ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

10 / 71
今更ですが、タグにR15を追加しました。


SB1-6 「アスノヨゾラ哨戒班」

A.P241:3/24 8:00

アークスシップ:アメリアスのマイルーム

 

「起きろおおおおおおおおお!!!」

「⋯ ふああっ!?」

私の朝は、耳に突き刺さった怒号から始まった。

 

恐る恐る目を開けると、ベッドの上にステラが馬乗りになっている。

「⋯ ステラ、いくらなんでもそれは」

「だって姉ちゃん、こうでもしないと起きてくれないって、パティさんが言ってたんだもん」

 

⋯ 一瞬、某騒がしいニューマンに本気で殺意が湧いたが、慌ててそれを掻き消す。

「そうかもしれないけど⋯ ふあぁ」

あくび混じりに、目の前の妹の顔を見る。

「別に叩き起こす事ないんじゃない? 今日なんかあったっけ⋯ 」

 

そこで、私の声は切れた。

そうだ、今日は「ある」のだ。

「⋯ そっか、地球の探索を開始するんだった」

 

そう。今回の一件で、アークスとしても件の惑星⋯ 地球の調査を行う事となった。

「向こうにも、攻勢エネミーが確認された⋯ 今回の事と、絶対関係あるもん」

息巻くステラ。

 

事は、昨日に遡る。

地球という惑星の存在をシエラさんと話した後、こんな指令が下ったのだ。

「明日より、アークスとしての活動範囲に、惑星『地球』が加えられます。任務内容は、従来通りの惑星調査及び、地球にて散発している『幻創種』エネミーの駆逐です」

 

昨日、ヒツギさんと私を襲った、青い怪物。

それと類似した存在が、地球の『東京』と呼ばれるエリアに現れ、一般人に被害を加えているらしい。

エネルギー粒子のようなものが収束した、今までに無い組成を持ったそれらは、『幻創種』と名付けられ、アークスはその退治も行う事にした。

 

「あんなのが、街に現れたら⋯ 」

「間違いなく大混乱ね。地球の人々が、どこまで戦えるのかわからないけど⋯ 昨日の事件で、幻創種にフォトンによる攻撃が通る事⋯ もっと言えば、地球でフォトンが使える事は確実になった」

 

ステラを押しのけ、ベッドから出る。

「調査は確か、9:00からだよね。着替えたら私も行くから、ステラは先に準備してて」

ステラはん、と頷いて、ベッドから飛び降り、部屋を出て行った。

 

「⋯ さってと⋯ 」

一人残された私は、倉庫端末に触れる。

「ベッドから出ると寒いなぁ⋯ 服、何持ってたっけ⋯ 」

何せ今⋯ 私は大きめのドレスシャツ一枚なのだ。

エーデルゼリンでも良いのだが、ちゃんとした戦闘服の方がいい。

 

「これかな」

私の体が一瞬、光に包まれる。

光が収束すると、私の体は、黒い戦闘服に包まれていた。

「『マギアセイヴァー』⋯ やっぱこれだよ、これ」

 

軽く一回転すると、腰のマントがひらりとはためく。

「じゃあ行こっかな、地球!」

未知の惑星に想像を巡らせながら、私は部屋を飛び出した。

 

A.D2020:3/24 9:30

惑星地球:東京

 

アメリアスと、ヒツギ。

2人のつながりは、星の守り手(アークス)達を、新たな世界に導いた。

 

青い空を衝く、摩天楼とも呼ばれるビル群。

整然と整備され、街路樹が植えられた道路。

アメリアスとヒツギのつながりを辿り、地球で最初に座標を特定できた場所⋯ それがここ、東京だった。

 

「⋯ すっご」

アメリアスはただ、圧倒されていた。

街の雰囲気は、アークスシップの居住区にも似ていて⋯ だけど、どこか圧迫感がある。

今まで体験したことのない空気に、言葉を失っていると、不意に背中から肩を叩かれた。

 

