ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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⋯ アイカの出番をもうちょっと増やして欲しかった。(EP4完結)


SB2.5-6「心情レイン」

A.P241:3/31 15:00

アークスシップ:艦橋

 

再び情報整理に追われていたシエラは、艦橋ゲートが開いたことに気づき、振り向いた。

「あ、アメリアスさん⋯ お疲れ様です」

「はい⋯ 思いの外長引いちゃいました⋯ 」

歩いて来た少女は、力無く答える。

 

海岸探索任務の最中、突如ダークファルス・ルーサーの人型体「ファルス・アンゲル」が現れ、その場にいたアークスによる撃退戦が行われた。

さらにその影響でダーカーも活性化してしまい、予定より大幅に長引いてしまったのだ。

 

「あれ、ヒツギさんとアル君は⋯ ?」

「お二人でしたら、部屋に戻られましたよ⋯ あそうだ、アメリアスさんにお伝えしたいことが⋯ 」

シエラが言いかけた時。

またゲートが開き、小さなラッピーを連れたアイカが歩いて来た。

 

「あ、アイカさん」

「ああ⋯ 貴女も来ていたのか。丁度良かった」

スタスタとブリッジを歩くアイカに、アメリアスは小さく首をかしげた。

情報部がらみの事なのだろうが、その担当はヨハネスだとばかり思っていたからだ。

 

「もうシエラには伝えたが⋯ 司令の命令で、しばらくウィンに滞在することになった」

「なんでも、情報部からの情報提供を迅速かつ間違いなく行えるようにと、司令からの連絡にはありましたが⋯ 」

急に口を濁すシエラ。

「その裏の思惑を明かすなら、監視だな」

アイカはそれを見て、さらりと答えた。

 

「⋯ 成る程、ヨハンでは監視役ににならないと⋯ 」

ため息をつくアメリアスに、アイカは首を振る。

「少し違うな。既に地球の人々と交流経験がある方が良いだろうという判断だ」

 

アイカは俯いた。

「情報部はまだ、地球の人々を疑っている⋯ こちら側に潜入して来ているのは事実だからな」

それがいつ頃からだったのかはわからない。

だが、事が起こる前から、地球の人間がオラクルに忍び込んでいたことは事実。

今アークスに協力している、リナやイツキさえも、スパイであるという疑惑は、拭いきれないものだった。

 

「⋯ 自分たちで情報隠しといて、他人のアラは探しまくる⋯ 全く持って情報部らしいです」

ふてぶてしく呟くシエラ。

彼女からしてみれば、地球に関する情報を隠蔽されていたのが、よほど癪に触ったようだ。

 

「⋯ 私だって進言はした。異文化との交流は、信頼と理解の上に成り立つものだと⋯ 」

アイカは語る。

自分は地球の人々を信じたいということ。

そのために、ここに居るということ。

 

「⋯ わかりました。シエラさん、彼女だって自分の意思を信じて、ここに来たんです」

アメリアスは頷いて、シエラを見る。

「むぅ⋯ わかりましたよぉ」

シエラはしぶしぶ、承諾を示した。

 

「監視といっても大層な事はない。殆どここに居るだけのようなものだ⋯ だが」

「だが?」

「アメリアス⋯ 貴女にいくつか、依頼をする事になると思う⋯ 余り無茶な依頼はないと思う⋯ 多分」

「なんか三点リーダー増えてますよー」

 

急に口ごもり気味になったアイカに、シエラが苦笑いを浮かべる。

「⋯ ふぁあ」

⋯ と。

不意にアメリアスが、小さく欠伸をした。

 

「なんか疲れました⋯ 一眠りして来ます」

「「は⋯⋯⋯ ?」」

呆気にとられる2人を置いて、アメリアスはてくてくと艦橋を後にする。

 

後に残されたアイカは、同じく横へ立つシエラへ問いかける。

「⋯ 彼女はいつもあんな感じなのか?」

「私には何とも⋯ ですが、アメリアスさんの面白いアダ名は聞きました」

 

シエラは人差し指を立てると、

「⋯ 『八番艦の眠り姫』」

「⋯ 誰が言い出したんだ、それ⋯ ?」

 

