ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
自分でも思ってた以上に不定期更新になってしまっています。
生暖かい目で待っていただけると幸いです。
A.P241:3/29 10:20
惑星リリーパ:地下坑道
「⋯⋯⋯ あ」
視界が戻る。
「⋯⋯ ぎゃっ!」
戻った瞬間、アメリアスは地面に叩きつけられていた。
「いったた⋯ 」
頭をさすりながら起き上がる。
少し離れた所で、ビッグヴァーダーの青いレーザーが光っている。
「かわせた⋯ ?」
どうやら、何かに押された事で回避できたようだ。
心当たりは、先ほど自身の体勢を崩した爆風。
否、それにしては、ビッグヴァーダーの攻撃範囲外まで吹っ飛んでいる⋯
「マスター、意外と重たい⋯⋯ 」
戸惑っていたアメリアスの耳に、ぼそっとした声が聞こえてきた。
「え⋯ ?」
顔を上げると、小さなサポートパートナー⋯ リオが立っている
「り⋯ リオ!!?」
「大丈夫、マスター⋯⋯ ?」
小さく首をかしげるリオ。
着弾の直前、現れたリオが、アメリアスをつかんで放り投げた様だ。
「どうしてここに⋯ あ!」
思い出す。
探索前に、ここに発生するエネミーの部品を収集する依頼を受け、リオに手伝いをお願いしていた。
「でもなんでこんなとこまで⋯ ?」
「ん⋯ それは後で⋯⋯⋯ 」
リオは振り返り、自身の得物⋯ デュアルブレード「ニレンオロチ」を握りしめる。
気づけば、ビッグヴァーダーはこちらへ回頭していた。
ともあれ、今すべき事は一つ。
「⋯ わかった。じゃあ行こっか、リオ!」
「⋯ 極めて了解!!」
展開する主砲。
今度こそ敵対する存在を撃滅せんと、ビッグヴァーダーが動き出す。
放たれるのは必殺の光条、しかし、その僅かな一瞬で、
「「⋯⋯⋯ っ!!」」
2人は地を蹴り、横合いへと飛び出す。
地を焼くレーザーを凌ぎ、次に合間見えるのは艦体側面。三門の大型機銃と、ロケット砲。
その1発1発が、矮躯を砕くには十分すぎる一撃を持っている。
「順番に片付けるよ!」
接近し、ジェットブーツをブーストさせる。
放つのは、
「ストライクガスト!!」
瞬間的なブーストの乗ったブーツが、機銃を蹴り上げる。
数回転の蹴撃は、機銃を容易く砕いた。
「次⋯ !」
「! マスター!」
ロケット砲に狙いを定めたアメリアスに、リオの声が突き刺さる。
ビッグヴァーダー後部、艦橋に備わった多連装ミサイルポッドから、誘導ミサイルが発射される。
その数⋯ 72発。
「「うわあああああああああっ!!!」」
ただの絨毯爆撃ではない。その全てが、2人を狙って降り注ぐ⋯ !
「こんのぉぉぉぉ!!!」
アメリアスはロケット砲を蹴り、デッキへ飛び上がった。
アメリアスへと飛ぶ数門のミサイルは、風のように駆け抜ける彼女の後方へ、虚しく着弾する。
ミサイルポッドのサイドがせり出し、ミサイルを再装填する。
アメリアスは多段火炎放射器を駆け上がり、ミサイルポッドに迫った。
「モーメントゲイルっ!」
なおも迫るミサイルをかわしながら、高速の蹴撃を繰り返す。
機動性を武器に、回避と攻撃を両立させた、アメリアスの立ち回り。
かつてバウンサー創設者であるカトリは、ジェットブーツを「足を振り回して戦うはしたない武器」と評していた。
しかし、アメリアスはそれに意を唱える。
ゼロレンジに肉薄し、相手を翻弄しながら攻撃を叩き込む、近接格闘武器。
その中でも「避け」に特化したジェットブーツのスタイルを、アメリアスは至高と信じていた。
「⋯ っ!」
左側ミサイルポッドの完全停止と同時に、ミサイルをかわし一度地面へ着地。
すると反対側から、連続して爆風が上がる。
リオの手により、ロケット砲と機銃が瞬時に破壊されているのだ。
爆風から飛び出し、リオはそのままビッグヴァーダーの正面に移る。
再び展開される、四連装主砲。
しかしリオは、青く光る砲門へと突進する。
そして、レーザーが解き放たれる、まさに直前。
「ケストレルランページ⋯⋯⋯ !!」
無数のフォトンブレードが、二門の主砲を同時に叩き斬った。
⋯ 無論、主砲だってみすみす破壊されるような柔な作りでは無い。むしろ耐久性で言えば、ロケット砲以上だろう。
それが、フォトンアーツ1発で破壊されたのだ。
(⋯ 相変わらず強烈だね、リオ)
アメリアスは左舷のミサイルポッドに飛び移りながら、自身のサポートパートナーの猛攻に感嘆していた。
リオの操るデュアルブレード「ニレンオロチ」。
とある刀匠によって生み出されたこの刀剣は、バウンサーの得意とする「属性特攻」、「弱点特攻」の内、「弱点特攻」に特化している。
即ち。
ビッグヴァーダーのような破壊部位の多い相手は、リオにとっては格好の鴨なのだ。
さらに言えば、それだけでは無い。
リオの周囲には、攻撃に会わせ、風の刃が舞っている。
リオのサブクラスは、近接法撃職「テクター」。
彼女の風に特化した技能は、支援テクニック「ザンバース」と共に、リオの刃をさらに鋭くする。
恐らく今⋯ 彼女の攻撃力は、完全にアメリアスを凌駕している!
