ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中) 作:超天元突破メガネ
A.P241:3/24 8:00
アークスシップ:アメリアスのマイルーム
「起きろおおおおおおおおお!!!」
「⋯ ふああっ!?」
私の朝は、耳に突き刺さった怒号から始まった。
恐る恐る目を開けると、ベッドの上にステラが馬乗りになっている。
「⋯ ステラ、いくらなんでもそれは」
「だって姉ちゃん、こうでもしないと起きてくれないって、パティさんが言ってたんだもん」
⋯ 一瞬、某騒がしいニューマンに本気で殺意が湧いたが、慌ててそれを掻き消す。
「そうかもしれないけど⋯ ふあぁ」
あくび混じりに、目の前の妹の顔を見る。
「別に叩き起こす事ないんじゃない? 今日なんかあったっけ⋯ 」
そこで、私の声は切れた。
そうだ、今日は「ある」のだ。
「⋯ そっか、地球の探索を開始するんだった」
そう。今回の一件で、アークスとしても件の惑星⋯ 地球の調査を行う事となった。
「向こうにも、攻勢エネミーが確認された⋯ 今回の事と、絶対関係あるもん」
息巻くステラ。
事は、昨日に遡る。
地球という惑星の存在をシエラさんと話した後、こんな指令が下ったのだ。
「明日より、アークスとしての活動範囲に、惑星『地球』が加えられます。任務内容は、従来通りの惑星調査及び、地球にて散発している『幻創種』エネミーの駆逐です」
昨日、ヒツギさんと私を襲った、青い怪物。
それと類似した存在が、地球の『東京』と呼ばれるエリアに現れ、一般人に被害を加えているらしい。
エネルギー粒子のようなものが収束した、今までに無い組成を持ったそれらは、『幻創種』と名付けられ、アークスはその退治も行う事にした。
「あんなのが、街に現れたら⋯ 」
「間違いなく大混乱ね。地球の人々が、どこまで戦えるのかわからないけど⋯ 昨日の事件で、幻創種にフォトンによる攻撃が通る事⋯ もっと言えば、地球でフォトンが使える事は確実になった」
ステラを押しのけ、ベッドから出る。
「調査は確か、9:00からだよね。着替えたら私も行くから、ステラは先に準備してて」
ステラはん、と頷いて、ベッドから飛び降り、部屋を出て行った。
「⋯ さってと⋯ 」
一人残された私は、倉庫端末に触れる。
「ベッドから出ると寒いなぁ⋯ 服、何持ってたっけ⋯ 」
何せ今⋯ 私は大きめのドレスシャツ一枚なのだ。
エーデルゼリンでも良いのだが、ちゃんとした戦闘服の方がいい。
「これかな」
私の体が一瞬、光に包まれる。
光が収束すると、私の体は、黒い戦闘服に包まれていた。
「『マギアセイヴァー』⋯ やっぱこれだよ、これ」
軽く一回転すると、腰のマントがひらりとはためく。
「じゃあ行こっかな、地球!」
未知の惑星に想像を巡らせながら、私は部屋を飛び出した。
A.D2020:3/24 9:30
惑星地球:東京
アメリアスと、ヒツギ。
2人のつながりは、
青い空を衝く、摩天楼とも呼ばれるビル群。
整然と整備され、街路樹が植えられた道路。
アメリアスとヒツギのつながりを辿り、地球で最初に座標を特定できた場所⋯ それがここ、東京だった。
「⋯ すっご」
アメリアスはただ、圧倒されていた。
街の雰囲気は、アークスシップの居住区にも似ていて⋯ だけど、どこか圧迫感がある。
今まで体験したことのない空気に、言葉を失っていると、不意に背中から肩を叩かれた。
「なにぼーっとしてんだよ、相棒!」
アメリアスが振り向くと、金髪のニューマンの青年が、アサルトライフルを担いで笑っている。
「アフィン! 久しぶり!」
「おう! 元気そうで良かった!」
彼はアメリアスの同期のアークスで、昨日彼女が会ったユクリータの弟だ。
「ごめんね、顔見せられなくて」
「いや、オレも昨日一昨日と、出撃が立て込んじまって⋯ ごめんな」
互いに謝っていると、
「2人ともーっ!行くよーっ!!」
いつの間にかいたステラが、ガンスラッシュを握った手を振っていた。
「うわっ、ステラいつの間に⋯ !?」
「全然気づかなかったな⋯ すぐ行く!」
2人がステラに合流すると、丁度オペレーターから通信が入った。
『皆さん、集まったみたいですね。地球のオペレートは、私シエラが務めさせていただきます』
「了解。よろしくお願いします、シエラさん」
『はい。現在、東京エリア南の、大型交通ステーションを中心に、幻創種の反応が確認されています』
周辺マップが、各自の端末に転送される。
『一応、2パーティでの任務となりますが、皆さんは先行して調査を開始してください』
かなりの範囲にわたる調査区域には、所々にサークルがかかっている。
『異常反応を示したエリアは、逐次マークされるので、そこへ向かって下さい。それと⋯ 』
不意に、アメリアスの横に小さなソケットが設置された。
そこからは、高密度のフォトンリングが展開されている。
『フォトンによる加速装置⋯ ダッシュパネルです。かなり広域の調査になるので、使って下さい』
「へえ⋯ いつの間にこんな物が⋯ 」
なんとなく、アメリアスがリングに手を伸ばした、その瞬間。
「!!!?」
ぐいっとパネルに引き込まれ、アメリアスの体は一気に加速した!
