ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
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アークスシップ:艦橋
再び情報整理に追われていたシエラは、艦橋ゲートが開いたことに気づき、振り向いた。
「あ、アメリアスさん⋯ お疲れ様です」
「はい⋯ 思いの外長引いちゃいました⋯ 」
歩いて来た少女は、力無く答える。
海岸探索任務の最中、突如ダークファルス・ルーサーの人型体「ファルス・アンゲル」が現れ、その場にいたアークスによる撃退戦が行われた。
さらにその影響でダーカーも活性化してしまい、予定より大幅に長引いてしまったのだ。
「あれ、ヒツギさんとアル君は⋯ ?」
「お二人でしたら、部屋に戻られましたよ⋯ あそうだ、アメリアスさんにお伝えしたいことが⋯ 」
シエラが言いかけた時。
またゲートが開き、小さなラッピーを連れたアイカが歩いて来た。
「あ、アイカさん」
「ああ⋯ 貴女も来ていたのか。丁度良かった」
スタスタとブリッジを歩くアイカに、アメリアスは小さく首をかしげた。
情報部がらみの事なのだろうが、その担当はヨハネスだとばかり思っていたからだ。
「もうシエラには伝えたが⋯ 司令の命令で、しばらくウィンに滞在することになった」
「なんでも、情報部からの情報提供を迅速かつ間違いなく行えるようにと、司令からの連絡にはありましたが⋯ 」
急に口を濁すシエラ。
「その裏の思惑を明かすなら、監視だな」
アイカはそれを見て、さらりと答えた。
「⋯ 成る程、ヨハンでは監視役ににならないと⋯ 」
ため息をつくアメリアスに、アイカは首を振る。
「少し違うな。既に地球の人々と交流経験がある方が良いだろうという判断だ」
アイカは俯いた。
「情報部はまだ、地球の人々を疑っている⋯ こちら側に潜入して来ているのは事実だからな」
それがいつ頃からだったのかはわからない。
だが、事が起こる前から、地球の人間がオラクルに忍び込んでいたことは事実。
今アークスに協力している、リナやイツキさえも、スパイであるという疑惑は、拭いきれないものだった。
「⋯ 自分たちで情報隠しといて、他人のアラは探しまくる⋯ 全く持って情報部らしいです」
ふてぶてしく呟くシエラ。
彼女からしてみれば、地球に関する情報を隠蔽されていたのが、よほど癪に触ったようだ。
「⋯ 私だって進言はした。異文化との交流は、信頼と理解の上に成り立つものだと⋯ 」
アイカは語る。
自分は地球の人々を信じたいということ。
そのために、ここに居るということ。
「⋯ わかりました。シエラさん、彼女だって自分の意思を信じて、ここに来たんです」
アメリアスは頷いて、シエラを見る。
「むぅ⋯ わかりましたよぉ」
シエラはしぶしぶ、承諾を示した。
「監視といっても大層な事はない。殆どここに居るだけのようなものだ⋯ だが」
「だが?」
「アメリアス⋯ 貴女にいくつか、依頼をする事になると思う⋯ 余り無茶な依頼はないと思う⋯ 多分」
「なんか三点リーダー増えてますよー」
急に口ごもり気味になったアイカに、シエラが苦笑いを浮かべる。
「⋯ ふぁあ」
⋯ と。
不意にアメリアスが、小さく欠伸をした。
「なんか疲れました⋯ 一眠りして来ます」
「「は⋯⋯⋯ ?」」
呆気にとられる2人を置いて、アメリアスはてくてくと艦橋を後にする。
後に残されたアイカは、同じく横へ立つシエラへ問いかける。
「⋯ 彼女はいつもあんな感じなのか?」
「私には何とも⋯ ですが、アメリアスさんの面白いアダ名は聞きました」
