ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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今回から、es(スマホ版)のキャラも出張。
少し設定を変えております。


SB2.5-3 「如月アテンション」

A.P241:3/31 10:30

アークスシップ:ゲートエリア

 

「⋯ とは言ってもさ」

艦橋と繋がっているテレポーターから出たところで、アメリアスはヒツギに困った顔を向けた。

 

「案内も何も、ヒツギさんだってずっとここには来てた訳だし⋯ 今更ね」

ため息混じりに言うと、ヒツギはそうでもないわよ、と苦笑する。

「今は貴女が側にいるのが、一番安心する。シエラもそういう意味で、案内を頼んだんじゃない?」

「⋯ そうかもね」

 

答えて、アメリアスは歩き出す。

特に行くあてもないのだが、取り敢えずショップエリアへでも向かおうと、ヒツギに言いかけた時⋯

 

「⋯ ! おーい貴様! 貴様だ貴様ーー!!」

甲高い少女の大声が、アメリアスの耳をついた。

「⋯ お」

不意に立ち止まるアメリアス。ヒツギはその視線の先、階段脇に設置された端末類の方をを見やる。

 

「こうして艦内をぶらついているということは、そろそろ落ち着いて来たのかー?」

先程の声の主、そして今もマイペースにアメリアスに話しかけているのは、背の低い赤毛の少女。

左腕にガントレットのついた、朱色の戦闘服を纏い、頭には何故か耳のようなパーツがついたカチューシャをつけている。

 

ヒツギは一応PSO2という形でこの世界に来てはいたが、こんな戦闘服もNPCも知らなかった。

「かく言う私も、出撃要請諸々がようやく落ち着いて来てなー。久々の休暇という奴だ。奇遇だな、ふふっ」

とてとてと駆け寄り、にっと笑う少女に、アメリアスはやれやれ、といった顔で手を上げる。

 

「⋯ こっちにも喋らせてよクーちゃん」

「クーちゃん言うな! ()()()()()()()()!!」

ムキーっと怒る少女の発言は、ヒツギの目を剥かせた。

「え⋯ !? 今、クラリスクレイスって⋯ !?」

「む? 誰だ貴様は⋯ まあいい、その通り、私が『六芒均衡の五』にして『三英雄』の1人、三代目クラリスクレイスだ!!」

 

そう。

むふーっと満足気に答えるこの少女が、今代の三英雄が1人、クラリスクレイス。

無論その存在自体は知っていたが、ヒツギはその姿を見た事は無かった。

 

(なんで、こんな偉そうなちみっこが⋯ ?)

率直すぎる感想を抱いたヒツギを見て、クラリスクレイスはニヤリと笑う。

「⋯ ふん、貴様今、私を偉そうなちみっこと言ったろ」

「えっ!? い、いや、そんな事⋯ 」

考えていたことをそのまま看破され、ヒツギは思わずたじろいだ。

 

「フォトンの感じでバレバレだ。だがいいぞ、もっと思えちみっこ! 私は戦闘部次席、実際に偉いのだからなっ!」

どうやら単純な性格のようで、少女はむしろ嬉しそうにしている。

「ちみっ⋯ 人が気にしてる事を⋯ ! ってか、あんたの方がちびっ子じゃない!!」

 

ついムキになって言い返したヒツギに、クラリスクレイスは何を今更、といった目を向けた。

「そうデザインされたからな、仕方がない。生まれた時からこの身長だろうしな」

「え⋯ ?」

「サラのやつがもう少し大きければ、私だってもっと大きかっただろうに、まったく⋯ 」

 

ヒツギの動揺を、クラリスクレイスが気に留める様子はない。

「ちょっと待って! デザインって⋯ !?」

「ん? どうもこうも、要はクローンってやつだが?」

制止して問いかけると、クラリスクレイスは呆気なく答える。

「クローンって⋯ そんな、漫画じゃあるまいし⋯ 」

 

事実は小説よりも奇なりとは、こういう事だろうか。

するとヒツギの複雑な視線に気づいたのか、クラリスクレイスは少し不機嫌な顔になった。

 

「なんだかよくわからんが⋯ 私の境遇に同情しているのなら、それは余計なお世話という奴だぞ?」

そう言って、クラリスクレイスはヒツギを見上げる。

諭すような微笑。少女にはあまり似合わない顔だった。

 

「私はもう受け入れているし、みんなだって受け入れてくれた。だから私はここに居る。これでこの話はおしまいだ」

そしてクラリスクレイスは、少し気恥ずかしそうに後ろ手を組むと、

「だが、私の事を思って言ってくれた事には感謝する。ありがと!」

見た目相応な、屈託のない笑顔で言った。

 

「ふ〜ん⋯ そんな事言って、クーちゃん昔はいっつもめそめそしてたくせに⋯ 」

「む、昔のことは昔のことだ!! それといい加減クーちゃんやめろ!!」

不意に後ろのアメリアスに茶化され、またわーわーと怒り出すクラリスクレイス。

あ、やっぱ見た目通りだわ、と、ヒツギは少し安堵した。

 

