ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
A.D2028:3/24 10:00
地球::天星学院高校学生寮
「いやあああああああああああああッ!!?何、何なの!?この可愛い生き物はああああああっ!!?」
ヒツギの部屋に、コオリの咆哮が響き渡る。
「⋯ あんた、男苦手じゃ」
ヒツギは完全に意表をつかれ、固まっていた。
昨日ヒツギが伝えた、「会って欲しい人」というのは⋯ 勿論、アルのこと。
それで今日、彼女を招いたのだが⋯ ヒツギのTシャツを着たアルを見た途端、コオリはデレデレになってしまった。
「やだやだやーだー!! かーわーいーいーっ!! 金髪っ! 碧眼っ!! そしてダボ袖着こなし⋯ 奇跡だよおっ!!!」
ずいずいっと、アルに駆け寄るコオリ。
「このひと⋯ 怖い! お姉ちゃん、お姉ちゃん!!」
アルは完全にビビって、ヒツギの背中に隠れていた。
「へひひ⋯ そんな邪険にしないでよぉ⋯ ほら、おねーさんといいコトしようよぉ⋯ 何も悪いことはしないからさぁ⋯ 」
「⋯ 落ち着け」
だんだんと邪悪オーラを増していくコオリの肩を押さえ、ずいっと目の前に戻す。
「コオリ⋯ あんた男苦手って言ってなかった?」
「男の娘は別腹だよ、別腹!」
「⋯ あんた、音じゃわからない所で凄いこと言ったろ、今」
ヒツギはさっきので少しずれたニットセーターを直して、ため息を吐いた。
「それでヒツギちゃん、この子、どこからお持ち帰りしてきたの?」
「おもっ!? ⋯ 笑わずに聞いてよ?」
コオリを椅子に座らせ、自分はアルと一緒にベッドに腰掛ける。
昨日の出来事⋯ 主に彼のことを簡単に話すと、コオリは目を丸くして、
「PSO2の中から!? うーん⋯ 」
「にわかには信じがたい話だけど⋯ 状況的にそうとしか思えないし⋯ 」
「⋯ 別に疑ってないよ。私、ヒツギちゃんを疑ったことあった?」
そうは答えつつも、コオリは少し考え込んだ。
「でも、それが本当となると⋯ 」
「⋯ 」
「私でも、こんな可愛い子を連れて来れちゃうのかな?」
「⋯ 私は真面目な話をしてるの」
「ち、ちょっとしたお茶目だよー」
ヒツギに諌められ、コオリはわたわたと手を振る。
「でも⋯ ヒツギちゃんがこの子を連れて来ちゃったんなら、何か原因があるってことでしょ? 昨日の行動を振り返れば、何か見つかるんじゃないかな?」
「とは言ってもなぁ⋯ 」
ヒツギは想起する。
昨日のことは全てが想定外で、どこが原因かなんて判断のつきようがない。
「アルくんは、何か覚えてないの?」
本棚を眺めていたアルに声をかけても、アルは小さく首を振った。
「じゃあ⋯ 他の当事者に話を聞ければ⋯ 」
「他の当事者⋯ 」
思い出すのは、昨日、アルと同時にこちらへ飛び込んできた少女。
(アメリアスの事まで、説明できる気がしない⋯ ! むしろ誰かあたしに説明して⋯ !)
「へ⋯ っくしっ!!」
突然のくしゃみに、ヒツギは慌てて振り向く。
アルがぐすぐすと、鼻をこすっていた。
「そういえば⋯ どうしてあんな服装なの? あれじゃまだちょっと寒いよ⋯ 」
「う⋯ アルが着れそうなのが、あれぐらいしか無くて⋯ 」
ヒツギとしても、こんな小さな男の子の服は持っている筈もない。
「ふむふむ⋯ 取り敢えず、やる事が見つかったね」
「⋯ そうね。アル! あんたの服、買いに行こっか!」
アルはこくっと、頷いた。
A.D2028:3/24 11:25
地球:東京
「うーんと、こっちこっち⋯ 」
3人はてくてくと、東京の街を進む。
とりあえずアルには適当な服を着せ、コオリの案内で店へと向かう。
「コーデに1時間弱も掛けてどうすんのよ⋯ 」
「もう、ヒツギちゃんはもっとオシャレするべきだよ」
他愛もない会話を交わしつつ、道を歩いていると、
「お姉ちゃん、あれ⋯ 」
アルがこそっと、交差点の向こうを指差した。
ヒツギもよく行くカフェがある通りに、人だかりができている。
「なんか、あったのかな⋯ 」
しばらく見ていると、人だかりは勝手に解散して、いつもの景色に戻った。