「なら⋯ 私もっ!!」
アメリアスの纏う
ジェットブーツの持つ属性制御を最大限に発揮した「属性特攻」。
相性的な攻撃力ではリオには及ばないものの、機甲の王を少しづつ追い詰めていく。
ミサイルポッドを全て破壊し、アメリアスはデッキに着地した。
そしてリオもデッキ下の火器を壊しきり、デッキへ飛び上がる。
そして⋯ 外堀を潰されたビッグヴァーダーは、本丸を起動させた。
「来る⋯ !」
クレーンに吊られた艦橋が、折り畳まれたマニピュレーターを展開する。
ミサイルランチャー、2連装機銃、そして大型レーザー砲を備えた、クレーンドロイド。
それが艦橋の正体であり、この巨大戦艦を制御する核だ。
ドロイドは容赦無く、マニピュレーターを振り回す。
「リオ! わかってるよね!!」「うん!」
2人は跳躍し、マニピュレーターの上へ⋯ 着地。
それを踏み台にして、ドロイドの肩へと飛び上がる。
2人の狙いは、肩部ミサイルランチャー。
先程から度々厄介な爆撃をさりげなく繰り返しており、アメリアスを一度ミサイルポッドから引き離したのも、実際はこちらのミサイル。
ドロイド上部は死角になりやすく、ビッグヴァーダー戦において盲点になりがちな武装だ。
「砕けろっての!」
しかし、ここに気付けるか否かが、ビッグヴァーダー撃破に大きく関わってくる。
銃火器である以上、機銃とレーザー砲の軌道は直線。
実の所、ビッグヴァーダーの武装のうち、広範囲を自由に狙えるのはミサイル類のみなのだ。
自然、ここを破壊してしまえば、上部ドロイドの攻撃は大幅に回避し易くなる。
「よっし壊した!」
最も厄介な攻撃を封じ、アメリアスは会心の笑みで着地する。
飛んできた機銃を容易く回避し、マニピュレーターの接合部へと駆け出した⋯ その時。
「マスター!!!」
リオが悲鳴をあげる。
何事かとアメリアスが振り向いた瞬間、そこへミサイルが着弾した。
「きゃあああああっ!!!」
大きく吹き飛ばされ、デッキから叩き落される。
なぜ、破壊したはずのミサイルポッドが動いているのか。
アメリアスが辛うじて目を開けると、ミサイルポッドの横を浮遊する黄色い物体が目に入る。
「あれって⋯ !」
ビッグヴァーダー搭載、応急修理用ビット「ギルナッチ・コア」。
その小さな存在の忘却は、完全にアメリアスの迂闊だった。
「ギルナッチ・コアが出てる!壊して!」
「了解⋯⋯⋯ !」
主の命を受け、リオはその手の剣の名の通り飛翔する。
アメリアスはすぐに自身に治癒テクニックをかけ、再びデッキへと飛び上がった。
「こいつ⋯ ! 絶対後悔させてやる!」
⋯ 機甲種に「後悔」の概念があるかは、ともかく。
ドロイドの前へ躍り出たアメリアスに向けて、胸部主砲が展開される。
しかしそれこそが、アメリアスの狙いだった。
「そこだあああああああああっ!!!」
レーザー発射までの時間で、アメリアスは主砲の真上へ滑り込む。
そこにあるのは、ビッグヴァーダーのメインコア。
そう。この機甲の王は、最大の攻撃の瞬間、同時に最大の弱点を晒すのだ。
「ヴィント⋯ ジーカー!!」
ジェットブーツ最大の攻撃が、コアへ突き刺さる。
ドロイドは怯み、アメリアスから後退し、機銃を乱射する。
それを回避したところで、リオが隣に着地した。
「破壊、終わった⋯⋯⋯ !」
「ありがと! こっちも終わらせるよ!!」
ヴィントジーカーの一撃が響き、ビッグヴァーダーの動きは鈍い。
ドロイドがマニピュレーターを振り回すが、2人はそれを回避、関節接合部に肉薄する。
「グランヴェイヴ!!」
「ディスパースシュライク!!」
接合部のユニットが、少しづつ破壊されていく。
するとドロイドは大きく回頭し、デッキ奥に横向きになった状態で、主砲を展開した。
「来るよ!!」
主砲が巨大なレーザーを発射し、そのままドロイドが手前側へと迫って来る。