「⋯ ときにちみっこと横の子供、まだ名前を聞いてないぞ」

「ちみっ⋯ あたしはヒツギ。で、こっちはアル」

案の定生意気な態度にややうんざりしながらも、ヒツギはアルの頭をつついて答える。

 

「ヒツギに、アルか。よろしくな、2人とも」

頷いたクラリスクレイスは、急に慌てだした。

「⋯ ってああ! サラとの待ち合わせに遅れてしまう⋯ ! ま、またなっ!!」

「はーい、頑張ってねクーちゃーん」

「だからクーちゃん言うなって!!」

 

辟易した声を残し、階段を駆け下りていくクラリスクレイス。

「⋯ あのお姉ちゃん、クーちゃんっていうのいやがってたよ?」

「大丈夫だよアル君。口じゃああ言ってるけど、人前じゃ恥ずかしいだけだから」

じーっとこちらを見上げるアルに、アメリアスはしれっと答えた。

 

「じゃあ、下降りてショップエリアにでも⋯ 」

アメリアスが言いかけるのと同時に、汎用通信の着信が入る。

「あ、ちょっとごめん⋯ 」

アメリアスは2人から少し離れて、通話を始めた。

 

「はいもしもしー」

通信相手の声を聞いた途端、アメリアスの顔がぱあっと明るくなる。

そのまま嬉しそうに数回頷いた後、じゃあ後で、と言って通信を切った。

 

「あー⋯ ごめん2人とも、ちょっと野暮用が出来ちゃったから、先にショップエリアに行っててくれる?」

「あ、うん。じゃあ先に行ってよっか、アル」

用事が終わったら連絡すると言い残し、アメリアスは足早に階段を降りていく。

思い返せば、あそこまで嬉しそうなアメリアスを見たのも初めてかもしれない。

何があったのだろうと思いつつ、ヒツギはアルの手を引き、ショップエリアに向かった。

 

A.P241:3/30 10:50

アークスシップ:ショップエリア

 

ショップエリア上層、ゲートエリアのテレポーターから繋がる空中回廊。

 

「あれ? ヒツギさん、何してるんですか?」

呼び止められたヒツギが振り向くと、アメリアスの妹が歩いてくるところだった。

エーデルゼリンを着て、デュアルブレードを担いでいるのはいつも通りなのだが、傍らには、青い装甲を纏ったキャストの少年を連れている。

その小ささからして、少年の正体はすぐに察しがついた。

 

「あ、妹さん。そっちの子はサポパ?」

「はい⋯ えっと、名前言ってませんでしたっけ、すいません」

少女は申し訳無さそうに言うと、

「アークスシップ8番艦、戦闘部所属、ステラです。姉がお世話になってます」

 

気づけば、ヒツギは言葉を失っていた。

丁寧な態度が、昨日の戦闘中の彼女とはまるで別人の様に見えたからだ。

「⋯ ヒツギさん?」

「あ、ごめん⋯ ちょっとびっくりしちゃって⋯ 」

ヒツギが驚いているのに気づかない様で、ステラは不思議そうにヒツギを見ている。

 

「⋯ ご安心を。マスターは緊張してるだけなので」

⋯ と、

ステラの横に立っていたサポートパートナーが、口を開いた。

「ち、ちょっとフェオ! 」

「フェオ君っていうの? この子」

 

ヒツギが尋ねると、少年は丁寧に一礼して、

「ステラのサポートパートナー、フェオです。マスターは見ず知らずの人間には丁寧になる癖があるので、お気遣いなく」

「だから言うなってばかぁ!!」

 

ぎゃーぎゃーと叱るステラを、フェオはきょとんとした目で見ている。

何処か機械的な、青い瞳。人間味を感じさせない雰囲気に、ヒツギは何故か違和感を感じた。

 

「すごい⋯ かっこいい⋯ !」

そんな中、フェオを見て目を輝かせる少年が一名。

「かっこいい⋯ 私がですか?」

「うん! ごつい!」

「それは褒め言葉なのでしょうか⋯ 」

俗に「箱」と呼ばれる、ロボらしい雰囲気の装甲を、アルは気に入った様だ。

尤も、本人は逆に戸惑ってしまっているが。

 

ヒツギは2人の会話を見て、ふと呟いた。

「なんか、リオちゃんとは全然違うのね」

「リオ? ああ、姉のサポパですか」

ステラはフェオの銀髪の頭を撫でて、

「彼は稼働しはじめたばかりなので、まだ個性が薄いんです。まあ、リオはまた事情が違うそうですが」

「個性が⋯ 薄い」

 

ヒツギはその言葉を反芻する。

サポートパートナーは、アークスをサポートする人型ロボット。

その性格も、いくつかのプリセットを変更するもの。ゲームとしての認識はそうだった。

 

「⋯ サポートパートナーは、学習します」

エコーのかかった声を響かせるのは、フェオ。

「マスターと、その周りの人々の言動、思考を感じ取り、学習する⋯ そうして、人間の様な個性を得るのです」

「リオは、正直どうしてこうなった感はありますけどね⋯ まあ、彼女はベテランですし、姉の事もよく知っているので」

 

