ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
A.P241:3/31 12:00
アークスシップ:艦橋
「ふぅ⋯ あれ、もう戻られたんですか?」
整理作業の合間に一息ついていたシエラは、
艦橋に戻ってきた2人に気づいた。
「アメリアスが急に探索任務に駆り出されたらしくて⋯ あたし達だけでうろつくのもまずいかなって」
「そうですか⋯ こちらも丁度、作業が一区切り着いたところなので」
シートにもたれかかり、うーんっと伸びをするシエラ。
ヒツギがそれを眺めていると、不意に横のアルが口を開いた。
「ねぇ⋯ あの人は、大丈夫なの?」
「あの人?」
アルが指差した方向を見る。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ 」
ずっと作業を手伝っていたヨハネスが、コンソールに体を預けて燃え尽きていた。
「⋯⋯⋯ あ」
ヨハネスは2人に気づくと、のそのそと起き上がる。
『⋯ お帰りなさい。 アメリアスは任務ですか?』
「あ⋯ はい」
突然チャットに送られた文章に戸惑いながら、ヒツギは頷いた。
『彼女、ああ見えて忙しいんです。任務同行に呼ばれる事も多いらしいですよ』
「無理をしていなければ良いんですが⋯ 」
不安そうに呟くシエラ。
それを見たヨハネスは、『心配ご無用』と綴る。
『どうせ彼女の場合、一晩寝れば元気になりますから。そういう奴なんですよ』
「そういうものなんですかね⋯ 」
言うと、シエラはヒツギとアルに向き直った。
「アメリアスさんが居ないとなると⋯ そうですね⋯ 前回聞きそびれた事がありましたら、なんでもお答えしますよ」
ヒツギは、前回こちらを訪れた時のことを思い出した。
「そうね⋯ 前は混乱してて、訊きたかったことも訊けなかったし⋯ 」
目を閉じて、数秒思案する。
とりあえず、自分の認識の正誤を確かめようと判断した。
「まず⋯ アークスの歴史を教えてくれない?」
「そんな事をですか⋯ ? わかりました」
シエラは始めは呆気にとられたが、頷くといくつかのウインドウを展開する。
「うわっ⋯ 本当に何から何まで⋯ 開示していいもんなの、これ?」
「昔は隠していたこともありましたが、今は基本的にフルオープンですので」
ヒツギはウインドウを斜め読みしながら、自分が集めてきた情報と符合させていく。
⋯ 認識に齟齬はない。
やはり自分がPSO2として認知していたのは、この世界だった。
「ねえ、シエラ。このシオンって人の事なんだけど⋯ 」
不意にアルが、ヒツギがすっ飛ばして読んでいたうちの1ページを指差した。
「お、アル君お目が高い! シオンの記載に目をつけましたか」
「えっと⋯ この人は、何だったの?」
シエラは少し考えて、
「少し概念的な話となってしまいますが⋯ シオンは、この宇宙の観測者と呼ばれていました。宇宙の歴史を記録する、図書館みたいなものです」
シエラの側に、小さなウインドウが現れる。
そこに映っているのは、海に覆われた小さな星。
「宇宙が出来た時からの全ての記憶を持つ全知存在⋯ 『アカシックレコード』ですね」
「何でも⋯ 知ってたってこと?」
シエラは頷きを重ねる。
「何でも知ってたと思いますよ。ただ、本当に知ってただけですけど⋯ それに、彼女は感情の把握を苦手としていたので、フォトナーとの交流を求めていたんです」
「フォトナー⋯ オラクルを作ったっていう、旧人類ね」
フォトナーという単語には、ヒツギも知識があった。
曰く、シオンによってフォトンを使役する術を授かった、旧き人々。
彼らは発展と繁栄の果てに、全知存在の模倣を目指すに至り、そして⋯
「⋯ 最終的に、『深遠なる闇』を生み出してしまった」
「はい。彼らが最後に生み出したのは、人の暗黒面⋯ 負の感情だけを識ってしまった、歪んだ『全知存在』でした」