「⋯ フラッシュモブでもしてたのかな?」
「ふらっしゅもぶ?」
「発想が飛躍しすぎよ。ほら、行こ」
若干抜けた推理に呆れつつ、店へと急ぐ。
交差点を渡ったところで、ふと気づいた。
「あれ⋯ あの通り、いっつも人が多いんだけどな⋯ 」
人だかりが消えて、見えた通りには、通行人は殆どいなかった。
A.D2028:3/24 11:22
地球:東京
金曜日の、昼下がり。
時間が時間なので、大人の姿は少ないものの、春休みの学校が多いこともあり、街は若者で賑わっている。
交差点を行く人々。
歩道を駆ける少年。
カフェや買い物で、休暇を謳歌する学生たち。
そんな、いつも通りの日々の中。
幻創はついに、人々に牙を剥いた。
「お、おい!! なんだあれ!?」
道行く人々の中に、どよめきが広がる。
突如、青い光の障壁が広がったのだ。
交差点近くを覆う、光の壁。
そして、そこから無数の光球が漏れ出す。
光球から現れたのは⋯ 青い、不気味な体軀を持った化け物。
「キャーーーー!!」
「に、逃げるんだぁ!!」
道行く人々に、混乱広がる。
この状況下において、彼らが、気づける筈がなかった。
この化け物が、一般市民にとって幻想の中の存在⋯ 「ゾンビ」に似た姿をしていた事を。
「逃げましょう、先輩!!」
「う、うん!!」
学生服を着た黒髪の少年が、傍の少女の手を取る。
「⋯ !」
しかし、少年が交差点に飛び出した頃には、すでに周辺は化け物に取り囲まれていた。
「くそッ⋯ !!」
振るわれたナイフを辛うじてかわし、2人は包囲をすり抜ける。
だが、それを嘲笑うかの如く、2人の前にさらに化け物が降ってくる。
「な⋯っ!?」
絶望的な状況に、少年が覚悟を決めた、その時⋯ !
「させるかあああああああああっ!!!!」
現れた影が、手に取る剣で、化け物を斬り裂いた!
「!?」
少年が顔を上げると、そこに立っていたのは1人の少女。
おそらく自分と同い年か、やや年下に見える顔は、逆にそうは感じないほどの鋭さで、化け物を見ている。
「君は⋯ !?」
少年が言った、その瞬間。
「きゃっ!」
「うわっ!」
2人の⋯ その場全員の体が何かに弾かれ、交差点あたりへと飛ばされる。
同時にこつぜんと、周囲から化け物が消えた。
「え⋯ !!?」
「どうなってんだ⋯ !?」
戸惑う人々。
しかしすぐに、全員が立ち上がり、またいつも通りに歩き出す。
まるで⋯ 何事もなかったように。
「今のって⋯ 」
少女は信じられないといった顔で、さっきまでいた路地を見る。
「⋯⋯⋯ 」
少年は何も言わずに、歩き出した。
A.D2028:3/24 11:30
地球:東京
『隔離領域、展開完了!!』
先行したステラの横に、ほかのメンバーが到着する。
「ナイス切り込みです、ステラさん!」
「がっつり見られたけど⋯ 大丈夫なのか? シエラさん?」
喜ぶフーリエの横で、アフィンがシエラに尋ねる。
『認識偽装で、ステラさんを見た記憶も排除される筈です。問題ありません』
「便利な物ね⋯ 」
アメリアスは呟いて、一歩前に出る。
リンドブルムに変わって装着したのは⋯ 黒翼のジェットブーツ、「ズィレンハイト」。
「さあ⋯ 行きましょうか!!」
ゾンビ系幻創種の群れめがけ、7人のアークスが疾走する!
「ふふふっ! 踊って下さいねえ!?」
リサの容赦ない弾幕が、次々と幻創種を撃ち抜いていく。
(腕は確かなんだけどなぁ⋯ )
フーリエも負けじと、ランチャーをぶっ放す。
「派手に爆発しちゃってください!」
「フーリエさん! 物騒物騒!!」
動作の緩慢なゾンビ系幻創種は、簡単に隙をつける。
全滅まで、さほど時間はかからなかった。
『第2波、来ますっ!』
続いて現れたのは、上部に大きなローターを持ったヘリコプター。
さらに地上には、鋼鉄の戦車が具現する。
「き、
予想外のローテクに驚くフーリエ。
長砲身の防人が、号砲を撃ち放つ。
「ここは⋯ おれの距離だ!!」
そこで前に出たのは、イオ。
手に握るのは⋯ 紫煙の抜剣!
「
研ぎ澄まされた一閃が、砲弾を斬り裂いた!