デッキ上を薙ぎ払うレーザー。これこそが、ビッグヴァーダーの最後の切り札。
リオはすかさず、フォトンアーツで上空へ退避する。
しかしアメリアスは、その場を動くことなく、ドロイドを見据える。
「マスター⋯⋯⋯ !」
リオは叫びかけて、思い出した。
自分のマスターは、こと身かわしに関しては、他の追随を許さないということを。
「⋯ はっ!!」
アメリアスは小さく飛び上がり、レーザーをギリギリで回避。そのまま展開されたコアへ突進する。
「どおおおおおおりゃああああああ!!!」
大技の直後で動けないドロイドへ、怒涛の連撃が放たれていく。
「リオ!!」
「うん⋯ !」
最早勝負は決した。
アメリアスのジェットブーツが蒼雷を解き放ち、リオのデュアルブレードが煌めく。
「ヴィント⋯ジーカァァァ!!!」
「ディストラクト・ウイング!!」
叩き込まれた最後の一撃は、ビッグヴァーダーのコアを打ち砕いた。
「やった⋯⋯ うわ」
アメリアスはすぐにリオをひっ掴み、デッキから飛び降りる。
直後走るアメリアスの後ろで、ビッグヴァーダーの巨軀が大爆発を起こした。
「はい、最後まで油断しないこと」
「⋯⋯⋯ 経験者の目」
「⋯⋯⋯ 言ったなコラ」
生意気な従者の頭を、アメリアスはわしわしと乱暴に撫でる。
とはいえ、無事目的は果たした。
後は帰還して、報告するだけ。
アメリアスはテレパイプへ歩くついでに、横のリオに問いかける。
「⋯ 結局、あんたなんでこんなとこに来てたの?」
「⋯ 怪しいアークスと一緒に、マスターが歩いてたから⋯ 」
アメリアスはぱたっと、足を止めた。
「マスターが誰かと一緒にいる⋯ って思ったけど、そのアークス、検索にかからなくて⋯ マスター?」
「⋯ アイク君は?」
震える声で呟く。冷や汗が止まらない。
リオに助けてもらってから、戦闘中、あの少年の姿を一切見ていない。
そして⋯ 「出自不明のアークスは、忽然と姿を消す」。
しっかり把握していたはずの異常事態が、まさに今ここで発生した。
『アメリアスさん、聞こえますか?』
不意に、オペレーターからの通信が入った。
「は、はい⋯ 」
『処理に時間がかかってしまったのですが⋯ ハイ・キャスト、シエラの要請により、先ほど貴女を襲った爆発を解析しました』
シエラの要請という、爆発の解析。
向こうは、何か勘付いたのだろうか。
「えっと⋯⋯⋯ え?」
送られたデータは、アメリアスに追い打ちをかけるものだった。
『フォイエ系テクニック⋯ 恐らくはイル・フォイエによる爆発の余波⋯ そう、断定しました』
フォトンによる攻撃は、アークスには通じない。
しかし、テクニックによる事象制御の余波⋯ 物理法則となって発生するものに関しては、当然その限りではない。
さらに言えば、イル・フォイエは爆発の威力は大きいが、弱点でもないビッグヴァーダーの開幕で使うことなど考え難い。
そして⋯ アイクはビッグヴァーダーに邂逅した直後、姿を消した。
つまり、告げられた真実が意味するものは。
「そんな、馬鹿なこと⋯ 」
アメリアスは思わず、しゃがみこんだ。
恐怖が全身を覆い、立っていられなかった。
考えられるはずもなかった。
自分と同じアークスが、わざと回避を妨害し、レーザーの軌道上に自分を釘付けにした、など。
A.D2028:3/29 10:20
地球:天星学院高校
「全くバカ兄貴め⋯ !」
ヒツギは早足で、生徒会室へ向かっていた。
エンガに絡まれたせいで、完全に遅刻。恐らくコオリも待っているだろう。
「コオリごめーん! ちょっと兄さんに捕まって遅くなっちゃったー!」
いつも通り、ヒツギはドアを開ける。
しかし、聞こえてきた返答は、コオリではなく。
「おや⋯ 丁度良いところに」
生徒会室の反対側からこちらを見る、サングラスの青年のものだった。