「なにぼーっとしてんだよ、相棒!」

アメリアスが振り向くと、金髪のニューマンの青年が、アサルトライフルを担いで笑っている。

 

「アフィン! 久しぶり!」

「おう! 元気そうで良かった!」

彼はアメリアスの同期のアークスで、昨日彼女が会ったユクリータの弟だ。

 

「ごめんね、顔見せられなくて」

「いや、オレも昨日一昨日と、出撃が立て込んじまって⋯ ごめんな」

 

互いに謝っていると、

「2人ともーっ!行くよーっ!!」

いつの間にかいたステラが、ガンスラッシュを握った手を振っていた。

 

「うわっ、ステラいつの間に⋯ !?」

「全然気づかなかったな⋯ すぐ行く!」

2人がステラに合流すると、丁度オペレーターから通信が入った。

 

『皆さん、集まったみたいですね。地球のオペレートは、私シエラが務めさせていただきます』

「了解。よろしくお願いします、シエラさん」

『はい。現在、東京エリア南の、大型交通ステーションを中心に、幻創種の反応が確認されています』

周辺マップが、各自の端末に転送される。

 

『一応、2パーティでの任務となりますが、皆さんは先行して調査を開始してください』

かなりの範囲にわたる調査区域には、所々にサークルがかかっている。

『異常反応を示したエリアは、逐次マークされるので、そこへ向かって下さい。それと⋯ 』

 

不意に、アメリアスの横に小さなソケットが設置された。

そこからは、高密度のフォトンリングが展開されている。

 

『フォトンによる加速装置⋯ ダッシュパネルです。かなり広域の調査になるので、使って下さい』

「へえ⋯ いつの間にこんな物が⋯ 」

 

なんとなく、アメリアスがリングに手を伸ばした、その瞬間。

「!!!?」

ぐいっとパネルに引き込まれ、アメリアスの体は一気に加速した!

 

「ぎゃあああああああああああ!!!」

殆ど吹っ飛んだ形のアメリアスは、そのまま近くのビルに激突する。

「相棒ーーーーーーーーーーーー!!?」

「ね、姉ちゃんーーーーーーーー!!?」

『だ、大丈夫ですか!!?』

 

アメリアスはずりずりと、地面に崩れ落ちる。

「め、滅茶苦茶痛い⋯ あれ?」

両手で頭を押さえながらなんとか立ち上がって⋯ 首をかしげた。

 

「ビルにキズ一つ付いてない⋯ 」

『く、空間隔離を行っているので、ふふっ、いくら暴れても大丈夫、ですっ』

「何笑ってんですか!」

『すいません、頭押さえてるアメリアスさんがそのっ、あのっ、ぷぷっ」

 

必死に笑いを堪える、シエラの声。

「も、もう行きますっ!! ほら、行くよアフィン! ステラ!!」

バッと、2人の方へ振り向くアメリアス。

 

「お、おう⋯ ぷっ」

「ね、姉ちゃんそれはっ、破壊力ぱないから」

2人も、笑っていた。

 

「あんた達までーーーーーっ!!!」

「姉ちゃんがキレたーー!」

「逃げろーっ!!」

 

アフィンとステラが、ダッシュパネルに突っ込み、駆け出す。

「⋯ ええいっ!」

アメリアスもダッシュパネルに突っ込み、追いかける。

 

『逃走中申し訳ありませんが、そちらに反応ありです!』

告げられる、開戦の合図。

「おおっと!」

本来の目的を思い出し、アメリアスは慌てて立ち止まった。

「来るぞ!」

青い光がブロック状に収束し、何かが落下してくる。

 

3人の前に現れたのは、ヒツギを襲った、あの青いバケモノだった。

「登録名、『ドスゾンビ』に『チャカゾンビ』⋯ 」

「よっしゃあ! 行くぜ相棒!」

「⋯ オーケー! 」

 

