ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

28 / 71
もうちょっと頑張らないと⋯


SB2-11「ヤンキーガール・ハーティーガール」

A.D2028:3/30 13:30

地球:天星学院高校

 

「な⋯⋯⋯ !?」

イツキは、放たれたミサイルに絶句した。

「嘘⋯⋯⋯ !」

リナは、立ち昇る爆炎に瞠目した。

「なんで⋯⋯⋯ !!?」

そしてヒツギは、その傍に立つ影に驚愕した。

 

「痛ぅ⋯ ったくステラ! 突然突っ込んで来ないでよ!!」

エーテルになって消えていく、炎の像のすぐ横。

放り出されたステラの横で、アメリアスが立ち上がっていた。

 

「⋯ って、大丈夫?」

「⋯ ロックベアのパンチくらい痛かった」

よろよろと起き上がるステラ。

「ごめんごめん。ステラを身代わりにするわけにもいかなかったしさ」

アメリアスはそう言って、ステラに回復薬を手渡す。

 

⋯ 砲撃の瞬間。

反応し切れないとみたステラがアメリアスへと突っ込んだ時、逆にアメリアスはステラの腕をひっ掴み、放り投げた力で自身も飛び退いた。

 

すなわち、ステラがアメリアスを助けたのでは無く、

「今の砲撃を、(かわし)た⋯⋯⋯ !?」

驚愕は隠せない。

しかし、ヒツギには一つ、心当たりがあった。

 

初めて彼女と会った日⋯ 彼女は背後からの光弾を、紙一重で回避していた。

死角からの攻撃の回避という点では、今起こったのはそれと全く同じ現象⋯ !

 

「⋯ まあ、見えれば躱せるもんね」

自身を狙った戦車を睨みつけるアメリアス。

その瞳は、金色に輝いていた。

 

「な⋯⋯⋯ 」

「姉ちゃん⋯⋯⋯ ?」

呆気にとられるステラ達。

目の前で起きた異常に、目の前に立つ異様に、幻創種さえも立ち止まる。

 

「⋯ ! 撃て、そいつを撃ち抜けェ!!」

我に帰った様に、ハギトが叫ぶ。

一斉に動き出す幻創種。

この瞬間、彼らの敵は、目の前に立つ銀髪金眼の少女になった。

 

しかしアメリアスは退く素振りも見せず、幻創種の囲む中を立ち尽くす。

「あ⋯ アメリアス!」

ヒツギは思わず叫んでいた。

あの時の暴走が、理性なき特攻が、頭をよぎる。

 

『⋯ 大丈夫ですよ、ヒツギさん!』

「シエラさん!?」

不意に聞こえてきたのは、シエラの声。

『今のアメリアスさんには⋯ 全て見えています!』

「見えてるって⋯⋯⋯ !」

ヒツギが聞き返した、その瞬間。

 

『ーーーーー!!!』

空気が震える。

ゾンビの拳銃、ヘリの機銃、戦車の砲撃⋯ その全てが、立て続けにアメリアスを襲った。

 

「⋯⋯⋯ っ!」

時間が止まる。

アメリアスの拡張した視野が、彼女に思考を強制する。

(見せてやる⋯ 私の力を!)

 

常人はまず回避出来ない、多段砲火を、

(光弾全周囲榴弾一発、機銃二方向全弾捕捉!)

その全てを見切り、僅かな死角を捕まえ、

(回避パターン構築⋯ 今!)

一瞬のうちに飛翔し、完璧に躱し切る。

 

「うおわぁ!?」

驚きのあまり変な声が出たヒツギの前で、地を蹴ったアメリアスの姿が消える。

「こっちの⋯ 番だ!」

一瞬で飛び出したアメリアスが、すれ違いざまに次々と幻創種を斬り裂いて行く。

 

「なんなの、あれ⋯ !?」

『⋯ 常人の上下視野は130度、立体視野はおよそ120度、左右視野は180度程です』

 

360度、飛び交う攻撃は全て、アメリアスの体を逸れていく。

 

『ですが今のアメリアスさんには、上下左右⋯ 後方さえ、全て完璧に捉えられています』

 

光弾を躱し、機銃をいなし、榴弾すらも吹き飛ばす。

その様はまさに旋刃。刃と化した風そのもの。

 

『そして全ての視覚情報を処理しきる思考⋯ それが、彼女の最強たる所以です!!』

 

風が、舞い上がる。

「はああああああっ!!」

ヘリ型幻創種の間で、光翼が踊る。

それは⋯ 巨大な光刃を纏った、アメリアスの握る飛翔剣。

 

悔悟せよ幻創の軍隊。

全てを賭けた必殺は、魔装脚のみの(わざ)に有らず。

 

「ケストレルランページ⋯ 零式ッ!!!」

降り注ぐ光子の剣。

鋼鉄の雷鳥が、地へと叩き墜とされる。

 

