ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
みなさん、どうか風邪にはお気をつけを。
A.P241:3/30 11:35
アークスシップ:艦橋
シエラの言葉通り、テレポーターは問題なく起動し、ヒツギとアルを艦橋まで送り届けた。
しかし⋯ 艦橋には、シエラ1人。
「あれ、アメリアスは?」
「今こちらへ向かってます。2分以内に来ると言っていたのですが⋯ 」
シエラが近くのウインドウを見たのと、ほぼ同時に、艦橋テレポーターから1人の少女が飛び込んで来た。
「すいません、到着しましたっ!!」
「あ、3秒遅刻ですよ、アメリアスさん」
「うわ間に合わなかったか⋯⋯⋯ !」
落ち込むアメリアス。
どうやら本当に急いでいたようで、長い銀髪をだいぶ乱して、息を切らせている。
アメリアスは横のヒツギに気づくと、
「あ、ヒツギさん久しぶり。何か変わった所とかは⋯ 無いみたいだね」
「ああ、う、うん⋯ 」
開口1発そんな事を尋ねられ、ヒツギは戸惑いながらも頷いた。
「そっか、よかった⋯ 」
アメリアスは安堵の表情を浮かべながら、そそくさとシエラの横へ移動する。
そしてアメリアスは、正面からヒツギを見て、気づいた。
「⋯ 意外と、落ち着いてるね」
「そう言ってもらえると、気を張ってる甲斐があるかも」
ヒツギは苦笑を返した。
実際のところ、ヒツギは不安と緊張で、心ここに在らずといった状態だった。
今まで信じてきたこと。
それが何もかも、ここで覆るかもしれない。
それを承知の上で、ヒツギはそれでも、こうして再びオラクルへ来たのだ。
「⋯ あたし、何も知らないのは嫌なの。何も知らないまま、失っていくのは、もう、絶対に嫌だから⋯ 」
「⋯⋯ ヒツギさん?」
「あ、ご、ごめん突然⋯ そうだ、アメリアスにはまだ紹介してなかったわね! ほら、この子がアル!」
ぽんと手を叩き、アルを引っ張るヒツギ。
アメリアスとしては、何度か断片情報から彼のことも伺っていたのだが、ヒツギはそれを知る由も無い。
(そういやこの間はバレかけたもんなぁ⋯ )
前回の会話をヒツギが思い出さない事を祈りつつ、アメリアスはしゃがみこみ、アルに視線を合わせる。
「君がアル君? はじめまして。私の事、ヒツギさんから聞いてるかな」
「うーん、うん。アメリアスお姉ちゃんだよね。お姉ちゃんがぶつぶつ言ってた」
少し考えてから、こくっと頷くアル。
「こ、こらアル、そういう事言わないで⋯ あれ?」
ヒツギはそんな2人を見て、首を傾げた。
妙にキラキラしたオーラを漂わせながら、アメリアスが頰に手を当て、脇を向いて震えている。
「お姉ちゃんって呼ばれた⋯ 何このいい子⋯⋯ !」
「あ、アメリアス⋯⋯⋯ ?」
困惑するヒツギの横で、シエラはあー、と納得する。
「アメリアスさん、妹さんがいるんですよ。アル君とは正反対な感じですけどね」
「⋯⋯⋯ あー、察したわ。大丈夫よアメリアス。この子もそんなに出来がいいわけじゃ無いから」
ヒツギは言って、ぺしぺしとアルの頭を叩く。
アメリアスはその視線に気づいたらしく、顔を赤らめながら立ち上がった。
「ご、ごめんつい⋯ 」
「⋯ 苦労してんのね。お疲れ様」
すっかり意気投合しているらしい2人へ、シエラが声をかける。
「お二人ともー、本題に入らせていただいていいですかー?」
シエラの方を向き、頷く2人。
空気が纏まったのを見て、シエラは切り出す。
彼女が告げたのは、シップの演算機能を使ったアルの解析だった。
彼はPSO2から⋯ オラクルの世界から引きずり出された存在。
しかし、地球の人間がアークスとして
その謎を解くことも含めての提案であった。
「それでは、こちらの演算機能で、アル君のダイレクトスキャンをさせて頂きます⋯ 本当に良いんですね、ヒツギさん?」
「うん。この子のためにも⋯⋯ あたしは知りたい。本当の事を」
ヒツギの意思を受け、シエラはアルへと向き直る。
「ではアル君、手を出してもらえますか? おねーさんと握手、しましょう」
すっと、アルへと伸ばされる、シエラの手。
アルはおずおずと、自分の手を重ねる。
シエラは瞑目し、解析を開始した。
「⋯⋯⋯ 体組織への直接接触を確認。ダイレクトスキャンを開始⋯⋯⋯ っ!!?」
⋯ 瞬間。
強烈な閃光が、辺りを覆う。
そして⋯⋯⋯ 2人の姿は、艦橋から消えていた。
「ひ⋯ ヒツギさん!? シエラさん、これは⋯⋯ !?」
「わ、わかりません⋯ ! 私とアル君の接触をトリガーに、何かによって2人が引き戻されました⋯⋯⋯ !!」
シエラは動揺しながらも、状況を説明し、コンソールへ駆け戻る。