A.P241:3/31 15:30

アークスシップ:ドミトリーエリア

 

部屋へ戻る前に、私はヒツギさんの部屋に立ち寄った。

「ヒツギさーん、ただいまー」

ドアの前で声をかけると、すっとドアが開き、何故かアル君が顔を出した。

 

「あれ、ヒツギさんは?」

「んーと⋯ さっき寝ちゃった」

困り顔で答えるアル君。

少し部屋を覗き込むと、確かに奥のベッドには、ヒツギさんが転がっている。

 

⋯ きっと、疲れていたのだろう。

元気に振舞ってはいたが、昨日までの事でだいぶ弱っていたはずだ。

「⋯ ごめん。また後で来るね」

「あ、うん⋯ またね」

私が立ち去ろうとした、その時、

 

「ん⋯ ? あ、アメリアス⋯ 」

むくっと、ヒツギさんが起き上がった。

「あ、ご、ごめんっ! 起こしちゃった!?」

「⋯ ってかあたし、寝てた⋯ 」

ベッドの上で目をこするヒツギさんは、きょとんとした様子。何かしていて寝落ちしたようだ。

 

「あ、任務終わったのね」

「うん、思いがけず時間掛かっちゃったけど」

ちょいちょい、と手招きされたので、そそっと部屋に入る。

「⋯ あの、さ」

ヒツギさんは、躊躇いがちに切り出した。

 

「大体わかる。昨日のアレでしょ?」

「⋯ うん」

私が先手を取ると、ヒツギさんは小さく頷く。

昨日私が見せた能力⋯ 少し、驚かせてしまったかもしれない。

 

私はベッドの側に行き、ヒツギさんの隣に座った。

「言ってなかったね、私の出自のこと」

「出自?」

「そう⋯ これ見て」

言って、ネックバンドを外す。

 

晒された首筋の肌に、ヒツギさんはやはり目を丸くした。

「ヒツギさん、オラクルのこと色々調べてたんでしょ? 『虚空機関(ヴォイド)』って名前、出てこなかった?」

おずおずと頷くのを見て、続ける。

 

「まあ、キナ臭い実験ばかりしてたところなんだけど⋯ その中に、『転生(ジェネレート)計画』ってのがあったの」

そうして私は、ヒツギさんに大体のことを語った。

「転生計画」のこと。

その4人の被験体の末路のこと。

そして⋯ 私に発露した能力のこと。

 

⋯ アークスの使役するテクニック⋯ フォトンによる事象制御は、「マジック」と呼ばれる先天的能力、すなわち超能力の類を起源としている。

私の能力は、例えるなら私専用のテクニックであり、テクニックとマジックの中間のようなもの⋯ と、元「虚空機関」出身のとあるアークスは推察していた。

 

「じゃあ、ヨハネスさんとステラも⋯ 」

「それがねー、ヨハンとレ⋯ もう1人の子は、完全にフォトンの操作能力を失ってて⋯ ステラはなんかあるかもしれないけど、使ってるのは見たことないかな」

まあ、知ってても教えてくれなそうだけど、と私は付け加えた。

 

「⋯⋯⋯ 」

沈黙するヒツギさん。

⋯ 無理もない。午前中に会ったクラリスクレイスだって、私だって、アークスの歪んだ側面が生み出した存在なのだ。

そんな事とは無縁の世界で生きて来たヒツギさんにとって、こんなものをまざまざと見せられては、ショックも大きかったと思う。

 

「⋯ アメリアスは、さ」

不意に、ヒツギさんはそう言った。

「何?」

「その⋯ 強い、よね。自分の境遇を気にせずに、気丈でいられて⋯ 」

 

ヒツギさんは俯いて、語り出す。

「⋯ あたしね、小さい頃、両親を事故で亡くしてるの。兄さんだけが唯一の肉親で⋯ 今でも時々、思い出して辛くなる」

「ヒツギさん⋯ 」

「だから⋯ もう、手離すだけは嫌なの。失うだけなのは、絶対に嫌⋯ !」

 

