ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
3/15お詫び
ヒツギの通う学校名に凄まじい誤字を確認。
明日、全話修正します。
A.D2028:3/30 13:00
地球:天星学院高校
「あ⋯ アメリアス!!」
立ち上がった私の耳に、ヒツギさんの声が聞こえる。
振り向けば、ヒツギさんの後ろで庇われるように、アル君の姿も見える。
アークスシップが転移したとはいえ、地球まで30分弱を要した。
その間どうヒツギさんが持ち堪えていられるかが不安だったが、その答えはヒツギさんが今、握っている。
何故彼女がこんな物を握っているのかはわからないが、今はそれよりも⋯
「のわああああああああっ!!!」
⋯ 雰囲気をぶち壊すように、キャンプシップから何かが落ちてくる。
「っつう⋯ なんであんな高さからテレポートさせるの!!」
膝をさすりながら抗議するそれは、
「これ以上高度落としたら墜とされかねないでしょうが。ほら立つ」
ステラを立たせ、視線を少し離れた地面に移す。
⋯ 不味い。
何があったのかわからないが、コオリさんが倒れている。
(⋯ ステラ、あの社長の気引いて。その隙にコオリさん助けるから)
(りょーかい。あそこにいられても邪魔だしね)
視線だけでやり取りし、ステラが戦車の上の男を見上げる。
「話が違うぞマザー⋯ オラクルの増援はまず間に合わないんじゃ無かったのか⋯ !」
動揺を隠し切れずに、ブツブツと呟いているハギト。
「⋯ ずいぶんみっともないですね、社長さん。この程度のイレギュラー、考えもしていなかったんですか?」
そこへステラは容赦なく、馬鹿にしきった顔で言い放った。
⋯ 不思議だ。
生意気なだけなのに、ステラが言うと妙に腹がたつ。
「⋯ 何だと? 別にこの程度、想定していなかったわけじゃ無い。それに君こそ、そんな貧相な刀で戦えるとは思えないがなぁ?」
ハギトはステラが背負う飛翔剣⋯ 錆びついた二本のカタナを鼻で笑う。
⋯ 食い付いた。
ハギトがステラへ目を移した隙に、一気にコオリさんの下へ飛び出す。
私に気づいたようで、クスッと意地悪く笑うステラ。
⋯ うーん。我が妹ながら、なんなのだこの生意気さは。
「⋯⋯⋯ まぁ、私の仕事はこれで大体終わりですし」
ステラは言って、とんと地面を蹴った。
「何⋯ !?」
後退するステラ。私は素早くコオリさんを抱き上げる。
「ステラ、パス!!」
そしてステラがいた場所へ駆け出すと同時に、コオリさんをステラへと放り投げた。
「⋯ っと! 案外重いっ!」
ステラは転びかけながら、ヒツギさんのそばへとコオリさんを運ぶ。
私はステラの前に立ち、ハギトの軍隊と対峙する。
「たかだか少女1人にこの数か⋯ 」
「数なんて幾らでも用意できる。さて、無駄話はここまでだ」
よし。どうやら向こうは、コオリさんをサルベージした意図に気づいていない。
「随分時間を取られてしまったが⋯ 手早く蹂躙するとしよう」
余裕たっぷりに告げるハギト。
確かに、ここには数十体の幻創種がひしめいている。
この数なら、押し切られるかもしれない。
だけど、彼は知らない。
この場にいるのは、決して私達だけではない事を⋯⋯⋯⋯⋯ !!