言葉を締めると、シエラの表情は感心に変わった。
「よくご存知ですね⋯ でも、どうしてこんな情報を?」
「それが⋯ マザーがあたしに、『フォトナーの所在』の調査を頼んでたの。アークスの歴史じゃなくて、根本的な成り立ちを」
「どういう意図があったかは判断しかねますが⋯ どちらにせよ、フォトナーはもう居ませんからね⋯ 」
2人が考え込んでいると、
「えーっと、シオンはすごい人で、フォトナーは悪い人の集まりで⋯ 両方とも、もういないってこと?」
「そうですね⋯ かなりざっくりですが、だいたい、アル君の認識で正しいと思います」
アルの問いに答えると、シエラはなぜかニコニコと笑い出した。
「そして私は、そのシオンの子供であるシャオの子供! つまり、シオンの孫と言えます!」
「シオンの⋯ 孫? じゃあシエラって、もしかしてすごい人⋯ ?」
「へっへーん! もしかしなくても凄いんですよー! もっと尊敬してもいいんですよー!」
得意満面のシエラの肩を、ヨハネスがつんつんとつつく。
『では、こっちはそんな凄い人に任せて、自分はそろそろ本業に戻りますね』
面食らったのはシエラである。
「え、ちょっとヨハネスさん?」
「あ、アメリアスも時間かかるだろうし、あたしたちも部屋に戻るわね、行こっか、アル」
ヒツギとアルも、ヨハネスについて艦橋を出ていく。
「そういえば、ヨハネスは男なの? 女なの?」
「ちょっとアル⋯ !」
『気にしないでいいですよ、よく聞かれるので』
「むぅ⋯ わかりましたよっ、ぷんぷん!」
シエラは1人、コンソールに向き直った。
A.P241:3/31 12:15
惑星ウォパル:海岸
青い空に、白い雲。
綺麗な海岸に、闊歩する海王種。
「いやいや、本当に助かるっす」
「それはどうも。あ、アクルプス来てますよ」
「おわあっ!?」
私は情報部のアークス、タキさんと一緒に、惑星ウォパルの海岸に来ていた。
「おっと、また補助切れてるっすよ」
タキさんが短杖を振ると、シフタとデバンド⋯ 補助テクニックが発生する。
補助テクニックを使ったことのあるアークスなら、その光がただのシフタとは明らかに違うことに気づくだろう。
彼のクラスはテクター。
補助テクニックをばら撒きながら、法撃爆発を帯びた短杖でブン殴る「近接法撃職」だ。
テクターの操る補助テクニックは、通常のものよりも大幅に強化され、効果時間も長い。
「どうせ3分乗るんすから、しっかり延長しといてくださいよー」
「了解です。おおっとダーカー発見!」
現れた有翼系ダーカーにお馴染みの
こうして定期的にテクニックを重ねれば、強力な補助を維持できるというわけだ。
「でもたまに短くなりますよね?」
「補助テクニックは数段に分けてかかるっす。すぐに効果範囲から外れると、そのぶん効果も短くなるんすよ⋯ ってか、気づいてなかったんすか?」
会話しつつもきちんと敵性存在を駆除しながら、海岸を進んでいると、
「⋯ ですから! 新しいクラスを作るときは、きちんと他のクラスの提唱者にも許可を得ないとダメなんですー!」
聞き覚えのある憤慨した声が、巨岩の裏から聞こえてきた。
「い、今のは⋯ 」
嫌な予感しかしないが、とりあえず巨岩の裏へ回り込んでみる。
果たして、そこにいたのは、
「そんな可愛らしい子で釣って、バウンサーの立場を危うくするクラスなんて⋯ ! アークスが許しても、このカトリが許しません!」
カトリーヌを連れたピエトロさんと、それを叱るカトリさんだった。
「ふむ⋯ そう言われても困ったな⋯ 既にサモナーはアークスに認可されたクラスだから、今更取り消すのも無理な話だよ?」
ピエトロさんは至極真っ当な返答を返すと、
「それにもう、この子が僕を離さない! そうだよな、カトリーヌ!」