「ぎゃあああああああああああ!!!」
殆ど吹っ飛んだ形のアメリアスは、そのまま近くのビルに激突する。
「相棒ーーーーーーーーーーーー!!?」
「ね、姉ちゃんーーーーーーーー!!?」
『だ、大丈夫ですか!!?』
アメリアスはずりずりと、地面に崩れ落ちる。
「め、滅茶苦茶痛い⋯ あれ?」
両手で頭を押さえながらなんとか立ち上がって⋯ 首をかしげた。
「ビルにキズ一つ付いてない⋯ 」
『く、空間隔離を行っているので、ふふっ、いくら暴れても大丈夫、ですっ』
「何笑ってんですか!」
『すいません、頭押さえてるアメリアスさんがそのっ、あのっ、ぷぷっ」
必死に笑いを堪える、シエラの声。
「も、もう行きますっ!! ほら、行くよアフィン! ステラ!!」
バッと、2人の方へ振り向くアメリアス。
「お、おう⋯ ぷっ」
「ね、姉ちゃんそれはっ、破壊力ぱないから」
2人も、笑っていた。
「あんた達までーーーーーっ!!!」
「姉ちゃんがキレたーー!」
「逃げろーっ!!」
アフィンとステラが、ダッシュパネルに突っ込み、駆け出す。
「⋯ ええいっ!」
アメリアスもダッシュパネルに突っ込み、追いかける。
『逃走中申し訳ありませんが、そちらに反応ありです!』
告げられる、開戦の合図。
「おおっと!」
本来の目的を思い出し、アメリアスは慌てて立ち止まった。
「来るぞ!」
青い光がブロック状に収束し、何かが落下してくる。
3人の前に現れたのは、ヒツギを襲った、あの青いバケモノだった。
「登録名、『ドスゾンビ』に『チャカゾンビ』⋯ 」
「よっしゃあ! 行くぜ相棒!」
「⋯ オーケー! 」
アフィンがアサルトライフルを構えると同時に、ジェットブーツを起動したアメリアスが飛び出す。
「はああああああっ!!」
「喰らええっ!!」
弾幕と連撃が、幻創種を葬っていく。
チャカゾンビの光弾も、アメリアスの熟練の技術には及ばず、ことごとくかわされる。
「次!」
設置されたダッシュパネルに入り、再び加速。
次に現れたのは、白い小動物と、小型の鳥。
「えーっと、『ラットファムト』と『クロウファムト』だって!」
「喋ってないで仕事しなさい!」
先制して風テクニックを浴びせながら、アメリアスはステラに叫ぶ。
「はいはい! 今行きますよっと!!」
ステラが前衛に走ると、ラットファムトが刃を展開して転がり出す。
「この命⋯ 燃やし尽くしても駆け抜ける!」
交差したデュアルブレードから、ステラの前にフォトンブレードが展開される!
「ディスパースシュライク!!」
それは、刹那の斬撃。
フォトンブレードが突き刺さり、ラットファムトは霧散する。
「よっし!」
「クロウファムトも落としたっ! 次⋯ !」
『待って下さい! まだ異常反応が消えていません!!』
3人の前に、先ほどよりも大きな光が集まる。
現れたのは、巨大な龍のようなエネミー。
「龍族⋯ !? でも、原生種にも似てる⋯ 」
『データ、照合しました! T-レックスと呼ばれる、今は生息しない古代生物です!!』
その尾を青く染めた古代の覇者が、異邦の戦士に襲いかかる。
「きゃああっ!」
巨軀から薙ぎ払われた尾が、アメリアスを吹き飛ばした。
『アメリアスさん!』
「大丈夫です、けどっ!」
どうやらリンドブルムが故障したらしく、不安定な展開状態のまま倒れている。
「お、起きれない⋯ !」
「姉ちゃん!?」
「ステラ! 危ないっ!!」
ステラに標的を変え、T-レックスが突進する!
「よくも⋯ 姉ちゃんをォォォ!!!」
その時、アフィンは確かに見た。
激昂したステラを中心に、フォトンが吹き荒れるのを。
「らああああああああっ!!!」
突進するT-レックス、しかしステラは、自らの腕で、その巨軀を、その
「はぁ!?」
アフィンはあんぐりと口を開け、その光景に目を奪われる。
「ふッ!」
動きの止まったT-レックスの頭を蹴り、ステラは飛び上がる。
「イモータルターヴ!!」
フォトンブレードと共に、両の刃が叩きつけられた!