シエラは人差し指を立てると、
「⋯ 『八番艦の眠り姫』」
「⋯ 誰が言い出したんだ、それ⋯ ?」
A.P241:3/31 15:30
アークスシップ:ドミトリーエリア
部屋へ戻る前に、私はヒツギさんの部屋に立ち寄った。
「ヒツギさーん、ただいまー」
ドアの前で声をかけると、すっとドアが開き、何故かアル君が顔を出した。
「あれ、ヒツギさんは?」
「んーと⋯ さっき寝ちゃった」
困り顔で答えるアル君。
少し部屋を覗き込むと、確かに奥のベッドには、ヒツギさんが転がっている。
⋯ きっと、疲れていたのだろう。
元気に振舞ってはいたが、昨日までの事でだいぶ弱っていたはずだ。
「⋯ ごめん。また後で来るね」
「あ、うん⋯ またね」
私が立ち去ろうとした、その時、
「ん⋯ ? あ、アメリアス⋯ 」
むくっと、ヒツギさんが起き上がった。
「あ、ご、ごめんっ! 起こしちゃった!?」
「⋯ ってかあたし、寝てた⋯ 」
ベッドの上で目をこするヒツギさんは、きょとんとした様子。何かしていて寝落ちしたようだ。
「あ、任務終わったのね」
「うん、思いがけず時間掛かっちゃったけど」
ちょいちょい、と手招きされたので、そそっと部屋に入る。
「⋯ あの、さ」
ヒツギさんは、躊躇いがちに切り出した。
「大体わかる。昨日のアレでしょ?」
「⋯ うん」
私が先手を取ると、ヒツギさんは小さく頷く。
昨日私が見せた能力⋯ 少し、驚かせてしまったかもしれない。
私はベッドの側に行き、ヒツギさんの隣に座った。
「言ってなかったね、私の出自のこと」
「出自?」
「そう⋯ これ見て」
言って、ネックバンドを外す。
晒された首筋の肌に、ヒツギさんはやはり目を丸くした。
「ヒツギさん、オラクルのこと色々調べてたんでしょ? 『
おずおずと頷くのを見て、続ける。
「まあ、キナ臭い実験ばかりしてたところなんだけど⋯ その中に、『
そうして私は、ヒツギさんに大体のことを語った。
「転生計画」のこと。
その4人の被験体の末路のこと。
そして⋯ 私に発露した能力のこと。
⋯ アークスの使役するテクニック⋯ フォトンによる事象制御は、「マジック」と呼ばれる先天的能力、すなわち超能力の類を起源としている。
私の能力は、例えるなら私専用のテクニックであり、テクニックとマジックの中間のようなもの⋯ と、元「虚空機関」出身のとあるアークスは推察していた。
「じゃあ、ヨハネスさんとステラも⋯ 」
「それがねー、ヨハンとレ⋯ もう1人の子は、完全にフォトンの操作能力を失ってて⋯ ステラはなんかあるかもしれないけど、使ってるのは見たことないかな」
まあ、知ってても教えてくれなそうだけど、と私は付け加えた。
「⋯⋯⋯ 」
沈黙するヒツギさん。
⋯ 無理もない。午前中に会ったクラリスクレイスだって、私だって、アークスの歪んだ側面が生み出した存在なのだ。
そんな事とは無縁の世界で生きて来たヒツギさんにとって、こんなものをまざまざと見せられては、ショックも大きかったと思う。
「⋯ アメリアスは、さ」
不意に、ヒツギさんはそう言った。
「何?」
「その⋯ 強い、よね。自分の境遇を気にせずに、気丈でいられて⋯ 」
ヒツギさんは俯いて、語り出す。
「⋯ あたしね、小さい頃、両親を事故で亡くしてるの。兄さんだけが唯一の肉親で⋯ 今でも時々、思い出して辛くなる」
「ヒツギさん⋯ 」
「だから⋯ もう、手離すだけは嫌なの。失うだけなのは、絶対に嫌⋯ !」
ああ、そうか。
私はそっと、ヒツギさんの右手に手を乗せた。
「顔上げて、ヒツギさん」
ヒツギさんは顔を上げ、目を見開く。
「⋯ お姉ちゃん」
