ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
大和は一度書いてはいるのですが、ちょっと今の実力でどのようになるかなと。
phase:1 「Rock on.」
AD2028:4/1 10:00
地球:日本近海
大海原の中央。
蒼穹の空を飛んでいたカモメの群が、不意にてんでバラバラに飛び去っていく。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ !!!
漣立つ海に現れる、巨大な光球。
一地域が枯渇する程の膨大なエーテルが寄り集まり、具現を開始した。
始めに現れたのは、「esc-a」のシンボルマークが据えられた艦首。
続けて、無数の砲門を備えた甲板、そそり立つ艦橋が形を成す。
それは、日本人であれば一度は見聞きしたことのあるもの。
嘗てこの海を血に染めた、鋼鉄の兵器たち⋯ その、一つの終着点。
2028年の太平洋に具現したのは、黒鋼の巨大戦艦だった。
「⋯ そろそろ、連絡が来ると思っていたよ」
亜贄萩斗は、携帯に挑発的な声を投げた。
『亜贄萩斗、度が過ぎるぞ。ここまで巨大な幻創種の生成⋯ 隠蔽しきれなくなる』
怒気を含んだ、低い男の声。
しかしハギトは、全く余裕を崩す事なく答える。
「⋯ ははっ、文句であれば、私ではなくエメラルド・タブレットに言ってほしいな」
『何?』
ハギトは顔を上げた。
水平線の彼方に見える、黒鋼の巨躯。
その艦橋に、小さな翠緑の輝きが灯る。
艦橋の頂上で、指示を出す様に浮遊するそれは、ハギトと同じ姿に変異したエメラルド・タブレットだった。
「あれはもう、私の手から離れたのさ。誰の制御も必要としない⋯ まさに、兵器として完璧な存在に至った」
『⋯ 』
通話が途切れる。
「⋯ 悔しかった事だろう。祖国の切り札として生み出されながら、まともな活躍も出来ずに、衰退のまま沈んでいったのは⋯ 」
遥か彼方の影へ、ハギトは語りかける。
全長263m、最大排水量7万t。
80年前、新大戦最大の存在であったはずのそれは、その本当の力を見せられないまま、海の底へ沈められた。
だからこそ⋯ その活躍が、その栄華が、人々の「幻想」となったのも、なんの不思議もなかったのだ。
「さあ始めよう、私と、エメラルド・タブレットと共に、本当の戦争を⋯ !!」
そして今、幻想は形を成し、幻創となった。
「その鋼鉄の威信を取り戻す、戦争を⋯ ! そうだろう、『大和』!!」
高らかに叫ぶハギト。
その言葉に同意するかの如く、戦艦は動き出す。
嘗て人々が描いた希望の夢は、今や鋼鉄の災禍となって、その艦首を日本へ向けていた。
A.P241:4/1 10:00
アークスシップ:ショップエリア
(あれ、アル君?)
ふらりと事務室に現れた少年に、仕事中だったヨハネスは首を傾げた。
「ーーー、ーー」
『⋯ ごめん、これに話して貰えるかな』
何かを訴えるアルに、ヨハネスは会話用の端末を手渡す。
ちなみに普段から使っているこの端末、ヨハネスが自分で作ったものだったりする。
「えっと⋯ 昨日アリスお姉ちゃんから貰ったこれを落としちゃって、追いかけてたら、迷っちゃって⋯ 」
アルが見せたのは、緑色の石。
『アリス⋯ ? ああ、アメリアスの事か⋯ 』
何故クーナしか使わない筈の愛称を、アルが知っているのか気になったが、ヨハネスは取り敢えず、アメリアスに連絡を取った。
(流石にまだ寝てるとか言わないよな⋯ あとでヒツギさんにも連絡先聞いとこう⋯ )
さしものアメリアスも起きていた様で、程なく『ヒツギさんに伝えるね』と返信が来た。
『よし、大丈夫だよアル君。アメリアスかヒツギさんが、迎えに来ると思うから』
「うん⋯ ごめんなさい」
『いいっていいって。でも、今度からは気をつけてね?』
ヨハネスは笑って、顔を上げる。
大した広さもない事務室。十数台のデスクもガランと空いて⋯
(⋯ なんで誰一人居ねえんだよ!!)
