ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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SB2.5-5「人造エネミー」

A.P241:3/31 12:00

アークスシップ:艦橋

 

「ふぅ⋯ あれ、もう戻られたんですか?」

整理作業の合間に一息ついていたシエラは、

艦橋に戻ってきた2人に気づいた。

「アメリアスが急に探索任務に駆り出されたらしくて⋯ あたし達だけでうろつくのもまずいかなって」

「そうですか⋯ こちらも丁度、作業が一区切り着いたところなので」

 

シートにもたれかかり、うーんっと伸びをするシエラ。

ヒツギがそれを眺めていると、不意に横のアルが口を開いた。

「ねぇ⋯ あの人は、大丈夫なの?」

「あの人?」

 

アルが指差した方向を見る。

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ 」

ずっと作業を手伝っていたヨハネスが、コンソールに体を預けて燃え尽きていた。

 

「⋯⋯⋯ あ」

ヨハネスは2人に気づくと、のそのそと起き上がる。

『⋯ お帰りなさい。 アメリアスは任務ですか?』

「あ⋯ はい」

突然チャットに送られた文章に戸惑いながら、ヒツギは頷いた。

 

『彼女、ああ見えて忙しいんです。任務同行に呼ばれる事も多いらしいですよ』

「無理をしていなければ良いんですが⋯ 」

不安そうに呟くシエラ。

それを見たヨハネスは、『心配ご無用』と綴る。

『どうせ彼女の場合、一晩寝れば元気になりますから。そういう奴なんですよ』

「そういうものなんですかね⋯ 」

 

言うと、シエラはヒツギとアルに向き直った。

「アメリアスさんが居ないとなると⋯ そうですね⋯ 前回聞きそびれた事がありましたら、なんでもお答えしますよ」

 

ヒツギは、前回こちらを訪れた時のことを思い出した。

「そうね⋯ 前は混乱してて、訊きたかったことも訊けなかったし⋯ 」

目を閉じて、数秒思案する。

とりあえず、自分の認識の正誤を確かめようと判断した。

 

「まず⋯ アークスの歴史を教えてくれない?」

「そんな事をですか⋯ ? わかりました」

シエラは始めは呆気にとられたが、頷くといくつかのウインドウを展開する。

 

「うわっ⋯ 本当に何から何まで⋯ 開示していいもんなの、これ?」

「昔は隠していたこともありましたが、今は基本的にフルオープンですので」

ヒツギはウインドウを斜め読みしながら、自分が集めてきた情報と符合させていく。

 

⋯ 認識に齟齬はない。

やはり自分がPSO2として認知していたのは、この世界だった。

「ねえ、シエラ。このシオンって人の事なんだけど⋯ 」

不意にアルが、ヒツギがすっ飛ばして読んでいたうちの1ページを指差した。

 

「お、アル君お目が高い! シオンの記載に目をつけましたか」

「えっと⋯ この人は、何だったの?」

シエラは少し考えて、

「少し概念的な話となってしまいますが⋯ シオンは、この宇宙の観測者と呼ばれていました。宇宙の歴史を記録する、図書館みたいなものです」

 

シエラの側に、小さなウインドウが現れる。

そこに映っているのは、海に覆われた小さな星。

「宇宙が出来た時からの全ての記憶を持つ全知存在⋯ 『アカシックレコード』ですね」

「何でも⋯ 知ってたってこと?」

 

シエラは頷きを重ねる。

「何でも知ってたと思いますよ。ただ、本当に知ってただけですけど⋯ それに、彼女は感情の把握を苦手としていたので、フォトナーとの交流を求めていたんです」

「フォトナー⋯ オラクルを作ったっていう、旧人類ね」

 

フォトナーという単語には、ヒツギも知識があった。

曰く、シオンによってフォトンを使役する術を授かった、旧き人々。

彼らは発展と繁栄の果てに、全知存在の模倣を目指すに至り、そして⋯

 

「⋯ 最終的に、『深遠なる闇』を生み出してしまった」

「はい。彼らが最後に生み出したのは、人の暗黒面⋯ 負の感情だけを識ってしまった、歪んだ『全知存在』でした」

言葉を締めると、シエラの表情は感心に変わった。

 