「よし、上手くいった⋯ !」
ガッツポーズするイオの後ろから、アメリアスが飛び出す。
「ヘリお願い!!」「任せろっ!!」
アメリアスへ機銃を向けるヘリコプターを、アフィンとイオが狙う。
「「墜ちろっ!!」」
一斉発射に爆散するヘリコプターをすり抜け、アメリアスの足が戦車を捉えた。
「古臭いのよっ、色々と!!」
放たれた蹴りが、主砲をへし折る。
すると戦車上部が展開し、火炎放射器が現れた。
「嘘っ!?」
周囲を焼き尽くさんと、戦車が砲門を振り回す。
アメリアスはすぐに上空へ回避すると、
「舐めた真似⋯ してくれるじゃない!!」
その叫びに呼応して、ズィレンハイトが輝く。
「ストライク⋯ ガストっ!!」
高速回転の後に放たれる、踵落とし。
アメリアス渾身の一撃が、砲門を叩き潰した。
「よっし!」
爆発する戦車の横に、そのまま着地⋯ と言うより、着弾する。
同時に、反対側からラットファムトの群れが駆け出した。
「僕に任せてくれ! さあ踊れ、カトリーヌ!!」
ピエトロの振るタクトに合わせ、カトリーヌが疾走する。
「アクション! ワンダスライサー!!」
高速の2連撃が、ラットファムトを斬り裂く。
「まずいっ! 何匹か逃して⋯ 」
「イル・グランツ!!」
生き残った個体にも、アメリアスの放った光弾が突き刺さった。
「ありがとう、マイフレンド!」
「まだ来ますよ、ピエトロさん!!」
さらに、クロウファムトとT-レックスが具現する。
「数が多い⋯ !」
「射撃職、クロウファムトを!! ステラ、ピエトロさん! 」
「了解だ!!」「いっくよー!!」
7人が、一斉に動き出す。
「対象⋯ 捕捉! ホーミングエミッション!!」
「うふふふっ! 全部撃ち墜としてしまいましょうねえ!!」
アフィンの放った誘導弾と、リサの射撃が、次々とクロウファムトを撃破する。
「援護するぞ! 3人とも!!」
イオの展開したサークルから放たれる、
無数の矢の合間から、アメリアス達はT-レックスへと駆ける。
「ワンダショック! ショータイム!!」
カトリーヌの咆哮とともに、閃光がT-レックスを止めた。
「助かります、ピエトロさん!!」
ステラは飛び上がり、飛翔剣をT-レックスに向ける。
「刺されっ!」
打ち出されたフォトンブレードが、頭に突き刺さる。
「これは⋯ 痛いよ!!」
ステラとフォトンブレードが舞い踊り、T-レックスの頭部を叩く。
トドメに放出した雨のようなブレードが、串刺しになったT-レックスを沈黙させた。
「こっち、終わったよ!!」
「なら、こっちもさっさと仕留めようか!」
アメリアスのジェットブーツが、淡い光を散らす。
するとT-レックスが、大きくその首を振り上げ⋯
「なっ⋯ !?」
「なんですか、あれ!!?」
もともと首のあった高さに、その骨格だけが現れていた。
「これが、幻創種の力だってのか⋯ !?」
骨の顎は、その口に光を束ねていく。
「⋯ ! 退避っ!!」
そう叫ぶとともに、アメリアスもバッと体を投げ出す。
直後光線が、7人の立っていた位置を薙ぎ払った。
「なかなかやるじゃない⋯ !」
素早く立ち上がったアメリアスは、あるものに気づく。
「あれは⋯ ?」
正面から対峙していると、死角になっていた、体側面。
丸い紋章が、青白く光っている。
「よし⋯ !」
アメリアスは一気にブーストをかけ、T-レックスに肉薄、
「せいっ!!」
その紋章を蹴りつけると、T-レックスは一撃で吹っ飛んだ。
「やっぱり⋯ あれが弱点なんだ!」
見れば都合よく、最後の一匹がレーザーの準備に入っている。
「お願い、アフィン!!」「任せろ!!」
アフィンが撃った弾は、T-レックスの弱点を、赤くマークする。
「これで⋯ 終わり!!」
アメリアスがT-レックスの横に降り立つと、ジェットブーツが激しく輝く。
「エレメンタル・フルバースト! ヴィントジーカー!!」
凄まじい蹴りが、一撃で、巨軀を屠った。
『反応、殲滅! お見事です!!』
アメリアスの下に、6人が集合する。
「よっし⋯ シエラさん、次は」
イオが尋ねると、エリアマップに大型のマーキングが配置された。
『ステーション前に、強力な発生予兆があります。おそらく、大型級エネミーです⋯ !』
「いよいよあっちも種切れみたいだな⋯ 」
「⋯ 行きましょう、皆さん!!」
アメリアスを先頭に、7人がダッシュパネルに飛び込んだ。
「東京テディベア」
女物の似合う少年も、何も知らない無辜の市民も。
みんな、かわいいテディベア。