ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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諸事情により、次回の投稿はかなり遅くなります。
目星がつけば活動報告に載せようと思っています。
2/12:活動報告にも載せましたが、来週次話を投稿します。


SB2-3「十六夜シーイング」

A.P241 3/26 21:30

アークスシップ:アメリアスのマイルーム

 

「はぁ⋯ 」

ぽつんと、ため息が漏れた。

無事『ダークファルス・ルーサー』を討伐したはいいものの、リンドブルムを壊して⋯ というか完全に爆発四散させてしまった件で、アイテムラボのドゥドゥさんに怒られてしまった。

 

「何が『素晴らしく反省が無いな君は』ですかぁ⋯ 爆発四散は流石に初めてですよぉ⋯ 」

「壊しただけなら⋯ 十数回⋯ 」

「うえぇ、言わないでよ、リオぉ⋯ 」

小さな同室者にも指摘されてしまい、ぐたぁっとベッドに突っ伏す。

 

散々言われていることだが、私はマトイ程では無いにしても、フォトン使役の出力が相当高い。

今まで使ってきたワイヤードランスやジェットブーツも、大概一度は壊してしまっている。

 

⋯ まあそれよりも、武器を荒く使いすぎなのだとは思うが。

「テンション上がると、ついつい思い切っちゃって⋯ 」

「徒手空拳じゃ⋯ 戦えないから⋯ 武器は大事」

「⋯ 何も言えない」

ころんと、ベッドの中で丸くなる。

「そろそろ寝るね。おやすみ⋯ 」

明かりを消して、目を閉じて、

 

(そういえば⋯ )

すっかり、忘れてしまっていた。

(ヒツギさん、元気かな⋯ )

 

A.D2028:3/26 22:00

地球:天星学院高校学生寮

 

「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

ヒツギはじっと、パソコンを見つめていた。

「お姉ちゃん? なんでまっ黒なの見てるの?」

「⋯ 気にしないで」

ハーフパンツとTシャツ姿のアルにそっけなく答え、突っ伏した状態で顔だけ上げる作業に戻る。

 

今日は生徒会へ顔を出さず、彼女はずっとアルの側にいた。

読み飽きた本を読んだり、パソコンをいじったりしたものの、ヒツギの心が晴れることは無かった。

「結局、どうすれば良いんだか⋯ 」

むくっと起き上がり、ため息をつく。

 

「ふあぁ⋯ 」

「ん、アル、眠いの?」

時計を見ると、午後10時を過ぎている。

「明日は学校行かないとだし⋯ かなり早いけど、寝ちゃおうかな」

デスクを離れ、ベッドに座る。

「ほらアル、寝るなら着替えなさい」

「はーい」

 

着替え終わったアルと、ベッドに入る。

「おやすみー」

「おやすみ、アル」

明かりを消して、目を閉じて、

 

(アメリアス、何してるんだろ⋯ って、何考えてんだ私は⋯ )

小さく首を振って、ヒツギはもそっと布団を引き上げた。

 

A.D2028:3/27 12:00

地球:天星学院高校

 

「ふ〜、今日の作業も終わりっと〜」

パソコンの前で、コオリはぐっと背伸びした。

「入学式前になると、生徒会の仕事も増えてきて大変だね、ヒツギちゃん」

「⋯ 」

 

「しかも私たちは寮生だから、重めの仕事どんどん任されて、もうてんてこ舞い⋯ 」

「⋯⋯ 」

 

「でもでも、こうやってヒツギちゃんと二人きりになれるから、そんなに悪くもない、かなぁ⋯ 」

「⋯⋯⋯ 」

 

「⋯ なんてねなんてね! 何言っちゃってるんだろ私! ね、ヒツギちゃん!」

「⋯⋯⋯⋯ 」

 

「⋯⋯ あれー ?」

返事がない。

ちらっとヒツギを見ると、憮然とした顔でパソコンを見つめている。

「ヒツギちゃん⋯ ?」

声をかけても、返事をする様子はない。

 

(PSO2は、ゲーム。マザーが、確かにそう言っていた)

周りを一切見ずに、ヒツギは考え込んでいた。

(だとしたら⋯ あたしが会ってきたのは、みんなまやかしなの?)

 

「ヒツギちゃーん?」

(全部まやかしだって言うのなら、アルはなんなの? こっちに来ているアルは何? 私を慕ってくれる、あの子はなんなの?)

生まれた疑念は、易々とは消えない。

 

「ヒーツーギーちゃーん?」

(ううん、それだけじゃない。あたしを心配してくれていたシエラさんも、アメリアスも⋯ )

思い出す、自分を助けてくれた少女の姿。

困惑と混乱で、正直顔はちゃんと覚えられていないものの、彼女の問いかけは、確かに心に残っていた。

 

『ヒツギさんは、彼が何であってほしいの?』

(いくらなんでも⋯ そんなことって有るの⋯ ?)