「よくご存知ですね⋯ でも、どうしてこんな情報を?」

「それが⋯ マザーがあたしに、『フォトナーの所在』の調査を頼んでたの。アークスの歴史じゃなくて、根本的な成り立ちを」

「どういう意図があったかは判断しかねますが⋯ どちらにせよ、フォトナーはもう居ませんからね⋯ 」

 

2人が考え込んでいると、

「えーっと、シオンはすごい人で、フォトナーは悪い人の集まりで⋯ 両方とも、もういないってこと?」

「そうですね⋯ かなりざっくりですが、だいたい、アル君の認識で正しいと思います」

 

アルの問いに答えると、シエラはなぜかニコニコと笑い出した。

「そして私は、そのシオンの子供であるシャオの子供! つまり、シオンの孫と言えます!」

「シオンの⋯ 孫? じゃあシエラって、もしかしてすごい人⋯ ?」

「へっへーん! もしかしなくても凄いんですよー! もっと尊敬してもいいんですよー!」

 

得意満面のシエラの肩を、ヨハネスがつんつんとつつく。

『では、こっちはそんな凄い人に任せて、自分はそろそろ本業に戻りますね』

 

面食らったのはシエラである。

「え、ちょっとヨハネスさん?」

「あ、アメリアスも時間かかるだろうし、あたしたちも部屋に戻るわね、行こっか、アル」

ヒツギとアルも、ヨハネスについて艦橋を出ていく。

 

「そういえば、ヨハネスは男なの? 女なの?」

「ちょっとアル⋯ !」

『気にしないでいいですよ、よく聞かれるので』

 

「むぅ⋯ わかりましたよっ、ぷんぷん!」

シエラは1人、コンソールに向き直った。

 

A.P241:3/31 12:15

惑星ウォパル:海岸

 

青い空に、白い雲。

綺麗な海岸に、闊歩する海王種。

 

「いやいや、本当に助かるっす」

「それはどうも。あ、アクルプス来てますよ」

「おわあっ!?」

私は情報部のアークス、タキさんと一緒に、惑星ウォパルの海岸に来ていた。

 

「おっと、また補助切れてるっすよ」

タキさんが短杖を振ると、シフタとデバンド⋯ 補助テクニックが発生する。

補助テクニックを使ったことのあるアークスなら、その光がただのシフタとは明らかに違うことに気づくだろう。

 

彼のクラスはテクター。

補助テクニックをばら撒きながら、法撃爆発を帯びた短杖でブン殴る「近接法撃職」だ。

テクターの操る補助テクニックは、通常のものよりも大幅に強化され、効果時間も長い。

 

「どうせ3分乗るんすから、しっかり延長しといてくださいよー」

「了解です。おおっとダーカー発見!」

現れた有翼系ダーカーにお馴染みの突進蹴り(グランヴェイヴ)を浴びせ、派生でデバンドを撒きながら着地する。

こうして定期的にテクニックを重ねれば、強力な補助を維持できるというわけだ。

 

「でもたまに短くなりますよね?」

「補助テクニックは数段に分けてかかるっす。すぐに効果範囲から外れると、そのぶん効果も短くなるんすよ⋯ ってか、気づいてなかったんすか?」

会話しつつもきちんと敵性存在を駆除しながら、海岸を進んでいると、

 

「⋯ ですから! 新しいクラスを作るときは、きちんと他のクラスの提唱者にも許可を得ないとダメなんですー!」

聞き覚えのある憤慨した声が、巨岩の裏から聞こえてきた。

 

「い、今のは⋯ 」

嫌な予感しかしないが、とりあえず巨岩の裏へ回り込んでみる。

果たして、そこにいたのは、

「そんな可愛らしい子で釣って、バウンサーの立場を危うくするクラスなんて⋯ ! アークスが許しても、このカトリが許しません!」

カトリーヌを連れたピエトロさんと、それを叱るカトリさんだった。

 

「ふむ⋯ そう言われても困ったな⋯ 既にサモナーはアークスに認可されたクラスだから、今更取り消すのも無理な話だよ?」

ピエトロさんは至極真っ当な返答を返すと、

「それにもう、この子が僕を離さない! そうだよな、カトリーヌ!」

カトリーヌの返事は、差し出された右手への噛みつきだった。

 