アフィンがアサルトライフルを構えると同時に、ジェットブーツを起動したアメリアスが飛び出す。

「はああああああっ!!」

「喰らええっ!!」

 

弾幕と連撃が、幻創種を葬っていく。

チャカゾンビの光弾も、アメリアスの熟練の技術には及ばず、ことごとくかわされる。

 

「次!」

設置されたダッシュパネルに入り、再び加速。

次に現れたのは、白い小動物と、小型の鳥。

「えーっと、『ラットファムト』と『クロウファムト』だって!」

「喋ってないで仕事しなさい!」

 

先制して風テクニックを浴びせながら、アメリアスはステラに叫ぶ。

「はいはい! 今行きますよっと!!」

 

ステラが前衛に走ると、ラットファムトが刃を展開して転がり出す。

「この命⋯ 燃やし尽くしても駆け抜ける!」

交差したデュアルブレードから、ステラの前にフォトンブレードが展開される!

 

「ディスパースシュライク!!」

それは、刹那の斬撃。

フォトンブレードが突き刺さり、ラットファムトは霧散する。

 

「よっし!」

「クロウファムトも落としたっ! 次⋯ !」

『待って下さい! まだ異常反応が消えていません!!』

 

3人の前に、先ほどよりも大きな光が集まる。

現れたのは、巨大な龍のようなエネミー。

「龍族⋯ !? でも、原生種にも似てる⋯ 」

『データ、照合しました! T-レックスと呼ばれる、今は生息しない古代生物です!!』

 

その尾を青く染めた古代の覇者が、異邦の戦士に襲いかかる。

「きゃああっ!」

巨軀から薙ぎ払われた尾が、アメリアスを吹き飛ばした。

 

『アメリアスさん!』

「大丈夫です、けどっ!」

どうやらリンドブルムが故障したらしく、不安定な展開状態のまま倒れている。

 

「お、起きれない⋯ !」

「姉ちゃん!?」

「ステラ! 危ないっ!!」

ステラに標的を変え、T-レックスが突進する!

 

「よくも⋯ 姉ちゃんをォォォ!!!」

その時、アフィンは確かに見た。

激昂したステラを中心に、フォトンが吹き荒れるのを。

 

「らああああああああっ!!!」

突進するT-レックス、しかしステラは、自らの腕で、その巨軀を、その(あぎと)を受け止めた!

 

「はぁ!?」

アフィンはあんぐりと口を開け、その光景に目を奪われる。

「ふッ!」

動きの止まったT-レックスの頭を蹴り、ステラは飛び上がる。

 

「イモータルターヴ!!」

フォトンブレードと共に、両の刃が叩きつけられた!

「これで決まりだっ!」

よろめくT-レックスの前で、ステラの剣が五芒星を描く。

「ジャスティスクロウっ!!」

その紋から、フォトンブレードが光線の様に打ち出される!

 

フォトンブレードが刺さった頭に、さらに光線をぶち当てられ、T-レックスは霧散した。

「倒した⋯ そうだ、姉ちゃんはっ!?」

慌てて振り向くステラ。

 

「ごめん! よくやった妹!」

予備のジェットブーツに換装したアメリアスが、急いで駆け寄ってくる。

「大丈夫か、相棒?」

「問題無い。次行こう!」

 

三たび、エネミー反応ポイントへ向かう3人。

すると突然、近くの自動車が、ひとりでに動き出した。

 

「なっ、、、!?」

『幻創種と同等の反応を確認! 追尾して破壊してください!!』

「⋯ 了解!!」

近くのダッシュパネルに飛び込み、加速する。

 

「アフィン! ステラ!! 散開して叩いて!」

「「応!!」」

暴走する自動車は4台。拡散して、一気に破壊する作戦だ。

 

「そうだ⋯ これなら!!」

暴走自動車に食らいついたアメリアスは、一気に姿勢を落とす。

「はああああああっ!!」

繰り出されたのは⋯ 凄まじいスライディング!

