2028:4/1 11:00

惑星地球上空:第1揚陸艇

 

「見えた⋯ !」

揚陸艇のディスプレイに、大海を往く軍艦の姿が映る。

その予想を遥かに上回る威容に、アメリアスは思わず身じろぎした。

 

ビッグヴァーダーの2倍以上の巨躯に、ハリネズミのように配置された、大小様々な砲塔。

特に甲板の一際大きな連装砲など、この揚陸艇さえ容易く撃ち落とせるのではないか。

 

「うー⋯ やっぱり君頼りだよ⋯ 」

アメリアスは呟いて、自身の左側を見上げる。

今彼女がいる場所⋯ 揚陸艇内部の格納庫には、出撃を待つA.I.Sが整然と並んでいる。

 

「なにしょんぼりしてんだよ、センパイ」

⋯ と、

キャンプシップから転移してきたイオが、アメリアスの隣に立った。

「別にしょんぼりなんて⋯ ただ、少し不安なだけで⋯ 」

「センパイは相変わらずだな。あんな古臭い船の一隻や二隻、余裕だろ?」

ビビることも無いよと、イオは笑う。

アメリアスも笑顔を返したが、不安は拭えなかった。

 

⋯ 昨日は、よく眠れなかった。

昨晩からこっち、奇妙な悪寒が続いている。

今朝メディカルセンターに足を運んだが、特に体に異常はないと返された。

(⋯ まあ、いつも通りやればいいか)

 

くよくよしていても何もない。

自分に言い聞かせ、アメリアスは顔を上げる。

目に入るのは、次々と転移してくるアークス達。

イツキとリナ、タキの姿も見える。

『揚陸艇への転移完了。作戦を通達します』

中央ウインドウでは、シエラによる作戦通達が始まっていた。

 

AD2028:4/1 11:05

惑星地球上空:第2揚陸艇

 

アメリアスが乗った揚陸艇の横に、もう一隻の揚陸艇が到着する。

「なんで私がなんで私がなんで私が⋯ !」

その隅っこで、ステラはうずくまっていた。

今回の撃退作戦、戦闘に携わるのは、A.I.Sを駆る24人。

そしてその中に、ステラが選ばれたのだ。

⋯ アークスになって1週間のステラが。

 

「めそめそしていても始まらないぞ、アメリアス妹ー」

そんなステラの隣にやって来たのは、黒紫のロッドを背負ったクラリスクレイス。

「ステラですっ!! だって、別に私以外に幾らでも強い人居るじゃないですか⋯ !」

「確かにそれももっともだが⋯ 」

「⋯ 今回に限っては、その理屈は適用されない」

 

そのクラリスクレイスのさらに後ろから、アイカもラッピーと共に歩いて来た。

「今回のA.I.S部隊は、A.I.S適性と、幻創種との交戦経験に重きが置かれている。特に君の操縦能力は、相当なものだと聞いているぞ?」

「そ、それは⋯ 」

口を濁すステラ。

 

研修時のA.I.S搭乗訓練で、確かにステラは非常に優秀な成績を収めていた。

幻創種との交戦経験といえば⋯ 思い返せば、殆ど地球にしか出撃していない気もする。

「でも、実戦は初めてですよ⋯ ?」

「それでも君は幸運な方だ。初めてA.I.Sを実戦で動かすことになるのは、殆どの場合防衛戦だからな」

「ほんっとにあれはきつい。A.I.Sでも、ちょっと気を抜くと袋叩きだからなあ」

クラリスクレイスも、うんうんと頷く。

 

ステラはちらっと、背後のA.I.Sを見た。

「⋯ わかりました。頑張ります」

「そう緊張することも無い⋯ 姉がいないのが不安か?」

「そんな事ないですよ!」

アイカに茶化され、ステラはぶんぶんと首を振る。

 

そうだ、(アメリアス)に負けてなどいられない。自分だってアークスなのだ。

『⋯⋯⋯ ついて来れるの?』

(ふん⋯ ! 姉ちゃんの方こそ、ついて来いっての!)