はあ、とため息をつく。
ここの職員は、ヨハネスを除き全員が、惑星探索などにも向かう
任務で誰かが居ないなどと言うことはザラなのだが、最近は地球の調査が始まった事もあり、常に閑古鳥が鳴いている。
(別に忙しいワケでもないけど⋯ つまんないなぁ⋯ )
さーっと椅子を引き、天井を仰ぐ。
フォトンを扱えない自分は、戦えない。
当然の事だと思っていても、こうして実際にそれを思い知らされると、どうしても悔しくなった。
(ん⋯ 来た)
ドアが開き、赤毛の少女が飛び込んでくる。
上手く声は拾えないが、謝っている様子のヒツギに適当に相槌をうち、アルを預ける。
「⋯ っりがとうございました⋯ 」
『今度から気をつけてくださいねー』
アルを連れて出て行くヒツギを見送り、デスクに置いたカップを手に取る。
アラートが鳴り響き、部屋の照明が緊急時のものになったのは、ちょうどその時だった。
A.P241:4/1 10:10
アークスシップ:ゲートエリア
「うん、じゃあお願い⋯ ふぁあ」
通信を切ると、小さく欠伸が漏れた。
「ヨハンのやつ、ヒツギさんの連絡先知らなかったのか⋯ 情報部なのに」
まあ、彼はそういう仕事をしているわけでもないので、別に良いのだろう。
そんな事を考えながら、私がゲートエリアを歩いていると、
「あ、アメリアス。こんにちはー」
不意に、ヒューマンの少女に声をかけられた。
「ああ、リナさん⋯ おはようございます」
「おはようって、もう10時よ⋯ もしかして、さっきまで寝てたとか?」
「い、いえいえそんな事は無いですよ!!」
わたわたと手を振って否定する。
流石に私だって、こんな時間まで寝てる事は⋯ 時々、あった、かも。
「そういえば、ヒツギさんは?」
「アル君が迷子になっちゃって⋯ 今引き取りに行ってます」
「迷子って⋯ 」
苦笑するリナさん。
「アル君で思い出したけど、貴女も大変よね⋯ まさかマザー・クラスタが、こんな形で動き出すなんて⋯ 」
「えっと⋯ リナさんは生徒会長だったんですよね?」
「ええ。でも清雅の生徒会は、別にマザー・クラスタと関係は無かったから⋯ でも、話を聞いたときは驚いたわ」
リナさんはふーっと、ため息をついた。
「半年前までは、違和感すら持ってなかった。PSO2はゲームだって認識に、何の疑問も湧かなかったわ⋯ 」
「こちらも、まさか異世界から人間が来ているなんて思いませんでした⋯ 」
リナさんに同意して、先日の事を思い出す。
何より謎なのは、エーテルという物質。
革命的な通信技術やら異世界への転移やら、挙句の果てに幻想の具現までしてしまう⋯ あれは一体何なのだろうか。
双方わからない事だらけだが⋯ 私としては一つ、どうしても彼女に聞いておきたい事があった。
「あの⋯ ずっと気になってるんですけど、その半年前の事というのは⋯ ?」
私が尋ねると、リナさんは何故か驚いたような顔でこちらを見た。
「え⋯ 知らないの!?」
「ええっと、実は私、その時眠っていたもので⋯ 」
コールドスリープの真っ最中だった事を告げると、リナさんは納得したようで、
「そ、そう。なら仕方ないわね⋯ まあ、話すと長くなっちゃうんだけど⋯ 」
リナさんが話し出した、その時だった。
『アークス各員へ緊急連絡!惑星地球にて超巨大反応を確認!映像を中継します!!』
緊急警報が鳴り響き、照明が切り替わった。
「警報⋯ !!?」
二人で、近くのモニターへ駆け寄る。
「な⋯ 何ですか、あれ⋯ !!?」
「あれって⋯ !!」
現れた巨鉄に息を飲む私の横で、リナさんは何かに気づいたように口を抑えた。
「リナさん、あれに心当たりが⋯ ?」
「え、ええ、私もちゃんとは知らないんだけど⋯ 」
そう答える、リナさんの顔は険しい。
「戦艦、大和⋯ エーテルは、あんな物まで形にするの⋯ !?」
「戦艦⋯ ?」
私が聞き返すのと、ほぼ同時に、
「アメリアスさん! リナさん! 聞こえますか!?」
艦橋からの通信が、二人同時に入ってきた。
「シエラさん!?」
「あれに関してです、一度艦橋へ⋯ !」
