ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

11 / 71
自分の遅筆っぷりにやきもきする今日この頃。


SB1-7「東京テディベア」

A.D2028:3/24 10:00

地球::天星学院高校学生寮

 

「いやあああああああああああああッ!!?何、何なの!?この可愛い生き物はああああああっ!!?」

 

ヒツギの部屋に、コオリの咆哮が響き渡る。

「⋯ あんた、男苦手じゃ」

ヒツギは完全に意表をつかれ、固まっていた。

 

昨日ヒツギが伝えた、「会って欲しい人」というのは⋯ 勿論、アルのこと。

それで今日、彼女を招いたのだが⋯ ヒツギのTシャツを着たアルを見た途端、コオリはデレデレになってしまった。

 

「やだやだやーだー!! かーわーいーいーっ!! 金髪っ! 碧眼っ!! そしてダボ袖着こなし⋯ 奇跡だよおっ!!!」

 

ずいずいっと、アルに駆け寄るコオリ。

「このひと⋯ 怖い! お姉ちゃん、お姉ちゃん!!」

アルは完全にビビって、ヒツギの背中に隠れていた。

 

「へひひ⋯ そんな邪険にしないでよぉ⋯ ほら、おねーさんといいコトしようよぉ⋯ 何も悪いことはしないからさぁ⋯ 」

「⋯ 落ち着け」

 

だんだんと邪悪オーラを増していくコオリの肩を押さえ、ずいっと目の前に戻す。

「コオリ⋯ あんた男苦手って言ってなかった?」

「男の娘は別腹だよ、別腹!」

「⋯ あんた、音じゃわからない所で凄いこと言ったろ、今」

 

ヒツギはさっきので少しずれたニットセーターを直して、ため息を吐いた。

「それでヒツギちゃん、この子、どこからお持ち帰りしてきたの?」

「おもっ!? ⋯ 笑わずに聞いてよ?」

コオリを椅子に座らせ、自分はアルと一緒にベッドに腰掛ける。

 

昨日の出来事⋯ 主に彼のことを簡単に話すと、コオリは目を丸くして、

「PSO2の中から!? うーん⋯ 」

「にわかには信じがたい話だけど⋯ 状況的にそうとしか思えないし⋯ 」

「⋯ 別に疑ってないよ。私、ヒツギちゃんを疑ったことあった?」

 

そうは答えつつも、コオリは少し考え込んだ。

「でも、それが本当となると⋯ 」

「⋯ 」

「私でも、こんな可愛い子を連れて来れちゃうのかな?」

「⋯ 私は真面目な話をしてるの」

「ち、ちょっとしたお茶目だよー」

 

ヒツギに諌められ、コオリはわたわたと手を振る。

「でも⋯ ヒツギちゃんがこの子を連れて来ちゃったんなら、何か原因があるってことでしょ? 昨日の行動を振り返れば、何か見つかるんじゃないかな?」

「とは言ってもなぁ⋯ 」

 

ヒツギは想起する。

昨日のことは全てが想定外で、どこが原因かなんて判断のつきようがない。

「アルくんは、何か覚えてないの?」

本棚を眺めていたアルに声をかけても、アルは小さく首を振った。

 

「じゃあ⋯ 他の当事者に話を聞ければ⋯ 」

「他の当事者⋯ 」

思い出すのは、昨日、アルと同時にこちらへ飛び込んできた少女。

(アメリアスの事まで、説明できる気がしない⋯ ! むしろ誰かあたしに説明して⋯ !)

 

「へ⋯ っくしっ!!」

 

突然のくしゃみに、ヒツギは慌てて振り向く。

アルがぐすぐすと、鼻をこすっていた。

「そういえば⋯ どうしてあんな服装なの? あれじゃまだちょっと寒いよ⋯ 」

「う⋯ アルが着れそうなのが、あれぐらいしか無くて⋯ 」

 

ヒツギとしても、こんな小さな男の子の服は持っている筈もない。

「ふむふむ⋯ 取り敢えず、やる事が見つかったね」

「⋯ そうね。アル! あんたの服、買いに行こっか!」

アルはこくっと、頷いた。

 

A.D2028:3/24 11:25

地球:東京

 

「うーんと、こっちこっち⋯ 」

3人はてくてくと、東京の街を進む。

とりあえずアルには適当な服を着せ、コオリの案内で店へと向かう。

 

「コーデに1時間弱も掛けてどうすんのよ⋯ 」

「もう、ヒツギちゃんはもっとオシャレするべきだよ」

他愛もない会話を交わしつつ、道を歩いていると、

 

「お姉ちゃん、あれ⋯ 」

アルがこそっと、交差点の向こうを指差した。

ヒツギもよく行くカフェがある通りに、人だかりができている。

「なんか、あったのかな⋯ 」

 

しばらく見ていると、人だかりは勝手に解散して、いつもの景色に戻った。

「⋯ フラッシュモブでもしてたのかな?」

「ふらっしゅもぶ?」

「発想が飛躍しすぎよ。ほら、行こ」

若干抜けた推理に呆れつつ、店へと急ぐ。

 