立ち上がる。

『揚陸艇への転移完了。作戦を通達します』

その胸にちっぽけな勇気を抱いて、少女は戦士達の中へ歩いていった。

 

AD2028:4/1 11:05

 

二つの揚陸艇は、同時に動き出した。

『撃退目標は現在、日本近海を約27ノットで北上しています。移動する超巨大物体に対し、隔離領域を展開するのは難しいです』

高度を増す揚陸艇の、フロントカタパルトが展開される。

『そこで、改良型A.I.Sで新型凍結弾を輸送し⋯ 目標を、周囲の海ごと凍結させます』

吹き込む風の中、アメリアスとクラリスクレイスが、中央の端末に駆け寄る。

 

『その後、目標を一気に撃破してください。ですが⋯ 相手の武装状況からして、かなりの反撃が予想されます。⋯ お気をつけて』

『了解。第一揚陸艇、出撃シークエンスを開始します!!』

『同じく第二揚陸艇、シークエンスを開始する!!』

 

端末が起動し、A.I.Sのロックが外される。

『出撃シークエンスに移行。各員は速やかに搭乗を』

次々とA.I.Sに乗り込む、24人のアークス。

彼らの能力を媒介とし、A.I.Sにフォトンの光が灯る。

『全員の搭乗を確認。揚陸艇は離脱の準備を。作戦開始まで、5、4⋯ 』

⋯ そして、

『3、2、1⋯ 作戦開始!!』

24機のA.I.Sは、異世界の大空へ飛び出した。

 

AD2028:4/1 11:06

地球:日本近海

 

大海原を往く大和。その砲身が、動いた。

無数の機銃と、甲板にそびえる主砲⋯ 新大戦最強と謳われた46cm三連装砲と同じ形をしたソレが、上空から舞い降りる敵へ相対する。

 

「気付かれた! タキさんを中心に散開!」

アメリアスの駆る黒のA.I.Sを先頭に、24機が一斉に散らばっていく。

否、その中央。

散開する僚機を縫うように、一機の白いA.I.Sが突撃をかける。

その右腕には、ミサイル型の冷凍弾が装着されていた。

 

「弾幕が厚い⋯ !単騎突撃は無理っす!」

作戦の要たる冷凍弾を預けられたタキが、悲鳴を上げる。

「私がタキにつくッ! 前に出るなよ!!」

クラリスクレイスの紅いA.I.Sが、タキを守るため前に出る。

「機銃の威力は低い! 主砲にだけ注意しろ! 」

 

戦艦大和に搭載されていた機銃は威力が低く、敵に脅威を与える役回りが大きかったとされる。

一般に抱かれるイメージ、そして創造主たるハギトの知識を土台に具現化したこの幻創種は、皮肉にもそれが原因で、弱点を晒していた。

 

『⋯ ! 総員警戒を! 大和周辺にエーテルの異常蓄積!!』

⋯ しかし、エーテルは主の幻想、空想を形どるもの。

それを知らしめたのは、大和の周辺に現れた、小さな光球だった。

 

「あれは⋯ !!?」

鋼の翼が空を切る。

大和を守るように現れたのは、嘗ての日本が誇った、もう一つの「最強」。

「零式艦上戦闘機⋯ ! こんなものまで⋯ !!」

イツキは戦闘機の射撃をかわし、ソリッドバルカンを撃ち放つ。

しかし極限まで速さを追求された翼は、イツキの射撃を易々とかわしていく。

 

戦場は、一瞬で混沌に侵された。

大和からの砲撃、そして戦闘機による遊撃に、A.I.Sの動きは統制を欠いていく。

「あれが、『零戦(ゼロファイター)⋯ 」

空を疾走(はし)る零戦に翻弄され、アイカの注意が一瞬逸れる。

 

そしてそれが、彼女の運命を分けた。

「なんて機動力だ⋯ っぐああっ!!?」

主砲の直撃を喰らい、アイカのA.I.Sが墜落する。

「鈴来さんっ!!? そんな、一撃で⋯ !」

瞠目するリナを、大和の艦砲が襲う。

「⋯ っ!!」

「させるかああああああああ!!!」

しかし必殺の榴弾は、飛び込んできたイツキによって斬り伏せられる。

 

「イツキ君!」

「大丈夫です!やって見せましょう、リナ先輩!!」

大和へ接近する僚機とともに、イツキとリナも必死に応戦する。

 

諦めない。

アークスの骨子とも言える信念が、戦況を確実に押し返していく。

A.I.Sは少しづつ戦線を上げ、タキの機体をポイントへ送り届ける。

「タキっ!! そっちに何機か行った!!」

「させないっ! 突っ込め、タキッ!!!」

加速するタキの横で、クラリスクレイスのA.I.Sが切り札を放つ。

 

「吹き飛べえええええっ!!」

フォトンブラスター⋯ アークス最強の携行兵器が、猛追する零戦をまとめて消し飛ばす。

「ポイント到着! こいつで⋯ っ!!」

そしてついに、タキのA.I.Sが、海面へ向けて冷凍弾を構え⋯

 