「全軍、突撃⋯ !」
「撃てええええええええええっ!!!!」
ハギトの号令を遮り、少女の咆哮が轟いた。
「⋯⋯⋯ !」
閃光が視界を覆う。
幻創種の群れを、赤黒の光線が舐る。
「うわっ⋯ !」
トラックが輝き、ロックオンマーカーが展開される。
私が慌てて退避した直後、爆撃が地面を焼いた。
「わあああ⋯ 」
ヒツギさんの声が、轟音に掻き消される。
光が消える。
閃光に灼かれたトラックには、一体の幻創種も残されていなかった。
「わ、私の軍隊が一瞬で⋯ !?」
戦車からも引きずり降ろされ、ハギトは驚愕に満ちた顔であたりを見回す。
「何処から⋯ っ!!」
ハギトは右側を向いて、瞠目した。
離れた校舎の上に立つ、10人近い人影。
まるで統一性のない衣装に身を包みながらも、揃いも揃ってロッドやライフル、ランチャーといった遠距離武器を握っている。
言うまでもなく、彼らによるサテライトカノンやフォメルギオン⋯ 高威力遠距離攻撃の弾幕が、先ほどの攻撃の正体だ。
「アークス、だと⋯ !?」
そう、彼らは正真正銘の
ステラの語った準備とは、すなわち彼らの招集に他ならない。
何故なら彼らは⋯⋯⋯
『聞こえますか!? ステラさん、ヒツギさん!!』
不意に、私とステラに通信が入る。
映ったのは、校舎屋上を背にした、ヒューマンの少女。爆撃部隊の中央にライフルを握って立っているのが、こちらからも見える。
「あ、貴女は⋯⋯⋯ !?」
その顔を見て、ヒツギさんが瞠目する。
「清雅学園高校の⋯ 泉澄生徒会長!?」
『そーゆーこと! 久しぶりね、ヒツギさん!』
画面の奥で、少女は笑ってみせた。
『はいはい! 僕もいますよー!!』
そこに割り込むように、青い戦闘服を纏った少年が映り込む。
『こら橘君! 邪魔!』
『良いじゃないですかリナ先輩!』
「イツキさんまで⋯ ! でもどうして!?」
驚き続けるヒツギさん。やはり、彼女は彼らを知っているようだ。
清雅学園高校、前生徒会長、泉澄リナ。
現生徒会長、橘イツキ。
そして、集まった2人のフレンド達。
彼らは地球の協力者⋯ ヒツギさんと同じく、オラクルの真実を知って、協力してくれている。
私だって、このことを聞いたのはキャンプシップの中だ。
要はステラは彼らにコンタクトを取るために、ここ数日シップを空けていたらしい。
『少し割り込むぞ⋯ 見えるか、アメリアス』
不意に横から、先ほどシップの通信に映っていた少女⋯ アイカさんが顔を見せる。
『言っただろう? 彼らは信頼に値すると』
「⋯ 残念ながら私の負けです」
アイカさんの声に、私は小さく頷いた。
⋯ 昨日の件もあり、信頼して良いものかとも思ったが、この見事な十字砲火を見る限り、その心配は無用の様だ。
「⋯ さてと。助っ人も来てくれた事だしね」
腰に手を当て、目の前の「敵」を見据える。
「くっ⋯ ! 貴様らぁ!!!」
再び現れる、幻創種の軍隊。
ハギトは宙返りすると、空中に作られた力場へ飛び乗る。
『細かい事は後ね⋯ ここを切り抜けるわよ!!』
『そうですね!!みんな、行くぞ!!!』
次々と、屋上から飛び降りてくる協力者達。
「それじゃあ私も⋯ !!」
私が飛び出しかけた、その時。
「ちょ、あれ!!?」
突如イツキさん達の体が、微かに光り始めた。
「お、おい!? 動けねぇぞ!!?」
「これは⋯ どうなっていますの!?」
いいや⋯ 正確には、イツキさんとリナさん以外の人達が、軒並み搔き消える様に薄くなっている!
「周囲エーテルの減少⋯ 具現武装と幻創種か⋯ ! シエラ!!」
『は、はい!』
「アバターを退避させる! こちらのオペレートを引き続き頼む!!」
ひとしきり怒鳴ったアイカさんが、こちらへと振り向く。
「アメリアス、後は頼んだ!!」
「⋯ 任せてっ!!」
転送されていくアイカさん達。
「ヒツギさん、アル君とコオリさんを⋯ 」
私が振り返ると、ヒツギさんは立ち上がっていた。
「ううん、私も戦う⋯ 戦わせて!」
恐れの無い、真っ直ぐな瞳。
「⋯ アル君! コオリさんをお願い!!」
「う、うん!」
断る必要はない。
だったらもう、アル君にも力になってもらおう!