「⋯ 了解です。行きましょう、リナさん!」
一応通信は開いたまま、私達は艦橋に急いだ。
A.P241:4/1 10:23
アークスシップ:艦橋
アメリアスとリナが艦橋に駆けつけると、すでにイツキとアイカの姿があった。
「アメリアスさん!」
「シエラさん、あいつは⋯ !?」
ウインドウに映る黒鉄の軍艦に動揺を隠しきれぬまま、アメリアスは問いかける。
「はい、『戦艦大和』⋯ 日本で80年ほど前に建造された、超弩級戦艦です」
シエラは答えると、もう一つウインドウを展開する。
そこに映った大和の軌道予測は、その進路が日本に向けられていることを示していた。
「⋯ マジかよ⋯ !」
瞠目するイツキ。
戦艦大和といえば、ミリタリーに興味がない日本人でも、名前くらいは知っている程の知名度がある。
彼にもかじった程度の知識はあった。あれが史実通りの大きさであれば、全長はおよそ250mを超える。
「全く、とんでもないものを具現してくれたわね⋯ !」
「マザー・クラスタの『金の使徒』⋯ 奴の仕業に、間違いは無いだろうな」
ウインドウを睨みつけるリナに、アイカも嘆息で同意する。
「あのサイズが相手では、周辺海域の空間隔離も難しいです⋯ 認識偽装の上、日本へ接近する前に叩く必要があります」
シエラがさっと手を払うと、その場全員の側へ小さなウインドウが走る。
「
「24機⋯ 」
アメリアスは感心の声を漏らした。
過去、A.I.Sは連携の円滑化、通信の安定化等の観点から、基本的に12機を同時稼働上限としていた。
「新しいネットワークを構築して、同時運用を実現しました。まあ、まだ試験的なものですが」
答えるシエラの顔は、若干の余裕を見せている。
A.I.Sは、生身のアークスを大幅に超える能力をもつ、アークスの切り札とも言えるものだ。
ダーカーとの戦闘では、多用によるリスクも伴うが、幻創種相手であれば、それを案ずること無く運用できる。
さらに今回は、24機の大部隊⋯ 相手の武装は分からずとも、勝算は十分にあるとシエラは見ていた。
「詳細は揚陸艇で通達します。準備が整い次第、スペースゲートへ移動を!」
「「「「了解!!」」」」
4人が艦橋を出ようとした、その時だった。
『⋯ シエラ!! あたしはシップで待機しててくださいってどういう事よ!!!』
「わ、わわ⋯ ! ヒツギさん!?」
突如緊急用の回線から、ヒツギの声が割り込んだ。
ウインドウに映る顔は、かなり憤慨している。
「ですから、地球の方を大規模戦闘に参加させる訳にもいかないと⋯ !」
『だったら清雅学園のお二人はどうなのよ!? あたしだって戦えるわ!!』
『お、お姉ちゃん⋯ 』
横合いから、アルの困惑した声も聞こえてくる。
「ですが、先日の交戦中、ヒツギさんのバイタルデータはかなり不安定でした⋯ フォトン適性の低いアークスの様なものです⋯ 今回だって、万が一の事があれば⋯ !」
『⋯ っ、でも⋯ 』
なおも食い下がるヒツギ。
しかし彼女も、あの時の異常な消耗には気づいていた。
⋯ もし、戦闘中に動けなくでもなったら。
「⋯⋯⋯ アル⋯ 」
ちらりと背後のアルを見て、歯噛みする。
彼を守るということを考えれば、大人しくしておいた方が良いということは明白だ。
それでも、ヒツギには理由が有ったのだ。
この戦いに加わりたい、理由が⋯
「⋯ ヒツギさん」
そこで口を開いたのは、アメリアスだった。
『アメリアス⋯ 』
「アル君の為にも⋯ ここは、降りて貰えないかな」
ヒツギの気持ちを全て悟った上で、それでも、ここは諦めてほしい。
そんな瞳で、アメリアスはヒツギを見ていた。
『⋯ ごめんなさい。少し⋯ 粋がってたみたいね』
「ううん、不安だったんだよね。でも大丈夫、私達に任せて!」
『⋯ うん』
通信が終わる。
一度目を閉じ、アメリアスはイツキ達に向き直る。
「⋯ 行きましょう、皆さん!!」
閃光の如き黄金色の双眸で、「
それに無言で頷き、
『緊急作戦発令! 地球にて発生した超巨大反応に対し、撃退作戦を開始します!!』
え?AIS24機なんて無いだろって?
まあまあ慌てずに。