ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
A.D2028:3/30 13:30
地球:天星学院高校
「な⋯⋯⋯ !?」
イツキは、放たれたミサイルに絶句した。
「嘘⋯⋯⋯ !」
リナは、立ち昇る爆炎に瞠目した。
「なんで⋯⋯⋯ !!?」
そしてヒツギは、その傍に立つ影に驚愕した。
「痛ぅ⋯ ったくステラ! 突然突っ込んで来ないでよ!!」
エーテルになって消えていく、炎の像のすぐ横。
放り出されたステラの横で、アメリアスが立ち上がっていた。
「⋯ って、大丈夫?」
「⋯ ロックベアのパンチくらい痛かった」
よろよろと起き上がるステラ。
「ごめんごめん。ステラを身代わりにするわけにもいかなかったしさ」
アメリアスはそう言って、ステラに回復薬を手渡す。
⋯ 砲撃の瞬間。
反応し切れないとみたステラがアメリアスへと突っ込んだ時、逆にアメリアスはステラの腕をひっ掴み、放り投げた力で自身も飛び退いた。
すなわち、ステラがアメリアスを助けたのでは無く、
「今の砲撃を、
驚愕は隠せない。
しかし、ヒツギには一つ、心当たりがあった。
初めて彼女と会った日⋯ 彼女は背後からの光弾を、紙一重で回避していた。
死角からの攻撃の回避という点では、今起こったのはそれと全く同じ現象⋯ !
「⋯ まあ、見えれば躱せるもんね」
自身を狙った戦車を睨みつけるアメリアス。
その瞳は、金色に輝いていた。
「な⋯⋯⋯ 」
「姉ちゃん⋯⋯⋯ ?」
呆気にとられるステラ達。
目の前で起きた異常に、目の前に立つ異様に、幻創種さえも立ち止まる。
「⋯ ! 撃て、そいつを撃ち抜けェ!!」
我に帰った様に、ハギトが叫ぶ。
一斉に動き出す幻創種。
この瞬間、彼らの敵は、目の前に立つ銀髪金眼の少女になった。
しかしアメリアスは退く素振りも見せず、幻創種の囲む中を立ち尽くす。
「あ⋯ アメリアス!」
ヒツギは思わず叫んでいた。
あの時の暴走が、理性なき特攻が、頭をよぎる。
『⋯ 大丈夫ですよ、ヒツギさん!』
「シエラさん!?」
不意に聞こえてきたのは、シエラの声。
『今のアメリアスさんには⋯ 全て見えています!』
「見えてるって⋯⋯⋯ !」
ヒツギが聞き返した、その瞬間。
『ーーーーー!!!』
空気が震える。
ゾンビの拳銃、ヘリの機銃、戦車の砲撃⋯ その全てが、立て続けにアメリアスを襲った。
「⋯⋯⋯ っ!」
時間が止まる。
アメリアスの拡張した視野が、彼女に思考を強制する。
(見せてやる⋯ 私の力を!)
常人はまず回避出来ない、多段砲火を、
(光弾全周囲榴弾一発、機銃二方向全弾捕捉!)
その全てを見切り、僅かな死角を捕まえ、
(回避パターン構築⋯ 今!)
一瞬のうちに飛翔し、完璧に躱し切る。
「うおわぁ!?」
驚きのあまり変な声が出たヒツギの前で、地を蹴ったアメリアスの姿が消える。
「こっちの⋯ 番だ!」
一瞬で飛び出したアメリアスが、すれ違いざまに次々と幻創種を斬り裂いて行く。
「なんなの、あれ⋯ !?」
『⋯ 常人の上下視野は130度、立体視野はおよそ120度、左右視野は180度程です』
360度、飛び交う攻撃は全て、アメリアスの体を逸れていく。
『ですが今のアメリアスさんには、上下左右⋯ 後方さえ、全て完璧に捉えられています』
光弾を躱し、機銃をいなし、榴弾すらも吹き飛ばす。
その様はまさに旋刃。刃と化した風そのもの。
『そして全ての視覚情報を処理しきる思考⋯ それが、彼女の最強たる所以です!!』
風が、舞い上がる。
「はああああああっ!!」
ヘリ型幻創種の間で、光翼が踊る。
それは⋯ 巨大な光刃を纏った、アメリアスの握る飛翔剣。