『こっち、いつでも行けます!』
「了解です! ステラ! 思いっきり暴れなさい!!」
「よっしゃあ! さあ、派手に行くよっ!!」
二本の剣を躍らせ、ステラが幻創種の中央へ飛び込む。
A.D2028:3/30 13:13
地球:天星学園高校
「はああああああっ!!」
ステラの放ったフォトンブレードが、ゾンビの群れを吹き飛ばす。
「リナ先輩、お願いします!」
イツキの攻撃によって、群れに穴が開き、
「任せて! シフトピリオド!」
その穴を中心にリナの弾丸が舞い、幻創種を駆逐する。
(押せてる、けど⋯ !)
自身もラットファムトへブーツを突き刺しながら、アメリアスは確信した。
「⋯ っ!」
蹴撃の隙間を縫って来たドスゾンビを、辛うじて叩き潰す。
今ここにいる幻創種⋯ ハギトの軍隊は、明らかに通常の幻創種より強い。
てっきりタブレットの能力を使役のみと思い込んでいたアメリアスは、それならヒツギを守りつつ戦えると判断し、許可を出したのだ。
(また思い込んで失敗してる〜 !)
しかし、昔から治らないクセに今更後悔したって始まらない。
「ヒツギさん! こいつら強⋯ 」
ヒツギの方へ振り向いたアメリアスが見たのは、
「そこだぁっ!!」
一撃でゾンビを両断する、ヒツギのカタナだった。
(な、何あのカタナ⋯ !)
アメリアスは素直に驚嘆した。
先ほど「オロチアギト」の様なカタナと形容したが、下手をすれば本当に同レベルの威力を出している。
「さっきから⋯ もしかして、これが助けてくれてるの⋯ !?」
ヒツギもまた、その手に握った刀の力に気づいていた。
体が動く。まるでPSO2でカタナを使っているときの様に、扱い方がわかる。
「そうだ!」
新たに具現したロードローラーへ体を向け、しっかりと刀を握る。
⋯ エーテルの輝き。
心に描いた通りに、ヒツギの闘志が青い光に変わる。
「⋯⋯⋯⋯⋯ はっ!!」
そして、短い発声の瞬間。
数メートルの距離を一気に詰め、ロードローラーを斬り裂いた。
「たああああっ!!」
横倒しになったロードローラーにとどめを刺し、再び一瞬で、クロウファムトへ肉薄する。
「あれって⋯ カタナコンバット!?」
クロウファムトを屠り、颯爽と横をすり抜けるヒツギに、ステラは驚嘆の眼差しを投げた。
彼女はそれを、その挙動を、エーテルを使って「具現」する。
「せいっ!」
都合4体目の幻創種を斬り、ヒツギはゾンビの横隊の前で停止する。
「コンバットフィニッシュ!!」
薙ぎ払われる蒼閃。
終局の斬撃は、恐怖の具現を消し去った。
「随分あがいてくれる⋯ !!」
上空から投げつけられる、ハギトの憤怒の声。
振りかざされるタブレットが、新たな幻創種を具現する。
「幾らでも出せばいいわ! 根こそぎブチ抜いてあげる!」
しかし無数の弾丸は、それら恐怖の具現を穿ち、
「先輩なんか怖いですって!」
その刃は、悲愴の具現を斬り崩す。
「よし、これなら⋯ !」
ロードローラーを砕いたアメリアスが、次のターゲットへ駆け出す。
「⋯⋯⋯ っ!?」
⋯⋯⋯ 瞬間。
左腕が痛み、アメリアスは思わず立ち止まった。
(まさか昨日の!?)
先日、地下坑道で吹き飛ばされた時。
強く打った左腕が、軽い打ち身になっていた。
「姉ちゃん⋯ !」
ステラは立ち止まったアメリアスを見て、
「⋯⋯⋯ !」
最悪のタイミングでアメリアスの横に具現する、幻創の戦車を見た。
その砲口はミサイルポッドに転じ、アメリアスへ向けられている。
「姉ちゃん!」
ステラはなりふり構わず、アメリアスの下へ駆け出す。
幻創種を蹴り、ステラの手が伸びる。
「⋯⋯⋯ !」
アメリアスがそれに気づいた、まさにその時。
「⋯⋯⋯ うわあああああっ!!!」
戦車の砲撃が、2人を襲った。
「ブラックロック★シューター」
あるはずもないあの時の希望が、光になって現れたんだ。