「いっちょ上がりっと!」

一撃で破壊された自動車をすり抜け、アメリアスは起き上がった。

 

「一つ落としたっ、そっちもお願い!!」

「わかった!」「任しといて!」

再びダッシュパネルに突っ込み、ノーマークの一台を狙う。

アフィン達もコツを掴んだようで、マップから暴走自動車の反応が消えていく。

 

「ラスト⋯ 一台!!」

アメリアスが最後の自動車を捉えた⋯ その時。

アメリアスの目の前で、自動車が爆散した!

「えええええええっ!!?」

反射的に身を丸め、突然の爆風を避ける。

 

「あれれ! どなたか巻き込んでしまったのでしょうか!? 申し訳ありませんねえ!」

聞こえてくる、エコーのかかった甲高い声。

 

「はぁ⋯ 『もう一方のパーティ』ってのは、貴女でしたか⋯ !」

アメリアスは起き上がると、声の方を睨みつけた。

 

そこに居たのは、アサルトライフルを持った、小柄なキャストの女性。

「あれま! アメリアスさんではないですかあ! こんにちは! はいこんにちはあ !」

「⋯ はい、お久しぶりです、リサさん」

こめかみがひくつくのを感じながら、アメリアスはリサを見る。

 

彼女は射撃職(レンジャー)のアークス⋯

なのだが、

「幻創種は撃ち応えがイマイチでしてねぇ、つい自動車を狙うのに夢中になってしまいまして!」

「あいっ変わらずトリガーハッピーですね貴女は!!」

 

アメリアスはついつい、語気を荒げてしまう。

こういう言動ばかりのリサとはいまいちそりが合わず、3年前の入隊当初から、ずっと彼女が苦手なままだ。

 

「あーもう、よりによってなんで貴女が⋯ !」

久々の相手に、アメリアスがぶつぶつ呟いていると、リサの後ろから3人のアークスが走ってきた。

 

「暴走自動車は全滅したかい⋯ おや、マイフレンドじゃないか!」

片方は、以前出会ったデューマンの青年、ピエトロ。後ろには「ワンダ」種ペットのカトリーヌも浮いている。

 

「リサさんっ!先に行かないで下さ⋯ あ、アメリアスさん!」

もう片方は、ランチャーを背負い、黄色い装甲を纏った、キャストの女性。

アメリアスの友人、フーリエだ。

 

「あんまり怒鳴るなよ、こっちまで聞こえてきたぞー、センパイ」

最後にやってきたのは、バレットボウを担いだイオだった。

 

「あ、イオにピエトロさんにフーリエさん⋯ 」

どうやら、リサとピエトロ、フーリエ、そしてイオが、もう片方のパーティらしい。

 

「こっち、終わったよー!」

「おっと、合流したみたいだな!」

そうこうしてるうちに、アフィンとステラも戻ってきた。

 

「これで全員ですかあ?」

「みたいですね⋯ 7人同時行動は厳しいから、また散開して⋯ 」

アメリアスが答えようとした、その時、

 

『皆さん、大変です! 隔離領域外に異常反応が出ています!!』

シエラの通信が、全員の耳に突き刺さった。

「急行します! 隔離領域の拡大を!」

『すぐに行います! 被害を最小限に食い止めて下さい!』

 

アメリアスを先頭に、ダッシュパネルから一斉に駆け出す。

「このスピードだと⋯ 30秒はかかる⋯ !」

歯噛みするアフィン。

しかし、スピードはこれが限界だ。

 

「うふふふふ、また一杯撃ち殺せますねえ!」

全くテンションの変わらないリサ。

「あーもうっ、誰かこの人どうにかしてっ!」

「あえて言いましょう⋯ 無理ですっ!」

 

時刻は、11時を半分ほど過ぎようとしていた。




「アスノヨゾラ哨戒班」
哨戒班、東京を往く。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。