その手に乗せていたのは、アル君の小さな手だった。
「わかるよね、この熱が。貴女が昨日、確かに助け出した命が」
そう。
彼女の意思は、あの時確かに、彼女に力を与えた。
一振りの、カタナとなって。
「私だって、怖くなる時もあるよ。だけど⋯ だからこそ、前に進む。暗いってわかってる後ろ向くより、明るいかもしれない前を見ていたい。ヒツギさんだってそうでしょ?」
「⋯ そうね。あたしだって、そのつもりで生きてきた」
私がヒツギさんの手を取ると、ヒツギさんがしっかりと握り返す。
「さっきイオにも言われてたけど、あんまり1人で突っ走らないでよね?」
「ヒツギさんこそ、私が居るって忘れないでよ?」
ぱんっ、と手を払う。
⋯ うん。
これできっと、大丈夫。
するとヒツギさんは、アル君の頭をわしっと掴んで、
「ま、ここに凄いアークスも居るんだし、あんたは大船に乗ったつもりでいなさい!」
「うんっ!」
「もう、ハードル上げないでよ!」
アル君、そんな嬉しそうに頷かれたら、お姉ちゃんプレッシャー感じちゃいます。
私は小さくため息をついて、ふと思い出した。
「あ、そうだそうだ。アル君に渡したいものが有るんだった」
ごそごそと、マギアセイヴァーのポケットを漁る。
「この間ナベリウスの森に行った時、たまたま掘り出したの。で、ショップエリアで磨いてもらった」
アル君に手渡したのは、緑色の綺麗な石。
「うわぁ⋯ ! きれい⋯ !!」
「これ⋯ 森林エメラルド?」
「うん。スキルリングとかにも使えるんだけど⋯ お近づきの印に、的な?」
正直、使い所がよくわからなかっただけなのだが。
とはいえ、アル君が喜んでくれてよかった。
「ありがとう、アメリアスお姉ちゃん!」
「へへん、これからもよろしくね⋯ 」
私も嬉しくなって、上機嫌に言った、その時、
「ん⋯⋯⋯ っ」
一瞬、視界が危うくなった。
「アメリアス⋯ !?」
「⋯ ごめん、ちょっと眠いや⋯ もともと部屋で寝ようと思ってたんだった⋯ 」
ぶるっと首を振って、立ち上がる。
「じゃあヒツギさん、アル君、また明日」
「うん、ゆっくり休んで」
「またねー」
部屋を出て、廊下を歩いていく。
シエラさんがいい位置の空き部屋を確保してくれたので、ヒツギさんたちの部屋と私の部屋に、そこまでの距離はない。
「はあぁ⋯⋯⋯ 」
眠い頭をどうにか持ち上げ、廊下を進む。
「⋯ んぁ」
少しすぼまった視界の隅に、見慣れないアークスが映る。
もっとも、シップ間移動もある現状、顔も知らないアークスなど飽きるほどいるわけだが。
特に何も考えず、ヒューマンの青年とすれ違った。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ 」
その、数瞬後。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ !?」
凄まじい悪寒が、私の体を襲った。
「⋯ づぇっ!?」
慌てて振り向き、さらに辺りを見回す。
⋯ 廊下に特に異常はない。今日も掃除が行き届いている。
「⋯ 気のせいか」
どっかのドアから、風でも吹き込んだのだろう。
私は気をとりなおして、自室のベッドへと急いだ。
キャラクター紹介8
「アイカ」(PSO2)(アークス)
age:17 high:- class:サモナー
weapon:タクト(pet:ラッピー種)
costume:ドレッシアオース
情報部所属のアークス。
半年前まで、「鈴来アイカ」という名前で、地球の潜入調査を行なっていた。
法撃三職(フォース・テクター・バウンサー)全てに高いスキルを持ち、現在はサモナーとして活動している。