ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
※今回みかんは出て来ません
SB2-1「ローリンガール」
A.D2028:3/25 19:00
地球:天星学院高校学生寮
「よし⋯ 」
ヒツギは、パソコンの前に座っていた。
目の前のパソコンには、PSO2のログイン画面。すでにパスワードも打ち込まれ、認証を行うだけの状態だ。
「行って、見るか⋯ !」
ちらっと、背後を振り返る。
布団の上で、すやすやとアルが眠っている。
(アル⋯ )
ヒツギは視線を戻し、エンターキーを叩く。
同時に青い光⋯ 可視化したエーテルが、ヒツギの体を包み込んだ。
AP241:5/25 19:00
アークスシップ:ゲートエリア
目を開けると、ヒツギの視界には、アークスシップの光景が広がっていた。
「よっし、ちゃんと入れた⋯ !」
自分の体を確認する。
赤毛をポニーテールに纏め、青いニットセーターを着た、自分の姿。
「体にも問題はないわね⋯ ん?」
再び、自分の体を確認する。
赤毛をポニーテールに纏め、青いニットセーターを着た、自分の姿。
「あれ⋯ ?」
三度、自分の体を確認する。
赤毛をポニーテールに纏め、青いニットセーターを着た、自分の⋯
「あれ⋯ あれぇ!!? これ、あたしの格好まんまじゃん! しかも裸足!!」
そう、PSO2でのアバターでなく、部屋にいた自分の姿そのものなのだ。
「さ、最初に作ったアバター体は!? アルそっくりのあたしは!!?」
考えて、行き着く先は、
「まさか⋯ あっちの体は、アルに持ってかれちゃったの⋯ !? だからって、どうしてあたしの姿で入れちゃうの⋯ !?」
考えれば考えるほど、混乱は募るばかり。
「あれ⋯ ヒツギちゃん?」
そんな時、聞き慣れた声が聞こえた。
ヒツギが振り向くと、そこには紫の戦闘服「エクエスティオー」を着た、青髪の少女が立っていた。
AP241:5/25 18:30
アークスシップ:ゲートエリア
「はぁ⋯ 」
ぽつんと、ため息が漏れる。
ゲートエリアの端っこの方、目立たない場所に、私は立っていた。
『⋯ やっぱり、私から連絡を入れて、艦橋で落ち合った方が良かったんじゃ⋯ 』
心配そうに通信を入れるシエラさん。
⋯ 思えば、忙しい半日だった。
レイと別れた後即行艦橋に向かい、シエラさんと緊急会議。
断片情報を、確認と同時に映像化し、お昼のヒツギさんの行動から、今夜また来る事を確認。
すかさずヨハンに通信を繋いで、ヒツギさんを発見次第艦橋に連絡するよう、情報部監視係への協力を取りつけた。
⋯ ここまでやる事も無いと思ったが、例の出自不明のアークスは、突然シップから消える事が報告されている。
それこそ、数日前のナベリウスでの、ヒツギさんの様に。
「あ〜あ」
何と無く、呟いていた。
「マトイがいれば、もっと面白いんだろうな〜」
脳裏に浮かぶのは、白髪の少女のとぼけた顔。
私の友人であり、もう1人の
私と同時に、ダーカー因子集中除去の為のコールドスリープに入ったはずなのだが⋯ 何故か、まだ起きていない。
「ワケありだから、しょうがないのかなぁ⋯ 」
おっと、物思いにふけっている場合ではない。
気を引き締め、その時を待つ。
「⋯ 」
静かに、時間が過ぎて行く。
(それにしても⋯ )
今朝、シエラさんはこう言っていた。
「やっぱり、変なんです⋯ 」
彼女が言うには、「別の世界に来ている」ということに、ヒツギが気づいていないのが、そもそもおかしいらしい。
「彼女達の『ログイン』のデータは、通常の通信とは一線を画しています⋯ インフラの中に潜入しているなんてレベルでは無いことは、一目瞭然です⋯ 」
そう、シエラさんはぼやいていた。
(確かに、データとか抜きで気づいてもいいと思うけど⋯ )
だが事実、彼女たちは騙されている。
「⋯ やっぱり、あれなのかな⋯ 」
断片情報の中に度々現れた、「マザー」と言う言葉。
彼女達「マザー・クラスタ」にとって、その存在はとても大きいのだろう。