「いたたたた!痛い、痛いってばカトリーヌ!」

「はうっ⋯ ! な、なんて可愛らしい⋯ !」

「⋯ これ、なんの茶番っすかね?」

「⋯ 言ったら負けです」

 

私達が生暖かい目を向けていると、

「ん⋯ ? ああ、お前か。あれはカトリが勝手に文句をつけているだけだから、気にしないでくれ」

私達がいた側から、サガさんが歩いてきた。

 

「お、サガさんじゃ無いっすか〜 」

「その声はタキ⋯ また一人で無茶をして、助けてもらったところか?」

「あれ、お二人知り合いだったんですか?」

私が尋ねると、タキさんが「一応任務で」と答えた。

 

「それにしてもサモナーか⋯ 私は中々面白い発想だと思ったな」

「敵からのヘイトを取ることなく、高威力の攻撃を繰り出せる⋯ レンジャーの射程からソード振り回してるみたいなもんすからね⋯ 」

「しかも敵が襲うのは、周りを飛び回るソード⋯ 近接格闘が中心のバウンサーとは、ある意味真逆ですよね」

 

⋯ む、こうして考えると強いなサモナー。

「ついでに言えば、クラス設立のタイミングも素晴らしい」

「⋯ と言うのは?」

「もしカトリがバウンサーの試験運用担当に選ばれる前だったら、面倒なことになっていたからな」

 

面倒なこと?

私は少し考えて、気づいた。

そうだ、カトリさんといえば⋯

 

「⋯ 怠け癖」

「⋯ ああ。自分が戦わない=楽を出来ると考え、サモナーに飛びついていただろうさ」

ふーっという、サガさんのため息が聞こえてきた。

 

「⋯ 要は、サモナーになって楽したいけど⋯ 」

「バウンサーからすっぱり足を洗うのも口惜しいから、ああやって言いがかりをつけている⋯ 」

「⋯ そんなところだろうな」

 

⋯ もうなんと言うか、ピエトロさんが気の毒になるレベルの話だ。

「ちょっと! サガさんからも何か無いんですか!? バウンサーの沽券に関わることですのよ!!?」

と、

サガさんに気づいたらしいカトリさんが、こちらにも何か言ってきた。

 

「だってだってこれ、サモナーって最初からサボる構えのクラスじゃ無いですか!ずるいです!!」

「⋯ 一方的な言いがかりを吹聴するな」

「うぐっ⋯ あ、アメリアス様からも何か言ってあげてください!」

 

え、ここで私に振る!?

「おや、マイフレンドじゃないか! 見てくれ、カトリーヌは今日も絶好調さ!」

「マイフレンド!? アメリアス様! 私というものが有りながら、サモナーに降るとはどういう事ですかぁっ!!」

 

駄目だこれ、互いにマイペース過ぎる。

私がどうしたものかと考えていると、

「⋯⋯⋯ カトリ」

「はい?」

サガさんが不意に、カトリさんの前まで進み、

「⋯ 特訓の時間だ」

戦闘服の襟足を掴んで、ずりずりと引っ張りだした。

 

「えっ、あのっ、ちょっと私の話はまだぁぁ⋯ 」

あっという間に、海岸線に消えていく2人。

「あっはは、騒がしい人だったねカトリーヌ⋯ あたっ!」

こっちはこっちで、カトリーヌに脛を蹴られている。

 

「⋯ 行きましょうか、タキさん」

「そうっすね。さっさと探索済ませるっす」

「あ、また会おうねマイフレンド! ったた、だから脛を蹴るなって!」

ヒツギさんのこともあるし、あんまりゆっくりもしていられない。

カトリーヌと戯れるピエトロさんに別れを告げ、私は海岸を進んでいった。




キャラクター紹介7
「タキ」(オリジナル)(アークス)
age:20 high:172 class:テクター
weapon:エイトライオービット(ウォンド)
costume:フラグメントクラウン
アークス情報部:臨戦区域ネットワーク管制室(通称内線)所属のアークス。
ノリの軽いテクターだが、その支援能力は非常に高く、フォトンリング搭載武器の試験運用担当として、エイトライオービットを使っている。
反面攻撃はやや不得意な所があり、単独任務は苦手とのこと。

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