悔悟せよ幻創の軍隊。
全てを賭けた必殺は、魔装脚のみの
「ケストレルランページ⋯ 零式ッ!!!」
降り注ぐ光子の剣。
鋼鉄の雷鳥が、地へと叩き墜とされる。
「ば、馬鹿な⋯ !」
瞠目するハギト。
時間にして僅か数十秒、たった1人の少女によって、軍勢は壊滅した。
「えー! 姉ちゃんデュアルも使うのー!? てか何そのフォトンアーツ!!」
妹の不満気な声を無視し、残った
「チッ⋯ ! やはりリリーパでしっかり始末しておけば⋯ 」
口走るハギト。
「⋯ ! 今、なんて⋯ !」
「黙れ! こうなったら遠慮は要らない⋯ 確実に潰す!」
聞き返すアメリアスを遮り、また幻創種が具現する。
現れたのは、黒く染まったヘリ型幻創種と、追加装甲が取り付けられた戦車。
「さあ見せてやれ!『アーマード15式』!」
「上等⋯ !」
駆け出そうとしたアメリアスの前で、戦車の追加装甲の一部が爆発した。
「ほらほら、私達を忘れないの!」
「おお! これ爆発反応装甲ですよリナ先輩!」
「知らないわよ!」
左右に散開し、二機のヘリに相対するリナとイツキ。
「姉ちゃんばっかに出番渡してたまるかー!」
「あたしだってやれるわ、アメリアス!」
ステラとヒツギも、アメリアスを置いて戦車へ突撃する。
「もう、あの2人は⋯ 」
アメリアスがふうっと息をつくと、その瞳は澄んだ青色に戻った。
「⋯ ま、おとなしく出番は譲らないけど!」
戦車の砲塔に狙いを定め、飛翔する。
「のわあっ!」
躍る視界の隅で、ステラが装甲の爆発に吹き飛ばされる。
「やっぱり⋯ !」
「だったら、ここだ!」
アメリアスが着地したのは、砲塔の上。
「ストライクガスト!」
回頭する主砲に張り付き、次々と蹴撃を叩き込む。
「アメリアスさんっ!」
「え!? うわっ!」
不意に突進してきたヘリを、戦車から飛び降りて回避。
「ありがとうイツキさん!」
イツキは小さく頷き、停止したヘリへガンスラッシュを向ける。
「エイミングショット!!」
撃ち抜かれるテールローター。バランスを失ったヘリは、ふらふらと墜落し、
「あとは私がっ!! バレットスコール!」
リナが放った銃弾の豪雨に、たちまち沈黙する。
「そして⋯ !」
リナは飛び上がり、もう一機のヘリを水平に捉え、
「オラァッ!!」
機体側面に体当たりし、叩き落とした。
「トドメは僕が!」
蒼穹に、流星が舞う。
「ほあああああああああああっ!!!」
ヘリを両断し、イツキは戦車の方へ振り返る。
「そっちどうですか!?」
「ちまちま叩いてるけど⋯ !」
爆発した装甲を避け、アメリアスがイツキの横に着地する。
「あの装甲めんどくさい!」
ヒツギも反対側に着地し⋯ はっとして顔を上げた。
「妹さん!?」
ステラが1人、火炎放射器を展開した戦車の前に立っている。
「 見せてあげる! デュアルブレードのやり方をね!」
剣を振り上げたステラの周囲を、フォトンブレードが巡る。
「スターリングフォールッ!」
そして放たれる火炎の前で、ステラは飛んだ。
爆炎をかすめ、少女の体は空を切る。
「ディスパースシュライク!!」
飛び散る光刃が装甲を穿つ。
爆裂する装甲は、上空に浮くステラには届かなかった。
「終わりだあっ!!」
火炎放射器へと、両の剣が突き刺さる。
火器が爆散し、戦車の体勢が崩れる。
「お願いします、ヒツギさん!!」
「うんっ!!」
さらけ出された弱点。
ヒツギは刀を握り、裂くべき位置を見据える。
幻創の⋯ 空想の具現。
心に抱く
「⋯ はあっ!!」
刹那に相手との間合いを詰め、
「せいっ!!」
その光円を抉り抜き、
「たああああっ!!」
一文字に斬り裂き、締めへと繋げる!