「それにしても、
ため息に近い呟きが漏れる。
この言葉を聞くたびに、ちくりと、胸が痛んだ。
それは⋯ デザインベイビーである私に、家族と言う意味での母親はいないからだろう。
「⋯ お」
またうっかり、そんなことを考えていると、調査用端末から、ヨハンのチャットが来た。
『⋯ そうまでして、直接会いたいのかい? あの、ヒツギという人に?』
ヨハンのメッセージは、文面だけでも呆れが読み取れる。
『僕がネットワーク管理室長じゃなきゃ、こんな作戦まず無理だったよ⋯ 』
ヨハンにしては珍しく、愚痴っぽい内容だった。
多分、ここまでこぎつけるのに苦労したのだろう。
『はいはい、感謝してる感謝してる』
『⋯ まあ、力になれてよかった』
すぐに、会話が途切れる。
だけど私は、ちゃんと彼女に⋯ ヒツギさんに会いたかったのだ。
何故なら⋯
『⋯ っ! 通信来ました! ゲートエリアに、対象のIDを確認したそうです!』
シエラさんの声が、通信機に響く。
「⋯ こちらでも、視認しました」
ゲートエリアに突然現れた、赤毛の少女。
間違いない。あの時のヒツギさんだ。
「⋯ 行きます」
ゆっくりと、カウンターの方へ歩いて行く。
ヒツギさんは困惑しているのか、そわそわと周りを眺めている。
しかし⋯ なにか引っかかる様な⋯
『! アメリアスさん、止まって!!』
不意に突き刺さったシエラさんの声に、私は慌てて足を止める。
ヒツギさんが、見慣れない少女に話しかけられていた。
AP241:5/25 19:08
アークスシップ:ゲートエリア
「コオリ⋯ !」
目の前に現れた少女は、コオリのアバターだった。
服装と髪色、ちらほらと相違点はあるものの、雰囲気はコオリそのものだ。
「どうしたの? 新しいアバター? 現実そっくりの衣装なんて、珍しいね〜 」
いつも通りのテンションで、話しかけてくるコオリ。
「え、ええっと⋯ あの⋯ これは⋯ 」
口ごもるヒツギ。
一方その頃。
「だ、誰ですかあの子⋯ !」
アメリアスは、完全にタイミングを失っていた。
『名前は⋯ コオリさん、となってるね⋯ フレンドか何かかな?』
『他人事みたいに言うなぁ! あーもう、どーすれば⋯ !』
コオリという名前には、アメリアスにはがっつり心当たりがある。
確か、ヒツギの友人だ。
「これじゃあ近寄れない⋯ !」
アメリアスが歯噛みしていると、
「おお、君は確かコオリ君! どうだ、技能評価項目は進んでいるか?」
ふらっと現れた色黒のヒューマンが、コオリに話しかけた。
「オーザさんナイス!!」
先達が引き起こした幸運により、コオリの注意が逸れる。
その隙に、アメリアスは一気に、ヒツギの元へと飛び出す!
「ヒツギさんっ!」
伸ばした手は、しっかりと、
「⋯ うえっ!!?」
ヒツギの手を、掴んでいた。
「⋯ うえっ!!?」
突然右手を掴まれ、ヒツギはとっさに振り向いた。
右手を掴んでいたのは、見覚えのあるデューマンの少女。
「あんたは⋯ アメリアス⋯ !」
「ごめんね、いきなり⋯ どうしても、ちゃんと顔を見たくて⋯ 」
アメリアスはちらっと、コオリの方を見る。
オーザが、うまく注意を引いてくれている。
「⋯ ちょっと、来てくれないかな」
「⋯ わかった。こっちも聞きたい事があるの」
アメリアスの目を見て、ヒツギは頷いた。
コオリに悟られないよう、アメリアスはヒツギを浮かせる勢いで飛び出す。
「こっち⋯ !」
そのまま艦橋へ向かうカタパルトを踏み、飛び上がる。
「うわっ⋯ んむっ」
声を上げかけたヒツギの口を押さえ、ちらっと下を見て⋯ 気づいた。
オーザの傍ら、ニューマンの女性が、こちらを見ている。
(マールーさん⋯ まさか察して⋯ )
アメリアスは少し笑って、上階に着地した。
「よし⋯ 走って!」
「うん!」
艦橋直通のテレポーターに突っ込み、生体認証を開始する。
アメリアスのアクセス権を承認し、テレポーターが起動する。
直後2人の体は、フォトンの光に包まれた。
「ローリンガール」
少女は回る。現実と虚構の狭間で。