ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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さて、頑張って更新していきましょう。


SB2-5「パラジクロロベンゼン」

A.P241:3/29 10:00

惑星リリーパ:地下坑道

 

「ふぅ⋯ 今日は機甲種が多いなぁ⋯ 」

私は1人、リリーパの地下坑道にいた。

イオやアフィンは別の任務に行っているし、どういうわけかステラは昨日から姿が見えないので、定期的なデータ収集依頼(デイリーオーダー)も兼ねて、1人探索に来ている。

 

「ステラの奴、何やってんだろ⋯ 」

連絡がつかず、クエストカウンターで問い合わせたら、情報部からの依頼で数日いないということだった。

「だりゃあっ! ⋯ 何だかなぁ⋯ 」

近くにいたスパルザイルを吹っ飛ばし、薄暗い地下坑道の真ん中で、ため息をつく。

 

別に情報部を悪く言うつもりは無いのだけれど⋯ それにしたって頭があの陰険メガネ(カスラ)だ。

「そおいっ!! ⋯ 何事も無きゃいいけど」

ウロチョロしていたクラーダを粉砕しても、不安は消えなかった。

 

「さっさと探索終わらせちゃお⋯ こんなメンタルじゃ、いつもみたいに動けないだろうし⋯ 」

時折現れる機甲種やダーカーを倒しながら、奥地に設置されたベースキャンプへ向かう。

 

途中でギルナスに捕まったリリーパ族を助けながら、道のりの中ほどを越えた頃。

『B-2エリア、交戦中のアークスの反応があります』

不意に、オペレーターからの通信が聞こえて来た。

 

「劣勢ですか?」

『周囲に多数の機甲種を確認。救援を推奨します』

「了解しました!」

運がいい。包囲状態だと、座標特定さえ出来ないことが多い。

 

私は急いで、通信にあった座標へ走る。

「いた⋯ !」

そこでは、1人のニューマンの少年が、3体のギルナスに囲まれていた。

少年はデュアルブレードで応戦しているが、慣れていないのか、明らかに筋が悪い。

 

「援護します!!」

叫んで、一気に突進する。

「⋯ !?」

少年が驚いて振り向くと同時に、ジェットブーツがギルナスの接合コアに突き刺さった。

 

「コアの破壊をお願いします!」

「は、はい!」

倒れたギルナスが、上半身、下半身、接合コアに分離する。

コアの完全破壊を少年に任せ、私は少年と反対側に飛び出した。

 

「磁界干渉・強制誘引⋯ ! ゾンディール!!」

特殊な電磁場が、残りのギルナスを私へ引き寄せる。

「はああああああっ!!」

私はその中央で、自身を帯電させる!

 

「ナ・ゾンデ!!」

ゾンディールの中に電撃が迸り、ギルナスが一斉に爆発した。

「そっちは!?」

一瞬、少年に目を移す、

「は、はい!」

少年は一体目のギルナス・コアを仕留めたようで、離れたところで立っている。

 

私はすぐにギルナスに目を戻して、

「せいやぁぁっ!!!」

ギルナス・コアが飛び回る前に、速攻で追いつき、モーメントゲイルで撃ち落とした。

 

「よっし、全滅!!」

着地して、少年へ向き直る。

背格好からして、私より少し年下だろうか。

黒髪の少年は、不安げに黒い瞳を揺らしていた。

 

「大丈夫ですか?」

「は、はい⋯ ありがとうございます」

見れば少年が背負っているのは、大型飛翔剣「アデレード」。

敵が強力なこの辺りには、やや力不足の装備だった。

 

「あ、えっと⋯ 」

⋯ 言葉が出てこない。

緊急時はともかく、初対面の人の前では、ついつい黙ってしまう⋯

「わ、私、アメリアスっていいます⋯ 貴方は?」

「⋯ アイク、です。すいません、探索を邪魔するような事を⋯ 」

「いえいえ、助けられてよかった⋯ あそうだ」

 

ふと思いつき、オペレーターに繋げる。

「ブリギッタさん、今このエリアを探索しているパーティーは幾つですか?」

「アメリアスさん含め2つ⋯ アメリアスさんと、アイクさんのソロパーティーのみです」

「わかりました。ありがとうございます」

通信を切って、アイクさんに向き直る。

 

「2人で、探索を続けませんか? 1人じゃちょっぴり不安で⋯ 」

「あ⋯ 俺でよろしければ⋯ 」

アイクさんは、遠慮がちながらも頷いてくれた。

 

「じゃあ決まりですね、行きましょう!」

「は、はい!!」

強さとか関係なく、仲間がいてくれるのはとてもありがたい。

アイクさんと一緒に、私は再び、奥へと進んでいった。

 

A.D2028:3/29 10:00

地球:天星学院高校学生寮

 

「じゃあアル、行ってくるわね」

「いってらっしゃ〜い」

 

アルを残し、ヒツギは部屋を出た。

「今日も今日とて生徒会の雑務〜っと⋯ しっかし、入学式前って本当に忙しいのね⋯ 」

廊下を歩きながら、1人ごちる。

やはりこういう忙しさは、やってみなければわからないものだ。

 

「昨日はPSO2も出来なかったし、今日こそログインしよ⋯ 」

突き当たりを曲がろうとした、その時。

「なんだ、まだあんなので遊んでんのか、ヒツギ」

 

廊下の向こうから、男性の声が聞こえてきた。

「げ⋯ この声は⋯ 」

立ち止まるヒツギ。

現れたのは、ヒツギと同じ髪色の少年だった。

 