「ば、馬鹿な⋯ !」

瞠目するハギト。

時間にして僅か数十秒、たった1人の少女によって、軍勢は壊滅した。

 

「えー! 姉ちゃんデュアルも使うのー!? てか何そのフォトンアーツ!!」

妹の不満気な声を無視し、残った(ハギト)を見る。

 

「チッ⋯ ! やはりリリーパでしっかり始末しておけば⋯ 」

口走るハギト。

「⋯ ! 今、なんて⋯ !」

「黙れ! こうなったら遠慮は要らない⋯ 確実に潰す!」

聞き返すアメリアスを遮り、また幻創種が具現する。

 

現れたのは、黒く染まったヘリ型幻創種と、追加装甲が取り付けられた戦車。

「さあ見せてやれ!『アーマード15式』!」

「上等⋯ !」

 

駆け出そうとしたアメリアスの前で、戦車の追加装甲の一部が爆発した。

「ほらほら、私達を忘れないの!」

「おお! これ爆発反応装甲ですよリナ先輩!」

「知らないわよ!」

左右に散開し、二機のヘリに相対するリナとイツキ。

 

「姉ちゃんばっかに出番渡してたまるかー!」

「あたしだってやれるわ、アメリアス!」

ステラとヒツギも、アメリアスを置いて戦車へ突撃する。

「もう、あの2人は⋯ 」

アメリアスがふうっと息をつくと、その瞳は澄んだ青色に戻った。

 

「⋯ ま、おとなしく出番は譲らないけど!」

戦車の砲塔に狙いを定め、飛翔する。

「のわあっ!」

躍る視界の隅で、ステラが装甲の爆発に吹き飛ばされる。

 

「やっぱり⋯ !」

爆発反応装甲(リアクティブ・アーマー)。本来衝撃を分散させるための対爆発だが、近くの人間を負傷させるだけの衝撃はある。

 

「だったら、ここだ!」

アメリアスが着地したのは、砲塔の上。

「ストライクガスト!」

回頭する主砲に張り付き、次々と蹴撃を叩き込む。

 

「アメリアスさんっ!」

「え!? うわっ!」

不意に突進してきたヘリを、戦車から飛び降りて回避。

「ありがとうイツキさん!」

イツキは小さく頷き、停止したヘリへガンスラッシュを向ける。

 

「エイミングショット!!」

撃ち抜かれるテールローター。バランスを失ったヘリは、ふらふらと墜落し、

「あとは私がっ!! バレットスコール!」

リナが放った銃弾の豪雨に、たちまち沈黙する。

 

「そして⋯ !」

リナは飛び上がり、もう一機のヘリを水平に捉え、

「オラァッ!!」

機体側面に体当たりし、叩き落とした。

 

「トドメは僕が!」

蒼穹に、流星が舞う。

「ほあああああああああああっ!!!」

ヘリを両断し、イツキは戦車の方へ振り返る。

 

「そっちどうですか!?」

「ちまちま叩いてるけど⋯ !」

爆発した装甲を避け、アメリアスがイツキの横に着地する。

「あの装甲めんどくさい!」

ヒツギも反対側に着地し⋯ はっとして顔を上げた。

 

「妹さん!?」

ステラが1人、火炎放射器を展開した戦車の前に立っている。

「 見せてあげる! デュアルブレードのやり方をね!」

剣を振り上げたステラの周囲を、フォトンブレードが巡る。

 

「スターリングフォールッ!」

そして放たれる火炎の前で、ステラは飛んだ。

爆炎をかすめ、少女の体は空を切る。

「ディスパースシュライク!!」

飛び散る光刃が装甲を穿つ。

爆裂する装甲は、上空に浮くステラには届かなかった。

 

「終わりだあっ!!」

火炎放射器へと、両の剣が突き刺さる。

火器が爆散し、戦車の体勢が崩れる。

 

「お願いします、ヒツギさん!!」

「うんっ!!」

さらけ出された弱点。

ヒツギは刀を握り、裂くべき位置を見据える。

 

幻創の⋯ 空想の具現。

心に抱く空想(ユメ)は、フォトンが紡ぐ、無尽の業。

「⋯ はあっ!!」

刹那に相手との間合いを詰め、

「せいっ!!」

その光円を抉り抜き、

「たああああっ!!」

一文字に斬り裂き、締めへと繋げる!