ああ、そうか。

私はそっと、ヒツギさんの右手に手を乗せた。

「顔上げて、ヒツギさん」

ヒツギさんは顔を上げ、目を見開く。

「⋯ お姉ちゃん」

その手に乗せていたのは、アル君の小さな手だった。

 

「わかるよね、この熱が。貴女が昨日、確かに助け出した命が」

そう。

彼女の意思は、あの時確かに、彼女に力を与えた。

一振りの、カタナとなって。

 

「私だって、怖くなる時もあるよ。だけど⋯ だからこそ、前に進む。暗いってわかってる後ろ向くより、明るいかもしれない前を見ていたい。ヒツギさんだってそうでしょ?」

「⋯ そうね。あたしだって、そのつもりで生きてきた」

 

私がヒツギさんの手を取ると、ヒツギさんがしっかりと握り返す。

「さっきイオにも言われてたけど、あんまり1人で突っ走らないでよね?」

「ヒツギさんこそ、私が居るって忘れないでよ?」

ぱんっ、と手を払う。

⋯ うん。

これできっと、大丈夫。

 

するとヒツギさんは、アル君の頭をわしっと掴んで、

「ま、ここに凄いアークスも居るんだし、あんたは大船に乗ったつもりでいなさい!」

「うんっ!」

「もう、ハードル上げないでよ!」

 

アル君、そんな嬉しそうに頷かれたら、お姉ちゃんプレッシャー感じちゃいます。

私は小さくため息をついて、ふと思い出した。

「あ、そうだそうだ。アル君に渡したいものが有るんだった」

 

ごそごそと、マギアセイヴァーのポケットを漁る。

「この間ナベリウスの森に行った時、たまたま掘り出したの。で、ショップエリアで磨いてもらった」

アル君に手渡したのは、緑色の綺麗な石。

 

「うわぁ⋯ ! きれい⋯ !!」

「これ⋯ 森林エメラルド?」

「うん。スキルリングとかにも使えるんだけど⋯ お近づきの印に、的な?」

正直、使い所がよくわからなかっただけなのだが。

とはいえ、アル君が喜んでくれてよかった。

 

「ありがとう、アメリアスお姉ちゃん!」

「へへん、これからもよろしくね⋯ 」

私も嬉しくなって、上機嫌に言った、その時、

 

「ん⋯⋯⋯ っ」

一瞬、視界が危うくなった。

「アメリアス⋯ !?」

「⋯ ごめん、ちょっと眠いや⋯ もともと部屋で寝ようと思ってたんだった⋯ 」

ぶるっと首を振って、立ち上がる。

 

「じゃあヒツギさん、アル君、また明日」

「うん、ゆっくり休んで」

「またねー」

 

部屋を出て、廊下を歩いていく。

シエラさんがいい位置の空き部屋を確保してくれたので、ヒツギさんたちの部屋と私の部屋に、そこまでの距離はない。

「はあぁ⋯⋯⋯ 」

眠い頭をどうにか持ち上げ、廊下を進む。

 

「⋯ んぁ」

少しすぼまった視界の隅に、見慣れないアークスが映る。

もっとも、シップ間移動もある現状、顔も知らないアークスなど飽きるほどいるわけだが。

 

特に何も考えず、ヒューマンの青年とすれ違った。

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ 」

その、数瞬後。

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ !?」

凄まじい悪寒が、私の体を襲った。

 

「⋯ づぇっ!?」

慌てて振り向き、さらに辺りを見回す。

⋯ 廊下に特に異常はない。今日も掃除が行き届いている。

「⋯ 気のせいか」

どっかのドアから、風でも吹き込んだのだろう。

私は気をとりなおして、自室のベッドへと急いだ。




キャラクター紹介8
「アイカ」(PSO2)(アークス)
age:17 high:- class:サモナー
weapon:タクト(pet:ラッピー種)
costume:ドレッシアオース

情報部所属のアークス。
半年前まで、「鈴来アイカ」という名前で、地球の潜入調査を行なっていた。
法撃三職(フォース・テクター・バウンサー)全てに高いスキルを持ち、現在はサモナーとして活動している。

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