「エンガ⋯ 兄さん⋯ 」

「心底嫌そうな顔をしてくれて兄さんは嬉しいぞー、妹よ」

「こ、こんな所で何してんのよ! ここ女子寮! 男子禁制!!」

「アーホ、親族なら面会ぐらいは問題無いっての」

 

挙動不審な妹に、エンガはさも愉快そうな顔を見せる。

「ぐっ⋯ じゃああたしに何の用よ」

「別にお前に用はねーよ。用があるのはお前の部屋だ」

ヒツギの問いに、エンガはあっさりとそう答えた。

 

「え!? あ、あたしの部屋って⋯ !?」

「事務室に許可は取ってる。後は本人の同意だけだ」

「そうじゃなくて! べ、別に何も変わった所は無いわよ⋯ !?」

 

まずい。

例えエンガにだろうと、アルの存在がバレる訳には行かない。

「八坂家の家長としては、出来の悪い妹が清く正しく健やかに過ごしているか不安でなー」

 

エンガはそう言って、背の低い妹を見下ろす。

「⋯ つっても、たいして成長していないのは見りゃわかるが」

「う、うっさい! 余計なお世話よ⋯ って! 子供みたいに頭撫でるな!!」

 

ヒツギは怒って、エンガの手を振り払った。

「ほう⋯ じゃあ話を戻すか⋯ ヒツギ、お前の部屋には()()()何も無いんだろうな?」

「なっ⋯ だから、なんでそんな事⋯ 」

「質問してるのはこっち。本当に何も無いんだな?」

 

ヒツギの言葉を遮って、エンガは繰り返す。

「⋯⋯⋯ 」

エンガの目は本気だ。絶対に、妹の成長がどうのなどという理由ではない。

 

「当たり⋯ 前でしょ」

(どういうこと⋯ !? まさか、外にいる時にバレたとか⋯ )

辛うじて言い返す。

「そうか、ならいい」

するとエンガは急に態度を変え、来た道を戻りだした。

 

「ちょっと⋯ 兄さん! あたしの質問に答えてよ! なんでそんな事⋯ !」

「⋯ そういや聞いたぜ、ヒツギ。お前、次期生徒会長とかいって持て(はや)されてるらしいな」

振り返り、エンガがヒツギを見る。

⋯ どこか、軽蔑したような目で。

 

「優秀なのはいい事だ。力があるのもいい事だろう⋯ だからって何でもかんでも首突っ込んでると、ろくな事にならねぇぞ」

それだけ言って、エンガはまた歩き出す。

「ど、どういう意味よ!?」

「お前の質問に答えただけだ。後はそのちっこい頭で考えてみろ、次期生徒会長ー」

 

そのまま、エンガは行ってしまった。

「⋯ 何よ」

残されたヒツギは、1人呟く。

「優秀で、生徒会長になって、力を振るって⋯ そして、マザーの力になる」

近くの窓から、青空を眺める。

「それの何が悪いってのよ⋯ バカ兄貴」

天を衝くエスカ・タワーは、今日も変わらずそびえ立っていた。

 

A.P241:3/29 10:17

惑星リリーパ:地下坑道

 

「到着、っと⋯ 」

地下坑道の最深部へ向かうためのテレポーターが設置された、ベースキャンプ。

ここから転送される超巨大格納庫に、この地下坑道の主がいる。

 

私は振り向いて、アイク君に尋ねた。

「どう、行けそう?」

「は、はい。問題ないです」

少し緊張しつつも、アイク君は答える。

ちなみに彼、ロッティやルベルトと同じ、イオの後輩に当たる世代のアークスらしい。

 

「じゃあ、支援テクかけたら起動して」

「はい!!」

2人でテレポーターに乗り、私はテクニックをチャージする。

「シフタ、デバンド、お願いっ!!」

「転送します!」

2色のフォトンが輝くと同時に、テレポーターが起動した。

 

A.P241:3/29 10:18

惑星リリーパ:地下坑道

 

地下坑道深部、超巨大格納庫。

なぜ設けられたのかわからない、本当に広大なスペースに、それは鎮座していた。

 

「ビッグヴァーダー⋯ !」

地上戦艦の如き巨軀に、無数の砲門を備えた、超巨大機甲種「ビッグヴァーダー」。

まだこちらを捕捉していない様だが、おそらくすぐに起動するだろう。

 

私はアイク君の方を向いて、

「まずは一気に前進して、主砲をやり過ごしたら左右に散開。私は右に行くね」

「⋯ はい!!」

アイク君が頷いた、その時。

 

ビッグヴァーダーが、動いた。

「⋯ っ!」

格納された火器が展開され、背面のミサイルポッドに留まっていた鳥が飛び去って行く。

そして⋯ 正面のカバーが開き、四門の主砲が展開された。

 

「突撃っ!!」

叫んで、全速力で走り出す。

同時に青いレーザーが、私達の横を掠めていく。

⋯ この1発目は威嚇射撃。直進すれば当たることは無い。

 

私はアイク君へと叫ぶ。

「2発目の前に横へ逃げて!」

そう、恐ろしいのは、薙ぎ払いの2発目。

中途半端な回避だと狙い撃ちされるから、グランヴェイヴで横合いへ⋯ !

 

「⋯ っ!?」

飛び出そうとした、その瞬間。

「きゃあっ!」

爆風が、私の体を吹き飛ばした。

 

「何で⋯ っ!」

私が起き上がると同時に、2発目が放たれる⋯ !

「嘘でし⋯ !!」

視界が光に埋め尽くされる。

私の叫びは、薙ぎ払われたレーザーに掻き消えた。




「パラジクロロベンゼン」
円環が動き出す。邪魔な虫を払うために。

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