 

春花春蘭(シュンカシュンラン)!!!」

フィニッシュの斬り上げは、鋼鉄の巨軀を吹き飛ばし、光に変えた。

 

「よっし!」

歓声を上げたヒツギの前に、さっとアメリアスが滑り込む。

「待って⋯ これで終わってくれるとも思えない」

「⋯ !」

その意味を悟ったヒツギは、空に立つ男の、右手を見やる。

 

亜贄萩斗の操る、エメラルド・タブレット。

エーテルから幻創種を生み出すということは⋯ 彼の軍隊は、無尽蔵に等しいということに他ならない。

⋯ いくら倒そうが、ハギトは絶対的優勢なのだ。

 

2人の側に、イツキ達も集まる。

「⋯⋯⋯ 」

「⋯⋯⋯ 」

短い沈黙。

自身を睨む少女を前に、ハギトは、

 

「⋯ やめだ。これ以上の戦闘継続に意味は無い」

呆れたように言って、足場から飛び降りた。

 

「な⋯ !?」

「何よ、ここまでやっといて逃げる気!?」

「その通りだよお嬢さん! 私がやっているのはビジネスだ。損益分岐点を割る前に、時にはすっぱりと手を引く勇気も必要なのさ!」

 

ハギトは清々しいほどにすっぱりと言い切り、ヒツギ達を指差す。

「だが⋯ 君達のデータは覚えた。今度はマザーもビジネスも関係なく、潰してあげよう⋯ アークス、清雅学園、そして⋯ 八坂火継!」

 

虚空へと投げられるタブレット。

その一瞬の輝きとともに、ハギトの姿は消えた。

 

「ハギっ⋯ !」

ヒツギがハギトの場所に駆け寄ろうとした、その時、

「お、お姉ちゃん!」

 

突然聞こえたアルの声に、ヒツギははっとして振り向いた。

「アル!?」

アルを引く、手。

いつの間にか目を覚ましたコオリが、アルを強引に引っ張っている!

 

「コオリあんたっ⋯ !」

ヒツギの中で、コオリに向けたことのない感情が沸き起こる。

とにかく彼女を止めなければと、足を踏み出しかけたのと、ほぼ同時に、

 

「⋯ 何やってんのかな」

「!? ⋯ づっ!!?」

 

アメリアスがコオリの前に立ち塞がり、間髪入れずにその膝がコオリに突き刺さった。

「うっ⋯ かはっ⋯ !」

「落ち着きなさい。かなり手は抜いておいたから」

 

倒れそうになるコオリを受け止め、座らせる。

「お姉ちゃん!」

アルはヒツギに駆け寄り、パーカーの裾に抱きつく。

「アメリア、ス⋯ ?」

ヒツギは茫然と、その光景を眺めていた。

 

アメリアスの目。

見た事が無いほど冷たく、冷酷な瞳が、コオリを見下ろしている。

「うっ⋯ ヒツギちゃん⋯ 嘘だよね⋯ 」

コオリは縋るような目で、ヒツギを見上げた。

 

「わたしたちを裏切ったなんて、嘘だよね⋯ !」

「コオリ、私は⋯ 」

「だったら⋯ だったらなんで、マザーの言うことに逆らうの!!」

腹部強打で痛む身体を押さえ、コオリは慟哭を重ねる。

 

「戻ってきてよヒツギちゃん! ここに来て、私の手を握ってよ⋯ !!」

目をそらす、イツキとリナ。

「アル君⋯ 」

「アークスのお姉ちゃん⋯ 」

ステラもそっと、アルの肩に手を乗せる。

 

「⋯ どうするの、ヒツギさん」

その、中で。

アメリアスはヒツギに振り向き、言い放つ。

ヒツギは唇を噛み締め、コオリの前に立った。

 

「ごめん、コオリ⋯ あたしはもう、戻れない」

涙を堪え、親友に告げる。

「何が正しくて、何が間違ってるのか、確かめたいの⋯ だから」

「ヒツギちゃん⋯ !」

「だからあたしは⋯ アメリアスと行く」

 

思わず、コオリに背を向ける。

⋯ 溢れそうになる涙を、見られたくなかったから。

 

『⋯ 帰還できます』

「了解です⋯ 行くよ、ステラ」

シエラの声を受け取り、アメリアスはステラの手を引き、歩き出す。

「コオリ⋯ 本当に、ごめん」

ヒツギも、それに続く。

 

「待って⋯ ヒツギちゃん⋯ ヒツギちゃん!!」

コオリが手を伸ばした、その目の前で。

親友は、異邦の戦士達と共に消えた。

 

All I need is you.

All I trust is you.

Nevertheless...you were...




「ヤンキーボーイ・ヤンキーガール」
友情よりも、日常よりも。
何より疑わない、明日を願った。

※アメリアスの能力について。
普段PSO2をプレイしている私達は、三人称視点でキャラクターを見ています。
しかし、キャラクターからしてみれば一人称視点。その視界には、大幅な開きがあります。(fpsとtpsも、視界の違いは一目瞭然ですよね)
また、安藤はキャリア1年未満でありながら、ep1〜3と、新人とは思えない活躍をしています。
その「主人公補正」の理由付けと言う意味も込め、彼女にはこの能力を与えました。
異能ネタは嫌いな人もいらっしゃるかと思います。ですが一応理由があると言うことで、「私は一向に構わん」という方は、楽しんでいただけたらと思います。

長文失礼しました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。