 

「もう! ヒツギちゃんってば!!!」

「うわァっ!! あ⋯ コオリ? どうしたの?」

慌てて振り向くと、コオリが心配そうにこっちを見ていた。

「どうしたのはこっちの台詞だよ⋯ 何度声かけても返事しないし、仕事も全然終わってないし⋯ 」

「⋯ ごめん」

 

⋯ 完全に、上の空になっていた。

「どうしたのヒツギちゃん? 最近、様子が変だよ? 何と言うか⋯ ヒツギちゃんらしくないよ⋯ 」

「らしくない⋯ か。そんなにらしくないかな、今のあたし」

「うん、うんうん!! 全然ヒツギちゃんっぽくない! ヒツギちゃんの皮を被った偽物みたいだよ!」

「⋯ そこまで言う?」

 

勢いよく頷いたコオリは、すくっと立ち上がる。

「私の知ってるヒツギちゃんは、そんなうじうじ悩んだりする人じゃないもん! 即断即決スパーンって動く人!」

 

ああ⋯ そうだ。

ヒツギは、思い出した。

 

「みんなを有無を言わさず引っ張って、結果示してどうだ見たことかー! って言ってのけて、周囲一同を唖然とさせちゃう人だよ!」

 

自分のことをよく知ってる人が、こんなに近くにいたじゃないか。

 

「⋯ それ、この間の部活動予算会議のこと?」

「ううん、新入生歓迎企画会議のこと!」

 

そうだった。

迷いなく突っ走って、誰よりも先に行って、みんなを引っ張っていく。

それが、八坂火継という少女のあり方だった。

 

「あっはは⋯ どっちでもいいけど⋯ それじゃああたし、唯の独裁者じゃん」

それにしたってかなり誇張されてる事を突っ込んでも、

「⋯ いいの。ヒツギちゃんは独裁者でもいいの。私はそうじゃないって理解してるし⋯ 私の側に、居てくれるから⋯ 」

本心からの声で、コオリは言う。

「コオリ⋯ 」

 

コオリはヒツギの手を取ると、

「だから、ヒツギちゃんは悩まないで。私、悩んでるヒツギちゃんなんて見たくない。今までみたいに⋯ もっともっと、振り回して欲しいな!」

満面の笑顔で、そう言った。

 

「⋯ ありがと、コオリ」

ヒツギはそっと、コオリの手に自分の手を重ねる。

「確かに、コオリの言う通りよ。考え込んで家に閉じこもってるなんて⋯ 全然、あたしらしくないよね!」

コオリの手をぎゅっと握り、ヒツギはすくっと立ち上がった。

 

「わわっ!?」

「よーっし! そうと決まれば気分転換! コオリ、明日出かけよう! アルも連れてぱーっと!」

「う⋯ うん!」

コオリは頷いて⋯ 気づいた。

 

「⋯ でもヒツギちゃん、コレ終わらせないと」

コオリが指差したのは、手付かずの作業が残った、ヒツギの使っているパソコン。

「⋯ っああ!? 考え事しててすっかり忘れてた!!」

ヒツギは慌てて、イスに座りなおした。

 

A.P241:3/27 15:00

惑星リリーパ:砂漠

 

砂塵の舞う、砂の惑星、リリーパ。

 

「ステラ! そっちに二本!」

「わかってる!!」

広い砂漠に、鋼色のジェットブーツと、青いデュアルブレードが舞う。

それを操るのは、二人の少女。

中心に蠢くのは、大顎を打ち鳴らし、周囲に数本の触手を生やした、中型のダーカー。

 

ステラとアメリアスの姉妹が追い詰めているのは、地中潜行を得意とする虫系ダーカー「グワナーダ」。

「これでも⋯ 喰らえっての!!」

ステラの斬撃が、地上に出た細い触手「グワナーダ・ビット」のコアを切り裂く。

「ラストっ!!」

アメリアスがビットのコアを砕くと、面食らったグワナーダがひっくり返った。

 

「うわ、これ狙えば良いんだよね!?」

「そういうこと! はああああああっ!!」

露わになった巨大なコアめがけ、ヴィントジーカーが放たれる。

「わ、私も!!」

ステラの周囲に、フォトンブレードが現れる。

「ケストレルランページ!!」

無数の乱舞がコアを切り刻み、グワナーダは沈黙した。

 

「よっし!」

「終わったね。うん、なかなかいい動きなんじゃない?」

駆け寄ってきたステラの頭を、ぽんぽんと撫でるアメリアス。

「むぅ⋯ それやめてよ。フィリアさんから聞いたけど、私が寝てる間もしょっちゅう撫でてたんでしょ?」

「だってさ⋯ ステラの頭の位置があまりにもちょうどよくて⋯ 」

 

確かにアメリアスは、ジェットブーツで浮遊している分、若干高い位置になっている。

「もう18なんだから、妹離れしないと」

「だが断る」

「即答!?」

アメリアスは着地すると、ふーっとため息をついた。

 

「だってステラ、まだまだ危なっかしいんだもん。一人前になるまでは、私が面倒見なきゃ」

「はあ⋯ 」

複雑な顔をするステラ。

ちょうど帰還準備が整ったようで、テレパイプが設置される。

 

「よし、帰ろっか」

「んー」

キャンプシップに移り、帰還の途につく。

アークスシップの港、スペースゲートが近づいてきたところで、ステラが不意に口を開いた。

 

「⋯ よし」

「? どうしたの、ステラ?」

ステラはアメリアスに向き合い、その顔を見据え、

「私、もっと頑張る。姉ちゃんに、絶対に追いついてやる!」

アメリアスは、呆気にとられてしまった。

「⋯ ほんっと、昔とは別人ね」

 

かすかに記憶に残る昔のステラは、もっと自分にべったりで、控えめな性格だった。

何年も言葉を交わせなかった妹は、思っていた以上に逞しくなっていた。

「まあ、それはあんたの努力次第だけど」

キャンプシップが、スペースゲートに停泊する。

 

アメリアスは出口の前で、ちらっと背後を見て、

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ ついてこれるの?」

「⋯⋯⋯ え?」

 

ステラが何か言う前に、アメリアスは出口に消える。

「⋯ あったり前じゃん!」

ステラは笑って、走り出した。




「十六夜シーイング」
見上げる空。二つの空。

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