ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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みんな大好き(?)アークスのおもちゃ。
今年になって二代目が登場しましたが、初代はどう思っているのでしょうね。


SB2-2.6「六兆年と一夜物語」

AP241:3/26 11:23

侵食マザーシップ【xion】

 

「はああああああっ!!」

繰り出された蹴撃が、なんとも言えない見た目をした、大型ダーカーに突き刺さる。

『アポス・ドリオス、沈黙しました!』

オペレーターの声が、対象の撃破を知らせた。

 

狡猾なる黒翼の尖兵⋯ 「アポス・ドリオス」

ダークファルス『敗者(ルーサー)』の門番とも言えるダーカーであり、旧マザーシップ内に大量に発生し、『敗者』への道を阻むと共に、その座標を撹乱させる。

現在、旧マザーシップ内に散らばったアークスが、その数を減らしているところだ。

 

「これでここは5体目か⋯ 」

消えていくアポス・ドリオスの亡骸を背に、私はため息を吐いた。

ダークファルス(親玉)直属というだけあり⋯ こいつ、大量にいるくせに、結構強い。

『か、撹乱座標はかなり減少しています。もう少しで、アポス・ドリオスのジャミングを突破可能です!』

「なるほど⋯ ありがとう、メリッタさん」

 

オペレーターとの短い通信の後、次の個体の出現を待つ、周囲のアークスを見る。

「2年前の襲撃はもっと苦戦したけど⋯ みんな、強くなってるんだね⋯ 」

ダークファルスによる襲撃は不定期に発生しており、私がいない間も、やはり何度かあったらしい。

さすがに繰り返すと慣れるのか、仲間の動きは私よりスムーズだった。

「⋯ 私の方が、足引っ張っちゃったかも」

「キャリアなら1年ちょっとのくせに、何言ってんのさ!」

 

不意に、誰かが私の肩を叩いた。

振り返ると、私と同じ「マギアセイヴァー」を着た、ニューマンの女性が立っている。

「あ、エコーさん。お久しぶりです」

エコーさんは私の先輩のアークス。復帰以来会ってなかったが、いつも明るくて、元気なところは、全く変わっていないようだ。

「久しぶり。どう、コンディションは?」

「問題ありません。思いっきり蹴っ飛ばすだけです」

「⋯ ま、アメリアスなら大丈夫か」

 

そう言って、エコーさんは頷いた。

「ゼノさんは別のエリアですか?」

「そう。あいつ一応六芒だから、今回の作戦指揮にもなってるでしょ? 多分、もっときついところにいると思う⋯ 」

心配気に答えるエコーさん。

 

六芒⋯ 「六芒均衡(ろくぼうきんこう)」というのは、アークスの用いる武器の原典(プロトタイプ)、「創世器」を操ることのできる者を指す。

 

六芒の一、現教導部司令、レギアス。

六芒の二、現総務部司令、マリア。

六芒の三、現情報部司令、カスラ。

六芒の四、現教導部次席、ゼノ。

六芒の五、現戦闘部次席、クラリスクレイス。

六芒の六、現戦闘部司令、ヒューイ。

この6人が、今の六芒均衡だ。

 

ちなみに奇数番は「三英雄」と呼ばれ、代々この名前を受け継ぐ襲名制。

偶数番(イーブンナンバー)」は⋯ 奇数番との「均衡」を保つ存在。

 

「まあ、ゼノなら大丈夫だと思うけど」

「そうですね⋯ よっし、少し奥行きましょうか」

駆け出そうとした、ちょうどその時。

『ダークファルス『敗者』の座標、特定に成功しました! 通知があったアークスは指定ポイントへ急行、残ったアークスは、アポス・ドリオスの殲滅を続けてください!!』

連絡と同時に、私の端末に突入ポイントが通知された。

 

「おっと⋯ すいません、行かないと⋯ 」

「あーあ、私は殲滅か⋯ 行ってらっしゃい」

「はい! あいつに目にもの見せてきます!」

小さく手を振って、私は突入ポイントへ走った。

 

旧マザーシップの中枢に繋がる、広場。

真っ先に敵性存在の排除を行なったため、ここにはアポス・ドリオスの姿はない。

黄色く光る扉が阻むそこに、私含め12人のアークスが集まっている。

見れば、先日助けていただいたオーザさんとニューマンのマールーさん、端っこにはアフィンの姿も見える。

「おっと⋯ 真打の登場だな」

少し遅れて来た私を、美麗なガンスラッシュを握った、ヒューマンの男性が迎えた。

 

「すいませんゼノさん、遅れてしまって⋯ 」

私が謝ると、男性⋯ ゼノさんは笑い飛ばして、

「はは、気にすんな。どうなんだ、調子は?」

「ばっちしです。いつでも行けます」

「よっし。みんな、準備はいいか!!」

周囲のアークスが、突入体勢を整える。

 