「⋯ っああ!!」

瞬間、周囲の僚機諸共、タキの機体が吹き飛んだ。

はずみで冷凍弾が発射装置ごと外れ、海へと落下していく。

「今のは⋯ !!?」

イツキは大和の主砲を見て、目を剥いた。

 

主砲から立ち昇る、黄色の砲煙。

「あれって⋯ 確か『三式弾』⋯ !!」

強力な対空兵装の、高精度着弾。

80年前は示されることのなかったその真価が、幻創の手でここに現れていた。

 

「⋯ っ! ミサイルが!!」

イツキはすぐに急旋回し、落下する凍結弾へ急行する。

「不味いっ⋯ !!」

アメリアスのA.I.Sも猛追するが、零戦の射撃に阻まれ、近づけない。

このままでは、作戦の全てが破綻する⋯ !

 

「させるかああああああああああっ!!!」

閃光が、煌めいた。

「ステラっ!!?」

間違いない。凄まじいスピードで飛翔する、あの黒いA.I.Sは⋯ !

「こんのおおおおおおおっ!!!」

 

ステラに気づいた零戦が、真正面から機銃を乱射する。

しかしステラのA.I.Sは、すんでのところで冷凍弾を掴み取る。

「行けえええええええええええっ!!!」

ステラの手で放たれ、海面へ落ちていく凍結弾。

 

そしてそれとほぼ同時に、ステラの機体と零戦が衝突、爆発した。

「ステラ⋯ !!」

思わずステラの方を向いたアメリアスへ、再び三式弾が放たれる。

「チッ⋯ !!」

アメリアスは舌打ちすると、A.I.Sの脱出装置を起動させた。

 

AD2028:4/1 11:30

 

海面に、巨大な氷柱が立ち上がる。

炸裂した凍結弾が、太平洋を氷に変えていく。

そして大和の周辺が凍りつき、大和は完全に足止めされた。

 

「⋯ っとと!!」

脱出したアメリアスの身体は、一瞬で白い地面へ転移する。

「うわ、本当に凍ってる⋯ !!」

そこは、大和諸共凍結した海の上。

同じく脱出したアークスも、次々と氷上に降り立つ。

大和を中心に、数人のパーティーが取り囲むような陣形だ。

 

「ステラ!タキさんっ!!」

「アメリアスさん! 良かった、危ないところでした⋯ !」

「こっちは大丈夫だよ姉ちゃん! 多分すぐにみんな降りて来る!!」

二人と合流したアメリアスは、すぐに大和の方へと振り向く。

 

空を飛ぶ敵対存在がいなくなり、こちらへ砲口を向ける大和。

そして大和までの間の氷上に、無数の光球が具現する。

「姉ちゃん、あれ⋯ !!」

「幻創種⋯ ! でも、如何して⋯ !?」

 

瞠目したアメリアスの耳に、シエラの声が聞こえて来た。

『⋯ 大和の艦橋上部に、超高密度のエーテルの反応があります。酷似しているのは⋯ 先日の、ハギトが操っていた具現武装です』

「⋯ ! そっか、エメラルド・タブレットが⋯ !!」

 

おそらく、幻創戦艦大和⋯ この超巨大な幻創種を構成する核として、エメラルド・タブレットが使われている。

そしてエメラルド・タブレットは、その状態でも本来の機能を維持し、幻創種を統率しているのだろう。

 

「⋯ だったら、全部潰すまで」

「ふふっ、珍しく気が合ったな、アメリアス」

ジェットブーツを纏うアメリアスの傍に、ロッドを握ったクラリスクレイスが立つ。

「あ、クーちゃんも無事で良かった」

「クーちゃん言うな! ほら、さっさと終わらせるぞ!!」

 

アメリアスは頷いて、目を閉じる。

「⋯ 守護輝士(ガーディアン)、アメリアス! 行きますっ!!」

「六芒均衡が五、クラリスクレイス!! 行くぞ!!」

金色の軌跡を描いて、アメリアスが飛び出す。

そして彼女を先頭に、クラリスクレイスと、大和を囲った他のアークスが走り出す。

 

今を描く光の戦士と、過去を掲げる鋼鉄の威信。

その戦いは、氷上に幕を開けた。

 




イツキ君に兵器関係の説明役してもらう形になっちゃいましたが⋯
イツキ君も高校生男子ですし、まあ多少はね?

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