交差点を渡ったところで、ふと気づいた。

「あれ⋯ あの通り、いっつも人が多いんだけどな⋯ 」

人だかりが消えて、見えた通りには、通行人は殆どいなかった。

 

A.D2028:3/24 11:22

地球:東京

 

金曜日の、昼下がり。

時間が時間なので、大人の姿は少ないものの、春休みの学校が多いこともあり、街は若者で賑わっている。

 

交差点を行く人々。

歩道を駆ける少年。

カフェや買い物で、休暇を謳歌する学生たち。

 

そんな、いつも通りの日々の中。

幻創はついに、人々に牙を剥いた。

 

「お、おい!! なんだあれ!?」

道行く人々の中に、どよめきが広がる。

突如、青い光の障壁が広がったのだ。

 

交差点近くを覆う、光の壁。

そして、そこから無数の光球が漏れ出す。

光球から現れたのは⋯ 青い、不気味な体軀を持った化け物。

 

「キャーーーー!!」

「に、逃げるんだぁ!!」

 

道行く人々に、混乱広がる。

この状況下において、彼らが、気づける筈がなかった。

この化け物が、一般市民にとって幻想の中の存在⋯ 「ゾンビ」に似た姿をしていた事を。

 

「逃げましょう、先輩!!」

「う、うん!!」

学生服を着た黒髪の少年が、傍の少女の手を取る。

 

「⋯ !」

しかし、少年が交差点に飛び出した頃には、すでに周辺は化け物に取り囲まれていた。

 

「くそッ⋯ !!」

振るわれたナイフを辛うじてかわし、2人は包囲をすり抜ける。

だが、それを嘲笑うかの如く、2人の前にさらに化け物が降ってくる。

 

「な⋯っ!?」

絶望的な状況に、少年が覚悟を決めた、その時⋯ !

 

「させるかあああああああああっ!!!!」

現れた影が、手に取る剣で、化け物を斬り裂いた!

 

「!?」

少年が顔を上げると、そこに立っていたのは1人の少女。

おそらく自分と同い年か、やや年下に見える顔は、逆にそうは感じないほどの鋭さで、化け物を見ている。

 

「君は⋯ !?」

少年が言った、その瞬間。

「きゃっ!」

「うわっ!」

2人の⋯ その場全員の体が何かに弾かれ、交差点あたりへと飛ばされる。

同時にこつぜんと、周囲から化け物が消えた。

 

「え⋯ !!?」

「どうなってんだ⋯ !?」

戸惑う人々。

しかしすぐに、全員が立ち上がり、またいつも通りに歩き出す。

まるで⋯ 何事もなかったように。

 

「今のって⋯ 」

少女は信じられないといった顔で、さっきまでいた路地を見る。

「⋯⋯⋯ 」

少年は何も言わずに、歩き出した。

 

A.D2028:3/24 11:30

地球:東京

 

『隔離領域、展開完了!!』

先行したステラの横に、ほかのメンバーが到着する。

「ナイス切り込みです、ステラさん!」

「がっつり見られたけど⋯ 大丈夫なのか? シエラさん?」

喜ぶフーリエの横で、アフィンがシエラに尋ねる。

 

『認識偽装で、ステラさんを見た記憶も排除される筈です。問題ありません』

「便利な物ね⋯ 」

アメリアスは呟いて、一歩前に出る。

リンドブルムに変わって装着したのは⋯ 黒翼のジェットブーツ、「ズィレンハイト」。

 

「さあ⋯ 行きましょうか!!」

ゾンビ系幻創種の群れめがけ、7人のアークスが疾走する!

 

「ふふふっ! 踊って下さいねえ!?」

リサの容赦ない弾幕が、次々と幻創種を撃ち抜いていく。

(腕は確かなんだけどなぁ⋯ )

フーリエも負けじと、ランチャーをぶっ放す。

 

「派手に爆発しちゃってください!」

「フーリエさん! 物騒物騒!!」

動作の緩慢なゾンビ系幻創種は、簡単に隙をつける。

全滅まで、さほど時間はかからなかった。

 

『第2波、来ますっ!』

続いて現れたのは、上部に大きなローターを持ったヘリコプター。

さらに地上には、鋼鉄の戦車が具現する。

 

「き、履帯(キャタピラ)!?」

予想外のローテクに驚くフーリエ。

長砲身の防人が、号砲を撃ち放つ。

「ここは⋯ おれの距離だ!!」

 

そこで前に出たのは、イオ。

手に握るのは⋯ 紫煙の抜剣!

終桜(サクラ)閃鉄華(エンド)!!」

 

研ぎ澄まされた一閃が、砲弾を斬り裂いた!