「何かにリンクを切られた⋯ 私達との接触を恐れたの⋯⋯⋯ !?」
コンソールに表示されるエラーを追いながら、呟くシエラ。
アメリアスは、先ほど話していた事を思い出した。
地球側の手による、強行策。
それによって引き起こされた遮断という可能性が、頭をよぎる。
「し、シエラさん⋯ !」
すぐにでも地球に。
アメリアスが言いかけた、その時。
『シエラ、聞こえるか!!』
聞きなれない女性の声が、艦橋に響いた。
突然の通信。シエラはチャンネルを確認し、はっとする。
相手はアークス情報部、映っていたのは、ニューマンの少女だった。
「アイカさん!?」
『地球の天星学園高校周辺に、エーテルの異常分布反応が出始めている! 幻創種発生の予兆だ!』
アメリアスの知らない少女は、ヒツギの近くに起こっている異常を告げる。
「な⋯ どういう偶然ですか!」
『偶然ではない。おそらくこの具現は、人為的なものだ⋯ !』
「そんな⋯ !」
アメリアスは瞠目した。
ダーカーとも遜色ないようなエネミーが、人為的に発生しようとしている。
おそらくは⋯ ヒツギを始末するために。
仮に今から地球へ向かうとしても、転移の作業で間違いなく時間を取られる。
「じゃあ、どうすればいいってのよ⋯⋯ !」
アメリアスは俯き、肩を震わせる。
無力感が心を苛む。
少女を助けに行くには、オラクルはあまりにも遠すぎた。
「⋯⋯⋯ 行きましょう、アメリアスさん」
シエラの、声。
「⋯⋯⋯⋯⋯ え?」
顔を上げると、シエラは目の前に立っていた。
決して希望を失っていない⋯ かつて、自分が守り続けた顔で。
「時間を取られるのは、あくまで次元移動⋯ 地球の宇宙からであれば、十分間に合います」
「な、何を言って⋯⋯⋯ !」
戸惑うアメリアスを見て、シエラは困ったように笑う。
「全く、頭がお固いですよ、アメリアスさん。
「⋯⋯⋯ は!?」
そこまで言われて、アメリアスはようやく気づいた。
彼女の言葉の意味。これから行われる、究極の反則技に。
シエラは固まるアメリアスをよそに、自分のシートへ戻る。
そしてシエラの周囲に、大量のウインドウが現れて行く。
『やるんだな、シエラ?』
「これが一番手っ取り早いです。大丈夫、成功率に関しては、シャオのお墨付きです!」
ウインドウが消える。
シエラは小さく深呼吸して、中央コンソールへ向き直る。
「全演算完了⋯⋯⋯ 転移、開始っ!」
シエラが叫んだ瞬間、アークスシップが小さく揺れた。
「うわっ⋯⋯⋯ 」
大型宇宙航空艦であるアークスシップが揺れることなど、滅多にない。
アメリアスはくらっとよろめいた後、顔を上げた。
「な⋯⋯⋯ !!!」
絶句する。
艦橋の大きな窓に映っているのは、青い惑星。
ヒツギたちの住む星⋯ 地球だった。
「座標追跡完了。アークスシップ転移成功⋯ !」
シエラはアメリアスには目もくれず、ウインドウに向き合っている。
全くついていけずに、呆然と立つアメリアス。
アークスシップは全長70km。キャンプシップなどという小舟とは比較にならない大きさのはずだ。
しかし、これが答え。
アークスシップから向かうのに時間がかかるのであれば、アークスシップが地球側へと転移してしまえばいい。
まるで地球側への意趣返しのような作戦だが、それがこうして突破口を作り出した。
「⋯⋯⋯ 」
アメリアスはゆっくりと、拳を握る。
ならば、自分のすべきことは一つ⋯
『姉ちゃん姉ちゃん!!』
「⋯⋯⋯ ステラ、いきなり何?」
『い、意外とドライな反応⋯ 』
突然の妹からの通信を、アメリアスは冷静に返す。
『先に謝っとく。こんな時まで引っ張ってごめん。私も昨日まで地球にいて、連絡も上手くいかなくて⋯ 』
「⋯ え? あんた今なんて⋯⋯⋯ 」
さらっと暴かれた事実に、アメリアスは目を丸くする。
情報部の依頼で⋯ 地球へ?
『こういう時の為に、情報部がちょっとした準備をしてたの。私は、その仕上げを頼まれてた。』
「⋯ そんな事まで隠してたか。それで、準備⋯ ってのは?」
アメリアスの耳に、ステラの声が囁く。
アメリアスは一瞬硬直し、満足そうに、目を閉じた。
「⋯ なるほど。じゃあ、頼らせてもらおうかな」
「そうだね。じゃあまた⋯ 地球で」
通信を切り、アメリアスはシエラの方を見る。
シエラはちょうど作業を終え、アメリアスの方へ振り向く。
「ヒツギさんの位置、捕捉しました。後はアメリアスさん⋯ お願いします!」
「はい! 任せといてください!!」
アメリアスは振り返り、テレポーターへと駆け出した。
「Goodbye world!」
さようなら、世界。