ヒツギはふと、昨日のリオを思い出す。

あの後結局、翌朝任務の手伝いに向かうまで、リオは一緒に居てくれた。

アルと楽しげに話す姿は、本当に普通の女の子だった。

 

「⋯ あ、すいません! この後探索任務なので、そろそろ⋯ 」

「うん、いい話聞かせてもらっちゃった。ありがと」

心からの謝辞に、ステラはぱあっと笑う。

「それじゃあこれで。行くよフェオ!」

「了解」

ゲートエリアに繋がるテレポーターに、2人の姿が消える。

 

「フェオ、かっこよかった⋯ !」

「⋯ ハコも愛されてるわね」

上機嫌なアルに呆れつつも、ヒツギはぼんやりと、フェオの顔を思い出していた。

「まあ確かに、イケメンだった⋯ かな」

 

A.P241:3/30 10:50

アークスシップ:ゲートエリア

 

私がゲートエリアカウンターに行くと、そこに彼女はいた。

「あ、お久しぶりです!!」

「久しぶり。でもジェネがなんでwyn(こっち)に?」

「チームの任務が一息ついて⋯ こちらへの増援ということで、出向の指令が」

 

金のツインテールを揺らし、ジェネはにこりと笑って答える。

彼女はアークスシップ9番艦「hagal(ハガル)」の特命部隊に所属していたアークスで、コールドスリープに入る前、私も一度ウィンを離れ、そちらに所属していた。

 

しかしあのチームは、2年前の外部研究所爆破事件の後、一度解散したはず⋯

それを尋ねると、ジェネは再結成する事になった、と答えた。

「先の事件が、まだ裏があるとかで⋯ アメリアスさんがこっちで頑張ってる間に、私たちも向こうで頑張ってますから!」

「へぇ⋯ 頼もしくなったね⋯ あれ?」

 

息巻くジェネに感心していると、ふと疑問が湧いた。

「⋯ ジェネ、あんたさっき、つい先程ウィンに到着しました。って言わなかった?」

「? そうですけど⋯ 」

待て、何かがおかしい。

 

私は思わず、スペースゲートの見える窓へ振り向く。

キャンプシップの停泊する先に見えるのは、地球。転移してきたのだから当然だ。

 

「ねえ、どうやってこっち来た?」

「い、いつも通りですが⋯ 」

⋯ ああ、なるほど。もう行き来も効くということか。

 

「びっくりしたんじゃない? 別の宇宙に来るなんて」

「はい⋯ こちらの状況を聞いたときは、本当にびっくりしました」

苦笑したジェネは、ああそうだと、小さなメモリを取り出した。

 

「これを艦橋に届けて、ついでに報告もくれと言われたんですが⋯ アクセスできないんです」

困り顔になるジェネ。

色々人通りが多くて忘れがちだが、上部艦橋はアークスシップの核。許可が無ければ立ち入れない。

「⋯ 転移直後のシップ移動で、混乱しちゃったのかもね。そういう事ならついてくよ」

 

艦橋へ案内するくらいなら、数分で終わる。ヒツギさんも心配はいらないだろう。

「ありがとうございます、アメリアスさん!」

「いいのいいの。どうせすぐだし」

 

2人並んで、艦橋の方へ歩き出す。

「それより⋯ その格好はどういう意図が?」

「ふふふ、これにはちゃんと意味があるんです⋯ 多分!」

「ふーん⋯ 」

水着もかくやな胸元を指摘されても、何故か自慢気に語るジェネを横目に、ロビーを見回す。

 

慌ただしく仕事をこなす、クエストカウンターの管理官。

いろんな武器を引っさげて、今日もまた多様な惑星へと赴く、8番艦のアークスたち。

 

⋯ 何故だろう。

2年前の事だって、私にとっては先週の事の筈なのに。

こんな景色だって、毎日当たり前に見ていたのに。

⋯ なんだかとても、懐かしく思えた。

 




キャラクター紹介6
「クラリスクレイス」(PSO2)(アークス)
age:18 high:– class:フォース
weapon:創世器「灰錫クラリッサII」
costume:ウィオラフロウ
六芒均衡が五、三英雄の1人、三代目クラリスクレイス。
フォースとして最高峰の火力を持つものの、戦闘スタイルは爆発による力技に偏重している。
その正体はとあるアークスのクローン。虚空機関によって生み出され、模造品である創世器越しにルーサーに操られていた。
現在は戦闘部次席を勤め、その生い立ちのことも自分なりに納得している様だ。

「ジェネ」(PSO2es)(アークス)
age:– high:158 class:ファイター
weapon:フォシルトリクス(ダブルセイバー)
costume:ステラティアーズ
アークスシップ9番艦「ハガル」にある特命部隊「ダーカーバスターズ」所属のアークス。
このチームは元々試験的に設立された特殊部隊であり、現守護輝士アメリアスも、一時期シップ間出向という形で所属していた。
2年前のとある事件の後、チームは一度解散となったが、不審なダーカーの存在を受け、再結成。調査を開始している。

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