「よし、上手くいった⋯ !」

ガッツポーズするイオの後ろから、アメリアスが飛び出す。

 

「ヘリお願い!!」「任せろっ!!」

アメリアスへ機銃を向けるヘリコプターを、アフィンとイオが狙う。

「「墜ちろっ!!」」

一斉発射に爆散するヘリコプターをすり抜け、アメリアスの足が戦車を捉えた。

 

「古臭いのよっ、色々と!!」

放たれた蹴りが、主砲をへし折る。

すると戦車上部が展開し、火炎放射器が現れた。

「嘘っ!?」

 

周囲を焼き尽くさんと、戦車が砲門を振り回す。

アメリアスはすぐに上空へ回避すると、

「舐めた真似⋯ してくれるじゃない!!」

その叫びに呼応して、ズィレンハイトが輝く。

 

「ストライク⋯ ガストっ!!」

高速回転の後に放たれる、踵落とし。

アメリアス渾身の一撃が、砲門を叩き潰した。

 

「よっし!」

爆発する戦車の横に、そのまま着地⋯ と言うより、着弾する。

同時に、反対側からラットファムトの群れが駆け出した。

 

「僕に任せてくれ! さあ踊れ、カトリーヌ!!」

ピエトロの振るタクトに合わせ、カトリーヌが疾走する。

「アクション! ワンダスライサー!!」

 

高速の2連撃が、ラットファムトを斬り裂く。

「まずいっ! 何匹か逃して⋯ 」

「イル・グランツ!!」

生き残った個体にも、アメリアスの放った光弾が突き刺さった。

 

「ありがとう、マイフレンド!」

「まだ来ますよ、ピエトロさん!!」

さらに、クロウファムトとT-レックスが具現する。

 

「数が多い⋯ !」

「射撃職、クロウファムトを!! ステラ、ピエトロさん! 」

「了解だ!!」「いっくよー!!」

 

7人が、一斉に動き出す。

「対象⋯ 捕捉! ホーミングエミッション!!」

「うふふふっ! 全部撃ち墜としてしまいましょうねえ!!」

アフィンの放った誘導弾と、リサの射撃が、次々とクロウファムトを撃破する。

 

「援護するぞ! 3人とも!!」

イオの展開したサークルから放たれる、凶矢の旋風(ミリオンストーム)

無数の矢の合間から、アメリアス達はT-レックスへと駆ける。

 

「ワンダショック! ショータイム!!」

カトリーヌの咆哮とともに、閃光がT-レックスを止めた。

「助かります、ピエトロさん!!」

ステラは飛び上がり、飛翔剣をT-レックスに向ける。

 

「刺されっ!」

打ち出されたフォトンブレードが、頭に突き刺さる。

「これは⋯ 痛いよ!!」

ステラとフォトンブレードが舞い踊り、T-レックスの頭部を叩く。

トドメに放出した雨のようなブレードが、串刺しになったT-レックスを沈黙させた。

 

「こっち、終わったよ!!」

「なら、こっちもさっさと仕留めようか!」

アメリアスのジェットブーツが、淡い光を散らす。

 

するとT-レックスが、大きくその首を振り上げ⋯

「なっ⋯ !?」

「なんですか、あれ!!?」

もともと首のあった高さに、その骨格だけが現れていた。

 

「これが、幻創種の力だってのか⋯ !?」

骨の顎は、その口に光を束ねていく。

「⋯ ! 退避っ!!」

そう叫ぶとともに、アメリアスもバッと体を投げ出す。

直後光線が、7人の立っていた位置を薙ぎ払った。

 

「なかなかやるじゃない⋯ !」

素早く立ち上がったアメリアスは、あるものに気づく。

「あれは⋯ ?」

正面から対峙していると、死角になっていた、体側面。

丸い紋章が、青白く光っている。

 

「よし⋯ !」

アメリアスは一気にブーストをかけ、T-レックスに肉薄、

「せいっ!!」

その紋章を蹴りつけると、T-レックスは一撃で吹っ飛んだ。

 

「やっぱり⋯ あれが弱点なんだ!」

見れば都合よく、最後の一匹がレーザーの準備に入っている。

「お願い、アフィン!!」「任せろ!!」

アフィンが撃った弾は、T-レックスの弱点を、赤くマークする。

 

「これで⋯ 終わり!!」

アメリアスがT-レックスの横に降り立つと、ジェットブーツが激しく輝く。

「エレメンタル・フルバースト! ヴィントジーカー!!」

凄まじい蹴りが、一撃で、巨軀を屠った。

 

『反応、殲滅! お見事です!!』

アメリアスの下に、6人が集合する。

「よっし⋯ シエラさん、次は」

イオが尋ねると、エリアマップに大型のマーキングが配置された。

 

『ステーション前に、強力な発生予兆があります。おそらく、大型級エネミーです⋯ !』

「いよいよあっちも種切れみたいだな⋯ 」

「⋯ 行きましょう、皆さん!!」

アメリアスを先頭に、7人がダッシュパネルに飛び込んだ。




「東京テディベア」
女物の似合う少年も、何も知らない無辜の市民も。
みんな、かわいいテディベア。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。