「
フィニッシュの斬り上げは、鋼鉄の巨軀を吹き飛ばし、光に変えた。
「よっし!」
歓声を上げたヒツギの前に、さっとアメリアスが滑り込む。
「待って⋯ これで終わってくれるとも思えない」
「⋯ !」
その意味を悟ったヒツギは、空に立つ男の、右手を見やる。
亜贄萩斗の操る、エメラルド・タブレット。
エーテルから幻創種を生み出すということは⋯ 彼の軍隊は、無尽蔵に等しいということに他ならない。
⋯ いくら倒そうが、ハギトは絶対的優勢なのだ。
2人の側に、イツキ達も集まる。
「⋯⋯⋯ 」
「⋯⋯⋯ 」
短い沈黙。
自身を睨む少女を前に、ハギトは、
「⋯ やめだ。これ以上の戦闘継続に意味は無い」
呆れたように言って、足場から飛び降りた。
「な⋯ !?」
「何よ、ここまでやっといて逃げる気!?」
「その通りだよお嬢さん! 私がやっているのはビジネスだ。損益分岐点を割る前に、時にはすっぱりと手を引く勇気も必要なのさ!」
ハギトは清々しいほどにすっぱりと言い切り、ヒツギ達を指差す。
「だが⋯ 君達のデータは覚えた。今度はマザーもビジネスも関係なく、潰してあげよう⋯ アークス、清雅学園、そして⋯ 八坂火継!」
虚空へと投げられるタブレット。
その一瞬の輝きとともに、ハギトの姿は消えた。
「ハギっ⋯ !」
ヒツギがハギトの場所に駆け寄ろうとした、その時、
「お、お姉ちゃん!」
突然聞こえたアルの声に、ヒツギははっとして振り向いた。
「アル!?」
アルを引く、手。
いつの間にか目を覚ましたコオリが、アルを強引に引っ張っている!
「コオリあんたっ⋯ !」
ヒツギの中で、コオリに向けたことのない感情が沸き起こる。
とにかく彼女を止めなければと、足を踏み出しかけたのと、ほぼ同時に、
「⋯ 何やってんのかな」
「!? ⋯ づっ!!?」
アメリアスがコオリの前に立ち塞がり、間髪入れずにその膝がコオリに突き刺さった。
「うっ⋯ かはっ⋯ !」
「落ち着きなさい。かなり手は抜いておいたから」
倒れそうになるコオリを受け止め、座らせる。
「お姉ちゃん!」
アルはヒツギに駆け寄り、パーカーの裾に抱きつく。
「アメリア、ス⋯ ?」
ヒツギは茫然と、その光景を眺めていた。
アメリアスの目。
見た事が無いほど冷たく、冷酷な瞳が、コオリを見下ろしている。
「うっ⋯ ヒツギちゃん⋯ 嘘だよね⋯ 」
コオリは縋るような目で、ヒツギを見上げた。
「わたしたちを裏切ったなんて、嘘だよね⋯ !」
「コオリ、私は⋯ 」
「だったら⋯ だったらなんで、マザーの言うことに逆らうの!!」
腹部強打で痛む身体を押さえ、コオリは慟哭を重ねる。
「戻ってきてよヒツギちゃん! ここに来て、私の手を握ってよ⋯ !!」
目をそらす、イツキとリナ。
「アル君⋯ 」
「アークスのお姉ちゃん⋯ 」
ステラもそっと、アルの肩に手を乗せる。
「⋯ どうするの、ヒツギさん」
その、中で。
アメリアスはヒツギに振り向き、言い放つ。
ヒツギは唇を噛み締め、コオリの前に立った。
「ごめん、コオリ⋯ あたしはもう、戻れない」
涙を堪え、親友に告げる。
「何が正しくて、何が間違ってるのか、確かめたいの⋯ だから」
「ヒツギちゃん⋯ !」
「だからあたしは⋯ アメリアスと行く」
思わず、コオリに背を向ける。
⋯ 溢れそうになる涙を、見られたくなかったから。
『⋯ 帰還できます』
「了解です⋯ 行くよ、ステラ」
シエラの声を受け取り、アメリアスはステラの手を引き、歩き出す。
「コオリ⋯ 本当に、ごめん」
ヒツギも、それに続く。
「待って⋯ ヒツギちゃん⋯ ヒツギちゃん!!」
コオリが手を伸ばした、その目の前で。
親友は、異邦の戦士達と共に消えた。
All I need is you.
All I trust is you.
Nevertheless...you were...
「ヤンキーボーイ・ヤンキーガール」
友情よりも、日常よりも。
何より疑わない、明日を願った。
※アメリアスの能力について。
普段PSO2をプレイしている私達は、三人称視点でキャラクターを見ています。
しかし、キャラクターからしてみれば一人称視点。その視界には、大幅な開きがあります。(fpsとtpsも、視界の違いは一目瞭然ですよね)
また、安藤はキャリア1年未満でありながら、ep1〜3と、新人とは思えない活躍をしています。
その「主人公補正」の理由付けと言う意味も込め、彼女にはこの能力を与えました。
異能ネタは嫌いな人もいらっしゃるかと思います。ですが一応理由があると言うことで、「私は一向に構わん」という方は、楽しんでいただけたらと思います。
長文失礼しました。