「⋯ !? あんたは⋯ ! 昨日の変態社長!」
「酷い覚え方してるな君!」
意外にもその認識がこたえたのか、青年⋯ ハギトは驚いてこちらを見る。
しかし、驚いているのはヒツギも同じ。
なぜ先日の変態社長⋯ もといハギトが、この天星学園高校の生徒会室にいるのか。
しかしその疑問は、すぐに立ち消える事になった。
「ひ⋯ ヒツギぢゃあ〜ん!」
唐突にヒツギの元へと、少女が駆け寄る。
ヒツギは気づいていなかったが、近くの椅子に座っていたコオリだった。
「こ、コオリ⋯ !?」
「よかった、よかった⋯ !!」
なんの躊躇もなく、ヒツギへと抱きつくコオリ。
「よかった⋯ ヒツギちゃん! 来てくれてよかった⋯ ! 私、信じてたよ!!」
安堵しきった声音で、コオリは泣きながらまくし立てる。
「こ、コオリ⋯ !? 大げさじゃない⋯ ?」
状況が飲み込めないまま、ヒツギは友人を宥める。
確かに普段いつも自分の側にいるコオリだが、ここまで大げさなリアクションを見せた事など無い。
「はっ⋯ まさか!!」
ただでさえコオリは男嫌い。そして、今自分達以外にここにいる人間。
ヒツギはハギトを睨みつけた。
「何もしてない、私は何もしていないよ」
余裕ぶった表情で告げるハギト。
「そうだな⋯ 私はここの卒業生。ついでに言えば、五年前の生徒会長だ」
「生徒会長⋯ ってことは、マザー・クラスタの事も⋯ !?」
「ここの生徒会メンバーは、例外なくマザー・クラスタに所属する⋯ 私だってそうだったさ」
ハギトはため息を吐いた。
「全く⋯ 近くに寄ったついでに先輩風でも吹かせて見ようかな、と思っただけなんだが⋯ まさかここまで踏んだり蹴ったりとはね」
それだけ言うと、ハギトは入り口へ歩いていく。
当惑するヒツギをよそに、ハギトは入り口の引き戸を開け、
「昨日のアプリの高校生モニターの事とか話したかったけど⋯ また今度にするよ。それじゃあね、八坂火継さん」
そう言い残し、生徒会室を出て行った。
「⋯ ほらコオリ。あの変態出てったから、もう大丈夫だよ」
残されたヒツギは、優しくコオリの肩を叩く。
しかしコオリは⋯ なんの反応も示さない。
「⋯ コオリ? 本当に大丈夫?」
やはりあの変態、何かしていったのでは無いか。
いくら変わったところのあるコオリでも、不自然なほどの怯えようだ。
と、ヒツギが流石に心配になった時。
コオリが不意に手を下ろし、後ろを向いた。
「⋯ ヒツギちゃん。マザー・クラスタに⋯ マザーに誘われた時のこと、覚えてる?」
背中越しに問いかけるコオリ。
「私は今でも忘れないよ。絶対に⋯ 忘れる事はない」
問いかけは、やがて独白へ変わる。
「私は友達もいなくて、ひとりぼっちだった⋯ そんな時、マザーが導いてくれた⋯ マザー・クラスタに」
コオリは振り向いて、ヒツギを見た。
「そして、ヒツギちゃんに会えた。マザーが、会わせてくれた」
ヒツギをじっと見つめる、コオリの桜色の瞳。
「マザーの言う通りにしていたから⋯ マザーのおかげでヒツギちゃんに⋯ 初めての友達に会えて、それで、それで⋯ !」
「コオリ⋯ 」
言葉が、口から出てこない。
何か、目の前のコオリが、自分では無い何かを見ているようで⋯
「ヒツギちゃん、どこにも行かないでね⋯ ! ヒツギちゃんの居場所はここだよ⋯ !」
懇願するコオリ。
「マザーの言う通りにしていれば絶対に大丈夫、みんな幸せになれるから⋯ ! だから⋯ どこにも、行っちゃやだからね」
その、震えた声を聞いた瞬間。
「⋯⋯⋯ !?」
ぞくり、と。
今まで感じたことの無いような強烈な悪寒が、ヒツギの背中を撫でた。
(今の、は⋯ !?)
力が抜け、だらりと腕が下がる。
「あ、う、うん⋯ 」
ヒツギには、その声を絞り出すのが精一杯だった。
「アンチクロロベンゼン」
「彼ら」は反発する。
「彼ら」は立ち向かう。