「これで決まりだっ!」
よろめくT-レックスの前で、ステラの剣が五芒星を描く。
「ジャスティスクロウっ!!」
その紋から、フォトンブレードが光線の様に打ち出される!
フォトンブレードが刺さった頭に、さらに光線をぶち当てられ、T-レックスは霧散した。
「倒した⋯ そうだ、姉ちゃんはっ!?」
慌てて振り向くステラ。
「ごめん! よくやった妹!」
予備のジェットブーツに換装したアメリアスが、急いで駆け寄ってくる。
「大丈夫か、相棒?」
「問題無い。次行こう!」
三たび、エネミー反応ポイントへ向かう3人。
すると突然、近くの自動車が、ひとりでに動き出した。
「なっ、、、!?」
『幻創種と同等の反応を確認! 追尾して破壊してください!!』
「⋯ 了解!!」
近くのダッシュパネルに飛び込み、加速する。
「アフィン! ステラ!! 散開して叩いて!」
「「応!!」」
暴走する自動車は4台。拡散して、一気に破壊する作戦だ。
「そうだ⋯ これなら!!」
暴走自動車に食らいついたアメリアスは、一気に姿勢を落とす。
「はああああああっ!!」
繰り出されたのは⋯ 凄まじいスライディング!
「いっちょ上がりっと!」
一撃で破壊された自動車をすり抜け、アメリアスは起き上がった。
「一つ落としたっ、そっちもお願い!!」
「わかった!」「任しといて!」
再びダッシュパネルに突っ込み、ノーマークの一台を狙う。
アフィン達もコツを掴んだようで、マップから暴走自動車の反応が消えていく。
「ラスト⋯ 一台!!」
アメリアスが最後の自動車を捉えた⋯ その時。
アメリアスの目の前で、自動車が爆散した!
「えええええええっ!!?」
反射的に身を丸め、突然の爆風を避ける。
「あれれ! どなたか巻き込んでしまったのでしょうか!? 申し訳ありませんねえ!」
聞こえてくる、エコーのかかった甲高い声。
「はぁ⋯ 『もう一方のパーティ』ってのは、貴女でしたか⋯ !」
アメリアスは起き上がると、声の方を睨みつけた。
そこに居たのは、アサルトライフルを持った、小柄なキャストの女性。
「あれま! アメリアスさんではないですかあ! こんにちは! はいこんにちはあ !」
「⋯ はい、お久しぶりです、リサさん」
こめかみがひくつくのを感じながら、アメリアスはリサを見る。
彼女は
なのだが、
「幻創種は撃ち応えがイマイチでしてねぇ、つい自動車を狙うのに夢中になってしまいまして!」
「あいっ変わらずトリガーハッピーですね貴女は!!」
アメリアスはついつい、語気を荒げてしまう。
こういう言動ばかりのリサとはいまいちそりが合わず、3年前の入隊当初から、ずっと彼女が苦手なままだ。
「あーもう、よりによってなんで貴女が⋯ !」
久々の相手に、アメリアスがぶつぶつ呟いていると、リサの後ろから3人のアークスが走ってきた。
「暴走自動車は全滅したかい⋯ おや、マイフレンドじゃないか!」
片方は、以前出会ったデューマンの青年、ピエトロ。後ろには「ワンダ」種ペットのカトリーヌも浮いている。
「リサさんっ!先に行かないで下さ⋯ あ、アメリアスさん!」
もう片方は、ランチャーを背負い、黄色い装甲を纏った、キャストの女性。
アメリアスの友人、フーリエだ。
「あんまり怒鳴るなよ、こっちまで聞こえてきたぞー、センパイ」
最後にやってきたのは、バレットボウを担いだイオだった。
「あ、イオにピエトロさんにフーリエさん⋯ 」
どうやら、リサとピエトロ、フーリエ、そしてイオが、もう片方のパーティらしい。
「こっち、終わったよー!」
「おっと、合流したみたいだな!」
そうこうしてるうちに、アフィンとステラも戻ってきた。
「これで全員ですかあ?」
「みたいですね⋯ 7人同時行動は厳しいから、また散開して⋯ 」
アメリアスが答えようとした、その時、
『皆さん、大変です! 隔離領域外に異常反応が出ています!!』
シエラの通信が、全員の耳に突き刺さった。
「急行します! 隔離領域の拡大を!」
『すぐに行います! 被害を最小限に食い止めて下さい!』
アメリアスを先頭に、ダッシュパネルから一斉に駆け出す。
「このスピードだと⋯ 30秒はかかる⋯ !」
歯噛みするアフィン。
しかし、スピードはこれが限界だ。
「うふふふふ、また一杯撃ち殺せますねえ!」
全くテンションの変わらないリサ。
「あーもうっ、誰かこの人どうにかしてっ!」
「あえて言いましょう⋯ 無理ですっ!」
時刻は、11時を半分ほど過ぎようとしていた。
「アスノヨゾラ哨戒班」
哨戒班、東京を往く。