「こちらゼノ! こっちは行けるぞ!!」

『了解した! これより、ダークファルス・ルーサー撃退作戦、最終フェイズを開始する!!』

統括オペレーターの声とともに、私は歩き出した。

11人が道を開け、各々の武器を構える。

 

旧マザーシップ【xion】。

その中央には、海だけの、小さな惑星が格納されている。

シオンと呼ばれたその星は、過去から現在までの、あらゆる事象を演算する「知識」を備えていた。

そしてシオンは、自らが生んだ罪を清算するため、私達アークスを⋯ 星の守り手を生み出したのだ。

 

だが、ここにシオンはいない。

 

ある男の野望を止めるため、「彼女」は⋯ 否、「彼女たち」は、消滅を選んだ。

男の名は、ルーサー。

「全知」のダークファルス⋯ ダークファルス・ルーサーと化した、最後のフォトナー。

すなわち、シオンに知識を授かった、始まりの人間。その最後の存在。

 

「⋯⋯⋯ 」

私はそっと、黄色い扉に触れる。

シオンに与えられた力によって、ダーカーの力で模倣された最後の扉が、青く変わっていく。

「中和⋯ 完了! 行けます!!」

「よし! 全員、突入!!!」

12人のアークスが、一斉に扉の向こうへ飛び込んだ。

 

AP241:3/26 11:30

侵食マザーシップ【xion】:中枢

 

『貴様ハ⋯ 貴様ラハ⋯ !僕が⋯ 僕がこの手でェェェェェッ!!!!』

有るべきものの無くなった中枢に降り立つ、一対の翼。

フォルム自体はヒトガタといったところだが、脚部は見当たらず、中枢を浮遊している。

顔は完全に鳥類のそれだが、それよりも目につくのは、時計の様に丸くなった腹部。

有翼系ダーカーの特徴を有しながらも、その頭部には冠を戴き、豪奢なマントのようなものを背負ったその姿は⋯ 物語の、飾り立てた王のようだ。

 

「ルーサー⋯ っ!」

今目の前にいるダークファルスは、『深遠なる闇』によって複製された存在⋯ 3年前、シオンを奪おうとした、あの男ではない。

しかし私は、その翼に、その声に、怒りを抱かずにはいられなかった。

 

「貴方だけは⋯ 許さない!!」

ジェットブーツが、光を示す白に輝く。

先陣を切り、私は『敗者』の懐へ飛び込む。

「アメリアスに続けぇ!!」

アークスが一斉に拡散し、攻撃を開始する。

 

『アークス風情がァ!!』

『敗者』が上に向けた(クチバシ)から、大量の追尾弾が放たれる。

「左腕! 脆化成功した!」

「ありがとアフィン! 行けえええっ!!」

アフィンの声を背に、弾幕を掻い潜り、左腕へテクニックの鎌鼬を撃ち放つ。

「よっし、もたもたするなよ!!」

風のテクニックが吹き荒れ、弱点と化した左腕へ、攻撃が集中する。

だが『敗者』も、胴体に差した二振りの大剣を、装飾のついた長い腕で抜き放つ。

 

『フッ!!』

「「おわあああっ!!?」」

『敗者』が繰り出した大剣の斬撃が、数人のアークスを吹き飛ばす。

「舐めるなっ!!」

斬撃の死角から飛び出し、放った蹴りが、腕の装飾を叩き壊した。

「今だ!」

声をあげるゼノさん。

『敗者』の上腕が、コアと同じ赤に染まる。

 

「グランヴェイヴっ!!」

「からの⋯ 撃ち抜く!!」

バックターンした私の背後から、アフィンの銃撃が飛ぶ。

『見苦シい!!』

「⋯ 光よ!」

「畳み掛けるぞ!!」

マールーさんとオーザさんが、飛んで来る短剣を払い、上腕を攻める。

 

突き刺さる、光弾と光刃。

『未知ノ事象だと!?』

腕甲の再生を阻害された『敗者』の巨軀が、中枢からわずかに沈み込む。

そしてマントからずれた首元には⋯ 赤いコアが光っている!

「そこだあああっ!!!」

 

一気に肉薄し、ジェットブーツギアを解き放つ!

「ヴィントジーカー!」

渾身の蹴りが、『敗者』のコアを穿つ。

「ぶちかませ、サテライトカノン!!」

さらにアフィンの爆撃が、コアに降りかかる!

『余リ煩わせルナ、面倒だ!』

しかし、その程度では『敗者』は沈まない。

『壊れタ玩具(おもちゃ)に用ハ無い!』

『敗者』の姿が消える。

同時に、周囲が赤く染まっていく。

 

『『敗者』、加速しています!!』

瞬間。

上空に転移した『敗者』が、大剣を地面に突き刺した!