カトリーヌの返事は、差し出された右手への噛みつきだった。
「いたたたた!痛い、痛いってばカトリーヌ!」
「はうっ⋯ ! な、なんて可愛らしい⋯ !」
「⋯ これ、なんの茶番っすかね?」
「⋯ 言ったら負けです」
私達が生暖かい目を向けていると、
「ん⋯ ? ああ、お前か。あれはカトリが勝手に文句をつけているだけだから、気にしないでくれ」
私達がいた側から、サガさんが歩いてきた。
「お、サガさんじゃ無いっすか〜 」
「その声はタキ⋯ また一人で無茶をして、助けてもらったところか?」
「あれ、お二人知り合いだったんですか?」
私が尋ねると、タキさんが「一応任務で」と答えた。
「それにしてもサモナーか⋯ 私は中々面白い発想だと思ったな」
「敵からのヘイトを取ることなく、高威力の攻撃を繰り出せる⋯ レンジャーの射程からソード振り回してるみたいなもんすからね⋯ 」
「しかも敵が襲うのは、周りを飛び回るソード⋯ 近接格闘が中心のバウンサーとは、ある意味真逆ですよね」
⋯ む、こうして考えると強いなサモナー。
「ついでに言えば、クラス設立のタイミングも素晴らしい」
「⋯ と言うのは?」
「もしカトリがバウンサーの試験運用担当に選ばれる前だったら、面倒なことになっていたからな」
面倒なこと?
私は少し考えて、気づいた。
そうだ、カトリさんといえば⋯
「⋯ 怠け癖」
「⋯ ああ。自分が戦わない=楽を出来ると考え、サモナーに飛びついていただろうさ」
ふーっという、サガさんのため息が聞こえてきた。
「⋯ 要は、サモナーになって楽したいけど⋯ 」
「バウンサーからすっぱり足を洗うのも口惜しいから、ああやって言いがかりをつけている⋯ 」
「⋯ そんなところだろうな」
⋯ もうなんと言うか、ピエトロさんが気の毒になるレベルの話だ。
「ちょっと! サガさんからも何か無いんですか!? バウンサーの沽券に関わることですのよ!!?」
と、
サガさんに気づいたらしいカトリさんが、こちらにも何か言ってきた。
「だってだってこれ、サモナーって最初からサボる構えのクラスじゃ無いですか!ずるいです!!」
「⋯ 一方的な言いがかりを吹聴するな」
「うぐっ⋯ あ、アメリアス様からも何か言ってあげてください!」
え、ここで私に振る!?
「おや、マイフレンドじゃないか! 見てくれ、カトリーヌは今日も絶好調さ!」
「マイフレンド!? アメリアス様! 私というものが有りながら、サモナーに降るとはどういう事ですかぁっ!!」
駄目だこれ、互いにマイペース過ぎる。
私がどうしたものかと考えていると、
「⋯⋯⋯ カトリ」
「はい?」
サガさんが不意に、カトリさんの前まで進み、
「⋯ 特訓の時間だ」
戦闘服の襟足を掴んで、ずりずりと引っ張りだした。
「えっ、あのっ、ちょっと私の話はまだぁぁ⋯ 」
あっという間に、海岸線に消えていく2人。
「あっはは、騒がしい人だったねカトリーヌ⋯ あたっ!」
こっちはこっちで、カトリーヌに脛を蹴られている。
「⋯ 行きましょうか、タキさん」
「そうっすね。さっさと探索済ませるっす」
「あ、また会おうねマイフレンド! ったた、だから脛を蹴るなって!」
ヒツギさんのこともあるし、あんまりゆっくりもしていられない。
カトリーヌと戯れるピエトロさんに別れを告げ、私は海岸を進んでいった。
キャラクター紹介7
「タキ」(オリジナル)(アークス)
age:20 high:172 class:テクター
weapon:エイトライオービット(ウォンド)
costume:フラグメントクラウン
アークス情報部:臨戦区域ネットワーク管制室(通称内線)所属のアークス。
ノリの軽いテクターだが、その支援能力は非常に高く、フォトンリング搭載武器の試験運用担当として、エイトライオービットを使っている。
反面攻撃はやや不得意な所があり、単独任務は苦手とのこと。