「うあっ!」

直撃こそしなかったものの、私は大きく吹き飛ばされる。

『敗者』は即座にテレポートし、連続で突き刺しを繰り出している。

「あーもうっ! いちいち痛いのよ!!」

起き上がり、回復薬を引っ張り出して⋯

 

「⋯ !」

全ての思考が停止した。

高速で転移した『敗者』が、私の真上で、剣を振り上げている!

「危ないっ!!」

一瞬体が浮き、私の体はすぐ横に投げ出された。

飛び出したオーザさんが、私を掴んで大剣をしのいだのだ。

「すいません!」

「こいつに油断は出来ない!」

 

その言葉を裏付けるように、高速の斬撃が繰り出される。

ダークファルス・ルーサーの権能⋯ 時間操作。

自身の時間を弄り、加減速による攻撃を繰り出してくる。

「おおっと!」

「大丈夫か、相棒!!」

慌ててかわす私の横で、アフィンが右腕にウィークバレットを撃ち込む。

 

『解ハ無駄に収束シテいるぞ!!』

振り下ろされる、二本の大剣。

全員が横合いへ回避する中、ゼノさんはギリギリの位置を駆け抜ける。

「負けるかよ! うおおおおおっ!!!」

遠距離職の援護を背に、がら空きの右腕へ突撃する。

 

『アークス風情ガ!!』

「クソっ⋯ !」

「させるかっての!」

放たれる光弾向けて、私は大きく飛び上がった。

そしてそのまま⋯ 体で光弾を受け止める!

「い⋯ 今ですっ!!」

生まれる隙。一気に、右腕に攻撃が集中する。

 

「痛った⋯ 」

「任せろ!!」

地面に落ちていく私の脇で、ゼノさんがガンスラッシュをかざす。

「響け戒剣⋯ ナナキ!!」

紫紺のガンスラッシュが、白く光り輝く。

これこそが創世器⋯ 六芒の四が継ぐ、戒剣ナナキ!!

 

「クライゼンシュラークっ!!」

叩き込まれる斬撃と銃撃。

「全段命中! へへっ!!」

再び沈み込む『敗者』。首元へ、全員が突っ込む。

「⋯ 大丈夫?」

「は、はい⋯ 」

マールーさんに回復してもらい、私も前線に出る。

 

「両腕壊した! 腹頼む!!」

「了解です! 行けえっ!!」

起き上がった『敗者』の腹部、時計の様な部位へ向かう。

「ザンバースっ!!」

飛来する十数本の短剣を突破し、大気の刃とともに腹を蹴りつけた。

 

『さて、片付ケノ時間だな!』

その声とともに、『敗者』の姿が消え、周囲が青く染まる。

『ダークファルス・ルーサー、減速しました!!』

再び現れる『敗者』。

『見え透イタ回答だな!!』

赤い円盤が飛来し、ゆっくりと戦場を這う。

 

減速状態の攻撃は、動作は遅いものの、喰らった時のダメージが凄まじい。

「ぎゃっ!!」

「大丈夫ですか!?」

円盤に引っかかり、吹き飛ばされたアークスに駆け寄り、回復テクニックをかける。

「回避に集中しろ! 喰らうと痛いぞ!!」

本体の斬撃をかわしたアフィンが、『敗者』の腹を捉えた。

「当たれぇっ!!」

突き刺さった弾丸から、ミラージュを付与されたフォトンが飛び散る!

 

『式ニゴミが!?』

ミラージュにより『敗者』の行動が阻害され⋯ がぱっと。

腹の時計のフタが外れ、中が剥き出しになった。

「「よっしゃあああああああ!!」」

そう、ここがダークファルス・ルーサーの、最大の弱点!

 

「ウィーク頼む!」

「壊すのは任せますよ!!」

「了解、突撃しますっ!!!」

弱点を遮るフタを完全に剥がすため、畳み掛ける。

「割れろ割れろ割れろ割れろおおおっ!!」

ウィークバレットの貼られた腹部中央へ、全力の蹴りを浴びせる。

 

しかし破壊には至らず、『敗者』は体勢を立て直し、遠く離れた位置へ転移した。

『深遠と崩壊ノ先に、全知ヘト至る道ガ有るうぅぅっ!!』

響くのは、怨嗟と執念に満ちた咆哮。

「マズイっ⋯ やばいのが来るぞ!!」

ゼノさんが叫ぶのと、ほぼ同時。

4本の大剣が飛来し、戦場を覆う様に配置された。

 

「これって⋯ !」

思い出す。

これこそが、ダークファルス・ルーサーが権能の、極致⋯!

『我ガ名はルーサー、全知そのものだ!!』

回転する4本の剣が、赤い光を放ち、

「⋯⋯⋯ !!」

 

世界が、時を止めた。




「六兆年と一夜物語」
一夜の夢が、悔恨を抉る。

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